暗殺教室 零の瞳に映るもの   作:ディーエー

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みんなの時間が配信されましたね。それ見てたら投稿遅れてしまいました。いつか、蛍ちゃんや梓さんも出せればいいなと思ってます。

では、本編です。


第15話 テストの時間

 

中間試験当日

 

俺は本校舎の教室にいた。普段は旧校舎で授業を受けさせられてるE組もテストに関しては、本校舎で受けなければならないというルールがある。名目上は不正の防止と公平を記すためらしい。

 

一見、普段とは違いきれいな教室で集中して試験の臨める公平なルールに思える。だが、実態はそうではない。

 

まず、試験監督は本校舎の人間だ。試験中は試験監督がルール。つまり、裏を返せば試験監督はその間はやりたい放題できるって話だ。当然、試験中の妨害も行われる。

 

そして、本校舎での試験ということは、もちろん本校舎の連中と顔を合わせるタイミングもある。つまり、テスト直前の詰め込み作業を邪魔する輩がE組の試験会場の教室に現れて、集中を乱してきてもおかしくはない。

 

俺たちE組はこのアウェイの環境で試験をやりきらなければならないのだ。

 

(しかし、全員が50位以内か……)

 

昨日、あのタコは『全員が50位以内を取れなければ教室を去る』と宣言した。あのタコの見立てでは可能ということなのだから決して夢物語ではないのだろう。事実、奴を暗殺することよりも難易度は数億倍低い。俺も、()()()やれば、達成することは可能だと見ている。

 

しかし、俺にはそう簡単に行くとは思えなかった。

 

 

***

 

 

生徒たちがテストを受けている頃の旧校舎

 

《バン!》

 

「本気なの?クラス全員50位以内に入らなければ出ていくって」

 

教師として潜入している殺し屋イリーナ・イェラビッチとターゲットの超生物が旧校舎の校庭で話をしていた。

 

試験監督は本校舎の教師が行う。つまり、テスト期間中はE組の教師は暇なのだ。まあ、烏間さんは防衛省の仕事があるから、忙しいことには変わりはないが、ビッチとタコは他にやることはない。

 

ナイフを投げながら教師として潜入しているビッチはタコにこんな質問をする。

 

「はい」

 

「できるわけないじゃない。この間まで底辺の成績だったんでしょあの子たち?」

 

タコが即答で返すと、ビッチは、少し不安そうな眼差しでタコを見据えた。

 

ビッチにとってこのタコがこの教室からいなくなるのは死活問題だ。当然だろう。ターゲットが目の前から消えるということなんだから。

 

そして、それは自身の暗殺失敗という経歴に傷がつくということになる。

 

「どうでしょう?この間までは知りませんが、今は私の生徒たちです。ピンチの時でもちゃんと我が身を守ってくれる。私が彼らに授けているのはそういう武器です……」

 

しかし、タコは全く心配していない様子で本校舎を眺めながらそう答えた。

 

 

***

 

 

コツコツコツと試験監督の人間が立てる音が周りの生徒たちの集中力を妨げる中、試験が始まった。

 

俺はまず問題を見ずに目を瞑り、自分の全リソースを耳へと集中させる……

 

《カタカタカタ》

 

《カキカキカキ》

 

どうやら他の連中は皆、手を止めずに動かせているようだ。これなら奴の自信にも納得がいく。

 

このまま何事も起きなければ全員50位以内も可能だろう。

 

そう判断した俺はここでようやく問題に目を落とす。だが、すぐには解かない。まずはすべての問題に目を通す。視野は広く、問題は全体を見渡す。どこかにヒントがあるからな。そこから得られる情報を全て処理する。

 

どの問題がとりかかりやすいか。

 

この問題は何を求めているのか。

 

どの情報が足りないか。

 

どこから攻めるべきか。

 

……そして、俺は見つけてしまった。

 

「なるほどな……」

 

隣にも聞こえないような小さな声が出る。どうやらタコはまたしてもあの理事長にやられたようだ。

 

——俺の目の先には()()()()()()()()()()()の問題が羅列していた

 

E組は元々の試験範囲の内容しか勉強していない。まあ、俺や赤羽のように先の範囲まで触れている人間も中にはいたが、それは当初の内容を早い段階で全て終わらせていたから。

 

ほかのE組の連中は、素行不良で落とされた赤羽などとは違って、学力が劣っていたからE組に落とされた人間がほとんどだ。当然、復習には時間がかかるだろうし、テスト範囲外にまで手を触れる余裕などなかっただろう。そんなやつが習ってもいないことを出されてもできるはずはない。

