ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第三十四話:疾風の苦悩と、とっておきの方法(前編)

戦闘が終了し、私が魔法の結界を解除すると、闘技場を覆っていた猛烈な冷気が嘘のように消え去り、元のロキ・ファミリアの訓練場へと戻った。

慌てて皆の元へ走って向かうと、マヒャデドスによって氷の彫像と化していたオラリオの精鋭達が、元の姿へと戻っていくところだった。

結界の仕様通り、彼らのケガや凍傷は完全に回復していて、体力も戦闘前の状態に戻っている。

 

しかし、戦闘開始前とは打って変わって、皆一様に深く意気消沈していた。

それも無理はない。大魔王バーンに圧倒された後、今度のゾーマ戦では、序盤から皆が持てる力の全てを懸けて全力で挑んだにも関わらず、結果は手も足も出ないほどのボロボロな惨敗だったのだから。

 

「バニー……君は……君達は、本当に今現れた大魔王ゾーマを、たったの4人だけで倒せたのかい?」

 

フィンが地面に座り込みながら、信じられないものを見るような目で私に問いかけた。

 

「うっ、うん……私達も最初はあの『闇の衣』の事を知らないまま一回戦って、でも全然勝てないから何とか逃げたんだ。それで今度は対処法を教えてもらって、2回目でどうにか倒せた感じだったから、私も最初出会った時は『こりゃ〜無理だわ』って思ったもんだよ」

 

バニーのその言葉に、アレンが引っかかったように鋭く反応し、忌々しげに顔を顰める。

 

「闇の衣? もしかしてそれは、ゾーマの身体を覆っていたやつか? 俺達の攻撃をほぼほぼ無効化していた……」

 

「うん、そうだよ。あれはゾーマが持っている能力の一つで、物理攻撃も魔法攻撃も殆ど防いじゃうんだ。運よく攻撃が通っても、ゾーマはすぐに回復しちゃうから、ぶっちゃけアレをどうにかしないと超大変なんだよ」

 

私が正直に答えると、アレンがカッとなって立ち上がった。

 

「お前っ! そんなヤバい情報があるなら、最初から俺達にいっておけよ!」

 

「何言ってるのさ! 私が『ゾーマの攻略情報いる?』って聞いたのに、それをいらないっていったのは皆でしょ!」

 

理不尽な怒りに私もムッとして言い返すと、アレンは言葉に詰まり、フィンやアリーゼも痛いところを突かれたようにたじたじになった。

確かにその通りだ。私が戦闘前にちゃんと確認したのに、アレンをはじめ、フィンもアリーゼも「いらない」と言い切ったのは彼ら自身なのだから。

アリーゼは「あはは……」と気まずそうに苦笑いを浮かべている。

 

「私達もさ、最初は闇の衣を知らなくてゾーマと戦ったんだけど勝てなくて、それで逃げて対処法を調べているうちに、竜の女王様に出会ってから闇の衣について教えてもらって、それで『光の玉』っていうアイテムをもらったんだ」

 

「竜の女王……そんな存在も、この世にはいるのか……」

 

フィンの驚きの呟きに続き、アレンが忌々しそうに口を開く。

 

「光の玉……そいつが無いと奴には勝てないって事か……」

 

アレンの言葉に、私はブンブンと首を横に振った。

 

「あっ、光の玉はあったら超便利なんだけどもさ、実はそれが無くても勝てなくはないみたいなんだよね」

 

「……なに?」

 

怪訝な顔で聞いてくるアレンに、私は説明を続ける。

 

「物凄い防御性能と、攻撃を受けても回復しちゃうっていうのがゾーマの面倒なところなんだけども、ぶっちゃけていえば超強い攻撃で闇の衣の上からダメージを少しでも与えて、それで回復しきる前に更にダメージを与える……それでも勝てない事はないみたいなんだよね」

 

「……」

 

「ただ、それはあくまで出来ない事はないっていう意味で、ゾーマは神様すらも石化しちゃう『全てを滅ぼす者』とまで言われているヤバい奴だから、それを本当にやろうとするのはかなり大変そうだけどもね。だから確実に勝つには、闇の衣対策は必須なんだ」

 

「なるほど……確かにバニーの言う事は分からないでもないけども、それはあんまり現実的じゃないね……。今の僕達が戦うなら、あの闇の衣をどうにかする対策を考えないと、勝機は殆どないか……」

