ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第四十六話:使える魔法は「いっぱい」です!?

前回、ベートとの模擬戦をあっさりと制し、トドメとばかりに無詠唱の回復魔法でベートを完治させてしまったバニー。

その規格外すぎる光景を前に、レフィーヤが震える声で尋ねた。

 

『……あれ? バニーさん……魔法、幾つ使えるんですか?』

 

「えっ?」

 

その問いかけに、バニーはきょとんとした顔で首を傾げた。そして、何かを思い出すように視線を上へ向けると、指を折りながら数え始める。

 

「え〜っと、メラ・メラミ・メラゾーマでしょ〜。ヒャド系にバギ系にイオ系、あとギラ系もあるね。回復はホイミ・ベホイミ・ベホマで、それからスクルトにピオリムにルカニにラリホーに……う〜ん」

 

そこで数えるのが面倒になったのか、バニーはにぱっと満面の笑みを浮かべた。

 

「いっぱい使えるよ!」

 

「「「…………」」」

 

『いっぱい』。

あまりにもアバウト過ぎるその返答に、その場にいた全員の思考が、一瞬で完全にフリーズした。

 

(み、三つどころか……数えるのを、途中で諦めました……!?)

 

問いかけた当のレフィーヤなど、目を見開いたまま完全に固まってしまっている。

ちなみにその頭上では、出しっぱなしのカイザーフェニックスが「ゴゥ……」と所在なさげに旋回を続けているのだが、それに突っ込める余裕のある者は、この場には誰もいない。

やがて、その重い沈黙を破ったのはロキだった。

 

「……バニー、あんたなぁ。使える魔法が『いっぱい』あるやて、そんなアホな話あるかいな。恩恵(ファルナ)で発現する魔法はな、ごく一部の例外はおるにしても、原則三つまでって決まっとるんやで」

 

神である主神、直々の説明。それはこの世界における、絶対の常識である。

しかし、それを聞いたバニーは『あ〜、なるほどな〜』と、一人で勝手に納得したような顔になった。

 

「そっか、そういえばこっちの世界はそうだったね。えっとね、ちょっと説明がややこしいんだけどもさ。さっきベート君に使った魔法も含めて、私が使えるほぼ全部の魔法は、恩恵(ファルナ)を貰う前から使えてたやつなのよ」

 

「「「……は?」」」

 

恩恵を貰う前から、魔法が使えていた。

その言葉に、皆の頭上へ再び疑問符が浮かぶ。下界の人間が魔法を使うには、神の恩恵を授かるか、あるいは精霊の血を引いているか。そのどちらでもない人間が魔法を使うなど、オラリオの常識では絶対にあり得ない話なのだから。

そんな中、こめかみを押さえながらフィンが一歩前に出た。

 

「……バニー、済まない。多分その説明だと、僕達は日が暮れてもここから動けなくなる。良ければ、最初から順番に聞かせてもらえないかな。実を言うと、今朝君を呼んだのも、元々はその辺りの話をゆっくり聞かせてもらう為だったんだ」

 

苦笑しながらそう切り出すフィン。それが、ベートとの騒動で、すっかり後回しになってしまっていたのである。

 

「ん、いいよ〜」

 

そしてバニーは、自らの過去をその場にいる皆に説明する。

 

(少女説明中……)

 

◇ ◇ ◇

 

一通りの説明が終わった後、訓練場には深い沈黙が降りていた。

驚きと困惑とで、誰一人として声を出せない。

そんな中、額を押さえながら最初に口を開いたのは、リヴェリアだった。

 