 

(さて、どうするか……)

 

俺はこのテストをどう受けようか考えていた。

 

まず、タコはクラス全員50位以内を目標にさせたが、そもそも俺は暗殺に参加していない。いわば部外者みたいな存在だ。だからそれを理由に、テキトーにテストを受けることもできた。

 

そして、これで全員50位以内は不可能になった。しかし、これは不測の事態だ。どちらかというと、これを予見できなかったあのタコの責任。生徒たちに責任はない。

 

つまり、()()5()0()()()()()()()()()()()()

 

俺はカンニングにならないようにこの状況でも()()()5()0()()()()()()()()()()()()()に目を向ける。このテスト期間の間、クラスに口を挟むことなく傍観していたこの男について考える。

 

この男ならこの後どうするだろうか……?

 

この男の思考を脳髄に降臨させる。そして、1つの結論が浮かんだ。ならば俺は、こいつの邪魔にならない点数を取るとしよう。

 

そこまで考えると、俺はようやく試験問題にとりかかった。

 

 

***

 

 

数日後

 

「これは一体どういうことでしょうか?テストの公正さを著しく欠くと感じましたが」

 

テストの結果が発表される日。E組の教室では重苦しい空気の中、烏間さんの抗議の声がただ虚しく木霊していた。

 

「伝達ミスなど覚えはないし、そもそもどう考えても普通じゃない。テスト2日前に出題範囲を全教科で大幅に変えるなんて」

 

後ろから見ていてもクラスの連中の表情は暗いことが一目でわかる。近くの席の奥田や速水は俯いているし、岡野は悔しそうに身体を震わしている。E組の中では学力上位の磯貝や片岡も雰囲気は暗い。

 

俺の目の前で暗い顔をしている連中は誰も50位以内を取ることができなかった。

 

今回のテストは直前で出題範囲が変えられていた。そしてその情報は、E組には知らされていない。彼らはそれに対応できなかったのだ。

 

ちなみに、本校舎の連中は変更があった範囲を浅野理事長から直々に教わったらしい。

 

烏間さんから焦りの表情が見える。そりゃそうだ。タコがここの教室からいなくなったら一番困るのはこの人なのだからな。普段は冷静なこの人の声にも苛立ちが混じる。だが、あの理事長にとってはそんなことは知ったこっちゃないんだろう。

 

すると、タコの暗い声が響く。

 

「……先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見すぎていたようです。君達に顔向け出来ません」

 

この結果に責任を感じているタコは俺たちに背を向けながら申し訳なさそうにそう言った。その声でさらにE組の教室の雰囲気は暗くなる。

 

(……さて、ここまでは予想通りだ。赤羽、お前はどうする?)

 

俺は隣の席に視線を向ける。すると、この男が動いた。

 

《パンッ!》

 

直後、タコいたところにナイフが飛ぶ。そしてこの男の声が響いた。

 

「いいの?顔向けできなかったら、俺が殺しにくるのも見えないよ?」

 

「カルマくん!先生は今落ちこんで……ん?」

 

今のタイミングで暗殺を仕掛けてきたことにタコはキレる。だが、赤羽はそれをお構いないような表情のまま落ち込むタコの前まで歩き出し、自らのテストの答案を差し出した。

 

「——!」

 

その点数を見たタコの表情が変わる。

 

赤羽業

国語 98点

数学 100点

英語 98点

理科 99点

社会 99点

 

合計 496点 総合4位 E組1位

 

「俺、テストの問題変わっても関係ないし」

 

——そこに書かれていた点数は、E組どころか、学年でもトップクラスのものだったから

 

赤羽業

E組にきた理由は素行不良。もともと学力は学年トップクラスだ。そして、こいつはあのタコに範囲外の内容まで予習させられた。このくらいの点数を取ることも造作もないだろう。

 

「わあ〜」

 

「うお、すげえ……」

 

「数学満点かよ……」

 

教壇にテストの答案を差し出した赤羽のもとに俺以外のクラス全員が集まり、赤羽の点数に称賛の声を上げている。だが、それだけじゃない。

 

赤羽はニヤリと笑った。

 

「俺だけじゃないよ。これ!」

 

そう言って赤羽はもう1枚の紙を差し出す。それは、学年の上位50人の名前と成績が張り出された順位表だった。今度はその紙にクラス全員の注目が集まる。

 

赤羽はその紙のとある箇所を指差しながら話を続ける。

 

「一番下。見てみなよ」

 

「「「——!」」」

 

E組の連中は紙に書かれている表の一番下に書かれた名前を見ると、全員驚きの表情に変わった。

 

