暗殺教室 零の瞳に映るもの   作:ディーエー

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第8話 カルマの時間 2時間目

 

赤羽が大暴れした次の日の朝、俺はいつものように朝飯を作っていた。

 

《ピンポーン》

 

そして、()()()()()()()呼び鈴が鳴る。

 

「はい……」

 

「おはようございます周防くん!元気そうでなによりです。さぁ、朝ごはんを食べましょう!」

 

「……」

 

そう、コイツが家にやってきたあの日以降、このタコは俺の作った朝飯を定期的に食べに来ていたのだ。前に俺の家に来た時食べたそうにしてたからあげたら、胃袋を掴んでしまったようだ。マジであげなきゃよかった。

 

「なあ……仮にも教え子の家に転がり込んで飯を乞食するってお前にプライドとかないのか?」

 

「しょうがないでしょう!今月もうお金が厳しいんですから!!」

 

「お前、それをよく胸を張って言えるな……」

 

一人暮らしの中学生の家に金がないと転がり込んで飯をご馳走してもらうような大人にはならないようにしたいと思った。

 

「さすが、周防くんの料理は美味しいですね!」

 

結局いつものように俺の食卓に超生物が加わる。

 

そして、俺の作った飯を掻き込みながら、タコは笑顔でこう言った。

 

「今日の4時間目も期待してますよ」

 

「は?4限に何かあるのか?」

 

「昨日伝えたはずですが、聞いていなかったですか?今日の4時間目は調理実習ですよ。お昼も君の手料理を食べられるなんて先生は幸せ者です」

 

え、めんどくさ……。しかも調理実習ってクラスのやつと飯作るんだろ?絶対気まずいじゃねえか。俺は調理実習をサボろうかなと考えていた。

 

すると、タコの表情が変わりだす。

 

「な、周防くん!調理実習をサボることは許しませんよ!先生どこまでも探しに行きますからね!君がいないと先生の食べるご飯がなくなってしまいます!!あとこれを機にクラスのみんなと親睦を深めてください!!」

 

「……」

 

ナチュラルに思考を読んできやがった。マジでだるいなこいつ……。しかも自分の昼飯目当てかよ。

 

「そうだ周防くん。先生、君にお願いがあったのを思い出しました」

 

「……なんだ?」

 

絶対禄なことじゃないと思うが、一応聞くだけ聞いてみる。

 

「調理実習の調理器具と調味料がE組のものだと不足しておりまして……周防くんの家のものを使わせてくれませんか?」

 

「は?やだよ」

 

確かにこの学校の待遇から旧校舎の家庭科室にある調理器具は数が足りない。補充したければ先生か生徒が自腹で補充するしかない。

 

「こういうの、国の経費で落ちるだろ」

 

だが、この教室は特殊だ。飯に毒物を仕込んで毒殺するからそれに必要なものを寄越せって国に言えば簡単に経費で落とせるはずだ。

 

「いいじゃないですかー。君、中学生の一人暮らしの割には相当広い家に住んでいますし、家具や食器などもたくさんあります。まるで()()()()()()()()()()()()()みたいに……」

 

こう言って、タコは俺の家のリビングを見渡す。まあ、これはいずれツッコまれると思っていた。

 

「実際、ここは()()()()()()()()()()らしいからな。その名残だろ。だが断る。俺にメリットがない」

 

「そう言わずにお願いします!君のお願いを()()()()聞きますので!」

 

——今、()()()()聞くって言ったよな?

 

「じゃあ今日の4限サボる。文句は言わせない」

 

「にゅ!それ以外でお願いします。先生お昼に食べるものがなくなってしまいます!」

 

(なんでもじゃねえじゃねえか……)

 

あ、いいこと思いついた。俺はポケットの中でボイスレコーダーのスイッチを入れる。

 

「なあ、俺が今日、調理器具と調味料を提供すれば、()()()()1つ言うことを聞いてくれるってことでいいんだな?」

 

俺がこう聞くとタコは表情を変えずに頷いた。

 

「はい。そうでもしないと君は動かないでしょう」

 

「わかった。貸してやるよ」

 

