ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第四十八話:大魔王バーンvsロキ・ファミリアの若手幹部4人組!

第四十八話:幻影召喚、大魔王バーン!? 凍りつく第一級冒険者達

 

「私もやりたい!! ねぇバニー、私に戦わせて!!」

 

静寂を打ち破ったのは、やはりティオナだった。目を爛々と輝かせ、今にもバニーに飛びつきそうな勢いで身を乗り出す。

 

「ちょっとティオナ、抜け駆けはずるいわよ。……私だって興味あるわ」

 

「……私も、戦いたい」

 

ティオネが続き、この世界のアイズも剣の柄に手を添えながら、静かに闘志を燃やしている。

 

さらには、先程の模擬戦でボロボロにされたばかりのベートまでもが、忌々しげに舌打ちをして前に出た。

 

「チッ……俺も混ぜろ。昔のフィン達や、あのオッタルすら手も足も出なかった相手だぁ? ……上等じゃねえか。俺がぶち殺してやる」

 

彼らの反応は、第一級冒険者としては、ある意味で正常だった。

 

死の危険が無いという保証付きで、自分達よりも遥かに強い未知の強者と戦える。強き者との闘争に飢えているオラリオの冒険者達にとって、これほど魅力的な話は無い。

 

「ちょっ、待ちぃや! さっきの話聞いとったやろ!? 昔のフィンやガレス、リヴェリアにオッタルまでおって、それでも勝てんかった相手やぞ!? いくら死なん言うても、簡単に挑む相手とちゃうで!」

 

「ロキの言う通りだ! 仮にバニーの話が本当なら、深層の階層主(フロアボス)を大きく超える力がある。もう少し慎重になれ!」

 

慌ててロキとリヴェリアが止めに入る。

 

だが、そんな中で一人、フィンだけは顎に手を当てて、深く考え込んでいた。

 

「……いや。待ってくれ、二人とも。これは僕達にとって、大きなチャンスなのかもしれない」

 

「はぁ!? フィン、自分まで何言うとるんや!?」

 

驚くロキを手で制し、フィンは真剣な眼差しでバニーへと向き直る。

 

「バニー、念の為に確認させてほしい。本当に『最悪死んでしまっても、元に戻る』んだね?」

 

「うん。結界の中で死んじゃっても、最後に私が結界を解除すれば、その瞬間に全部元通り。向こうの世界でも死んじゃったり、丸焦げどころか灰になっちゃった子が何人もいたけど、ちゃんとピンピンして生き返ったわよ」

 

「灰っ!?」

 

レフィーヤの顔が引き攣るが、バニーはあっけらかんと続ける。

 

「あ、でも痛みは普通にあるからね。斬られたら痛いし、燃やされたら熱い。それと、結界を解除するまでは死んだまま転がってる事になるから、そこは覚悟しといてね」

 

「……分かった。それと、結界の外への被害は?」

 

「基本的には無いわ。中でどれだけ暴れても、外は安全。……まぁ、向こうの世界で、バーンが『真の姿』になって本気を出した時だけは、結界の外まで凄い余波が漏れちゃったんだけど……最初の姿のままなら、まず大丈夫よ」

 

「ちょお待ち。大魔王の『真の姿』てなんや。聞き捨てならん単語が、しれっと混ざっとった気がするんやけど……」

 

「あー……説明はちょっと面倒なんだけどもさ」

 

バニーは、思い出すように指を一本立てた。

 

「大魔王バーンは、体を二つに分けてるのよ。片方は老人の姿で、自分の魔力と意識はこっちに置いてるの。で、もう片方の若い本当の肉体の方は、時間を止めた上で、ガス生命体?っていう部下に乗り移らせて守らせてるんだって。そうやって、永遠に近い命を実現してるんだって言ってたわ」

 

「「「…………」」」

 

その説明に、皆が言葉を失った。

 

肉体を二つに分け、片方を時を止めて温存し、不老の身を得る。神の奇跡でも、精霊の御業でもない。一人の存在が、己の理屈だけでそれを成し遂げているというのだ。

 

