いつも私がただ書きたいものを書いているだけの話に付き合ってくれるたくさんの皆様、本当にありがとうございます。どうも、シルバーウィークに絶賛38.2度の発熱をして寝込んでいるディーエーです。茅野っちごめん。風邪ひいたからプリンの暗殺には参加できそうにないや……
そういうわけで今週は推敲作業がいつもより疎かになってる気がするので誤字や言い回しがおかしいところも多いかもしれません。もし見つけたら優しく教えてください……
では、本編行きます。
「日常会話なんて実は単純。周りに1人はいるでしょ?『マジすげえ』とか『マジやべえ』だけで会話を成立させるやつ。その『マジ』に当たるのが、ご存知『really』。木村、言ってみなさい」
ある日の英語の時間
この時間はビッチが英会話の授業を担当している。ビッチの授業スタイルは英会話全振りだ。その会話のシチュエーションを説明して、誰かを指名して、全員の前で発音させる。実践を通して身体で覚えさせるスタイルだ。
今回は木村が指名されたようだ。
「……リ、リアリー」
「はいダメ」
指名された木村は少し気まずそうに発音するが、ビッチは木村の回答に指でバツのマークを作って即答で否定した。
「LとRがごちゃごちゃよ。LとRの発音は日本人とは相性が悪いの。私としては通じはするけど違和感があるわ」
その言葉の通り、木村の発音はネイティブな外国人からしたら違和感のあるものだった。そもそも日本語は世界の中でも発音が独特だと言われている言語だ。日本語を習いたての外国人の発音が若干違和感を感じるのと同様に日本人の外国語の発音も違和感を感じる人間も多い。
ビッチは一瞬俺に気まずそうな目線を向けると教室全体を見渡してこう告げる。
「相性が悪いものは逃げずに克服する。これから先、発音は常にチェックしてるから。LとRを間違えたら公開ディープキスの刑よ」
だが、相性が悪いからと嫌厭しているといつまで経っても成長しない。特に言語はコミュニケーションに必要不可欠だ。この発音を克服すれば外国人とのコミュニケーションも一気に円滑になる。そうすればより金になる仕事を得られる機会も増えるし将来的にも役に立つだろう。
ただ、間違えたらディープキスされるのは意味がわからないけどな。まああいつにビビられてる俺は今まで一度もあいつの授業で当てられたことはないのだが……
そしてあの言葉を最後にビッチの授業は終わった。
「ねえ周防くん。ビッチ先生変わったよね」
授業後、隣の赤羽がこう声をかけてきた。
確かにビッチは変わった。授業の内容もビッチにしかできないためになるものだし、矢田や倉橋を筆頭に生徒からの評判も悪くない。
「『相性が悪いものは逃げずに克服する』ね。あいつの口からこんな言葉が出るなんてな」
正直、さっきの言葉がビッチの口から出てきたことは驚いた。『教師なんてやったことない。暗殺に集中させて』と泣きベソかいてた頃とは大違いだ。
「でも一瞬気まずそうだったよ。やっぱり気にしてんじゃない?『周防くんにビビって逃げてる私が何言ってるんだろう』、って」
「さあな」
確かにこういう意味で言うなら矛盾しているのかもしれない。まあ、俺はあいつからしたら教師に暴力を振るった危険な生徒だ。それに向こうも俺に殴りかかってきたのもあるし、教師の癖に俺に負けて立場的にも気まずいのだろう。
あの言葉はそんな自分に言い聞かせていた言葉なのかもしれない。ただ、別に俺はあいつと話したいことなんて特にないしタコや赤羽みたいにダル絡みされても面倒だからほどほどにはして欲しいところではあるが……
それでもこの1ヶ月間、俺たちはビッチが変わる姿を見てきた。あいつは確かに変わったし、変わろうと努力しているのは事実だ。
だが……
「……変わることと“存在価値”を示すことはまた別だ」
いくら努力しても結果を残して“存在価値”を示さなければ何の意味もない。それはこの学校でもそうだし、プロの世界で命のやり取りをしていたビッチはこのことをよくわかっているだろう。
