暗殺教室 零の瞳に映るもの   作:ディーエー

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第5話 弱点の時間

 

俺がクラスの連中と揉めてからしばらく経った日の昼休み、

 

「なぁお前たち、放課後殺せんせーをみんなで殺しに行こうと思うんだけどさ、お前たちも来てくれよ」

 

いつも通りタコがいなくなったことを確認した磯貝と前原はクラスの連中に声をかけていた。

 

あの日以降、俺以外のほとんどの生徒は暗殺に対して俄然やる気を出していた。どうやら俺という共通の敵を見つけたことで団結できたようだ。

 

——よかったじゃないか。望み通り団結できて……

 

「ん?」

 

視線を感じたのでその方向に目をやると、あの日泣きながら俺に突っかかってきた女子が俺のことを睨んでいた。どうやら俺はお邪魔なようだ。

 

()()()()()俺はこの教室から出ることにした。

 

 

***

 

 

旧校舎の屋根の上。俺のサボりスポットだった場所の1つだ。担任が超生物に変わってからはここでサボることは難しくなったが昼飯や昼寝のスポットとして重宝している。あの日以来、教室に居場所がなくなった俺はよくここで昼飯を食べていた。

 

《バンッ!》

 

「周防くん!そんなところにいちゃ危ないです!落ちて怪我でもしたらどうするんですか!?」

 

「うお!?」

 

ビビった……完全に気を抜いていたとはいえ、気配を感じ取る間もなく既にそこにいるのだ。ビビらない方がおかしい。

 

「アンタがこうやっていきなり来て脅かさなければ落ちることはないわ!」

 

「大丈夫です。先生の前でバランスを崩しても地面に着く前に助けるので」

 

「そういう問題じゃないだろ……」

 

なんかこいつどこかズレてるんだよな……

 

すると、タコが表情と声色が変えた。

 

「ところで周防くん、女の子を泣かせるのはよくないですね。岡野さんにきちんと謝りましょう。それと先生は君も暗殺に参加してほしいと思っています」

 

話の内容はやっぱりあの日のこと。まあ、いつかは言われると思っていたから驚きは少ない。

 

「やっぱりその話か……前者はともかく後者は今のところありえないな。仮に今俺が参加したところであんたを殺れる確率は0だ。そんな無駄なことに費やす時間がもったいないだろ」

 

「そうでしょうか?皆で一緒に協力すれば殺せるかもしれませんよ?」

 

「ないな。あんな一発逆転大ホームランしか狙っていないようでは不可能だ」

 

「——!」

 

俺がこういうとこいつは不意を突かれたかのような顔をして目を見開く。しばらくするとさっきまでとは変わって真剣な顔で口を開いた。

 

「なるほど……君の言葉は彼らの問題に気づいていた上での発言なのですね?」

 

「ああ、あいつらは“自分は落ちこぼれである”と言い訳をしてそこから抜け出すことを放棄している。そして高額な報酬に目が眩らみ“無謀な一発逆転”を夢見ている。その難易度がどれくらいのものかも判っていない。自分の立ち位置すら見えてないやつらにあんたを殺せるはずがないだろ」

 

あいつらは結局逃げているだけだ。目の前の現実からな。そんなやつらが簡単に殺せるほど、このタコは甘い相手ではないだろう。

 

すると、先ほどまで俺を諭すような表情をしていたタコの表情がまた変化した。

 

「なるほど……岡野さんたちから事情を聞いた時は君が良くないと思いましたが、どうやら君を甘く見ていたようですね……まさか、このクラスの弱点に気づいていたとは」

 

「その岡野って女子の件もそのことをあいつらにそのまま言ったら勝手に泣かれただけだ。ぶっちゃけ俺悪くないと思うんだけどな?」

 

別に俺は岡野のことを泣かせようとは思っていなかった。事実を言ったら勝手に泣いただけ。はっきり言って逆恨みもいいとこだ。

 

「一旦、その話は後にしましょう。しかし意外でした。賭け事が好きな君はこのクラスで最も一発逆転を狙っていると思ってました」

 

「俺は勝算のある勝負しかしない。ギャンブルも同様だ。()()()()()()()()で勝負している。当然、運要素が絡む以上絶対に勝てるギャンブルは存在しないが、その確率を100%に近づけることはできる。その努力をせず見境なく勝負するバカや期待値が低い場面で勝負するバカが最後は負けるんだよ。そしてこれはギャンブルに限らない」

 

あいつらのやってるのは負ける可能性が高いギャンブルに何度も金を突っ込む行為だ。そんなことしたら破滅する。ごく稀にラッキーで大逆転する奴が出てくるがあんなものは小数点何桁かの世界だ。そんなもん高校レベルまでの数学なら0として扱うだろ?こういうのは数が少ないから余計に目立っているだけだ。

 

そして、その天文学的な確立を引いた奴もハッピーエンドになるとは限らない。

 

「それにだ。あいつらは暗殺を頑張るあまり、他の努力を放棄している。()()()()()()()()()()()を見ていないんだ。そういう奴は仮にラッキーで上手くいったとしてもその後に壁に当たる。それならまだいい、仮にあんたがいなくなったらあいつらには何も残らない。本当の力をつけないと意味がないんだよ……」

 

自分で制御できないような大きな力は本当の力ではない。それは自分自身や自分の周りを破滅に追い込む猛毒だ。使い方を誤れば取り返しがつかないことになる。そう……

 

——これは俺の懺悔だ。過去に犯した俺の罪への

 

