ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第四十五話:そして、新たにファンを増やし始める遊び人

前回、バニーの両手から放たれた圧倒的な炎の濁流がベートの身体を完全に飲み込んだ。

 

『ベートっ!?』

 

漂ってくるバニーの両手から放たれた魔法の熱気にあてられて、ようやくフィン達も現実を飲み込めてきた。信じ難い事だが、つまりあの『変な格好』をしながらも『カイザーフェニックス』という恐ろしい魔法を見せてくれた、本人曰く『遊び人』という、どうみても只者では無さそうなレベル2の女性は、喧嘩も半端なく強かったのである。

 

あれは、どうみてもレベル2の動きじゃない。そして、今フィンの頭の中では、ベートを心配する心とは別に『自分なら勝てるのか……』という思いが漂っていた。

 

「えぇっ!? 嘘…ベートに勝っちゃった……」

 

ティオナは信じられないといった顔で、その光景を見ている。

アイズ、ティオネ、レフィーヤの三人はとにかく驚きでいっぱいで、目を少し大きく見開いたまま言葉を発する事すらできない。レベル2だけども3くらいの力はあるかもしれないと思っていたら、まさかのレベル5を圧倒してしまったのだから、皆がそうなるのも仕方がないだろう。

 

「バニー! カッコいいっ!」

 

ちなみに幼女アイズは、目をキラキラと輝かせてバニーの活躍を見ていた。幼いアイズにとって、バニーガールという職業の女性は、強さの象徴のように思えてきているのであった。

 

「……こいつは凄まじいのぅ。ベートの奴、生きとるんか?」

 

ガレスの言葉にリヴェリアもハッとし、急いでベートに駆け寄ろうとする。だが、倒れたベートへゆっくりと歩いて向かっていたバニーに、片手で制されてしまった。リヴェリアが『何かあるのか?』と怪訝に思いながら足を止めると、バニーはそのままベートの傍らまでやってきた。

 

「はぁっ、はぁっ……くそがっ!」

 

炎に焼かれはしたが、そこは流石にレベル5の冒険者。その高い耐久力のおかげで、かなりの火傷や損傷を負いつつも、息を荒げながらまだまだ戦意は喪失していないという気持ちを露わにするベート。

 

「どうする?大人しく負けを認める?」

 

近付いてきたバニーは、ベートにそう告げるが…

 

「まだだっ! まだ終わっちゃいねぇっ!」

 

しかし、勝負はまだついていないのだと、吠えるベート。そんなベートに、バニーは何も理解出来ていない馬鹿に向けるような目を向けた。

 

「はぁぁ…やっぱり、何も分かってないわねぇ」

 

呆れたように言い放たれ、ベートは激高する。

 

「なんだと、ゴラァ!!! まだ勝負はついちゃいねぇぞ!!!」

 

その言葉に、呆れる顔をするバニー。

 

「……分かってないようだから教えてあげるけどね、さっき私が使った魔法だけど、本気で魔力を高めて撃ってたら、あんた死んでたのよ?」

 

バニーにそう言われて一瞬驚くも、それをそのまますんなりと信じられるベートではない。全身にダメージを負い、その場に這いつくばりながらも、ベートは顔を上げて吠える。

 

「でまかせも大概にしろ! テメェの魔法が雑魚には出せねぇ威力だっていうのは分かった! でもな、あれぐらいじゃ俺は殺せねぇんだよ!」

 

はぁぁっとため息をつきながらも、バニーは何も分かっていないベートに現実を教えてやる為、片手を頭上に掲げた。心の中で『魔力覚醒』の発動を意識しつつ、淡々とした声を上げる。

 

「カイザーフェニックス」

 

その瞬間、信じられないほどの火力を身に纏った炎の鳥が上空に出現した。

訓練場に、カイザーフェニックスの甲高い鳴き声が響き渡る。たちまち周囲の温度が異常なまでに跳ね上がり、場が緊張に包まれる。そして、焦ったフィン、ガレス、リヴェリアの三人は、本気で介入を考え始めた。

 

