ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ 作:ポップ
あんまり長く時間掛かるのもよくないと思い、お昼休憩の間にキリのいいところまでこれたので、一旦ここまでで投稿させて頂きます。
競技場の中央では、バニーとルークが、二人の間を十分に空けてそれぞれ開始位置に立っていた。
ルークの少し後ろでは、万が一の場合に備えて、王宮の魔法使い達がすぐさま魔法防壁を追加で張れるよう、万全の体制で控えている。
テムジンはそれを確かめ、確信に満ちた顔で頷いていた。
「これで、如何ですかな?」
「う〜ん……まぁ、私はいいんだけどもねぇ。ルークもテムジンさんも、後になって文句とか言わないでよ?」
バニーはそう答えてから、ルークに目を向けた。
「防げないと思ったら、絶対に怪我しないように逃げてね」
「はい。宜しくお願い致します」
そんなやり取りを見守る位置にいたテムジンだが、内心では、バニーに少し苛つきに近い感情を抱いていた。
(お前が危ないと言うから、ルークの他にも防壁の張れる魔法使い達を配置してやったというのに、それでもあくまで上から目線とは……一体何様のつもりだ?)
そうして、ルークが杖を構えて【フバーハ】を唱えると、淡い光の防壁が円形に展開される。
それをみた観客席の者達からも、感心するような声が上がってきた。
「あれが、修行を積んだ一握りの僧侶や賢者にしか使えないという、フバーハの呪文か……」
「あぁ。噂によれば、殆ど全ての火炎・氷雪系統の呪文から守れると聞くが……やはり、若くてもパプニカの賢者は優秀だ!」
これほど高レベルの呪文になってくると、話には聞いたことがあっても、一般の人が見る機会というのは、かなり稀になる。
それほど高位の呪文なのだ。
バニーもそれを見届けると、そっと目を閉じ始める。
【魔力覚醒】
ボゥッ!
身体の中を巡っていた魔力が、一気にその強さを増していく。
そんなバニーの様子を目の当たりにしたルークは、放つ前から
(これは……先程迄とはまるで違う!)
と、嫌でもその変化を感じ取っていた。
その異変に気付いた、観客席や貴賓席に控えていた魔法の心得がある者達も、驚愕の表情を浮かべたまま、揃って競技場中央のバニーへと視線を向ける。
一方、バニーとしては、かつて見た大魔王バーンのカイザーフェニックスには、いまだ届いてない気もするが、それでもこれまで何度か使いながら練り上げてきて、それなりの形に出来たという自負がある。
なので、ルークが自身の【フバーハ】を信頼しているように、バニーもこの【カイザーフェニックス】には自信を持っていた。
あれだけ言って、万一に備えてルークの後ろには他の魔法使いさん達も配置してもらったのだ。
だから、これだけ大きなイベントの最後の締めくくりとしても、それなりに見栄えのいい呪文を披露する事が出来て、結構盛り上がるのでは?
などと、そんな事を考えていた。
やがて、バニーは目を開いて右手を高く掲げると、掌の上に炎が集まりだす。
やがて、巨大な翼を形作り、見る者全てに畏怖を抱かせる、炎の鳥が今まさに顕現しようとしていた。
……見上げたルークの顔が、恐怖の色に染まる。
正直、彼はメラゾーマを受けるつもりでいた。
……いや、メラゾーマもメラ系の最上位呪文なのだ。
バニーの事を高く評価していたルークは、バニーならば【メラゾーマ】も使う事が出来るだろうと、本人は口に出していなかったが、そう堅く信じていたのである。
……だが、目の前に現れたこれは何だ?
その身を構成する膨大な魔力と、本当に生きているかの様に思える姿は、恐ろしくも神々しく、まるで破滅を告げる神鳥の様である。
……これは、本当に呪文なのか?
「それじゃ、行くわよっ!」
「バ、バニー殿!ちょっ、まって下さ……」
(メラゾーマだと思ってたのに!信じていたのに!!あんな炎を受けてしまったら、一瞬でチリになってしまいます!!!)