「……下界のもんが、神でもないのに、永遠に近い命を手に入れとるっちゅうんか……」

 

ロキが、呆然と呟いた。神の眷属(ファミリア)に恩恵を与える事は出来ても、神々自身が下界の者の寿命をどうこう出来るわけではない。それを、この世界には存在しない『魔族』とやらが、自らの力で成し遂げているという。神であるロキにとって、その事実は驚くべき事だった。

 

「で、その『若い本体』の方が『真の姿』ってわけ。それを呼び出した上で、向こうが本気を出すと、結界の外まで余波が漏れちゃうのよね。だから今日は、最初の老人の姿だけにしとくわ」

 

そのあまりに常識外れな話に、フィンもまた微かに眉をひそめる。だが、彼はすぐに思考を切り替え、集まった団員達をぐるりと見渡した。

 

「……皆、聞いてくれ。僕達はいつか、かの『黒竜』を討たなければならない。三大冒険者依頼(クエスト)――それはオラリオの、ひいては世界の悲願だ」

 

団長の静かな、しかし力のこもった言葉に、その場の空気が引き締まる。

 

「だけど、今の僕達は現オラリオの頂点近くにまできてしまっているのもあって、僕達を遥かに上回る『絶対的な強者』と相対する機会が、あまりにも少なくなっている。……死の危険もなく、それでいて今まで見た事のない、次元の違う存在と戦える。これほどの訓練は、他のどこを探しても無いよ」

 

冒険者としての渇望と、団長としての冷徹な判断。その両方を見て取ったリヴェリアは、深いため息と共に引き下がった。

 

「……はぁ。お前がそこまで言うのなら、もう止めん。だが、無茶だと判断すれば私が即座に中断を要請するからな」

 

そう言って、リヴェリアはバニーへと、念を押すように鋭い視線を送る。最悪の場合は、こちらに介入させてもらうぞ――と。

 

その意図を正確に汲み取ったバニーは、任せておけとばかりに、ぽんと自分の胸を叩いて頷いてみせた。勿論、いざという時はちゃんと止めるから安心して、と。

 

「ん、それじゃ、最初は希望者の四人ね。はい、みんな下がって下がって〜」

 

◇ ◇ ◇

 

見学組が訓練場の端まで離れたのを確認すると、バニーは両手を広げ、すうっと息を吸い込んだ。

 

その足元に、黄金色の魔法陣が浮かび上がる。

 

「――紡がれるは過去の残滓、我が魂に刻まれし激闘の記憶。星の導きのもと、次元を超え、時を超え、今此処に強敵(とも)の幻影を現出させん――」

 

あれだけの魔法を無詠唱で連発していた女が、初めて見せる詠唱。話には聞いていたものの、これから一体どんな魔法が放たれるのか――レフィーヤは、ごくりと息を呑んで、その光景に見入っていた。

 

「……蘇れ、我が記憶の宿敵よ――【追憶の幻闘場(メモリア・コロシアム)】!」

 

詠唱の完成と共に、訓練場の中心に半透明のドーム状の結界――巨大な闘技場が展開された。

 

その中へ、ティオナ、ティオネ、ベート、そしてアイズの四人が足を踏み入れる。

 

「それじゃ、いくよ。幻影召喚――大魔王バーン!」

 

バニーの声と共に、結界の中心へ莫大な魔力が集束していく。空間が歪み、光が収束したその場所に――一人の人物が、姿を現した。

 

それは、バニーが語った通りの姿だった。

 

豪奢なローブに身を包み、頭には二本の角。長く尖った耳と、豊かな白髭。背筋のすっと伸びた長身のその容姿は、確かに気品のあるエルフの翁を思わせる。

 

杖を手に、目を閉じて静かに佇むその姿だけを見れば、およそ『大魔王』という恐ろしい響きとは結びつかない。

 

「……なんだ。本当に、ただのおじいちゃんじゃない」

 

拍子抜けしたように、ティオネが呟いた。

 

「ハッ。こんな辛気くせえジジイが、あのオッタルを圧倒しただぁ? 笑わせ――」

 

