ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ 作:ポップ
前回、ようやくロキ達と会えたバニーと幼女アイズ。
だが、安心した二人とは裏腹に、当のロキやフィン達は未だに混乱が続いている。
挙句、目の前の幼女アイズはいいとしても、このバニーガールの女性もロキ・ファミリアの一員だというのだ。
確かにロキは、目の前のバニーガールが自分の眷属であると分かる。さっきから何一つ嘘をついていないという事も分かるのだが、それがどういう事か全く分からない。
しかし、そこでオラリオ最高峰の魔導士であるリヴェリアは、ある推測に辿り着いた。
「アイズ……一つ尋ねたいのだが、お前が認識している私達のレベルは幾つなのだ?」
そう尋ねるリヴェリアに対して、幼女アイズは首を傾げた。
「リヴェリア達はレベル5じゃないの?」
その答えに、リヴェリアは確信する。
「やはり……」
「リヴェリア、何か分かったのかい?」
そう問うフィンに対して、リヴェリアは慎重に言葉を選びながら答えた。
「……あぁ。私も『恐らく』という推測になるが、多分これであっていると思う」
その言葉を、フィン達は勿論、ジュースを両手でチビチビと飲んでいる幼女アイズや、他のロキ・ファミリアの面々も固唾を呑んで聞いている。
「恐らくだが……この小さいアイズとバニーという女性は、過去の時代からやってきたのだと思う……」
「過去からやってきたやって!?」
ロキを筆頭に、リヴェリアの言葉を聞いた一同が驚愕する。
「しかしリヴェリア、ワシらはこのおなごの事など見た事ないぞ」
ガレスの尤もな疑問を聞いて、リヴェリアは頷いた。
「あぁ……だから過去は過去でも、我々が生きてきた過去と全く同じではない、平行世界と呼ばれるところの過去なのだろう……。今、この幼いアイズに私達のレベルを聞いてみたら『5』だと言っていた。そして、私達のレベルが5でアイズがこれぐらい幼い事から推測すると、恐らくオラリオが暗黒期であった頃だと思うが……アイズは今幾つなのだ?」
「九歳だよ……」
大人達の真剣な話を聞いていたアイズも、幼いながらに自分が何となく未来の世界にやってきてしまったかもしれないと、うっすらと理解し始めていた。
その答えに、リヴェリアも深く頷く。
「やはり……」
「ちょっ、ちょい待ちぃ!」
ロキが慌てて割って入る。
ふと見ると、当のバニーという女はすっかり酔いが回ったのか、いつの間にかテーブルに突っ伏して「すぅ、すぅ……」と気持ちよさそうに寝息を立てている。
「という事はなんや? この、酒を飲んで寝てもうてる姉ちゃんと小さいアイズたんは、時間跳躍したっちゅう事かいな!」
「たん……?」
何故自分の名前に「たん」を付けているのか分からないアイズが不思議そうに首を傾げる。
ロキの叫びとも言える言葉に、リヴェリアが答えた。
「アイズが九歳で我々がレベル5であったという事は、私も未だ正常に理解出来ていないが、多分そういう事なのだろう」
ロキもリヴェリアの言う事は分かる。
だが、時間移動というものはそう簡単ではなく、神の御技といっても過言ではない領域なのだ。
例えロキが、今抑えている神の力(アルカナム)をフルに使ったとしても、時の神でもない自分にはそんな事は勿論出来ないし、実際にそれが出来る神といっても『時を司る』一部の上位神以外には不可能だろう。
「なぁ、小さいアイズたん……アイズたんは、どうやってここに来たんや?」
ロキが優しく語りかけてくるが、たちまち幼女アイズは凹んだ顔になってしまった。
「……私のせいなの」
ぽつりと囁き始める。
そんな幼いアイズに、リヴェリアが尋ねた。
「……どういう事なのだ?」
「……バニーがね、昨日ファミリアのホームで『大魔王に一発ぶちかましてくるわ!』って言ってたんだ……皆もそれを聞いてたんだけど、私はそれを聞いて『私も大魔王と戦ってみたい』って思って……それで、さっきバニーが自分で作った魔法陣を光らせようとした時に、私も勝手にその中に入っちゃって……それで、後から聞いたらその魔法陣は一人用で、あとは私がいきなり入ってきたから、大魔王のいる世界に行こうと思っていたら、なんだかいつもと様子の違うオラリオに来ちゃったって、バニーがさっきそういってたから……だから私が悪いの……」