しかし、バニーは止まらない。
というか、今のバニーの耳は燃え盛る炎の轟音でいっぱいなのと、呪文を放つ直前に早口で言われたのも合わさって、正直よく聞こえていない。
「【カイザーフェニックス】!」
次の瞬間、灼熱の炎の鳥が、ルークへ向かって放たれる。
観客席では、押し寄せてきた熱気に圧されて、前列の者達が思わず顔を手で覆っている。
それほど迄の火力なのだ。
そんな炎を最初に受けたのは、ルークが張っていたフバーハの防壁だった。
この魔法が使える時点で、彼の優秀さが分かるというものだろう。それは、僧侶・賢者として中級者以上に至っている事の証なのだから。
……しかし、それでも炎の鳥は防げない。
フバーハに魔力を更に込めて、自身の命を奪うかのように迫る炎の鳥を食い止めようとするも、それは一瞬で蹴散らされる。
全く妨げになっていない。
呆然とするルークを他所に、その背後に控えていた者達も決死の覚悟で防壁を張り出すが、こちらも微塵も効果を発揮出来ていない。
全ての防壁を破られて、このまま最悪の結末を覚悟する受け手側の者達。だが、この時焦っていたのは、ルーク達だけではない。攻撃を放ったバニーの方も大概焦っていた。
(ちょっ!?だからあれだけ言ったのにぃ!!!)
このまま直撃すれば、ルークやパプニカの魔法使いさん達が死んでしまう。
……勿論、観客達も話の流れは聞いていたのだ。これで不幸な事故が起きたとしても、あからさまに非難されるという事はないだろう。
それでも、気持ちの問題は別である。
今回の集まり、一般の観客に関しては、その大多数をパプニカの民が占めている。そんな中で、自国の賢者や高位魔法使い達を殺した女……
絶対に取り返しが付かない……
ここまでくると、事前に警告していたとかは、もう多分関係ない。結果を見て、それに対してどういう感情を抱くかなのだ。
炎の鳥が、遂にルーク達へ直撃しようとする。
その少し前から、バニーは慌てて空をかき分けるように、何度も何度も腕を振っていた。
意図としては、自身が放ったカイザーフェニックスに、少しでもいいから横にズレてくれというものだったのだが、それが功をなしたのか、ルーク達に迫っていた不死鳥が首を反らし、大きな翼を翻す。
彼等を呑み込む筈だった炎の鳥は、目の前で急激に進路を変え、競技場の真上へと昇っていった。
そしてバニーは、遥か上空で大空を旋回していた炎の鳥を見上げたまま、徐々にその魔力を雲散させていく。
結果としては無事に終わったが、受け手側のルーク達は、すぐそこまで迫っていた死に震え、杖を支えに、片膝をついていた。
何とかギリギリ生きている。
衝突する直前に、バニーが炎を逸らしてくれたのだ。
「大丈夫?」
慌てて駆け寄ってきたバニーに尋ねられ、ルークは何とか頷いた。
それを確認してから、バニーは少し離れたところで固まっているテムジンを見て、
「だから危ないって言ったでしょ!」
と声をあげるが、テムジンとしても、自分の理解を超えた状況なのだろう。
呆然としながら、返事はない。
「今のは……何という呪文なのですか……?」
ようやく声を出したのは、ルークと一緒に防御にまわっていた王宮の魔法使いだった。
バニーは慌てて聞こえなかったのかと思い(まぁ、死ぬとこだったしね)先程唱えた呪文名をもう一度教える。
「カイザーフェニックスよ」
「その様な呪文は、これまで聞いた事も無いのですが……」
周囲の魔法使い達も、誰一人として心当たりを示さない。
バニーはルークに手を貸しながら、簡単に説明した。
「前に大魔王が使ってたのを見た事があるの。あまりにも凄い炎だったから、私も使える様になるまで練習したってわけ」
その言葉に、近くにいた者達の動きが止まった。
「……大魔王?」
誰かが口にした言葉が、周囲に広がっていく。
遠くの観客には、話の全てが聞こえていた訳ではない。それでも、大魔王の呪文を使ったらしいという話と、先程現れた恐ろしい炎の鳥が結び付き、一瞬歓声を上げかけていた者達まで、皆口を閉ざしてしまった。
「……なるほど。そういう事であったか」
テムジンが、ゆっくりと顔を上げる。
そこには、先程まで失われていた勢いが、その声に戻っていた。穏やかだった表情も一転して険しいものへと変わり、その指先がバニーを真っ直ぐに指す。
「正体を現したな!聖女を騙る魔の者め!大魔王の秘術を身に付けているという事は、この女は魔王軍の幹部に違いない!」
多分、次は第6話か、異世界編(「恋姫無双」「HUNTER×HUNTER」)か、オリジナル小説(2027年から2000年の過去に飛んでしまった青年が、AIのアイちゃんと共に頑張る話)になると思います。
(オリジナル小説はカクヨムの方がいいんですかね?)
どれも少しずつ書いていってますので、良ければ見て頂けますと嬉しいです。
それでは、今後とも宜しくお願いします。