なぜなら……

 

周防零二

国語 80点

数学 80点

英語 80点

理科 80点

社会 80点

 

合計 400点 総合50位 E組2位

 

——そこにあった名前は俺のものだったのだから

 

赤羽は笑いながら教室の一番後ろに座ったままの俺に向かって声をかけてくる。

 

「周防くんさ、この順位狙ったでしょ?ご丁寧に点数まで揃えてるし」

 

「ノルマは5()0()()()()だったはずだ。そこさえ守ってれば、どんな点数でもいいだろ」

 

赤羽の若干呆れたような声に俺はこう返した。

 

そして、赤羽はタコの前に立つと奴の顔を見ながらこう言う。

 

「俺と周防くんの成績に合わせてさ、アンタが余計な範囲まで教えたからだよ。だから出題範囲が変わっても対処できた。()()()()()()()()は点数で遊ぶだけの余裕があったみたいだしね。だけど……」

 

そう言うと赤羽は笑顔になって言葉を続ける。

 

「俺はこのクラスを出る気ないよ、前のクラス戻るより暗殺の方が全然楽しいし、ちなみにそっちはどうするの?わざわざ5()0()()()()()()()()()周防くん?」

 

赤羽の嫌味ったらしい言葉とともに赤羽に向いていたクラスの連中の眼差しが俺の方へ向く。その視線は驚きと悔しさが混ざりつつも、わずかな期待が込められているように感じられた。

 

「俺は出ていく……って言ってもどうせ本校舎の教師が認めないだろう」

 

本校舎に戻る条件は定期試験で学年上位50位という条件を満たした上で、本校舎の教師に認められること。俺や赤羽は素行不良でE組送りになった。赤羽は停学が明けたばかりだし、俺の悪評はこの辺一体に広まっている。

 

おそらく、まだ素行不良の反省をしていないなどと言われて本校舎に復帰することは許されないだろう。

 

「それにな……」

 

俺はタコの顔を見つめてこう言った。

 

「俺は一度した“約束”は必ず守る。あんたとの“約束”もな」

 

こう言うとタコはハッとした表情でこちらを見た。

 

『君には彼らの変化を見てほしいのです。彼らが現実を見て成長する姿を是非見てあげてほしい』

 

前に俺はこのタコと約束した。こいつらの変化を見ると。こいつらが変わるのはこれからだ。この教室を去るのはそれを見届けてからでも遅くないだろう。

 

赤羽はニヤリとした笑みを崩さないままこう続けた。

 

「で?どうするの?『全員50位以内に入れなかった』って理由で、シッポ巻いて逃げちゃうの?周防くんとの“約束”もすっぽかして?」

 

そして顔をタコに近づけた赤羽は煽るようにこう言った。

 

「それって結局さ、殺されるのが怖いだけなんじゃないの?」

 

「———!」

 

赤羽がそう言うと露骨に表情を変えるタコ。相当苛ついているな。

 

すると、周りの奴らの顔に笑顔が戻った。片岡が前原に何をかしろというアクションをする。それを見た前原の表情がいやらしい笑みに変わった。

 

「なーんだ、殺せんせー怖かったのか!」

 

「それなら正直に言えばよかったのに」

 

「ねー」

 

「怖いから逃げたいって」

 

前原を筆頭に赤羽の煽りにクラスの連中が乗っかった。それに対し、タコはかなりイライラしている様子だ。そろそろ爆発する頃だろう。

 

「にゅやー!逃げるわけではありません!」

 

ほら見ろ。クラスの連中の煽りに耐えかねたタコは予想通り爆発した。それに、赤羽が追撃する。

 

「ヘー、じゃあどうすんの?」

 

「期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!」

 

「「「あはははははは!」」」

 

タコがこう言うと教室が笑い声に包まれた。こうして、タコの残留が決定したのだった。

 

 

***

 

 

その日の放課後

 

「ねえ、周防くん」

 

「なんだ?」

 

家へ帰ろうと校舎の外へ出ると、赤羽から声をかけられた。

 

「どうしてわざわざ50位をとったの?本気出せばもっとできただろうし、テストの内容が範囲外だったのが分かっているなら、()()()()()()()平均くらいにしてもよかったでしょ?」

 

赤羽がこんなことを聞いてきた。俺はため息を吐いてから口を開く。

 

「問題がテスト範囲から逸脱してることは最初に気づいた。だから、お前がどうするのかを考えたさ。お前なら()()()()()()()()()()()で『タコに範囲外まで教えてもらったから』と言って黙らせると踏んだ。ただ、それには、俺の点数が邪魔になる。だから、お前の邪魔にならないような点数をとった。満足か?」

