透き通るような青空の下、アリスとケイは土の下で眠る友人達に黙祷を捧げていた。この長い年月で二人は多くの人を看取ってきた。
「天童さんですか?」
突然の呼びかけに目を開けた。そこには友人によく似た壮年の女性が花束を持って立っていた。
「久しぶりですね!スモモ!」
アリスは覚えていた。自身の友人。才羽モモイの娘だ。
「キヴォトスに戻られていたんですね」
「ええ。少し恋しくなりまして。それでその足元に隠れている二人は?」
ケイがスモモの足元に隠れる二つの姿に目を向ける。モモイとミドリによく似た二人の少女がいた。
「娘達です。ほらお婆ちゃんの友達よ。挨拶は?」
スモモに言われて、モモイによく似た方は快活に挨拶し、ミドリに似た方は照れ臭そうに軽く会釈を返してきた。
「いつまでこちらに?」
「今日出ます。やることが出来たので」
「そうですか。また顔出しに来てください。母も叔母も喜びますので」
「はい!」
アリスはそう答えるとケイとともにモモイの子孫に別れを告げた。
墓参りを終えた後、アリスとケイは旅立つ前にキヴォトスを散策していた。
「安全第一だぞ! お前ら!」
「おす!」
崩壊しているビルの近くには河駒風建設と書かれたヘルメットの被った作業員達がせかせかと働いていた。
その近くにビルに設置された巨大モニターには見覚えのある顔が映った。赤い髪をした少女が照れ臭そうに赤面しながら、インタビューに答えていた。
「花岡選手の目標は祖母である花岡ユズさんの叩き出した記録を超えるとの事ですが、自信のほどは!?」
「がっ、頑張ります」
彼女の様子を見て、アリスは思わず笑みをこぼした。あの頃の友人達はもういなくても、その一部を継いだ者が確かに今の世の中で生きている。その実感を覚えてアリスは胸がじんわりと熱くなった。
「全くそっくりですね」
横にいるケイに目を向けると、彼女の赤い瞳が静かに揺れていた。
夕日に照らされたキヴォトスの中、勇者一行は新たな旅の準備をしていた。
「さて、アリス。これからどこ行きますか?」
「再び、まだ見ぬ場所へ行きましょう。イブキも言っていました。キヴォトスの外や別次元にはキヴォトスに敵意を向ける存在が未だにいると」
先生達がどれだけよくしてくれても、銃社会である限り、それに伴った犯罪は起こる。時には生徒達ではどうにもならない厄災もある。その時、矢面に立つのは大人だ。
「アリスは勇者です。だから先生やモモイ達が残した世界を守ります。だからケイ。これからも力を貸してください」
「長い旅になりそうですね。もちろんですよ」
ケイが軽く嘆息をついたあと、笑みを浮かべた。
「ちょっとちょっと二人とも! 私達もいますよ!」
「先輩の言う通りです。仲間はずれ。厳禁です」
眉間に皺を寄せたアロナがプラナとともにアリスをケイに抗議した。その様子に思わず笑みがこぼれた。賑やかな空気とともに勇者とその一行は新たな旅に出た。
ありがとうございました!