これは勘だがそろそろ何か起こる気がする。そんな予感を感じながら俺はビッチが出た扉を見つめていた。
***
放課後
イリーナside
「あーもう、面倒臭いわ授業なんて」
今日一日の授業が終わり少々気が立っていた私、イリーナ・イェラビッチは職員室の私の机に突っ伏した。
「その割には生徒のウケはいいようだぞ」
そんな私を見た烏間がこう返したけどなんの慰めにもならない。
私はプロの殺し屋よ。あのタコを殺すために仕方なくここにいる。さっきあの子たちの前では相性が悪いものは克服すると偉そうに言ったけど、それでもめんどくさいものはめんどくさいし、殺しに集中できるならそっちの方がいい。
それに肝心のあのタコは……
——私のおっぱいを景色に見立てて優雅にお茶を飲んでいた
腹が立ってナイフを振るうもこのタコには全く当たる気配がない。このおちょくられている感じが余計に腹立つ。
(こんなところで足止め食っているわけにはいかないのに……)
「やってらんないわ!」
そう言って私は職員室を出る。
一度失敗した私は早く挽回しないといけないのにそれもできる気配がない。それに対する焦りが少しずつ私の心に積もっていた。
だけどそんなことを考えながら廊下を歩いていたその瞬間、私の首に何かが絡まり身体が持ち上げられるのを感じた。
(これは、ワイヤートラップ!)
「Ирина была удивлена.《驚いたよ、イリーナ》」
そこに私のよく知る声が響き渡る。
「Урок был веселым и увлекательным для детей. Это было похоже на просмотр комедийного скетча .《子供相手に楽しく授業。まるでコメディアンのコントを見ているようだった》」
「С-сенсей……!《せ、先生......!》」
厳しい表情で私を睨みながらこう言ったこの人は私の師匠のロヴロ・ブロフスキ。私に暗殺の基礎をたたき込んだ私の先生だ。今は殺し屋を引退して殺しの仕事の斡旋で生計を立てている。
この現場に私を斡旋したのもロヴロ先生だった。
「What are you doing?《何をしている?》」
するとそこに別の声が響き渡る。
「That's not a technique you'd use on a lady, is it?《女に仕掛ける技ではないだろ?》」
その声の主は烏間だ。烏間はロヴロ先生を警戒しながら睨みつけている。だけどロヴロ先生は表情を変えないまま烏間に言葉を返した。
「Не волнуйтесь. Я научил их защищаться от проводов.《心配ない。ワイヤーに対する防御くらいは教えてある》」
それぞれ違う言語で会話する烏間とロヴロ先生。この言葉と同時に私はワイヤーから解放される。
「Who are you? It would be helpful if you could at least speak English.《何者だ?せめて英語だと助かるのだが》」
「これは失礼。日本語で大丈夫だ。別に怪しいものではない。イリーナ・イェラビッチをこの国の政府に斡旋した者……といえばお分かりだろうか」
その言葉に烏間は驚きの表情を見せる。引退したとはいえ殺し屋の世界の重鎮が目の前に現れたら無理もないと思う。
一応、先生はこのタコの殺しを担当する殺し屋を手配してこの国の人間とやり取りする役割を担ってはいたけど、基本はリモートでやりとりしていたから烏間も顔を合わせて話をするのははじめてなのだろう。
だけど、そんな烏間を横目に先生は私に厳しい表情を向けて口を開いた。
「今日限りで撤収しろ。イリーナ」
「——っ!」
ロヴロ先生の口から出てきた言葉は私にとって最悪の言葉だった。