ベートが鼻で笑い、無造作に一歩を踏み出そうとした。

 

――その瞬間。

 

老人が、ゆっくりと目を開いた。

 

「「「「ッ!?!?」」」」

 

空気が、凍りついた。

 

たった今、目を開けただけ。それだけだというのに、その場の温度が一気に下がったかのような錯覚に陥る。

 

深く、底が見えない。そこにただ立っているだけで、見る者の心を押し潰してしまいそうな、圧倒的な存在感だった。

 

「あ……」

 

ティオナの口から、掠れた声が漏れる。

 

踏み出しかけていたベートは、足を浮かせた中途半端な体勢のまま、ピタリと静止していた。冷汗が顎を伝い、ぼたりと地面に落ちる。

 

幾多の死線をくぐり抜けてきた第一級冒険者達の本能が、目の前の相手を自分達よりも遥かに上だと告げ、全身に最大限の警戒を強いていた。

 

迂闊に動けば、相手の間合いに踏み込んでしまう。そんな確信めいた緊張が、四人の足を地面に縫い止めていた。

 

「なんや、こいつ……。下界のもんが出してええ魔力と違うやろ……」

 

結界の外で見学していたロキでさえ、神威ならぬその『魔』の威に、声を震わせていた。フィンの親指は先程から、ちぎれそうなほどに疼き続けている。

 

「……おじいちゃん」

 

そんな極限の空気の中、結界の外で見ていた幼いアイズが、ぽつりと呟いた。

 

その小さな声には、いつもの無邪気さは無い。あの幻闘場で、仮初とはいえ目の前で仲間が斬り伏せられ、焼かれていく様を見せられた幼女の瞳には、訓練だったとはいえ複雑な色が浮かんでいた。

 

「……アイズたん」

 

ロキがそっとその小さな肩へ手を置くと、アイズはきゅっと唇を結んだまま、結界の中の大魔王から目を逸らさずにいた。

 

「……ふむ」

 

大魔王は、まず結界の外のバニーへと視線を向け、僅かに目を細めた。

 

「またそなたが余を呼んだか、賢者よ。……して、今度の相手は、そこの四人か」

 

その声は、決して大きくはない。だが、威厳に満ちたその一言だけで、空間そのものがびりびりと震えたように錯覚する。

 

バーンはゆっくりと四人を見渡すと、その口角を僅かに吊り上げた。

 

「余の覇気を浴びてなお、心を折らずに立っておるか。……あぁ、そういえばそこの狼人の若者よ。先程、余を『辛気くせえジジイ』と申しておったな?」

 

「……っ、だったら、どうした……!」

 

全身を縛る重圧の中、ベートが牙を剥き出しにして声を絞り出す。その負け犬根性ならぬ負けん気だけは、誰にも負けない狼であった。

 

その様子に、大魔王は心底愉快そうに、ふっと笑みを深める。

 

「いいであろう、これも何かの縁だ。仮初の存在である今の余の退屈凌ぎに、魔界の神とうたわれた力を其方達に見せてやろう。――さぁ、遠慮なくかかってくるがよい」

 

両手が広げられ、底知れない魔力が解き放たれる。

 

絶対的な強者からの、あまりにも傲岸な宣告。

 

「……あはは。ねえ、ティオネ。あたし達、とんでもないのに喧嘩売っちゃったね」

 

「ええ……。でも、今さら引けないでしょ」

 

恐怖の向こう側で、アマゾネスの姉妹が獰猛な笑みを取り戻す。

 

アイズの瞳には静かな闘志が灯り、ベートもまた、その身に力を込めた。

 

「「「「――ッ!!」」」」

 

四つの影が、同時に地を蹴った。

 

口火を切ったのは、やはりベートだった。理屈や駆け引きよりも、怒りに任せて真っ先に飛び込む。それが彼の流儀だ。

 

「『辛気くせえジジイ』で上等だぁ! その首、喰いちぎってやらぁッ!」

 