「本当ですか。ありがとうございます!」

 

「ああ、契約成立だ」

 

契約が成立したことを確認した俺は、ポケットの中のボイスレコーダーをこのタコに突き出す。

 

「じゃあ俺のお願いを言うぞ?『一度だけ学校のサボり、あるいは俺の単独行動を認めること』。もちろん権利の行使中は、その理由や行動の詮索は禁止する」

 

「……!いや、生徒のサボりを認めるわけには……」

 

だが、タコはわかりやすく狼狽る。だが、契約は成立した文句は言わせない。

 

「いいのか?この録音は契約成立前から行なっている。断ったら赤羽にこの録音データを送るぞ?コイツは生徒との約束すら守れない先生だって?」

 

あいつの暗殺に乗っかるのは癪だが、今は利用させてもらう。コイツも赤羽の狙いについては気づいているだろう。

 

「……わかりました。その契約でいいでしょう」

 

「はい、毎度あり。じゃあこの権利行使するときはあらかじめ教えるわ。あと、暗殺に参加しないのはすでに認められているからそのタイミングは無効だ。よろしく」

 

こうして、このタコやうるせー奴らから解放される自由の時間が手に入った。それに比べたら家庭科の時間なんて安い犠牲だ。

 

「では、準備をして学校に行きましょう!」

 

 

***

 

 

渚side

 

朝教室に向かうと扉の前でみんなが固まっていた。

 

「おはようみんな。どうしたの?」

 

「ああ……あれを見てみろよ……」

 

「なっ……」

 

中の様子を見ると教壇の上でタコがナイフで刺されて死んでいたのだ。しかもきれいに締められてる。

 

すると、カルマくんが軽い調子で声をかけてきた。

 

「あ、渚くんおは〜」

 

「カルマくん……」

 

「見てあれ面白いでしょ?俺が殺したんだ♪」

 

子供のように笑いながらそう言うカルマくんにみんなドン引きする。

 

「と、とにかくみんな席について待っておきましょう……」

 

 

 

数分後。

 

「おはようございます」

 

重苦しい空気の中しばらく待っていると、周防くんを連れた殺せんせーが教室に入ってきた。

 

「ん?どうしましたか?みな——ッ!」

 

そして、殺せんせーが教壇の上に気付く。予想どうり、みるみるうちに表情が変わった。

 

「あ、ごめーん。殺せんせーと間違えて殺しちゃった♪捨てとくから持ってきてよ」

 

「うーん、わかりました」

 

その言葉通り、殺せんせーはカルマくんに近づく。でも、カルマくんは何かを企んだような顔をしている。

 

(来いよ、殺せんせー。身体を殺すのは今じゃなくても別にいい。まずは、じわじわ心から殺してやる)

 

《バシン!》

 

《ウィーン》

 

すると、殺せんせーはいきなり飛んだかと思うとミサイルを抱えて戻ってきた。なぜか、手の先がドリルになっている。

 

「見せてあげましょうカルマくん。このドリル触手の威力と自衛隊から奪ったミサイルの火力を……」

 

「な……」

 

「先生は暗殺者を決して無事では帰さなない……」

 

殺せんせーはそう言ってミサイルに火をつける。そして……

 

——なぜか超スピードでたこ焼きを作っていた。

 

(((その調理器具と調味料どこから持ってきたんだ……)))

 

「その顔色では朝食を食べていないでしょう。先生、マッハでたこ焼きを作りました!これを食べれば健康優良児に近づけますね。はいあーん」

 

そう言ってカルマくんにたこ焼きを食べさせる。

 

「カルマくん先生は手入れをするのです。錆びてしまった暗殺者の刃を……」

 

そして不敵な笑みを浮かべてこう言った。

 

「今日一日、本気で殺しに来るといい。放課後までに君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう……」

 

「くそっ……!」

 

僕たちは殺せんせーの気迫に黙っていることしかできなかった。

 

そしてこの瞬間、僕らは悟った。今日は大変なことになる。僕らはみんなそう感じた……

 

「……人ん家の小麦粉を勝手に使うな。それと、1つ寄越せ」

 