地に這いつくばったまま、ベートは上空に顕現した炎の鳥を見上げていた。先程自分を飲み込んだ魔法すら容易に超えるほどの、圧倒的な魔力の塊。肌を焼くような熱気と、本能が警鐘を鳴らす死のプレッシャーに、ベートは息を呑み、額から冷汗を流すことしかできない。

 

そしてバニーは、無情な表情でベートを見下ろした。

 

「今、アンタが負けを認めないっていうのなら、そのままこれをプレゼントしてあげるわ」

 

そんな事をされたら間違いなく死んでしまう。目の前に出てきた炎の鳥を、今の状態で受けたら100%命はないと、ベートは嫌でも理解させられていた。

 

しばし、場が無言の空気に包まれて数秒。

 

だが、そんなバニーはふとフィンの方向を向いて少し笑った。

 

「でもね……そんな事をしちゃったら、あそこでこっちを見守ってるフィンだって、いつもニコニコしてるけども、流石に怒っちゃうかもしれないじゃない?」

 

それが聞こえてきたフィンは苦笑しながらも(流石に『怒っちゃうどころじゃ済ませられないかな』と思っているが)今この場で何か言って水を差すつもりはないので、引き続き無言で様子を見守っている。そしてバニーは言葉を続けた。

 

「だからね、こんな模擬戦でアンタを殺したって、私には1ヴァリスの得にもなんないのよ。どっちかっていうとアンタには、生きてさっき賭けさせてもらったソーマを2〜3本奢ってもらった方が、よっぽど嬉しいってもんだわ」

 

少し笑いながら告げるバニー。しかし、今度は少し厳しめの表情になって言葉を続けた。

 

「……でもね? アンタがここで負けを認めないっていうのなら、私はそれを諦めて、アンタにこれをぶつけるわ。アンタの暴言にも、最初は大人になりきれてない子供って感じで暖かく見守ってやろうと思ってたけど、私もちょっとムカついちゃったからね。それでフィンに追い出されても、まぁそれも仕方ないでしょ。そうして数年後には『そういや昔、ベート・ローガっていうアホな先輩がいたみたいだぜ』な感じで、アンタもファミリアで噂になってるんじゃないの?」

 

クスクスと笑うバニー。その突き放すような言葉と圧力を前に、ベートは何も言えない。

 

「……で? もう一度聞くわ。負けを認める? 認めない?」

 

その言葉の後、頭上にそびえ立つカイザーフェニックスの火力が更に高まったような気がして、周りで見物をしている皆も息を呑み、続くベートの言葉を、緊張の表情を浮かべながら見ていた。

 

「……負けだ」

 

屈辱に塗れながらも、ベートは小さく呟いた。

だが、バニーは意地悪く耳に手を当てる。

 

「えっ? なに? 聞こえな〜い」

 

瀕死にも近いといえるこの状況なので、今のベートの声は確かに小さく、フィン達には聞こえていない。だが、この場での返答はほぼ一択であり、そんな中でのバニーの容赦ない煽りに、フィンは思わず笑みを浮かべていた。

 

「俺の負けだよっ! このクソ女!」

 

ヤケクソ気味に負けを認めるベート。だが、バニーは意地悪く笑いながら更に煽る。

 

「さんざん調子に乗って見下してた相手に自分から喧嘩を売っておいて、それで負けたのにクソ女ぁ? その口の利き方も、今後は改めてもらわないとねぇ? 雑〜魚・ロ〜ガ君」

 

「っ!? てんめぇっ!」

 

再び声を荒げるベート。だが、バニーは意にも介さない。

 

「えっ? だって、アンタ一撃も私に当ててないじゃない。あっ、勿論盾で防御したのはノーカンね? だから、そんな身の程知らずなガキンチョには、雑〜魚・ロ〜ガで十分でしょ」

 

と、ベートの怒りなどまるで気にした様子もない。

 

そして、そんな『ベートを軽くのしてしまったバニー』を見て、同じく魔法を扱う者でもあるレフィーヤは、アイズに対してとはまた違った憧憬の眼差しを向け始めるのであった。

 

 

 

 