フロスヴィルトの蹴撃が、唸りを上げてバーンの脳天へと振り下ろされる。Lv.5の、岩盤すら粉砕するその一撃は――。

 

「フン」

 

杖を持っていない左手の、ただの手の甲一つで、こともなげに受け止められた。

 

「な――」

 

「軽いな」

 

ぞくり、とベートの背筋が凍る。それは反撃の予備動作ですらない。本当に、ただ『止めた』だけ。

 

「させない!」

 

その隙へ、横合いから疾風が突き込まれる。アイズだ。金色の髪をなびかせ、高速の刺突がバーンの首筋を狙う。だが、

 

「ふむ。良い剣だ。速度もまずまず」

 

バーンは最小限の体捌きだけで、その刃を紙一重で見切ってみせた。あろうことか、第一級冒険者の必殺の連撃を、まるで子供の剣術でも眺めるかのような涼しい顔でいなしていく。

 

「だったら……数で押し切るまでよ!」

 

「大物喰らいは、あたしの十八番ーーっ!!」

 

姉妹のアマゾネスが左右から同時に踏み込む。ティオネの双刃が、ティオナの大双刃(ウルガヌス)が、退路を塞ぐようにバーンへと殺到した。

 

前後左右、四方からの完璧な連携。Lv.5が四人。本来であれば、深層の階層主ですら瞬く間に倒す事も出来る暴力の包囲網。

 

包囲の中心で、大魔王が暗黒闘気を放出する。

 

その瞬間、左右から斬りかかっていたティオナとティオネが弾かれて吹き飛ばされる。バーンの全身から放たれる闘気の奔流。それだけで、第一級冒険者二人がまとめて押し返されたのだ。

 

「きゃっ……!?」

 

「な、何今の……!」

 

地を蹴って体勢を立て直す姉妹に、大魔王は笑みを浮かべた。

 

「ふむ。これはどう受けるかな?」

 

すっと、バーンの指先が持ち上がる。その先に灯ったのは――小さな火の玉が一つ。

 

それが、ティオナへ向かって放たれた。

 

「ティオナ!」

 

咄嗟に前へ出たティオネが、双刃でその火球を弾こうとする。だが、刃が火の玉に触れた途端――。

 

「――っ、あぁああッ!?」

 

弾けた炎がティオネの全身を包み込み、その口から悲鳴が迸った。

 

「ティオネっ!!」

 

ティオナが、姉の名を叫ぶ。

 

「【メラ】、と言ってな。余の世界では、駆け出しの魔法使いが使う初歩の炎よ」

 

「これが、初歩……っ!?」

 

バーンの言葉に、結界の外のレフィーヤが息を呑む。バーンが放った小さな火球。だがそこに込められた魔力の密度は、オラリオの魔導士が長い詠唱を経て放つ大魔法すら凌ぎかねない。それを、無詠唱で、しかも『初歩』と言ってのける。魔法の常識が、根底から覆されていく。――これが大魔王。

 

「では、次はもう少し本気を出すとしよう」

 

バーンがその言葉を呟いた後、先程とは比較にならない魔力が渦を巻いた。それは見る間に巨大な鳥の形を取り、結界内の空気を灼きながら羽ばたく。

 

炎の不死鳥――カイザーフェニックス。

 

それを見た四人は動揺する。バニーが使っていた、あの炎の鳥の魔法。しかもそこから感じられる力は、バニーが使っていたそれよりも更に強力に思える。これこそ、本家本元のカイザーフェニックス。それが今、本物の使い手の手によって解き放たれようとしている。

 

「受けてみよ」

 

絶望の不死鳥が、四人に向けて放たれた。

 

◇ ◇ ◇

 

前方から向かってくる、必殺の火炎魔法。直撃すれば、これだけで死に繋がるかもしれない。それでも――オラリオの第一級冒険者は、諦めない。

 

ティオナがウルガを盾代わりに業火を受け、その熱量に顔を歪める。アイズが風で炎の一部を防ぎ、ティオネとベートが、かろうじてその身を炎から逸らす。前へ出るどころか、襲い来る不死鳥を凌ぐだけで精一杯だった。