「この仕事はお前には無理だ。お前は正体を隠した暗殺なら比類ない。だが、一度素性が割れてしまえば一山いくらの殺し屋だ」
先生は私に冷たい目を向けてこう言った。
見覚えのある冷たい目線で……
『彼女の武器である潜入ももうタコには通用しません。そしてプロとしては3流以下……はっきり言って
『舐めてねえよ。お前みたいな
ロヴロ先生の言葉は1ヶ月と少し前、あいつが言っていた言葉と重なった。
“用済み”
先生は直接そう言葉にはしないけど、その言葉の意味はあいつの話していたあの言葉と同じだ。
「待ってください先生!私の力なら——っ!」
私の力ならまだやれる。だからなんとかチャンスをもらえないか。そうお願いしようとしたけど気づいた時には背後に回られて、腕を極められていた。
“あの日”、あいつにやられた時と同じように……
「相性の良し悪しは誰にでもある。こここそがお前にとってLとRじゃないのかね?」
先生は私を諭すようにこう口にする。もちろんそれは事実だ。今のところこのタコに私は何もできてないし、ロヴロ先生もこんなところで私を燻らせないように別の現場に入れようとしているのもなとなくだけどわかる。
だけど、あいつに『用済みはさっさとこの教室から消えろ』と言われているように感じて悔しさがこみ上げる。思えば今日もあいつは私を睨みつけながら授業を受けていた。
他の日もそうだ。あいつは烏間には丁寧に接しているのに、私に対しては冷たい視線を向けて雑に扱う。もちろんあの子は私の良いところも見てくれているのは知ってるけど、あの子だけは私のことを教師だと認めてくれていないことに対して少し心に来るものがあった。
「半分は正しく、半分は違いますねぇ」
すると、顔をウルトラクイズみたいにしたタコがやってきて私たちを引き離した。
「確かに彼女は暗殺者としては恐るるに足りません。クソです」
だけど、やってきたタコは私のことを庇ってくれるのかと思ったが思いっきり罵倒された。
「誰がクソだ!」
「……いや、お前中学生の生徒に正面から挑んで負けただろ」
「……それは本当か……?」
思わず言い返した私に烏間が呆れたような顔でこう口を挟むと、同じく呆れたように先生は私を見た。私は何もいえずに俯く。
これを言われたら言い返せない。私があの子に負けたのは事実だし、この前の烏間との会話を聞いている限り、多分私よりも遥かに殺し屋としての素質があるのだろう。
だけど、これをロヴロ先生の前で言う必要ないじゃない……
「ええ、事実です。ですが彼女という暗殺者こそこの教室に適任です。殺し比べてみれば分かりますよ。どちらが優れた暗殺者か」
でも、タコはそんな私を庇った。そしてタコは烏間を指差してこう言った。
「ルールは簡単!烏間先生を先に殺せた方が勝ち!」
「おい待て!なんで俺が犠牲者にされるんだ!?」
ポカンとする私たちや怒鳴る烏間を無視してタコは勝手に話を進める。
「期間は明日一日。イリーナ先生が勝てばここに残る、ロヴロさんが勝てばイリーナ先生は出て行く」
というわけで先生と勝負をすることになってしまった。明日一日で烏間に刃が届かなければ私はこの現場から離れなければならないそうだ。
「……勝手にしろ」
「いいだろう余興としては面白そうだ」
こう言って烏間と先生はこの場を去った。2人は明日に向けて準備をするらしい。
この場には私とタコだけが残される。とても不本意な庇われ方をした私はもうプライドがズタズタだった。
「私を庇ったつもり……?」
もう我慢ができなかった私は目の前のタコに向かって叫んだ。
「どうせ!ロヴロ先生が選ぶ新たな暗殺者よりも中学生にも負ける私の方があしらいやすいと考えてるんでしょ!そうはいくもんですか!烏間も、あんたも、絶対私が殺してやるわ!!」
絶対に見返してやる。このタコも烏間も先生も、そしてあの男も……
この強い決意とともに私はこの場を後にした。
***
翌日
岡野side
