01.プロローグ
2022年8月
現在、全国のゲーマーの注目を集めている世界初のVRMMORPG——ソードアート・オンラインのβテストの期間中である。完全なる仮想空間を実現し、ゲームの世界で実際にアバターを脳で動かすのだ。つまり、プレイヤーはゲームの世界へ入り込んだかの様な気分になれる。楽しそうでしかない。ゲーマーとしては是非ともこのβテストに当選したい。
だが、現実は甘くない。当選者はたったの1000人のみで俺こと
というわけで現在、ちょうど用事でその友達の家の近くまで来たので寄ってみる事にした。呼び鈴を鳴らしていざ……!
「あ、優さん。こんにちは!どうしたんですか?こんな真っ昼間に……」
「こんにちは。ちょうど近くを通りかかったついでに和人のやつに直接聞いてやろうと思ってる事があってさ、それで来た。それからこれお土産ね」
俺が訪れたのは桐ヶ谷家。そして今話しているのが桐ヶ谷 直葉。俺の友達、桐ヶ谷 和人の妹である。
「ありがとうございます!どこか旅行にでも行ってたんですか?」
「いや、親が出張してたってだけだよ」
そんなこんなで他愛の話をしながらいつも通り家に上がらせてもらう。
和人視点
昼飯のために一旦SAOのβテストからログアウトし、自分の部屋から出て下のリビングへと向かう。すると……
「やっぱりこの時間は昼食のために降りてくると思ってたぜ」
そこにいたのは俺の数少ない友達である優夜だった。
俺と優夜が出会ったのは小学生の頃。
俺と優夜は元々同じ学校のクラスメイトだった。そんなある日のことだ。
「お前もあのゲームやってるのか!?」
「……!!」
「ああ、ごめん。急に大声出して。ついテンション上がってらしくない事をしちまった……」
俺がネットゲームにハマり始めた時期に学校でそんな風に声をかけられて当然最初は戸惑ったし、どういう距離感で接して良いか分からなかったけど、俺がネットゲームを始めた当初から付き合いのあった妙に気の合うプレイヤーと優夜が同じ人物である事が発覚してから距離が一気に縮まり胸を張って友達だと言い合える仲になった。
それからというものの度々俺の家に遊びに来ることも増えたんだけど、その時に俺が家族と距離をとっていた事を察したのだろう。あいつは「お前も一緒にやろうぜ」と妹のスグをゲームに誘う事が何度かあり、そんなあいつのおかげで俺はスグとも友好な関係を築けている。
「お前、何しに来たんだよ?」
「んなもん決まってるだろ?SAOのβテストだよ!始まってからもう2週間くらいは経ってるだろ?どんな感じなんだ?」
「それは教えないよ。正式サービスまでのお楽しみってことで」
俺がそういうと不機嫌そうな顔をして文句を言ってきた。
「別に少しくらい情報を出してくれたっていいだろ?あークソ!羨ましい!」
「そのソードアートオンライン?だっけ?そんなに面白いの?」
するとスグが興味を持ったのか話に加わってきた。
「俺はまだ面白そうってだけだけどな。でも和人のあの顔見れば一目瞭然だろ。絶対面白いやつだぞ?うわ、その勝ち誇った顔やめろ。腹立つ」
「へぇ〜、私もやってみようかな……」
スグが突然そんな事を言い出した。以前までならありえない事だがここ数年でだいぶ俺らに毒されているのがよく分かる。
「でもスグは部活で忙しいんじゃないか?やれる暇あるのか?」
「流石に暇くらいあるよ」
そうしてしばらく話を続けていると、優夜がこの後も用事があるからと帰っていった。
あいつ、本当にSAOのこと聞きに来ただけだったのか……さて、さっさと昼飯食べてSAOのβテストの続きだ!
優夜視点
結局、あの野郎は何も教えてくれなかった。「正式サービスまでのお楽しみだ」の一点張り。ちょっとくらい教えてくれたっていいじゃないか!ケチ!!
そんなふうに思いながら俺が次に向かうのは病院である。もちろん俺が何かを患っているという訳ではない。昔、病院へ行った際に友達になった子がいるのだ。今回はその子と会いに行くのだ。
そしてようやく病院へ辿り着き、受付を終えて病室へ入る。
「木綿季!久しぶりだな。元気にしてるか?」
「優兄ちゃん!待ってたよ!」
紺野 木綿季。家族共々エイズに感染してしまい、小4の頃からずっと入院生活しているらしい。担当医曰く今はほんの少しずつではあるが回復へ向かっていっているそう。とはいえ危険な状態である事に変わりはない。今回復に向かっていってるのはメンタルによるところが大きいらしく、そのため俺は少しでも助けになればと思ってこうして会いに行く様にしているというわけだ。
俺は木綿季に最近あったくだらない事を冗談を交えて話していく。木綿季は本当によく笑う。本当に病人か?ってくらい元気にリアクションしてくれる。
「いつもありがとう。木綿季のために来てくれて」
「気にしないでください、藍子さん。俺がやりたくてやってるだけなので」
紺野 藍子。木綿季の姉である。木綿季と話終わったタイミングで声をかけられた。
「この子いつも貴方に会えるのを楽しみにしているみたいで」
「ちょっと姉ちゃん!」
「ああ、大丈夫です。言われなくても見てれば分かりますから」
「……!!」
木綿季が顔を真っ赤にする。残念ながら俺は鈍感系主人公ではない(自称)のでね。
その後、恥ずかしさでキレた木綿季を宥めてからその場を後にして帰宅した。
******
家に帰って自分の部屋に直行する。荷物を置いてパソコンへ向けて歩き出——その瞬間俺の足の小指に激痛が走った。
「痛ぇ!!タンスにぶつけた!クソがぁあ!」
小指を押さえながら片足でピョンピョンしているとバランスを崩した。そのまま頭部が机に激突する。
しばらく痛みで悶えているとふと俺の中に溢れ出した存在しない記憶。
「思い……出した……!」
これはそうだ。前世の記憶だ。『ソードアート・オンライン』という作品の小説やアニメなどを見ていた記憶。残念ながらそれ以外の記憶は思い出す事が出来なかったが、間違いない。
「って事はここ、SAOの世界なのか……?あれ?でも俺の知ってるSAOと何か違う気が……」
和人に直葉、それから木綿季。俺は既にこの3人と友達になってしまっている。しかも直葉に至ってはSAOを始めてしまう可能性が出てきてしまった。やべぇどうしよう……しかも今のところ全部俺のせいで違う展開になっている…………もう今更だよな。うん、そう思っておこう。これはパラレルワールドなんだ。だから俺はいくら目立とうとも何の問題はない、そういう事にしておこう。
とにかく終わりよければ全て良し!目指せハッピーエンド!これを目標にしていこう。
キャラ紹介
見た目は茶髪で寝癖の様なツンツンした髪型をしており、割とイケメン。
父親を昔交通事故で亡くしており、母親と2人暮らし。その母親も仕事で忙しくしており、殆ど家にいない。
SAOの知識は小説1巻だけ、後はアニメで見たのみ。