悲し気に俯くアイズ。
しかし、それを聞いた一同は、またまた分からない事が判明して混乱する。
まず「大魔王」というのが分からない。なんせオラリオにそれなりに長くいるフィン達や神であるロキでさえも、そんな存在は聞いた事がないのだから。
「自分で作った魔法陣で転移……いや、状況から察するに異世界転移を行使した……?」
驚愕しているリヴェリア。別の席で話を聞いていたレフィーヤも「……ありえません」と目を見開いている。
「あ〜、ちゅう事はなんや、異世界転移とかいうとんでも話が聞こえてもうてんけども、つまりアイズたんがやってしもうた……って事でええんかいな?」
ロキの言葉に、幼女アイズは小さく頷いた。
「うん……」
「なるほどな……となると、その魔法陣にいきなり割り込まれて、思ってたとことちゃうとこに来てもうたんについては、このバニーっちゅう姉ちゃんも怒ってたんちゃうんか?」
優しく聞いてくるロキ。しかし、幼女アイズは首を振った。
「う〜うん……バニーは『やっちゃったのは仕方ないよ。ドンマイ!』って励ましてくれた。バニーは優しいから……」
その言葉に、皆も感心する。
「ほぅ〜、そのタイミングでそういう気遣いが出来るとは、中々に剛気なおなごじゃのう!」
ガレスが愉快そうに笑っている。
「ほんまや! なんやベートを一蹴してもうて、いきなりこっちに来よるから警戒してもうたんやけども、ええ子やないか!」
知らないうちに増えていた眷属ではあるが、それでもそういう懐の深い人物が自分の眷属である事に、ロキは尚のこと嬉しそうにしている。
そして、そんな喜ぶ声が上がったあたりで、眠っていたバニーがふと目を覚ました。
「んあ?」
バニーが顔を上げると、なんだか分からないが、知らない人達がこっちを見ているではないか。
しかし、そんな事で動揺するバニーではない。
だが、前を向いてみれば……。
「……あれ?」
なんと、いつの間にか大きくなっていたアイズがこっちを見ているではないか。
そして、右手で目をゴシゴシしてみると、隣には変わらず幼女なアイズが座っているのである。
「あ〜……アイズちゃん、ごめん。お姉さん、ちょっと飲み過ぎちゃったみたいだわ……お財布預けるからさ、後でお会計だけお願い出来るかな?」
これまでの話は全く聞こえていなかったようであるバニー。
フィンは苦笑して首を振る。
「いや、それには及ばないよ。今日はアイズと一緒にいてくれたみたいだからね、ここはファミリアで持たせてもらうさ」
その言葉に、バニーはパァッと顔を輝かせて喜んだ。
「お〜さっすがフィン、ゴチになるわ〜」
まさかのロキ・ファミリア団長であるフィンに対しての返答に、本当に以前からそういうやり取りをしていたであろう事が分かるフランクな様子に、流石のティオネもこのタイミングで声を荒げたりはしなかった。
そしてバニーは、目の前にあったジョッキをまた飲み始める。
「まだ飲むんかいな!?」
ロキは呆れ半分に笑っている。
◇ ◇ ◇
そして、笑顔でこちらを見て手を振っているアマゾネスの女性に呼ばれた幼女アイズが、ジュースを持ってそちらの席に移動した。
「えっと、アイズ……なんだよね?」
ティオナにそう言われるも、見知らぬ年上の女性に声をかけられて少し戸惑うアイズ。
しかも相手は、どうやら未来のロキ・ファミリアの人であるように思われ、自分がいた世界のフィン達と同じくらい強そうな女性だ。
幼女アイズはこくりと頷いた。
「うん……」
「私はティオナだよ! こっちが双子の姉のティオネ! こっちはエルフの魔導士でレフィーヤ!」
「ティオナさん、ティオネさん、レフィーヤさん……」
丁寧に答えていく幼女アイズだったが、ティオナは明るく笑って手を振った。
「『さん』なんていらないって! 呼び捨てでいいよ! ティオネもレフィーヤもいいよね?」
「えぇ、勿論よ。宜しくね、小さいアイズ」
「わっ、わっ、小さいアイズさん……もっ、勿論です! 私も是非呼び捨てにして下さい!」
そう言われ、幼女アイズも少し安心して「うん」と答える。
そして、斜め前に座っている、自分にとても似ている女性を見た。
「私……なの?」