「……つまりだ、バニー。私も何を言っているのか分からないが、間違えていたら教えてくれ。お前は異世界の大魔王を倒した勇者一行の賢者で、世界が平和になったから遊び人になった。そして酒場で飲んでいたらいつの間にか眠っていて、目が覚めると荒野にいた。特に衣服の乱れもなかったという事で、その手の者に攫われたという訳でもない。そんな中、ゴブリンに襲われている商人を見かけたのでそれを助け、そのまま共にオラリオまで護衛として付いていく。その破廉恥な……おほんっ。妙な格好もあってイヴィルスと間違えられそうになるも、なんとか信じてもらえてオラリオに入る。そして、酒場で飲んでいるところをイヴィルスが邪魔をしてきて、それを撃破していたら、ロキやフィン、アイズがやってきたと。そこで先程と同じような説明をしてみたものの、フィンは全く信じてくれなかったが、ロキが嘘をついていないと保証してくれたと。そして、その場で恩恵が刻まれていない事も確認され、それからロキに『パトロンになって美味い酒も、遊ぶ金も、宿も用意したる。その代わり、イヴィルスとの戦闘では手伝う事』という提案をもらい、それを快諾。そこからロキ・ファミリアで寝泊まりを始めるようになり、アストレア・ファミリアに出向などもしながら出来ることを手伝った。更には、元の世界に帰る方法を自力で見つけるも、少し時代を未来に行きすぎて、しかも何故かその時代の勇者と大魔王の戦闘場面に出くわした為、全滅しそうになっていた勇者一行を逃がすのに成功。そのまま自分も時間制限で元の世界(暗黒期のオラリオ)に戻る事が出来て、その時の『大魔王から勇者を逃がした功績やら何やら』でレベル2に昇格した……。話は戻るが、だから冒険者になる前から魔法が使えたし、レベル2ながらもここまで強いのだと……。私もここまで自分で話してみて少し混乱しているのだが、何か間違えているところはあるか?」

 

一息にそこまで言い切ったリヴェリアに対して、バニーは満面の笑顔で大きく頷いた。

 

「うん! 大体そんな感じかな! というか、もう完全にそんな感じかも! やっぱりリヴェリアはあったまいい〜♪」

 

「そ、そうか……」

 

ぐっと親指まで立てて褒めてくるバニーに、リヴェリアは何とも言えない顔で頷き返した。整理した本人が一番、その内容の出鱈目さに眩暈を覚えているのだから、無理もない。

そして、皆の視線が、自然と一柱の神へと集まる。

この話の真偽を確かめられるのは、この場でただ一柱しかいないのだから。

その視線を一身に受けたロキは、唖然とした顔のまま、ポツリと呟いた。

 

「……アカン。これ、最初から最後まで、全部ほんまの話やわ……」

 

「「「えぇぇぇぇっ!?」」」

 

ティオナ、ティオネ、レフィーヤの悲鳴が綺麗にハモり、訓練場が本日何度目かの驚愕に包まれた。

 

「ほ、本当に大魔王を倒してたの!?」

 

「異世界に時間跳躍に平行世界……もう、話の規模が訳分からないわよ……」

 

「れ、レベル2どころか、冒険者という枠にすら収まってませんよぉ……」

 

そんな騒ぎの片隅で、離れた場所から話を聞いていたベートが、忌々しげに舌打ちをして顔を背けた。今このおかしな女が言っている事は、普通なら到底信じられる筈もないが、直に戦ってみて自分が負けたのと、ロキが目の前で確認しているのだから本当なのだろう。負けた相手が規格外にも程があった事への、せめてもの自己防衛である。

 

「バニーは、すごいんだよ」

 

幼いアイズが、何故か自分の事のようにえっへんと小さな胸を張り、

 

「……うん。すごい」

 

この世界のアイズも、こくりと真剣な顔で頷いていた。

 

「ふっふ〜ん、皆ももっと褒めてくれていいんだよ〜?」

 

得意げにウサ耳を揺らすバニー。

 

「……ところでバニー。話の腰を折るようで悪いんだけど」

 

「ん〜?」

 

「そろそろ、あれをどうにかしてもらえないかな」

 

「…………あっ」

 

ふと我に返って空を見上げる。

長い長い身の上話の間も、訓練場の上空では、巨大な火の鳥が悠々と旋回を続けていた。

どうやらこの遊び人、語りに夢中になるあまり、出しっぱなしの自分の魔法の事を、すっかり忘れていたようである。




感想欄で「片手でカイザフェニックス出しながらベホマしたの?」というご指摘を頂き、思わず「あっ!!!」ってなりましたわ〜

それとなく、ベホマを使う前にどうにかしてしまう形で対処してしまおうかとも思いましたが、結局鳥さんは、今は出番はないという事でお空を飛んでいる事にしました。

状況説明だけで全然進んでいませんが…
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