(((……それ周防(くん)のだったんだ)))

 

 

***

 

 

零二side

 

1時間目 数学

 

朝の赤羽のおちょくりも失敗し、場面が移り、1限の時間。

 

「このようにどうしてもこの数字が余ってしまう……そんな割り切れないお悩みを持つあなた!でも大丈夫。ぴったりの方法を用意しました……」

 

担任がよくわからない超生物なことを除けば普通の授業の光景だった。俺は(赤羽)の席を横目で見る。すると、奴はポケットからチャカを抜いていた。

 

だが遅い。このスピードじゃあのタコはもう抜いてあることに気づいているだろう……

 

《バシっ》

 

ほらみろ。

 

「あーカルマくん銃を抜いてから撃つまでが遅すぎます」

 

すると、なぜか赤羽の爪がなんだか可愛くなっていた。

 

「暇だったのでネイルアートを入れときました」

 

「クッ……」

 

なんでそうなる?

 

はっきり言ってタコの手入れとやらは理解ができないが、こんな感じで、1限から赤羽はタコに暗殺を仕掛けていた。だが、2限目も3限目も尽く失敗していたが。

 

 

***

 

 

4時間目 家庭科

 

4時間目は調理実習だ。基本は席順だが俺は人数の都合で木村の班に入ることになった。どうやら、俺を引き受ける班を決めるじゃんけん大会が行われ、木村が負けたらしい。ちなみに雰囲気は最悪だ。重苦しいことこのうえない。

 

「「ぬむむむむ……」」

 

そして、さっきからポニーテールが特徴の矢田とかいう女子とオレンジ髪でふわふわした雰囲気の倉橋とかいう女子が頬をわずかにむくれさせながら、睨むような顔をして俺の方を見つめてくる。鬱陶しいったらありゃしない。

 

「……なんだお前らさっきから、鬱陶しい」

 

「「ひぃぃぃ……」」

 

あまりにも鬱陶しかったので、俺がこう言うと2人は泣きそうになっていた。

 

「す、周防くん料理上手だなって思って……」

 

「そ、そう。なんか意外だなーっていうか……、ご、ごめんね。失礼だったよね?」

 

すると、2人は何か間違えたら殺されるかのような雰囲気でこう聞いてきた。

 

(どんだけびびってるんだよ……)

 

「まあ、俺は一人暮らしだからな。普段から作っているから慣れているだけだ」

 

俺が普通にこう答えると2人の緊張がわずかに和らぐ。それと同時に他の班員の緊張もわずかに和らいだ。

 

「え?中学生で一人暮らし?珍しくない?」

 

「お前らの感覚ではそうなんだろうな。だが、俺からしたら普通だぞ」

 

(((そ、それはグレるわ……)))

 

こいつらの感覚は知らないが、俺は1人で暮らすことが当たり前だった。今更、特に思うことは何もない。

 

「でも、お金とかは大丈夫なのかい?一人暮らしって結構お金かかるだろう……?」

 

メガネの男……竹林がこう聞いてくる。

 

「まあ、ある程度の稼ぎはあるからな」

 

ぶっちゃけ、金には余裕がある。毎日高級料理を食っても、心配いらないくらいにはな。

 

すると、矢田がぎこちない顔してこう言った。

 

「……す、周防くんそのお金ってどこから出てきたお金?」

 

「ん?まあパチンコ玉交換したり、馬や船の順番当てたり、ポーカーでチップ増やしたりして出てきた金だな」

 

(((ギャ、ギャンブルだ……)))

 

コイツら引いてるな……

 

ただ、俺は生活のために賭け事をしている。その辺の中毒者とは違う。そして、それで飯が食えるくらいの稼ぎはあるのだから文句はないだろ。

 

「ち、ちなみに他の人からお金もらっているとかは?(噂とか聞いてると、やってそうだよぉ……)」

 

倉橋が言葉を選びながらこう聞いてくる。俺がカツアゲしてないか聞いてるんだろうが、コイツらは俺のことを何だと思っているんだ?