「というわけだ。今日一日、迷惑な話だが君らの授業に影響は与えない。普段通り過ごしてくれ」
1時間目の体育の授業終わりに烏間先生がビッチ先生とその師匠の殺し屋の人が暗殺で勝負をしているという話をしてきた。
しかも、もしビッチ先生が負けたら先生はこの教室から出て行かないといけないらしい……
そしてビッチ先生は私たちでもわかってしまうようなハニートラップで烏間先生を誘惑しようとしたけど、もちろんうまくいかなかった。
この様子を見ていた私はビッチ先生が勝つことは難しいということを嫌でも察してしまった。つまりこれはビッチ先生とお別れしないといけないということだ。
「……ビッチ先生、辞めちゃうのかな?」
「……嫌だよ。私、ビッチ先生好きだもん!」
私と同じように考えたのだろう矢田っちと倉橋さんは悲しそうな声をあげる。この2人は特にビッチ先生に懐いていたから当然だと思う。私だってビッチ先生にはいなくなって欲しくない。
「——ということらしいんだけど、周防くんどう思う?」
今この教室ではこの話題でもちきりだった。あの紅白悪魔コンビも教室の1番後ろの机でこの話をしている。そして、カルマに声をかけられた周防の言葉が教室に響きわたる。
「まあ、“用済み”をデリートするにはちょうどいい機会なんじゃねえか?その師匠とやらの判断は間違ってねえと思うぜ」
カルマに声をかけられた周防は冷たくこう言い放った。その言葉に教室の空気が固まる。
「なんでそんなこと言うの!?」
すると、涙を溜めた矢田っちが周防の席へ詰め寄りに行った。倉橋さんも泣きそうになりながらそれに続く。私も2人に着いて行った。
「周防くんがビッチ先生のこと嫌っているのはわかるけど、その言い方はあんまりだよ!!」
「そうだよ!!ビッチ先生だって、私たちのために必死になって頑張ってるじゃん!!」
「……周防。流石にその言い方はないと思うよ」
私たちは最低な言葉を言い放った周防を非難する。前みたいに突っかかる感じではないけれどそれでも周防の言葉は気分がいいものではない。
確かに周防はビッチ先生が来たばかりの頃にトラブルも起こしたからビッチ先生を嫌っているのもわかる。だけど、だからと言ってわざわざ傷つけるような言葉や言い方はよくないと思う。
教室のみんなも私たちと同じように周防に非難の眼差しを向けていた。でも、次に私たちの耳に入ってきた声は予想とは違ったものだった。
「……ごめん。3人とも少し黙っててくんない?俺は周防くんにどう思ってるのか聞いてるんだけど」
耳に届いた声は少し苛立ったようなカルマの言葉だった。
「……そんなっ!カルマくんもビッチ先生にいなくなって欲しいと思ってるの!?」
カルマの言葉を聞いた矢田っちは我慢できなくなった涙を目からポタポタと流してカルマに詰め寄る。その隣で倉橋さんもとうとう泣きだしてしまった。
正直、私もカルマの言葉には耳を疑った。矢田っちたちと同じようにカルマも周防同じことを思っているのだろうかという疑念が頭に浮かび、胸が重くなる。
そんな私たちに向けるカルマの目は冷たいものだった。
「聞こえなかった……?『黙ってて』って言ってるの。俺は今、『一度ビッチ先生を倒した』周防くんの話が聞きたいの。今は矢田さんたちの意見は聞いてないんだよ」
「「「……っ!」」」
カルマの迫力に私たちは黙るしかなくなった。カルマもこの辺では筋金入りの不良で圧力がすごい。それに“ビッチ先生を倒した人”の意見を聞きたいと言われてしまえば私たちは言い返すことができなかった。
何も返せなくなった私たちの様子を見た周防は静かに口を開ける。
「あいつは俺たちと違ってこの学校の生徒ではない。プロを名乗る大人だ。俺は1ヶ月前からあいつのことは“用済み”だと言っている。そして1ヶ月チャンスをもらっても“存在価値”を示せないならデリートされるべきだ」
“用済み”
