千駄ヶ谷卓郎と座敷わらしの亜子が、とある事件の調査で留守の中、探偵事務所に突然現れた妖精小さいおっさん。彼の悩みそれはとても大きなものだった…。

「俺は白い絶壁に心を盗られちまった…」

留守を預かる喋る化けキジ猫テツオとすき間女の明星が相談を受けていると、事務所が激しく揺れ出して…。

怪異界を激震させた身長差200Cm超の泥沼ラブコメここに爆誕!!!


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小さいダンディズム。恋のトライアングラー

 

千駄ヶ谷卓郎と座敷わらしの亜子が【巨頭村事件】の調査に出掛けた2日後の正午…。その妖精は、事務所の冷蔵庫から突然現れた。パンツ一丁で、彼の名は小さいおっさん。

 

「……フッ。相談がある。俺は、あの『白い絶壁』のようなお嬢さんに、心を盗まれちまったらしい…恋…だよな…これ」

 

おっさんの切なる相談を聞くため、事務所の留守を護るすき間女の明星(あかり)と喋る化けキジ猫テツオはおっさんの話に耳を傾けていた。

 

「白い絶壁って…もしかして、八尺様の事ですかぁ?」

 

すき間女の明星は、事務所の書棚のすき間からビックリした声を出す。

 

「突然出て来て、八尺様に惚れたって。食われても知らねぇぞ。俺は」

 

テツオは、呆れた顔で小さいおっさんに忠告するが,恋の炎を纏った妖精は、既に周りが見えないほど心が浮ついていた。

 

「……食われるのも悪くねぇ。俺は狭い場所が好きだからな。あのお嬢さんの、あの巨大な孤独という名の〈すき間〉を埋められるのは、俺しかいねぇのさ」

 

おっさんのその渋すぎるボイスが、パンツ一丁というマヌケな格好を強引にハードボイルドへと塗り替えていく。

 

「うわぁ…。噂をすればですよぉ〜」

 

書棚の近くにある窓から明星が覗くと同時に、事務所全体を震わせる地鳴りが響いた。

 

「おいおい嘘だろ…」

 

テツオは、その異常な霊気に背中の毛を逆立てる。窓の外には、見上げるような巨躯。首を直角に曲げて事務所を覗き込む八尺様がいた。彼女は一切笑わず、無機質な表情で「ぽ……ぽ……」と重低音を響かせている。

 

「…すみません。ご相談があってぽ。最近…ストーカーみたいな……粘着質な視線を日々…。感じていて…ぽ…ぽ…」

 

「おい!あんた。八尺様にストーカーしてたのかよ!」

 

テツオのツッコミを「まぁ。焦んなよ」と軽く流しおっさんはパン一のまま窓際へ歩み寄り、天を仰ぐように八尺様を見上げた。

 

「…お嬢さん。そんなに険しい顔をするな。あんたのその不気味な「ぽぽぽ」も、俺の耳には最高のラブソングに聴こえるぜ」

 

「…なに…この、小さい…パン一は…。変態…?でも、声は、…。タイプ…ぽ…ぽ…」

 

怪異である八尺様の頬が、困惑からか微かに引き攣る。だが、おっさんは止まらない。

 

「格好なんてのは記号だ。あんたのその二百四十センチのコンプレックスも俺なら、ちくわの穴くらいの安らぎに変えてやれるぜ。どうだ、一度俺の胸に飛び込んで来ないか?」

 

「物理的に無理だろうが」

 

テツオは何やら二人の距離が縮み始めていることに、めちゃくちゃ白けていたのだが

 

「…こんなに求められた…ことなんて…ぽ。ないから…素直に…嬉しい…です。ぽぽぽ…」

 

「ちょっと待ちなさいよ!!!!!!」

 

ヒステリックになった甲高い女の声が突如、事務所に備え付けられているキッチンからこだました。

 

「今度は、なんだよ…」

 

テツオは、またも異常な霊気を感じ尻尾とテンションがだだ下がりになる。

 

女は、水道の蛇口からドロリと水分を含み軟体動物のようにスルスルとその姿を表す。男をたぶらかし水攻めで窒息死させる狂気の恋多き妖怪。濡れ女だ。

 

「おっさん!!私と付き合ってたよね!?好きだって!私のこの水分が俺の枯れた心のオアシスを湿気の渦にしてくれるんだって!そう言ったよね!?何?このただデカいだけのぽっぽぽっぽしか言わない女は?」

 

「あぁ?…ぽ…あなた…こそ…おっさんの…なんなの…ぽ…邪魔するなら、殺すぽ…」

 

触れるだけで魂を奪われそうな殺気と、気持ちの悪い肌に粘つく湿気で事務所内はミシミシと音を上げ壁に亀裂が走る。

 

「テツオさん…これは三角関係ですよぉ。このままじゃ…事務所がもちませーん」

 

明星は、頭を抱えすき間にヒョイと逃げ込む。

 

「おっさん。どうすんだよ!つーかあんた二股は、やべーだろうが」

 

テツオがおっさんを諌めるが、本人は腰に手を当て「うんうん。」と冷静にうなずいていた。

 

「濡れ女。君の言ってる事は真実だ。しかし、今のこの俺の気持ちもまた、真実なんだ。恋は…ゴールのない果てしない迷路なのさ。とりあえず八尺様と三人で、麻布のbarにでも行かないか?」

 

「ぽ…ぽ…ぽ…濡れ…女。来い…このおっさんは…私を…包みこんでくれる…ぽ…離さない…絶対に…勝負…ぽ」

 

「デカ女が。水に沈めて、もがき苦しむ姿を楽しんでやる」

 

「探偵さんたち。世話になった。俺と言う太陽に照らされちまったレディたちの日傘になってくるぜ」

 

小さいおっさんは八尺様の大きな手に握られ、濡れ女の湿気は最高潮に達し。事務所はヒビ割れ、天井の所々にはカビが繁殖している。嵐は去り?静けさを取り戻した。

 

「結局…。なんだったんだ?」

 

「小さいおじ様。モテるんですね〜。私のタイプではないですけどぉ」

 

さかえ通りに夕陽が落ちる。千駄ヶ谷探偵事務所には、こんな怪異達が突然フラッと訪れるのだった。

 

その後、半死半生の状態で小さいおっさんが事務所に這って助けを求めに現れたが、それはまた、別のお話で。。。

 

 

 


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