 

「そんなことするわけないだろ?それやったら俺が型にはめられるわ」

 

少なくとも、俺はそんな仁義外れの外道に成り下がったつもりはない。

 

「え?でも周防くんカツアゲとかしたからここにきたんじゃないの?」

 

「あー、あれは人から金奪っていた奴を型にはめただけだな」

 

「そ、そうだったんだ……(知らなかった……)」

 

ここまで話すと、さっきまでの警戒心は多少は無くなった。

 

「なあ周防、そういえばさっき、小麦粉とかお前の家のって言ってたけど、これ全部お前の家から持ってきたんか?」

 

木村がこう聞いてくる。

 

「ああ、今日使っている調理器具や調味料は全部俺の家から持ってきてるな」

 

「「「えー!!!」」」

 

そんなに驚くことだろうか。

 

「なんで、周防くんの物を使うことになったの!?」

 

矢田が身を乗り出しながらこう聞いてくる。

 

「朝、あのクソダコに頼まれたんだよ。使わせろって。だから休みと引き換えに使わせてやった」

 

はっきり言って不本意だ。休みをもらえなかったら死んでも貸さなかっただろう。

 

「へえ、意外。殺せんせー、いくら自分のお願いとはいえ、休みを容認するとは思わなかった」

 

どうやら、あの教育バカが俺の条件を飲んだことに矢田たちは驚いているようだ。

 

「まあ認めないと、あいつにとって死ぬほど恐ろしいことになると思うぞ。あれを見てみろ」

 

俺はそう言いながら、赤羽たちの班を指差す。

 

「エプロンを忘れてますよカルマくん」

 

そこには……、めちゃくちゃ可愛いエプロンをつけた赤羽がいた。どうやらまた失敗したらしい。寺坂にバカにされた赤羽は顔を真っ赤にして握り拳を固めていた。

 

その様子を見ながらこう告げる

 

「今のところは全くうまく行ってないが……、赤羽はタコの教師としての信頼をゼロにしようとしている。俺はそれを利用しただけだ」

 

「え?どういうこと?」

 

「元々の契約内容は『俺がこれを貸したら()()()()言うことを聞く』だ。そして、俺は休みの権利を要求した。そして、奴が約束を破ったら、その音声データを赤羽に売り捌くと言っただけだ。だが、奴はそれを死ぬほど恐れている。『生徒との約束すら守れません』ってネタが赤羽、強いてはお前らに知られるのを……な」

 

(((詐欺師の手口だ……)))

 

「まあこういうことだ。もういいか?とりあえず俺らのところは、火が通り終われば完成だ。時間は3分と言ったところか……俺は一旦外へ出るから時間になったら盛りつけておいてくれ」

 

話も一段落ついたところで、トイレに行きたくなったので外に出る。

 

それと、このままいるとタコからダル絡みされそうだからな……

 

 

***

 

 

放課後。

 

そして、結局今日一日、赤羽は何もできなかった。

 

まあ予想通りだ。赤羽は“不意打ち”の技術は群を抜いてる。それこそプロを凌駕するくらいに。だが、不意打ちは初見が一番効力を発揮する。いわば初見殺しだ。つまり初見のタイミングで殺せなかった時点であいつの負けだ。そんなもの警戒されてしまえばただの子供騙しにすぎないのだから……

 

赤羽は爪を齧りつつ裏山の崖に座り込んでいた。近くの木の上からその様子を見ていると赤羽に潮田が声をかけるのが目に入った。

 

「カルマくん、焦らないでみんなと一緒にやっていこうよ。殺せんせーにマークされちゃったらどんな手を使っても1人じゃ殺せない。普通の先生とは違うのだから」

 

潮田の言うとおりだ、奴にマークされたら実質詰みだ。

 

赤羽業。

かつてコイツは本校舎の教員から気に入られていた。成績が良かったから。しかしE組の生徒を虐めているA組の先輩を殴ったことでその教員からの評価はひっくり返る。今まで言われてこなかったような罵倒の数々。それを言われていくたびに奴の中で“先生”というものは死んでいったのだろう。

 

「やだね。俺がやりたいんだ。変なところで勝手に死なれる方が一番ムカつく」

 

「カルマくん、今日はたくさん先生に手入れされましたねぇ……」

 