1ヶ月前に周防がビッチ先生に向かって言ってビッチ先生を怒らせた言葉だ。言葉としては最低だと思う。これを言われた側の気持ちを考えると心が痛くなる。
だけど、このクラスどころか学年でもトップクラスの学力と体術でもクラストップの実力を持つカルマと暗殺にはノータッチで実力の底を見せていないけどビッチ先生や武器を持っている相手を圧倒し、勉強でもトップ50入りした周防。悔しいけど今の私たちではこの2人の言葉を否定することができなかった。
カルマと周防。この2人には私たちとは大きく違うことがある。それはこの2人が“落ちこぼれ”ではないことだ。この2人はエンドのE組でありながら本校舎でも通用する実力を持っている。もともと2人とも実力不足でE組に落とされたわけではないし、どっちも喧嘩慣れしていて動ける方だ。
だからこそ、この2人の意見はどちらかと言うと本校舎側の人のものに近い。そして、それは私たちのような人の気持ちを全く無視した冷たいものでもあった。
言いたいことはわかる。だけど気持ちとしては受け入れたくない。
「……お前らだって1ヶ月前はあいつに消えて欲しいと願っていただろ?これはいい機会じゃないか」
周防の言葉が続く。
確かにビッチ先生が来たばっかりの時は私たちはビッチ先生のことが嫌いだった。傲慢だったし、私たちのことを下に見るし、最低の女だと思った。
でもこの1ヶ月間、ビッチ先生が“先生”として私たちに寄り添おうとする姿や大人として手本を見せようとする姿、苦手なことからも逃げずに必死に努力する姿や怖くて泣いてしまった私を必死に励ましてくれた姿をずっと見てきた。しかも、苦手であるはずの周防にだってビッチ先生は歩み寄ろうという姿勢を見せている。
だから、そんなビッチ先生の頑張りまで“用済み”や“デリート”といった言葉で片付けて欲しくはなかった。
「……確かに最初の頃は嫌な人だなと思ったよ。でも、この1ヶ月で変わろうと頑張ってるじゃん!私たちにも一生懸命向き合ってくれる。私たちに必要な先生だよ!!」
周防の言葉に対して矢田っちは叫びながらこう返した。私も同じ気持ちだった。私だけじゃなく教室中のみんなが矢田っちの言葉に頷く。
すると、それを見た周防は何かを考えるように目を伏せながら小さな声でこう呟いた。
「……そうか、それがお前たちの答えか」
そしてもう一度その顔を私たちに向ける。きっと周防はまた冷たい顔を向けて私たちの思いも切り捨てるのだろう。この瞬間の私はそう思っていた。
「ならば信じてやればいい。あいつがここに残れることをな」
でも、次に周防の口から聞こえてきた言葉は思ったものと違ったものだった。てっきりまた傷つくようなことを言われると思っていた私たちは豆鉄砲を食らったような表情になる。
「……どういうこと?周防はビッチ先生のことが嫌いなんじゃないの?」
「……別に嫌いとかは言ってねえよ。あいつはプロを名乗る大人だ。俺たちのようなガキじゃない。一度結果を残せずに“用済み”になったあいつがもう一度“存在価値”を示せないなら、プロとしてここにいるべきじゃないと言ってるんだ」
思わず返した私の言葉に周防はさっきまでとは違って真剣な表情でこう言ってきた。
その言葉はさっきまでと違って納得できるものだった。ビッチ先生は私たち生徒とは違って殺せんせー暗殺のために送り込まれたプロの殺し屋だ。その仕事は殺せんせーを殺すこと。それが出来ないのなら悲しいけれどこの教室にいられなくなるのは仕方がないのかもしれない。
気がつけば周りのみんなも周防の声に耳を傾けていた。そんな雰囲気の中、周防は言葉を続ける。
「これはあいつにとっての“試験”なんだよ。生き残るためには結果を出して自分の“存在価値”を示さないといけない。烏間さんや師匠の人にな。そして大人としてその姿を俺たちに見せないといけない」
この言葉に返す言葉は見つからなかった。
結果を出して“存在価値”を示す。これはこの学校でもずっと求められていたことだから……
