『始まり』
「…ぃ、いる…?」
壁の向こうから掠れた声が聞こえてくる。
その声に向かって、
「なあに?どうしたの?」
1匹のイーブイが焦るように走っていく。
「ちょっと休みなさい…。身体を壊すよ。」
イーブイに伝えるその掠れた声は頼りなげではあるがどこか温もりも感じた。
「大丈夫だよ!僕、母さんの分まで頑張るから!」
そう言って張り切るイーブイの瞳には、布団にくるまる母親と、その枕元にある写真立てが映っていた。
「ごめんねぇ…、お店の番任せちゃって…。ゲホッ、ゲホッ…。」
母親は布団の中からイーブイの頭を撫でる。
「ううん、母さんはゆっくり休んでてよ。今ちょうど
「そう…、気を付けていってらっしゃい…。」
「いってきます!」
イーブイは
「ゲホッ、ゲホッ…。」
イーブイが出かけて行った後、母親は上半身を起き上がらせる。自分のものとは思えない程に
──全ては、何気ない幸せな日常のために。
…すると、店の入り口の方から、木製のウィンドチャイムの音が聞こえてくる。この小さなきのみ屋に、誰かが尋ねてきたようだ。
店にいるのは今自分だけだということから、母親は重い身体を引き摺りながら、きのみの棚が並ぶ店頭に出向く。
「ごめんなさい、今ちょっと調子が悪くて…。ゲホッ…、何をお探しですか…?」
母親は弱々しい声で精一杯お客をもてなそうとする。
彼女よりも随分と大柄なそのお客は低い声で唸りながら周囲を見渡す。そして小さく、
「どうやら、不在のようだな…?」
と呟く。
おすすめのきのみを手に取り、頑張って説明を始める母親に黒い影が落ちた。
──ここはペティット
イーブイは石煉瓦造りの住宅地の中を走って行き、少し前から閉まっている町唯一の薬屋の角を左に曲がり、また暫く進むと、踏みしめていた地面は石畳から畑道へと変わると同時に、目の前が金色に。
フリ村である。辺り一面を覆い尽くす麦畑は、そろそろ収穫の時期を迎えていた。地平線の奥には、うっすらとディバイ山脈の山肌も見える。
その狐色の中で一層濃い茶色の一点は颯爽と駆け抜ける。この道の更に先にあるディバイ山脈の麓の森が、彼の行きつけの収穫場所なのだ。
森の中に入り、木漏れ日の中でイーブイはキョロキョロと周りを見渡し、お目当てのラムのみのなっている木を探す。
「あっ。」
すぐに見つけることできた。彼はそこに駆けて行き、1つずつ
(これで、母さんを元気にするんだ…!)
そんなことを思いながら。
籐の籠はすぐにいっぱいになった。
(帰るか…。)
イーブイが後ろを向いて、元来た方へ戻ろうとしたその時。
ガサガサッ。
近くの茂みかが揺れる音がした。
「!?」
彼が驚くも束の間、そこから飛び出してきたのはポチエナ。ポチエナはイーブイに襲いかかる。
「うわっ…!」
イーブイは吹き飛ばされ、籠の中身もぶちまけてしまう。
「大事なきのみが…!」
しかしポチエナはそんなことお構いなしにバークアウトを出してくる。
「くそっ…、喰らえ!」
イーブイも負けじとスピードスターを飛ばす。相手が怯む隙にイーブイはぶちまけたラムのみの中から一つ咥え上げると、家に向かって一目散に走り出した。
(なんなんだあいつ…!なんも喋らず淡々と攻撃してきて…!)