どうやら勝敗もついたようで、バニーとベートの下へ皆がやってきた。一番に駆け寄った幼女アイズが、バニーに飛びついてくる。

 

「バニー! カッコよかった! 鳥さんの魔法もカッコよかったけど、あの両手で火がぶぁ〜ってなって、その後に出てきた火の魔法もすっごくカッコよかったよ!」

 

幼女からの純粋な称賛の声を浴びて、思わずえっへんと胸を張りそうになるバニー。しかし、この場にはフィン達をはじめ他にも人がいる事に気付き、少し恥ずかしくなって頬を掻いた。

 

「いやいやいや、大したことじゃないよ! でもまぁ、私もまぁまぁ強いからね。やる時はやるのよ、やる時は」

 

照れ隠しのように答えるバニー。他の皆は(まぁまぁ?)と思う気持ちを表に出さないながらも、凄かったのは事実なので口々に称賛している。

 

一方、リヴェリアはベートに近付いて声をかけた。

 

「ベート、大丈夫か?」

 

そう言って倒れた彼を助け起こそうとする。

 

「あぁ……」

 

いつもなら悪態をついてはねのけるベートだが、流石にここまでボロボロになってしまった今では、そんな気力も出てこない。

 

「少し待っていろ。今ポーションを取ってくる」

 

そう言われて無言になるベート。礼の一つも口にしないのはいつも通りである。そこへ、バニーが声をかけた。

 

「あっ、リヴェリア、ちょっと待って」

 

ポーションを取りに行こうとしていたリヴェリアは「どうしたんだ?」と訝しむ。まさか『ポーションも使わせるな』などと追い打ちをかける気ではないだろうなと、さっきまで容赦なくベートを追い詰めていたバニーを思い出して少し警戒するリヴェリア。

 

だが、バニーはそんな警戒し始めたリヴェリアに気付かず、倒れているベートへ向けて片手をかざした。

 

「まぁ、ちょっと見ててよ」

 

皆が『まだ何かするの!?』と身構えたのも束の間。

 

「ベホマ!」

 

その言葉と共に発動された魔法が、光を放ってベートの肉体を包み込み、瞬く間に火傷や傷跡を癒していく。その光景を、皆はただ呆然と見つめていた。

 

当然、治されたベート本人が一番驚いている。

 

「治った……のか?」

 

自分の身体は、立ち上がるのも億劫なほど深手を負っていた筈なのだが、ざっと見回しても傷一つなく完全に治りきっている。

 

(詠唱も無しに、このレベルの回復魔法だと……?)

 

先週ぐらいにレベル2になったばかりだと言っていた筈なのに、あの規格外の攻撃魔法といい、戦う前に使った補助魔法といい、目の前の女は本当に訳が分からない。

 

その時、ふと信じられない事に気付いたレフィーヤが、震える声で口を開いた。

 

「……あれ? バニーさん……魔法、幾つ使えるんですか?」

 

この世界の常識では、恩恵(ファルナ)によって発現する魔法は、極一部の例外を除いて原則三つまでと決まっている。

 

しかし今日のバニーは、補助魔法に攻撃魔法を複数種類、そして今の回復魔法など。しかも全て、無詠唱で使っているのだ。

 

その異常過ぎる事実に気付き、皆が一斉に驚愕の視線をバニーへと向けるのだった。




ベートさんとの格付けが、完全に付いてしまった回でした。ベートさんのファンの方は勿論、ベートの勝ちに賭けて(心の中で)下さっていた方は御免なさい。

あと、これを書きながら思っていて、まだ解決方法が思い付いていないのですが、出したカイザーフェニックスをどうしようかな〜と思っていたり…

いや〜( ̄▽ ̄;)
昨日、酒場の外でカイザーフェニックスを使った時、出した魔法は戻せないと言ってしまったので、今回の回でベートをびびらす為に出したカイザーフェニックスをどうしようかな〜と思って笑

訓練場なので、どこかにぶつけたりするのはおかしい気がするしなぁ…

もし何か良さげな案がありましたら、採用させて頂いて、この回の話に適用させてもらえればと思います。

では、失礼します。
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