ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ 作:ポップ
前回、部屋に置いてあった『すごくエッチな本』と、バニーの置き手紙をファミリアの皆に見られてしまったリュー。
ここで何も言わなければ絶対誤解されると思い、彼女は真っ赤な顔で必死に弁明を試みた。
この本がどうして自分の部屋にあるのか。そして、この本が一体何なのかを。
「……つまり? これはただのエッチな本じゃなくて?」
アリーゼが、机の上の本を指差しながら確認するように尋ねる。
「読むと魔力が高まる凄い本で……」
輝夜が、怪しいものを見る目で話し、
「……魔法も沢山使えるようになる、竜の神が人間に授けた神器だと?」
ライラが、全く信じていない顔で呟いた。
「はい! その通りです!」
皆がようやく自分の話を理解してくれたと、リューはホッと胸を撫で下ろし、ちょっとだけ安心した表情を見せた。
だが――。
「リオン……」
そんなリューの必死の言葉は全く信じてもらえず、アリーゼ達は呆れたような顔でリューを見ていた。
「いやいやいや、隠してたエロ本が見つかったからって、流石にそれはないだろ」
ライラが呆れたように肩をすくめる。
「竜の神がエロ本を人間に授けた? 新入り……テンパっているのは分かるが、誤魔化すならもっとマシな言い訳をしろ」
輝夜もまた、哀れみを含んだ冷ややかな視線を送ってきた。
「リオン……その、エッチな本を持っているのは別に恥ずかしい事じゃないんだよ? 女の子だって、たまにはそういう気持ちになる事があるっていうし……だから無理して隠さなくてもいいの」
団長であるアリーゼは、まるで子供を安心させるような生暖かい顔で諭してくる。
「ちっ、違うのです! アリーゼ!」
恥ずかしさとどうしようもない気持ちで、リューは涙目になりながら反論する。
自分は本当の事を言っているのに、皆は全然信じてくれない。このままファミリアの仲間に誤解されたままでいるのは、自分にとって到底耐えられるものではない。
しかし、冷静になって考えてみれば、皆が信じてくれないのも仕方がない。
だって自分も、主神であるアストレアが真偽を保証してくれなければ、絶対信じていなかった自信があるのだから。
アストレアでさえ、バニーの言葉が真実であると分かっていても、すんなりと飲み込む事が出来なかったのだ。
アリーゼ達が信じられないのも無理はない。
(どっ、どうすればいいのですかっ……!)
仲間達の生暖かい視線を全身に浴びながら、リューはあまりの恥ずかしさにその場にしゃがみ込みたくなっていた。
◇ ◇ ◇
何も言えなくなったリューを見ていたたまれなくなったのか、アリーゼ達が顔を見合わせた。
「……ま、まぁこういうのは健康にもいいみたいだから! だからその……ほどほどにね?」
そんな言葉を残して、皆はそそくさとリューの部屋を後にしていった。
一人取り残されたリューは、恥ずかしさでいっぱいになり、そのままベッドに倒れ込んだ。
(あぁ……終わりました……)
自身の尊厳がガラガラと崩れ去っていくのを感じながら、リューは枕に顔を埋める。
しかし、ひとしきり落ち込んだ後、リューはゆっくりと顔を上げた。
もうファミリアの皆にもバレて(完全に誤解されたままだが)しまったのだ。いまさら隠していても仕方がない。
あの圧倒的な存在だった大魔王バーンや、絶望を与えてきたゾーマ。彼らのような規格外の化物達と戦い、生き抜き、そして大切な仲間を守るためには、自分も常識に囚われない力を手に入れる必要がある。
(こうなったら……もう、強くなるしかないのです)
ベッドに横になりながら、リューは意を決して『すごくエッチな本』を手に取り、パラッとページを開いていく。
未知の世界が描かれたその本を見つめながら、強くなるためだと己に言い聞かせ……やがてリューは、そのまま静かに眠りに落ちていった。
◇ ◇ ◇
そして翌朝。
「リオン〜まだ寝てるの〜?」
リューの部屋の扉をノックし、アリーゼが明るい声で呼びかけた。
すると、部屋の中から気の抜けた声が返ってくる。
「う〜ん……今起きま〜す」
ガチャリとドアが開き、リューが部屋から出てきた。
しかし、その姿は普段の生真面目で潔癖なエルフからは想像もつかないものだった。
シャツを少し捲って無防備にお腹をポリポリと掻きながら、寝癖でボサボサになった髪の毛を気にする素振りすらない。
「……リオン?」
あまりにもだらしない、今まで見たことのないリューの姿に、アリーゼは目を丸くして固まった。
そんな団長の様子に気づき、当のリュー本人はキョトンとした顔で首を傾げる。
「アリーゼ、どうしたのですか?」
「ど、どうしたのって……髪もボサボサだし……いつものリオンなら、絶対にそんなだらしない格好で部屋から出てこないじゃない!」
アリーゼの言葉に、リューは軽く笑った。
「あはは、そうですか? 自分でもよく分からないのですが、なんだか今日はとっても気分が良いんです!」
そう言って、リューはそのままアリーゼと共にホームの食卓へと向かった。
◇ ◇ ◇
アストレア・ファミリアの食卓。
「……おい、リュー。お前なんか変なもんでも食べたのか?」