少しの恐怖心と共に。早く家に帰って、母親のあの温もりで心を落ち着けようと思っていた。
──しかし、その温もりを感じることは二度と、できなかったのであった。
「母…、さん……?」
息急き切って家のドアを開けるなり、イーブイは呆然と立ち竦んだ。イーブイの瞳には、店の奥の部屋に寝込んでいた筈の母親が、口を赤く染め、きのみの積まれた棚に囲まれ倒れてる姿が映っていた。
「ねえ…、母さん…?」
イーブイはゆっくりと母親に近づいていく。
「きのみ…、取ってきたよ…?母さんのために…。」
そう言って母親の顔元に、咥えてきたラムのみを置く。その後暫くじっとその様子を見つめるが、まるで石像と化したかのように動き出す様子はない。
「ねえっ…、起きてよっ…!」
母親を揺さぶろうとその身体に手をかざす。
「‼︎」
その時の感触があまりにも信じ難いもので、彼は感情さえ失いそうになった。…その身体は、いつもより一層、冷たくなっていたのだ。
「母さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
頭の中がぐちゃぐちゃになった。瞳から大量の涙が溢れでてくる。
小さな町の小さなきのみ屋で、一匹の泣き声が響いていた。
挙げ句の果てにイーブイは再びディバイ山の樹海に入り込んだ。空っぽになった心中は最早彼の考えを引き止めることを知らない。
ふと、彼の目の前に切り立った崖が現れる。もう、何もかもいいように思えてきていた。
「母さん…、父さん…、…僕も今から行くよ…。」
そう呟くと、イーブイはその崖に身を投げた。
──気がつくと、目の前にうっすらと焚き火が見えた。
「ここは…?…そっか、死後の世界か…。」
朦朧とする意識の中ゆっくりと起き上がってみると、そこは森の中だった。小さな炎の向こうには一人の白い影が見える。
その影は僕のことを確認するとすぐにこっちに飛び込んでくる。
「大丈夫か…⁉︎」
アブソルのお兄さんだった。紺色のスカーフを首に巻いる。
「ていうことは、お兄さんも、死んじゃったんだね…。」
「えっ…?」
お兄さんはまだ気付いてないのかな…。
「だって、ここ、死後の世界なんでしょう…?それにしてもなんかちょっと変だな…。死んだ筈なのに、感覚から何から全く違和感を感じない…。」
僕がそこまで言うと、お兄さんは急に形相を変えて怒鳴り出す。
「馬鹿言うな!ここが死後の世界な訳あるか‼︎ここが死後の世界なら目の前に見えるのは三途の川、もしくは天界の地、それだけだ!」
僕は呆然とする。
「お前はまだ生きている…!その感覚があるなら、死んだなんて思うな‼︎」
そう叱られて、なんとも言えない涙が込み上げてきて、形振り構わずお兄さんの胸に抱きついて泣き出してしまった。
「だって…、だってぇ…!母さんも父さんも、もうこの世界にはいないんだもん…!大好きだったのにぃ…!いなくなっちゃったんだもん…!もう僕には、この世界に居場所なんてないんだよぉっ…!!」
このお兄さんの胸…あったかい…。母さんと同じような感覚がする…。
するとお兄さんはちょっと焦りながらも、片前足を僕の頭に乗せて、ゆっくり話し出す。
「君が…、君が本当に母さんと父さんが大好きなのであれば、より一層死んじゃうなんてダメだ。君が母さんと父さんのことが大好きだってことは、それだけ母さんと父さんが、君のことを大事に大事に育ててくれたんだろう。言うなれば君は、母さんと父さんに望まれ、繋げたい命があったから生まれてきたんだ。君が今ここで死んでしまっては、大好きな母さんと父さんの努力を無駄にする、即ち、──母さんと父さんを裏切ることになる──。」
母さんと父さんを、裏切る…。
「とりあえず、深呼吸するか…。息を吸って。」
僕はお兄さんの胸から離れると、言われた通りに大きく吸い上げ、
「吐いて。」
一気に吐いた。何かが息と共に出ていった。
「少し、落ち着いた?」
「うん、ありがと…。」
僕は涙を拭いて答えた。
「君、名前はなんて言うの?」
そう訊かれちょっと躊躇ったものの、隠す理由もなかったし、教えてあげた。
「僕、ルリ。」
「ルリか…、なるほどね。僕はルージル。コンフィーネ救助隊の隊士だ。」
彼はそう言って、スカーフに付いているバッジを見せた。
やっぱりだ…。このスカーフ、噂には聞いていた救助隊の…。
ルージル「とりあえず、ルリ。君は僕と一緒にコンフィーネ救助隊ギルドの孤児院に来てもらおう。そうすれば、何か新たな発見があるだろうしね…。」
ルージルさんが歩き出そうとすると、
ルージル「うっ…。」