この世界のアイズも、小さく頷く。
「うん……今は十六歳の私だよ。こんばんは、小さい頃の私」
皆の話を聞いていて、不思議ではあるが、どうやらこの世界のアイズも状況が飲み込めて来たようである。
「大きくなった私……強そう……」
目を輝かせている幼い自分に、この世界のアイズも嬉しくなって「うん……頑張って、少しは強くなれたよ」と答えてくれる。
「あっ、アイズさんは、小さいアイズさんのレベルは、今お幾つなんですか!?」
アイズ大好きなレフィーヤが食い気味に聞いてくる。
それに対して、幼女アイズは静かに答えた。
「今はレベル3だよ」
「こっ、こんなに小さいのに、今の私と同じ……」
レフィーヤは、尊敬するやら、自分の不甲斐なさを嘆くやらで落ち込み始めている。
そしてティオナが、ふと思い出したように身を乗り出した。
「あっ! そういえばさ、さっきベートを軽くあしらっちゃった、小さいアイズと一緒に来たっていうバニーガールの人は、レベル幾つなの?」
「ティオナ、あんた、そんないきなり……」
あんまり詮索するのはよくないと咎めようとしたティオネだが、そういえばあのバニーガールの女性もロキ・ファミリアだと言っていたのだし、という事は本人がいなくともレベルを聞くくらいならいいかと思い、言葉を止めた。
自分も気になっていたので、そのまま幼女アイズの返答を待つ。
「バニーはレベル2だよ。ちょっと前にレベルが上がって喜んでた」
その答えに、この世界のアイズ・ティオナ・ティオネ・レフィーヤがビックリする。
「レベル2!? それでベートをあんなに軽くあしらえたの!?」
そして、ティオナの大きい声は、フィン達の席にも聞こえていた。
「……バニー、あんたレベル2っちゅうんはほんまかいな?」
ロキの問いに、ジョッキを置いていたバニーは呆れたような顔になり、肩をすくめた。
「えぇっ? ロキ、またぁ? 先週くらいにレベルアップの話をしたっていうのに、ちょっと忘れやすくなってるんじゃないの?」
長く生き過ぎて物忘れが激しくなったのではないかと訝しむバニー。
ロキはロキで、やはり目の前のバニーが嘘をついていない事が分かると、またまた疑問が湧いてくる。
なんせ、ファミリアの幹部でレベル5でもあるベートをあんなに簡単にあしらっていたのだ。それを行った者が、まさかレベル2だなんて思いもよらず、絶対にレベル5以上だと思っていたのだから。
そして、そんなバニーが気になったのか、この世界のアイズ達がこちらへやってきた。
「あの……さっきのはどうやったの?」
問いかけられたバニーは顔を上げて呟く。
「……駄目だわ。まぁ〜だ知らない人がアイズちゃんに見えちゃってる。本当に飲み過ぎちゃったのかも」
そう言って目を擦るが、とにかく目の前の大きいアイズのように思える女性(バニーは飲み過ぎて分かっていないが、この世界のアイズ)は譲らずこっちを見ていたので、バニーはさも大した事でもないように答えてくれる事にした。
「えぇっと、さっきの事ってなんの事?」
「さっき、ベートさんを簡単に眠らせてたから、どうやったのか気になって」
「あ〜、もしかしてさっきの狼人(ウェアウルフ)君の事?」
アイズがうなずく。
そして、一緒にやってきたティオナ達も興味津々に聞いている。
「う〜ん、そう言ってもそんなに難しい事じゃないよ? あのベート君? が高レベルなのは分かってたけどもさ、なんか見た感じお酒もそれなりに飲んでたみたいだし。勿論、耐異常のアビリティは持っていたかもだけど、人っていつも気を張ってる訳じゃないじゃない? だからさ、こっちに来て何かしてこようとしてたから、なんとなくタイミングをみて、あっちの意表をつく感じで眠りの魔法を使っただけかなぁ」
そう答えるバニーの返答に、フィンを始めアイズやティオナ達も驚く。
確かにバニーの言わんとしている事は分からなくもないが、レベル2がレベル5相手にそれを実行して成功させるなど、それはあくまで机上の空論であり、そんなバカなという気持ちがとても大きいのであった。
バニーは触れていませんでしたが、バニーの魔力が通常のレベル2よりも遥かに高いという理由もあります。
それでは、そろそろ出かけないといけないので、一旦ここまでとさせて頂きます!