 

フィンは顎に手を当てて深くため息をついた。

これだけのオラリオの精鋭が集まっても、闇の衣を纏ったままのゾーマの防御力と回復力を上回るダメージを出し続けるのは、限りなく不可能に近いという事だろう。

 

そんな話の後、疲労困憊といった様子のアリーゼが重い口を開いた。

 

「それじゃ〜どうしようか。一旦これで解散する? 今日は本当に疲れたし……ケガとかは無いけど、精神的にはボロボロだよ〜」

 

「……そうだね、そうしようか。良ければ、うちの食堂で食事でも出させてもらうけども、どうだい?」

 

フィンが気遣うように提案する。

 

「いや〜それは嬉しいんだけもさ、今日はもう早く帰ってゆっくりしたい感じだから」

 

アリーゼは力なく苦笑して首を横に振った。

 

「フィン、俺達もその提案は有り難いが、今回は帰らせてもらうとする。……それに今は、自身のステイタスの更新を急ぎたいのでな」

 

オッタルもまた、いつも以上に重い足取りで辞退を申し出た。

かつてないほどの圧倒的な敗北感を味わった彼らだったが、冒険者としての本分は全く忘れておらず、今の彼らの興味はただ、強敵との死闘を経て己のステイタスがどう変化しているかの一点に向いているようだった。

 

◇ ◇ ◇

 

解散した翌日。

リューはあれからずっと、深く思い悩んでいた。

それは大魔王バーンやゾーマとの戦いで、とっておきの魔法を容易く跳ね返され、ろくに活躍も出来ず、ただ自分の無力さを噛み締めるしかなかったからだ。

 

(……このままでは駄目だ)

 

そう思い詰めたリューは、あのとんでもない存在だったゾーマを、かつて仲間と力を合わせて倒した事があるというバニーの昨日の話を思い出し、一度直接相談してみようと思い立ち、ロキ・ファミリアのホームである『黄昏の館』を訪れていた。

 

入り口で門番に通してもらい中に入ってみると、広場でバニーが胡座をかいて『顎ピストル』のポーズを取りながら、一人で悩みながら唸っている姿があった。

 

「う〜ん、う〜ん……」

 

「……よしっ!」

 

何か閃いたのか、バニーがポンと手を打って立ち上がると、そこでリューがやってきている事に気付いた。

 

「あれ? リューちゃんじゃないの。今日はどうしたの? フィン達にでも用事?」

 

不思議そうに聞くバニーに対し、リューはどう伝えようか少し悩みながらも、意を決して答えた。

 

「あの……実はあなたに相談させて頂きたい事がありまして……」

 

「私に相談? ……まぁ、お金の事とかじゃないよね? それなら自分のファミリアで相談するだろうし」

 

「どうして私があなたにお金の相談をするのですか! 違います!」

 

「あはは……じゃあ何の相談なの?」

 

冗談めかして笑うバニーに、リューは真剣な表情のまま語り始めた。

 

「私は……昨日の戦いで殆ど役に立つ事が出来ませんでした……。それを悩んでいるうちに、仲間と共にあのゾーマという化け物を倒してのけたというあなたに、是非話を聞いて頂きたいと思いまして……」

 

「あ〜あれはねぇ、まぁ私達には光の玉もあったから……」

 

「それでもです。昨日の話では、光の玉は闇の衣をはぐ為のものなのでしょう? でも私はそれすらも使われておらず、大魔王バーンにもなのですが、とっておきの魔法も跳ね返されてしまい、ダメージを与えるどころか仲間を危険にさらしてしまったのです」

 

リューが悔しそうに俯く。

 

「あ〜、まぁアレはしょうがないと思うよ? だってオラリオには魔法を跳ね返す魔法とかないみたいじゃん? だから昨日のは、単純に勉強になったと思えばいいんじゃないのかな?」

 

「そういう訳にはいかないのです!」

 

リューの強い語気に、バニーはびくっと肩を揺らした。

 

「申し訳ありません……ですが、昨日のような事が今後あって、それで仲間の命を危険にさらされてしまう事があっては、その時はもう立ち直れないと思うので……なので、出来る事があればやっておきたいのです!」

 

リューの悲痛なまでの覚悟と仲間を想う言葉に、バニーは感心したように目を丸くした。

そんな二人のやり取りの最中、館の中からフィン、ガレス、リヴェリア、ロキの四名が揃って広場へとやってきた。

 