身体をふらつかせた。
ルリ「ルージルさん、足…。」
ルージルさんの白い後ろ足の左が赤くなってる。
ルージル「ああ、大丈夫。このぐらい日常茶飯事程度の怪我だよ…。」
ルリ「でも、…どうして僕なんかのために…。」
ルージル「救助隊として、当然のことさ…。さ、早くしないと、船に乗り遅れちゃうよ。」
彼はそう応えると、若干ふらふらしながら進んでいった。僕もその後を着いて行った。
ここは森のより深いところのようだ。きのみがなっているところよりも木の一本一本が太く大きくて、空からの光がほぼ遮られて地べたは暗くなっている。風の音がよく耳に入ってくるほど、辺りはしんとしている。
ルージル「綺麗だよね…。」
ふとルージルさんが話しかけてきた。
ルリ「森が?」
ルージル「いや、ルリの瞳、綺麗な色してるなって思って。」
ああ、そっちか…。
ルリ「よく言われるよ。透き通った瑠璃色の瞳をしていて綺麗だって。生まれつきでね。母さんからの遺伝だとかなんだとか。」
ルージル「それで、名前も“ルリ”なんだ?」
ルリ「そうだろうね。」
そんな雑談をしながら森を抜けてペティット町の海岸線の船着場まで来ると、今まで見たこともないようなでっかい帆船が泊まっていた。その中に乗り込んで、僕はルージルさんと一緒に救助隊ギルドがある街へと旅立った。船は、南へと進んでいく…。
1 ギルドの街
「うわぁ…。」
寝ぼけた眼を擦りながら船を降りると、そこには僕が住んでた町とは比べ物にならないくらいの大きな街が広がっていた。一つ一つの家も大きい。
ルージル「ここは、大小2つの島からなるコンフィーネ島の大きい方・プリンシパーレ島の北に位置するチェントロ
後ろからルージルさんが出てきて説明してくれる。
ルージル「こういう街に来るのは初めてかい?」
ルリ「うん、ちょっとびっくりしたよ…。」
きょろきょろ周りを見渡しながら歩いていく。街のポケモンの量もハンパないし、ずっとペティット町で暮らしてきた僕からすると、何もかもが見新しかった。
ルリ「ねえルージルさん、向こうにあるとんがってるのは何?」
いろんな建物が立ち並ぶその奥に、屋根の尖った塔みたいなのが見える。
ルージル「ああ、あれがコンフィーネギルドだよ。」
ルリ「あれが…!?」
ルージル「なんでも王国時代の王城をリフォームしてギルドにしたとか。まあ、世界最大級のギルドだ。あのくらいの威厳は持っていないとな。」
お城をギルドにしたって…。すごすぎるでしょここの救助隊…。
そしてその塔の手前側には、時計台の姿も。
ルリ「時計台だ。」
ルージル「この街のシンボルなんだ。あれも王国時代に建てられたらしい。それも初期のね。当時の城下街が今のこの街の構造になったときに造られたらしいよ。」
ルリ「この街って歴史があるんだね…。」
ルージル「そうだね。ま、それは追い追い話すとして、早めに行こうか。結構歩くことになるから覚悟しろよぉ?」
ルージルさんがニヤッとする。
ルリ「毎日のように森にきのみ取りに行ってたもん、こう見えても長距離の移動には慣れてるんだからね?」
僕は得意そうに返事する。
ルージル「おっ、言うねぇ。じゃあギルドまで競走するかい?」
彼がそこまで言った時。
ルリ「!」
僕の耳が反応した。
ルージル「どうしたんだい?」
ルリ「どっかから悲鳴が聞こえた。こっち!」
僕は本来向かうべき方向からずれて、側道へ走っていった。
ルージル(耳が良いな…、僕には聞こえなかった…。とにかく着いていこう。)
ほぼ無意識的に音のした方へ走っていくと、僕と同じくらいの子達が集まってるところを見つけた。
「お願い、返して…!」
その中の一人が叫ぶ。
「これは貰っていくぜ?」
「やめて、それは…、ああっ…。」
どうやら良い雰囲気ではなさそう…。
ルージル「ルリ!」
ルージルさんが来た。
ルリ「ルージルさん、あれって…。」
ルージル「ん…?」
彼がその様子を見る。
ルリ「あの子、嫌がってる…。」
ルージル「うん、でも単なる子供の喧嘩かもしれない。救助隊のポケモンは、こういうことには手を出せないような決まりなんだ。」
ルリ「でも…!」
ルージル「それで街のポケモンを傷つけたりしたら、今度はこっちに責任が回ってくる。」
そっか…。…だったとしても…!
「なんだ、こんな小さなペンダント一つぐらい、どこにでもあるだろ。」
「違うの…!それは私の…!」
絡まれてる子が、必死になっている…。
「きゃっ…!」
ああ、突き飛ばされちゃった…!
「容易く触んな、藪医者の娘の分際で…。これでも喰らえ!」
攻撃されちゃう…!