赤羽が顔をしかめながらもこう呟く。そこに顔を緑のシマシマにしたタコが現れて、赤羽に近づいて行った。

 

「まだまだ殺しに来ても良いですよ?もっとピカピカに磨いてあげます」

 

すると、赤羽は立ち上がってタコの方へ向かい直った。背後には足場がない。

 

「ねえ、確認したいんだけど……殺せんせーって“先生”だよね?」

 

「はい」

 

「先生ってさぁ……()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「——!」

 

(なるほどな……)

 

俺は赤羽がやろうとしていることが分かった。あいつは最後に()()()()()()()()()()()()()()()()()。己の命を代償として……

 

「もちろん。“先生”ですから」

 

俺は止めに入るか迷っていた。赤羽のやろうとしていることは崖を飛び降りながらタコに攻撃すること。タコが赤羽を助けに入ったら生命的な意味での死。タコが助けに入らなければ、生徒を見殺しにしたという教師としての死。その選択をタコに突きつけようとしている。どっちにしても、赤羽に訪れる結末は死だけだ。

 

「そっか、良かった。なら……殺せるよ」

 

だが、俺はこのまま様子を見ることを選んだ。

 

それは、俺がとっくに他者の命はどうでもいいと言えるくらいの“人でなし”に成り下がっていたからなのか、それともタコ教師を心のどこかで信頼していたからなのか

 

——それは俺にはわからない。

 

赤羽がチャカを抜いて笑う。

 

「……確実に」

 

「あ……」

 

そして、崖から飛び降りた。

 

俺は全力で集中する。タコの行動を“観察”するためだ。赤羽の命を見捨てたからには必ず見極める。

 

(集中しろ!全身の毛穴をブチ開けろ!)

 

赤羽が飛び降りた瞬間、タコは猛スピードで腕を伸ばしながら急降下、それも赤羽の肉体が耐えられるギリギリの速度で、そのまま触手を網目状にして赤羽をキャッチした。タコの粘液で蜘蛛の糸のように赤羽の身体を落とさないように貼り付けている。タコは多少はダメージを受けていたが、それでも致命傷にはなっていないようだった。

 

そして、気付いたらタコと赤羽が戻ってきた。赤羽は憑物が落ちたようないい表情をしていた。

 

……どうやらタコの勝ちのようだ。

 

赤羽の誤算。それはタコが通常の生物とは大きくかけ離れていることだった。普通ではありえない身体能力。普通ではありえない再生能力。普通ではありえない生命力。これらがあれば、赤羽を助けつつ、多少ダメージを受けつつも、自らの命も守ることなど容易かったのだ。

 

「カルマくん、平然と無茶したね……」

 

「別に……今のが考えてた限りじゃ一番殺せると思ったんだけど」

 

「おやおや、もうネタ切れですか? 報復用の手入れ道具はまだたくさんありますよ。君も案外ちょろいですねぇ……」

 

舐め腐った顔をした奴が昨日赤羽に言われた台詞をそのままかえす。それに対して赤羽はこう返した。

 

「殺すよ。明日にでも」

 

その表情(かお)は今まで見た中で一番輝いていた。

 

 

***

 

 

【おまけ】

 

4時間目 家庭科 零二が外へ出て数分後……

 

「矢田っちの班すごくいい匂い!味見してもいい?」

 

「本当だ、俺もいいか」

 

矢田の班の料理の匂いに釣られた岡野と磯貝が味見をしにやってきた。

 

「美味しい!すごい美味しいよ!矢田っち!」

 

「本当だ、マジで美味いな!」

 

矢田の班の料理を食べた2人は絶賛の声を上げる。

 

「なになに?私たちも食べさせてよ」

 

「私もいいかな?」

 

「じゃあ僕も……」

 

すると、その声と匂いに釣られて中村、茅野、渚など多くの生徒が味見をしにきた。

 

「美味しい!私たちの班ここまで上手にできなかったよ!渚はどう?」

 

「うん、すごく美味しい!矢田さんたち料理得意そうだもんね」

 

「「アハハハハ……」」

 