ライラが怪訝な顔で尋ねると、リューはキョトンとして首を傾げた。
「えっ? どういう事ですか?」
「いや、なんていうかだな……その、いつものお前と少し違うような気がしたから、ちょっと……」
「あぁ。アリーゼもそんな事を言ってましたね。そんなに変ですか?」
「……いや、別に変ていう訳じゃないんだが……まぁいいか。たまにはそういう時もあるだろう」
正直、皆少し変な感じは抱いているものの、いつも真面目なリューもたまにはそういう時もあるだろうと、特に突っ込まないでおく事にした。
しかし、朝食を終えて見回りの時間になった時のこと。
「それでは、朝の見回りに言ってきます!」
元気よく言って出て行こうとするリューを見た瞬間、アリーゼは目が点になった。
「……リオン? その格好はどうしたの?」
リューの格好がいつもと違って、ミニスカ・ヘソ出しスタイルになっていたのだ。
生真面目なエルフである彼女からは到底考えられない、露出の多い出で立ちだった。
「あぁ、これですか? 最近はちょっと暑いですし、気分も変えてイメチェンです!」
そう答えるリューのいつもと違う姿に、皆が驚いていると、そこにアストレアが居間へとやってきた。
「おはよう。……リュー、その格好はどうしたの?」
アストレアもまた、その変貌ぶりにびっくりした目で見ている。
すると、リューは屈託のない笑顔で答えた。
「あっ! アストレア様、どうですか、これ? 可愛くありませんか?」
「リュー?……そう、使ったのね。あの本を」
アストレアが意味深な言葉を口にすると、アリーゼが不思議そうに尋ねた。
「使った? あの本? アストレア様……何の事ですか?」
「あぁ。あなた達は知らないわよね。実はね、昨日リューがバニーに強くなる為の方法を相談して『すごくエッチな本』を借りてきたのよ。実はそれ、名前はアレだけどもれっきとした神器でね? 読めば魂が解放されて性格が変わる代わりに、悟りを開いて魔力を筆頭にステイタスが伸びやすくなるらしいわ」
その話に、その場にいた一同は驚愕した。
「えっ? じゃあ、昨日の本は本当に?」
アリーゼがびっくりして声を上げ、ライラも目を丸くする。
「マジだったんだな、あの話……」
「……性格が変わるのですか?」
輝夜の問いに、アストレアは小さく頷いた。
「えぇ。よく分からないけども、魂が解放されて、男ならムッツリスケベに、女ならセクシーギャルになるらしいわ」
アストレアの話を聞いて、それはそれで意味が分からない一同。
「セクシーギャルは……性格なのか?」
ライラが困惑し、輝夜が鋭い視線を向ける。
「読むだけで性格が変わる……それは呪いの本なのでは?」
「いいえ。私も昨日バニーの言葉を確認したし、実際に本から漂う神気も確認したわ。間違いなく、あれは神器よ」
アストレアの断言に、ファミリアの面々はただただ呆然とするしかなかった。
◇ ◇ ◇
そんな皆の様子をよそに、リューは出発の準備を整えている。
「それで⋯リオン、今日の見回りはどこにいく予定なの?」
アリーゼが尋ねると、リューは明るく答えた。
「はい! まずはバニーのところに昨日お借りした本を返しにいって、あとは賢者としての詳しい話を聞いてみて、それから広場を中心に見ていくつもりです」
それを聞いて、アリーゼは心配そうに「バニーのところに行くなら、自分も一緒に行っていいか」と伝えた。
「勿論です!」
リューは躊躇うことなく即答する。
輝夜とライラも、リューの変化が気になったらしく同行する事にし、アストレアもロキに少し話があるからと、一緒に向かう事になった。
◇ ◇ ◇
ロキ・ファミリアのホームに到着し、門番にバニーの元へ案内してもらう一同。
バニーはまた訓練場で、胡座をかきながら一人で考え事をしているみたいだった。
そして、皆が来ている事に気付いて顔を上げる。
「あっ、皆おはよう!」
挨拶をした後、すぐにリューの変化に気付いて目を輝かせた。
「リューもおはよう! その様子を見ると、本は使ったみたいだね」
「はい! 何だか嘘のように身体が軽いです! あっ、なので今日は昨日お借りした本を返しに来たのと、バニーの世界での『賢者』という職業について、詳しく伺いに来ました」
「おっ? 勉強熱心だね〜。勿論だよ。お姉さんが詳しく教えてあげちゃうよ〜」
和やかにやり取りをする二人。
それを見ていたアリーゼが、たまらず会話に割り込んだ。
「ちょ、ちょっとバニーいいかな?」
「えっ、なに? どうしたのアリーゼ?」
アリーゼはバニーの腕を掴み、リュー達から少し離れた場所へと引きずって移動した。
「バニー。昨日はリューがお世話になったみたいね。凄い本まで使わせてもらったみたいで有り難う」
まずはそう感謝を伝えると、バニーは満更ではない様子で胸を張った。
「いや〜それほどでも」
アリーゼは少し声を潜め、真剣な顔で尋ねた。
「……それなんだけどもね? あれって、リューの性格だけ元に戻す事は出来ないのかな?」
「えっ? どういう事?」
バニーが不思議そうに首を傾げた。
高評価も増えてきたけども、低評価も増えてくる〜
これで一喜一憂しているのはよくないと思うんだけども、こういうのを書き始めたばかりだからか、どうしても気になっちゃうんですよね…