次の瞬間、僕の中に眠っていた何かが目覚めた。
ルリ「やめろおっ!!」
僕は咄嗟にスピードスターを出した。そして相手が怯む隙にでんこうせっかで絡まれてる子──フォッコの所へ行く。
ルージル「ルリ…!」
ルージルさんは少し困った様子。
ルリ「ルージルさんはできないだろうけど…、僕だったらできるでしょ?…だって僕、
「あ?なんだお前。」
ペンダントを取った奴・ニューラが僕を睨んでくる。
ルリ「この子が嫌がってるじゃないか!返してやれよ!」
僕もニューラを睨み返す。
ニューラ「これ?どうせ安もんだ。こんな価値のないようなものを持って来させるのもどうかと思うけどな…。」
ルリ「どういう意味だ…?」
ニューラ「お前には関係ねぇよ!」
ニューラがこっちに飛びかかってくる。メタルクローか…!
ルリ「くそっ…、はっ!」
でんこうせっかで反撃する。それと同時に他の奴らも攻撃してきた。
ルリ「スピードスター!」
必中技だ。相手数匹に当たる。
「バークアウト!」
けれどバークアウトが飛んできて吹き飛ばれる。体勢を整えてから僕はそいつをでんこうせっかで吹き飛ばし返した。続けてでんこうせっかで数匹にぶつかっていく。
ニューラ「この野郎…!」
後ろからニューラが仕掛けてくる…!アイアンテールでその爪を押さえ込んだ。
ニューラ「おらっ!」
こごえるかぜか…!空中に放り出される。
ルリ「はあっ!」
空中からスピードスターを出す。しかし全てメタルクローで切り裂かれた。
着地するとすぐにでんこうせっかでニューラに接近、攻撃。ついでアイアンテールも当ててやった。
ルリ「はあ…、はあ…。」
効果バツグン、だね。
ニューラ「くそ…、こいつは返してやる!おぼえてろよっ!」
ニューラが言うと、ペンダントを残してそいつらは逃げていった。
僕が地面に落ちているペンダントを拾い上げると、
「あっ…、ありがとう…。私の為に…。」
いじめられていたフォッコが話しかけてきた。
ルリ「はいこれ。大事なものなんでしょ?」
僕はその子にペンダントを渡した。彼女はそれを受け取ると、
「うん、お母さんからもらったお守りなの。身体にある病気みたいなのがこれ以上酷くならないようにって。」
ニコッと笑顔になった。
ルージル「2匹とも、大丈夫かい…!?」
ルージルさんが来た。僕たちは揃って頷く。
「あの…、救助隊の…。」
フォッコがルージルさんに訊く。
ルージル「その通り。コンフィーネ救助隊のルージルだ。」
ルージルさんはそう答えた。
「私、…カネリって言います。お父さんからの推薦で、救助隊に入ることになってるんですけど…。この街来るの初めてで、迷ってて…。」
この子、救助隊に…?
ルージル「ちょうど良い。僕たちもギルドに戻るところだったから、一緒に着いてきなよ。」
カネリ「はい!ルージルさん、と…。」
カネリは僕の方を見る。
ルリ「僕、ルリ。よろしく。」
カネリ「よ、よろしく。ルリくんは、スカーフ巻いてないけど…、あ、もしかして、ルリくんも救助隊になるために来たの?」
ルリ「そうだよ。」
ルージル「ん?」
カネリ「そっか。じゃあなおさら一緒に行った方がいいね。」
僕とカネリだけで話を進めてしまってるところにルージルさんは困惑する。そんなことお構いなしに僕たちは話しながら歩き出してしまった。
ルージル(別にルリに関しては救助隊に入れるために連れてきたわけじゃないんだけどな…。まあ、いっか…。仲間が増えることに文句はないし。)
ルージルさんの案内の元ギルドシティを暫く歩いていくと、屋根の尖った塔は次第に大きくなり、いつしか目の前に巨大な跳ね橋の門が現れた。その奥にはこれも巨大な城がそびえる。
…やっぱでかい…。
カネリ「ここが…、ギルド…?」
カネリちゃんもびっくりしている。
ルージル「世界最大級のギルド施設だ。この跳ね橋を渡って、すぐ右側にある小屋が依頼受付、左はちょっとした公園、そして目の前の建物がギルド北館。」
ルリ「なんで公園があるの?」