 

問題がテスト範囲から外れている以上、他のE組の連中の50位以内はない。だから、元々学力は学年トップクラスで試験範囲外の内容まで触れている赤羽がどうするのかを考えた。こいつなら、今日みたいに、誰も文句の言えないような高得点を取って、それを盾にタコを残留させようとするだろうと。

 

だが、赤羽の理論は『タコが自分に合わせて試験範囲外の内容までやらせたからいい点が取れた』というものだ。しかし、その理論を成立させるには、一緒に勉強させられた俺の点数もある程度の成績がないと成り立たない。

 

だから、それを邪魔しない最低限の成績をとった。俺はE()()()()()()()()()()約束したからな。

 

すると、赤羽は少し考えるような素振りを見せる。だが、すぐに笑顔に戻った。

 

「さすが、“白の預言者”と言われているだけあるね。いいよ、そういうことにしといてあげる」

 

「その気持ち悪いあだ名はやめろ。みっともない……」

 

その名前は恥ずかしいからまじでやめてほしい。

 

すると、話しながら歩いている俺たちのところへもう1人の影が近づいてきた。

 

「おーい。周防くん、カルマくん!」

 

潮田の声が響く。潮田は腕を上に上げて手を振りながら俺らのところへ走ってきた。

 

「2人ともテスト凄かったね。テスト範囲変わったのに50位以内に入るなんて……」

 

潮田はそう言ってまた俺らに羨望の瞳を向ける。こいつは、以前俺や赤羽を()()()()()の自分たちとは違うと言って頼ろうとしていた。

 

しかし、今日の潮田はいつもと違った。ここまで言うと潮田の目の色が変わったのだ。

 

「でも僕も頑張るよ。2人みたいになれるように」

 

そしてこいつはこう言った。

 

前みたいに100%頼ろうとするのではなく、自分も力を付けると言った。

 

これを聞いた赤羽が笑顔になる。

 

「へえ〜、ずいぶん大きく出たね♪周防くんどう思う?」

 

「俺らみたいな悪党になったらダメだと思うぞ。あのタコが泣く」

 

「あはは、だってさ渚くん」

 

俺が一息吐いてからこう言うと、赤羽は軽く笑った。その顔はとても楽しそうだった。

 

「ねえ、周防くん」

 

すると、潮田は真剣な表情で俺の顔を見る。

 

「まずはごめん。4月のあの時、君の話をしっかり聞かなくて……。でも、いつか周防くんに追いつけるように頑張るから。その時は僕らに力を貸してほしいです」

 

そう言って頭を下げた。どうやら、こいつには俺やタコの言葉の意味が少しは理解できたらしい。

 

俺はタコの言葉を思い出す。

 

(人は変わるか……)

 

「……じゃあ、俺に追いつこうとしているうちは無理だろうな」

 

俺は潮田に突き放すような言葉を向けた。しかし、どういう訳か潮田は笑顔だった。

 

 





あとがき

ここまで読んでいただきありがとうございます。

中間試験回でした。E組は突然の試験範囲の変更に翻弄されてカルマくん以外は実力を発揮できませんでした。

そんな中、零二くんは見事目標達成。素晴らしいですね!(白目)

ですが、最後、渚くんには、心境の変化を感じられる言葉が出てきました。零二くんや殺せんせーが伝えようとしていたことは、少しずつ伝わってきています。

次回はいよいよ修学旅行です。第4話で暗殺のボイコット宣言をしてから、カルマくん以外に録な友達がいない(最近は渚くんも声をかけていますが……)、絶賛ほとんどぼっちで、他のクラスメイトとは全く絡みがない零二くんですが、修学旅行ではさすがに他のクラスメイトとも絡んでもらいます。

これがきっかけで、仲が深まるといいのですが……

それと、明日、鉄虎さんや中間試験までの情報や設定をまとめたものを公開しようと思っているのでよろしければこちらもご覧ください。

では、次回もよろしくお願いします。


【次回予告】

「も、もう私たちのところで面倒見るしかなさそうね……」

「終わった、私の修学旅行……」

「だ、大丈夫だよひなたちゃん。周防くん、意外と頭いいし料理も上手だし……」

「その無駄にハイスペックなのもムカつくのよ!!」

倉橋さんが必死に場を盛り上げようとするが、他のみんなは死んだ魚のような目をしている……。

こうして、私の修学旅行は終わりを告げた(班には周防が入ることになった)……



次回 『修学旅行の時間』



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