「やぁ。バニーおはよう。そして『疾風』もよく来てくれたね。こんな朝からどうしたんだい?」

 

「おはようございます。実は……」

 

フィンからの問いかけにリューが頭を下げ、事の経緯を短く説明した。

すると、話を聞き終える前にバニーが明るい声で割って入った。

 

「まぁまぁ。リューちゃんの悩みには私が後でみっちり聞いてあげるからさ。まずは皆、私の研究成果を見てみてよ」

 

「研究成果……? そういえば、昨日の夜から何やら考えているようではあったが……」

 

リヴェリアが不思議そうに呟くと、バニーは得意げな笑みを浮かべた。

 

「ふっふっふー( ̄▽ ̄) 皆ちょっと下がっててよ」

 

その言葉に、皆は何をする気なのかと訝しみながらも、言われた通りに少し距離を取る。

バニーは片手を真っ直ぐに掲げ、静かに目を瞑った。

そして、自身の内に眠る魔力を練り上げていく。

 

「…………【カイザーフェニックス】!」

 

その言葉と共に、バニーの片手から熱量を発する巨大な炎の不死鳥が顕現したのだった。

 

「これは……」

 

「まさか……」

 

大魔王バーンの代名詞とも言える魔法の出現に、フィンとリヴェリアが息を呑み、ガレスとロキは信じられないものを見るように声も出ない。

 

「……」

 

リューもまた、目の前の光景に圧倒され、ただ声を出せずに立ち尽くしていた。

 

「はっ!」

 

バニーの鋭い掛け声と共に、炎の鳥が訓練場の頑丈な的へと向かって放たれる。

ドガァァァァァンッ!!

轟音と熱風が広場を吹き抜け、的は一瞬にして灰燼に帰した。

 

「ふぅぅ……どうかな?」

 

振り返ったバニーが自信満々に胸を張る。

実際にその身で受けて死を味わったフィンは、呆れたような感心したような顔になって褒めた。

 

「バニー……君はやっぱりとんでもないね……」

 

そして続ける。

 

「……でも、実際にこの身で体験した正直な感想を言わせてもらうと、威力はやっぱり大魔王が放っていた魔法の方が数段上みたいだね」

 

「あ〜そうなんだよねぇ。元の魔力も私とバーンじゃ桁が違うし、精神力もかなり持ってかれちゃうんだこれ」

 

バニーはあっさりとそれを認めて苦笑する。

 

「それでさ、今度はこれをみてみてよ」

 

バニーが再び定位置に戻ると、一同は黙って彼女から更に離れた。

今度もバニーは目を瞑ったが、先程よりも深く集中しているのが感じられる。

少しすると、彼女の身体が淡い光を放ち始め、魔力が高まっていった。

 

「あれは……」

 

リヴェリアが魔力密度に目を見開き、リューも食い入るようにその姿を見つめていた。

そして、バニーがカッと目を開いた。

 

「魔力覚醒っ!」

 

気合いの声と共に、バニーの体から魔力が迸った。

バニーは魔力を高めたまま、再度片手を掲げた。

 

「【カイザーフェニックス】!」

 

その声と共に顕現された炎の鳥は、明らかに先程出したものよりも力強さを感じさせる。

 

「はっ!」

 

バニーの鋭い声と共に放たれた魔法は、圧倒的な熱量を伴って的に直撃した。

 

「ドカーーーン!!!」

 

その直撃音と爆炎が晴れる中、バニーが満面の笑みで皆の元へと駆けてくる。

 

「どうだった!?」

 

その破壊力を見届けたフィンは、感嘆の息を吐き出しながら告げた。

 

「……凄いよ。あの大魔王のカイザーフェニックスに、かなり近付いた気がする」

 

その言葉を聞いて、バニーは満面の笑顔で答える。

 

「そうでしょう、そうでしょう! 私もさ、皆がバーンと戦ってる時に思ってたんだよね〜『もっと強い魔法が欲しいな〜』って。大魔王の必殺技なだけあって魔力の消費は凄いけど、これなら今後の私の必殺技になるかな〜って思ってたの」

 

満面の笑みで話すバニーはとっても嬉しそうだ。

 

「凄い……これが、賢者……」

 

リューは食い入るように見つめながら、静かにそう呟いた。

 