私たちだってテストで結果を出して“存在価値”を示さないと“エンドのE組”という扱いを受ける。ビッチ先生は私たちの先生やプロの大人として結果を出す姿を私たちに見せないといけないのかもしれない。
でも……
「……でもビッチ先生がいなくなるのは嫌だよ」
涙を拭いながら矢田っちは絞り出すように呟く。
周防の意見は一理ある。だけど感情としてはビッチ先生にはいなくなって欲しくない。これが今の私たちの思いだった。
そんな私たちに周防は真剣な眼差しを向けて静かにこう言ってきた。
「……なあ、お前たちはあいつのことをどう思っているんだ?」
いつのまにか周防の声色はさっきまでの冷たいものではなくなっていた。
そんな周防の問いかけに私はすぐにこう言い返した。
「好きに決まってるじゃん!ビッチ先生は私たちの“大切”な先生だよ!」
「そうだよ!」
「“大切”な先生だからいなくなってほしくないんだよ!」
私の言葉に続くように倉橋さんと矢田っちも力強く答える。
私たちの答えは同じだった。私たちはビッチ先生のことが好きだ。ビッチ先生は私たちにとって“大切”な先生だからこれからも一緒にいてほしい。
「……そうか、“大切”か……」
その答えを聞いた周防は少しだけ遠くを見るような目でこう呟いた。そしてもう一度眼差しを変えると私たちにその眼差しを向ける。
「……なら、悪いようにはならないさ」
その眼は前に言い合いになった時のような冷たいものではなく、修学旅行で助けてくれた時と同じようなとても優しくてどこか安心感のあるものだった。
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございます。
喉と頭が痛い……
よりによってこんな時に修正箇所が多かったんですよね……。本当はロヴロさんや烏間先生の外国語で会話する時のセリフは、
「
こんな感じでルビを振る感じにしたかったんですけど、なぜか
「| Не волнуйтесь. Я научил их защищаться от проводов.《心配ない。ワイヤーに対する防御くらいは教えてある》」
のようにうまくルビが振れないセリフもあったりとかして泣く泣く断念した形です。長いからダメだったのかな?初心者なんでわかる方いたら教えてください……
こういうわけで、今回8000文字くらいあるんですけど、こんな感じの直しが多くて頭痛い中とても誤字の確認はとてもできる状況じゃなかったのでそのまま出してます。もしかすると今週は誤字多いかも……
それはさておき、今回からビッチ先生とロヴロさんの話が始まりましたね。ビッチ先生が負ければE組から出ていかないといけないというだいぶ重たい条件です。
零二くんはそんなビッチ先生のことを『結果を出せないなら“存在価値”がないから出ていくべき』と相当厳しい言葉を言いました。言い方が悪かったのもありますが、そんな零二くんには今回もバッシングの嵐です。ですが、零二くんはビッチ先生の頑張りや変化はちゃんと見ているし認めているんですよね。
ただ、それは別として結果を示せないのなら意味がないと相当厳しい言葉を言ってしまっています。これは最初の頃に岡野さんたちと喧嘩になってしまった時と同じです。これが
ちなみに周防零二のキャラクター像なのですが、『E組にいる
ちなみにこれには裏テーマもありますがまたの機会に……
また、どうして零二くんが
では、次回もよろしくお願いします。
【次回予告】
ビッチは俺の言葉へすぐに言い返してくるが、その奥にある焦りを隠しきることはできていなかった。
「で、何の用だ」
そんなビッチの様子を見た俺は身体を起こして枝に座り直してこう聞くと、ビッチは一瞬だけ言葉を探すように黙ってから少しだけ気まずそうに口を開いた。
「……私に烏間の殺し方を教えてくれない?」
(……そう来たか)
次回 『Rの時間』