 

後衛の支援は無い。これは純粋に、四人で挑んだ戦いなのだから。結界の外で見守るレフィーヤは、加勢できない自分の立場を歯がゆく思いながら、それでも一瞬たりとも目を逸らせずにいた。

 

しかし、大魔王の攻撃はまだ続く。

 

「どれ。今度はこちらの得物も披露しようではないか」

 

バーンが虚空へ手を差し入れる。歪んだ空間から引きずり出されたのは、禍々しくも荘厳な一本の杖――光魔の杖。その先端に魔力が注がれると、目も眩むほどの光の刃が形成された。

 

「いっ……くわよぉッ!!」

 

その異質な気配に、本能で危険を察したティオナが先手を取る。大双刃が、唸りを上げてバーンへと振り下ろされた。

 

パキィンッ――。

 

甲高い音と共に、宙を舞ったのは。

 

「えっ……」

 

刃を半ばから断ち斬られた、ティオナの大双刃の成れの果てだった。

 

「武器の頑強さで言えば、そなた達の得物も大したものだ。だが、この光の刃の前では、些か脆い」

 

切れ味の鋭さでこうなったわけではない。光の刃に込められたバーンの魔力があまりに桁外れだからこそ、第一級冒険者が使っている第一等級武装ですら、触れただけで容易く断ち切られてしまったのだ。

 

「ティオネ……っ、よくも!」

 

剣を握り直したアイズが、颯爽とバーンへと斬りかかる。だが――。

 

パキィンッ。

 

再び響く、甲高い音。アイズの愛剣・デスペレートもまた、光の刃に触れた途端、半ばから断ち斬られていた。

 

「……っ、私の、剣が……」

 

折れた剣を見つめ、アイズが愕然と立ち尽くす。

 

「ベート、援護を!」

 

「言われなくとも――ッ!!」

 

四人が、得物を捨てる覚悟で総攻撃に転じる。だが、その猛攻は――。

 

「どれ、そろそろ幕を引こうではないか」

 

バーンが、光魔の杖を静かに後ろに構え直す。その先端に、途轍もない闘気が、静かに圧縮されていく。

 

「カラミティウォールッ!!!」

 

次の瞬間。

 

杖から放たれた、超高圧縮された闘気の津波が、四人をまとめて呑み込んだ。

 

「「「「……!?」」」」

 

爆発的な破壊の嵐が、結界の内側で吹き荒れる。

 

ティオナが、ティオネが、ベートが、アイズが。オラリオを代表する冒険者達が、成す術もなく吹き飛ばされ、結界の壁へと叩きつけられた。

 

たった一撃。

 

たった一度の、大魔王の『攻撃の番』。それだけで、四人の第一級冒険者は、ピクリとも動かなくなった。

 

「……ふむ。仮初の余興としては、楽しめたわ」

 

倒れ伏す四人を見下ろし、バーンは満足げに杖を収める。大魔王と現オラリオのLevel5の間には、ただただ覆しようのない、厳然とした『格』の差が横たわっていた。

 

◇ ◇ ◇

 

四人が戦闘不能になったのを見て、バニーが結界を解除する。

 

結界が解けると同時に、倒れていた四人の傷や砕けた武器が、戦闘前の状態へと巻き戻っていった。

 

「……っ、はぁッ、はぁ……!」

 

「い、生きてる……というか、傷一つ無い……」

 

仰向けに転がったまま、ティオナとティオネが荒い息を吐く。肉体は無傷。だが、その『絶望』の感触だけは、生々しく残っていた。

 

アイズは、呆然としている。自分の力は、大魔王に届かなかった。届く気すら、起こらなかった。

 

「クソ、クソッ……! 一発も、一発も入れられなかった……!」

 

ベートが地面を殴りつける。その拳は、悔しさで小さく震えていた。

 

結界の外で見ていたロキ・ファミリアの面々も、誰一人として声を出せずにいた。自分達のファミリアを代表する第一級冒険者の四人が、文字通り手も足も出なかったのだ。

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