クラス中から矢田や倉橋へ絶賛の声が上がる。だが、作った本人(周防零二)は不在だし、その人物はあまりにも意外すぎる人物のため、矢田たちの班には若干気まずい空気が流れていた。

 

すると、そこへ殺せんせーがやってきた。

 

「おや?みなさん集まってどうしましたか?」

 

「聞いてよ殺せんせー!矢田っちの料理がもの凄く美味しいの!」

 

「にゅや!もしや……」

 

それを聞くと、殺せんせーは目を輝かせて矢田の班のもとへ近づく。そして、殺せんせーの次の一言でE組に激震が走った。

 

「これは……やっぱり!周防くんの手料理ではありませんか!先生、今日一日ずっと楽しみにしてました!」

 

「「「えええええええええ!!!!!」」」

 

殺せんせーの言葉で矢田の班以外の生徒は悲鳴のような声をあげた。特に岡野は信じられないといった表情で矢田を見つめている。

 

「嘘でしょ……。ねえ矢田っち?本当にあいつが作ったの?」

 

「う、うん……。手際良すぎて、正直プライド傷ついた……」

 

「しかも、教え方も上手かったぞ……」

 

「普段とのギャップが凄すぎて……」

 

矢田たち女性陣が主導でこの料理を作っていたと思った生徒たちは、ヤクザ紛いの問題児(周防零二)が作っていたことに衝撃を受けていた。

 

「おいおいおい嘘だろ!」

 

「嘘でしょ、ありえない……」

 

「あいつ、あのナリで料理男子だったの……」

 

戦慄する生徒たちに対して殺せんせーは自慢げに話す。

 

「そうでしょう!周防くんの手料理は絶品です!先生もたまに朝ごはんをお邪魔させていただいてます!」

 

そう言いながら自分のお皿に零二が作った手料理を盛り付けていた。

 

「やけに最近一緒に来るなと思ったら、そういうことだったのか……」

 

「殺せんせー、教え子の家に飯食いに行ってるのかよ……」

 

「これは流石にあいつに同情するわ……」

 

「ちゃっかり自分の分も盛り付けているし……」

 

「うちの班、量が多いなって思っていたけどそういうことだったんだね……」

 

その様子を見ていた生徒たちはドン引きしていた。

 

 

 

俺が家庭科室に戻ると倉橋から声をかけられた。

 

「ねぇ、殺せんせーに朝ごはんを食べさせているって本当?」

 

「……ああ、定期的にやってきて勝手に家の中に入ってきてる。しかも今月給料やばいらしいから、これからさらに頻度増えると思うわ……」

 

俺は遠い目をしながらそう答える。その言葉に倉橋たちはドン引きしていた。

 

結局、のあいつの評判は赤羽関係なく下がったそうだ。ざまあみやがれ。ちなみに俺の評判は若干上がったらしい。

 

 





あとがき

ここまで読んでいただきありがとうございます。

今回もカルマくん回でした。今回も零二くんは徹底的に傍観することを選んでいましたね。ただ、興味がないわけではありません。カルマくんの最後の暗殺も零二くんはしっかり見届けていました。深く干渉しない。でも、見てはいる。それが、零二くんなりの暗殺教室との関わり方です。

そして、零二くんはめちゃくちゃ料理ができます。料理の腕は作中トップの腕前です。これは零二くんが、前から一人暮らしをしていることが理由なのですが、零二くんが一人暮らしをしている理由についてはまた別の話にしたいと思います。

そして、次回はいよいよあの先生登場です。では、次回もよろしくお願いします。


【次回予告】

「フン!使えないわね!まあいいわ。アンタたち、くれぐれも私の邪魔をしないようにね」

そう言い捨ててビッチはいなくなった。まじで何だったんだあいつ。

そして、近くにあいつの気配が消えたことを確認してから赤羽と話す。

「……おい、あいつが近くにいること気づいたか?」

「いや、どうやらあの人“口だけ”ではなさそうだね」

はっきり言ってめんどくさいことは間違いないが、どうやら少し侮っていたようだ。あの女の評価は多少改める必要があるな……



次回 『ビッチの時間』


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