ルージル「君たちみたいな育ち盛りな隊士たちもいっぱいいるからね。それに、北館の奥には南館があるんだけど、2、3、4階が寮なのに対し1階は孤児院になってるんだ。そこの子たちの遊び場にもなっていて、つい最近できたんだ。」
ルリ「ふぅ〜ん…。」
そう話しながら、跳ね橋を渡っていく。
カネリ「街中を歩いているときに見えた塔はあれだね。」
カネリちゃんが上を指差す。ルージルさんの言う南館の方から出ている。
ルージル「そう。このギルドにはあの塔の他に外壁に12本あるんだけど、…見えるかな、中心の塔には大きな鐘がついてるんだ。1時間ごとに時計台と共に鳴るようになっている。確かギルド創立200周年を記念して造られたとか。」
カネリ「古いのに何気精密…。」
ルージル「そもそもこの街は昔から時計の技術があったからね。そういうことはお手のものなんじゃない?」
カネリ「なんでも知ってるんだね、ルージルさんって。」
ルージル「僕、歴史が好きだから。前にこの街のことを調べたことがあるんだ。他にも訊きたいことがあったらk」
「だから、それだけじゃダメなんだって!!」
そろそろ跳ね橋を渡り切るところで、どっかからルージルさんの話を遮るかのような叫び声が聞こえてきた。
跳ね橋を渡り切ったところに3匹のポケモンの姿がある。
「甘やかしてちゃあ成長しねぇ。そんなんお前でもわかるだろ。」
「だったとしても、ガーくんは流石にやりすぎなのっ!」
その中の2匹がなんか口喧嘩してる…?
ルージル「あーあーまたやってる…。」
ルージルさんは呆れ顔。
ルリ「ねえ、あの人たちって…?」
ルージル「ああ、ここの救助隊の、とあるチームさ…。まあ仲は見ての通り。あの頑固頭なリザードンはg」
「誰が頑固頭だ!」
急に3匹のうちの1匹のリザードンがこっちに跳んできた。ルージルさんの声聞こえてたんかい…。
リザードン「おう、ついに来たか、新しい隊士とやら。話は良ぉぅく聞いてるぞぉ…?」
そのリザードンがカネリちゃんの方をじっと見下ろす。
リザードン「まあ…。」
そして僕の方に視線をずらす。
リザードン「“2匹”とまでは聞いてはないがな…。」
このリザードン、威圧すごい…。
「あら〜、また可愛い子たちが入隊してきたんじゃない?」
後ろからリザードンと口喧嘩してたアシレーヌが満面の笑みを浮かべて来る。そしてもう1匹、奥にずっとたたずんでるジャローダの姿も。
…えっ、可愛い…?それって僕も含めて…!?
リザードン「俺の名はガーネスト。“12上級隊士”のガーネストだ。」
怖いリザードンが言う。カネリちゃんもちょっと怯えてる…。
アシレーヌ「私はアリウム。で、あっちにいるジャローダが、メジス。私たちも12上級隊士よ?」
優しそうなアシレーヌがそう付け加える。いや温度差…。
ガーネスト「団長から直々の命令だから、この黄色いのの面倒は見てやるが、聞いてなかった青い目ん玉のやつまでは見ねぇからな。」
アリウム「良いじゃん見てあげたってぇ。」
ガーネスト「結局今は見れねえだろ。これから任務だっつうのに、遅らせやがって…。」
アリウム「入ってくる子のための準備をしようって言ったのはガーくんでしょう?」
また口喧嘩が始まる…。
僕たちが目を点にしてその様子を見ていると、横からするっとメジスさんが来て、
メジス「まずは団長に挨拶に行かせた方がいいのでは…。」
ルージルさんにぼそっと言うと、また口をつぐんだ。無口…。
ルージル「そうだね…。さあルリ、カネリ、行くよ。」
そう言われて僕たちはルージルさんの後を着いて行った。依頼受付のカウンターを通り、ちょっとした公園の横を通り、目の前にドーンとでっかい扉が現れる。ギルド北館の扉だ。
ルージル「さて、2匹とも。心の準備はできたかな?」
ルージルさんが訊いてくる。僕は深呼吸をしてから、大きく頷いた。カネリちゃんも少し緊張しながら同じように頷く。
ルージル「よし…、開けるよ。」
ルージルさんは僕たちを確認してから、ノブに前足をかざし後ろに引く。重い扉はギイッという音を立てて徐々に開かれる。
──ここから、僕の物語が始まるんだ…!
そういう期待に胸を膨らませ、僕は扉の中に足を踏み入れた。