◇ ◇ ◇

 

場所は移り、黄昏の館にあるバニーの自室。

机を挟んで、バニーとリューが向かい合って座っていた。

 

「それでさ、さっきリューちゃんが言ってた悩みなんだけども、やっぱり強くなりたいって事なんだよね?」

 

「はい……先程のあなたの魔法を見て更に実感しました。このまま何もせず、立ち止まっていてはいけない……と」

 

リューの真っ直ぐな瞳に、バニーは腕を組んで天井を見上げた。

 

「う〜ん、でもな〜」

 

(お世話になっているアストレア・ファミリアのリューちゃんから、こんなに真剣に相談されたんだもん。私も真面目に考えて答えてやりたいけど、強くなりたいって言われても色々なアプローチがあるしなぁ……)

 

三分ほど真剣に悩んだ結果、バニーの脳裏に一つの名案が浮かんだ。

 

「リューちゃん……冗談抜きで、とっておきの方法を思い付いちゃったんだけども……興味ある?」

 

バニーが声を潜め、真剣な表情で顔を近づける。

その答えに、リューは心底驚いた。

 

正直なところ、相談はさせてもらったものの、こんなにもすぐに具体的な方法を考えて答えてもらえるなんて想像していなかったのだ。

なんだかんだで、アストレア・ファミリアの仲間たちには日頃からちょくちょく質問したりしている。だが、今回ばかりは今の自分のファミリアで相談しても、自分が満足する答えが返ってくるとは思えなかった。

だからこそ、最近共に活動する機会が増えてきて、また昨日の『過去に大魔王ゾーマを倒した』という話もあって、無理を承知でバニーに相談させてもらったのだが、まさかこんなにもあっさりと答えを出してくれるとは。

 

バニーは依然として真剣な表情でリューを見つめている。

リューはゴクリと喉を鳴らし、慎重に尋ねた。

 

「……危険な方法なのでしょうか」

 

「危険かぁ……うん、全く無くはないね。実を言うと、これは前にアイズちゃんにも話した事のある方法なんだ……あの子は強さを貪欲に求めているから、真剣に迫られたら困っちゃってね。まぁそれも、リヴェリアに『まだ早い!』と言われて怒られちゃったんだけども」

 

バニーのその言葉に、リューは両目を見開いた。

 

(剣姫のレベルでもまだ早い……つまりそれは、最低でもレベル4以上でないと危険という事……しかし、それだけの荒行であれば、今の私でも成長出来る可能性が……)

 

少し考え込んだ後、リューは決意を込めて真っ直ぐにバニーを見つめた。

 

「……やります! 是非私にもその方法をご教授下さい!」

 

真剣な表情で頼み込んでくるリュー。その並々ならぬ覚悟を受け止め、バニーは静かに問いかけた。

 

「……分かったよ。でもリューちゃん。普通ならこれは信じる事が難しいかもしれないけども、ちゃんと信じてついてきてくれる?」

 

その言葉に、リューは力強く即答する。

 

「勿論じゃないですか! 私は、私達が全く歯が立たなかった大魔王を倒したという、異世界の賢者であるあなたの言葉を絶対信じます!」




…さて、ここまで読んで下さった方であれば、今からバニーが提示する方法が何か、予測がついておられるのではないでしょうか?

この後の展開もある程度は考えているのですが、実はまだ「その方法を使わせるのか」と「性格の問題をどうするのか」を決めかねていまして…

特に迷っているのが性格です。この方法を使わせるなら、一度は性格の変わったバージョンを出してみるのも面白そうだな~と思っているのですが、でもリューの性格が元に戻らないと、これはこれで難しくなると思うんですよねぇ…

だから、もし使うのであれば性格を元に戻せるようにした方がいいのかな~と思っているのですが、でも道具袋の中身は公開しちゃったので、後からアイテムを追加するのは変な気がして…

やっぱり、お話作ってて自分でも納得出来る方法でないと、途中で違和感を感じちゃう気がするので、なのでもし良かったら、皆さんのご意見というか「こういう方法なら戻ってもおかしくないんじゃない?」とかの案を頂けますと嬉しいです。

元に戻すとしたら「性格だけ戻す」か「性格+職業を元に戻す」の2つで考えてます。

では、今日は夜勤ないので今からお風呂屋さんに行ってきます!10時半までなので、そろそろいかないと…
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