「そもそもあいつらは“エンドのE組(落ちこぼれ)からの脱却”を目指して暗殺をしているが、エンドのE組(落ちこぼれ)から抜け出したいのであれば次のテストで50位以内を取ればいい。そっちの方がよっぽど簡単だろ。そんな簡単なことすら気付くことができないくらい視野が狭くなっているようでは作戦もたかがしれてる」

 

「………」

 

こいつは俺の話を黙って聞いていた。

 

「……まずは君のことを侮っていたことを謝らせてください。君は私の想像以上に優秀は生徒だ」

 

そしてこれまで見せなかった真面目な顔をしてこう言ったんだ。

 

「君の言う通りです。暗殺以外のことにも目を向けなければ彼らは将来またエンドのE組(落ちこぼれ)に戻ってしまう。そしてその時には周りに“助けてくれる人”がいないかもしれない……そして君はその忠告に耳を傾けず、今も現実から逃げてしまっている彼らに失望しているのでしょう……」

 

……“エンドのE組(落ちこぼれ)”の立場に甘え、自分は不幸だと嘆き、たった数度の取り返せる失敗で諦めてしまっていたあいつらを見てなんともいえない腹立たしさがあった。群れて傷の舐め合いをしている様子を見てこいつらと関わる時間が無駄だと思った。

まるでかつての自分を見ているかのようだったから……

——なぜそう思ったのか、その理由は分からない

 

「近いうちにこのことは彼らに先生から伝えます。君には彼らの変化を見てほしいのです。彼らが現実を見て成長する姿を、是非見てあげてほしい」

 

そう言ってこいつは頭を下げた。

 

「それと最初の話に戻ります。きっと君は多くの失敗や挫折をして1人で乗り越えてきたのでしょう。ですが1人では乗り越えることができない弱い人間もいます。そんな人に寄り添えるようになってください。君の性格では殺る気になっても勝算が出るまでは仕掛けることはなさそうですので暗殺については一旦保留でいいでしょう。ただ、いつか岡野さんたちには謝ってあげてください」

 

そう言ってこいつはここから離れた。

 

……あんたは勘違いをしているよ。

 

——俺は1人で乗り越えることができず、取り返しのつかない失敗をした罪人(弱い奴)なのだから

 

 

***

 

 

烏間side

 

「防衛省から通達済みかとは思いますが明日から私もE組の副担任をやらせていただきます。奴の監視はもちろんですが、生徒たちの技術面、精神面でのサポートが目的です。教員免許は持ってますのでご安心を」

 

「ご自由に、生徒たちの学業と安全を第一にね」

 

「では、失礼します」

 

理事長へのあ挨拶を済ませ、部屋を後にする。

 

「物分かりのいい理事長ですね」

 

「フッ……見返りとして大金を積んだしな。だが都合がいいのは確かだ、あの超生物が教師をやっているのを知るのは我々国とここの理事長、あとはE組の生徒だけでいい……」

 

俺はE組への副担任になることへの報告と挨拶のために本校舎に訪れていた。校舎を歩いていると多くの生徒の姿が目に入る。だが、その姿はどれも焦燥感漂うものだったのが気になった。

 

「やっばこれ以上落ちたらE組行きかも……」

 

するとこの学校の生徒らしき声が聞こえてきた。

 

「学食もない、便器も汚い旧校舎で、俺らからも、先生からもクズ扱い、超いい成績を出さないと戻って来れない。まさに“エンドのE組”。あそこに落ちたら死ぬな俺。」

 

「だよなー。あいつらみたいにならないようにがんばらなきゃ。」

 

なるほどな……ごく少数の生徒を差別することで、大半の生徒が優越感と緊張感を持ち頑張るわけか。合理的な仕組みを持つ学校だし、我々としてもあの隔離校舎は極秘任務にうってつけだが……

 

———切り捨てられた生徒たちはたまったものじゃないだろうな

 

 

***

 

 

「あ、烏間さん!こんにちは!」

 

E組の校舎に着くと小柄な女子生徒が声をかけてきた。名前は確か“茅野カエデ”さんだ。

 

「こんにちは、明日から俺も教師として君たちを手伝うことになった」

 

「そうなんだ!」

 

「よろしく頼む。」

 

「じゃあこれからは烏間先生だ」

 

(烏間先生か……)

 

そういえばここでの役割は教師だったな。まさか、こう呼ばれる日が来るとは思わなかったが。

 

「ところで、奴はどこだ?」

 

「それがさ、殺せんせークラスの花壇荒らしちゃったんだよ。そのお詫びとして……」

 

茅野さんは校舎横の木を指差す。

 

「ハンディキャップ暗殺大会を開催してるの」

 

奴は木の枝にロープ吊るされながら超スピードで生徒たちの暗殺をかわしていた。緑のシマシマ模様を浮かべながら生徒たちを煽っている。明らかに異常な光景だ。

 

「どう?渚」

 

「う、うん……完全にナメられてるね」

 

「これは暗殺と呼べるのか……」

 

「ん、待てよ……殺せんせーの弱点からすると……」

 

「ヌルフフフフ、無駄ですねぇ。E組の諸君。このハンデを物ともしないスピードの差! 君たちが私を殺すなど夢のまた《バキっ》 あっ……」

 

奴が全部言い合える前に枝が折れて地面に落下する。そしてその機会を逃すまいと生徒たちは猛攻撃を仕掛けた。

 

「弱点メモ、役に立つかも……」

 

「う、うん……どんどん書いていこう」

 

この異質な状況に若干困惑しているが、ロープが絡まりテンパっているやつを見ながら考える。奴の弱点か……

 

「チックショー、逃げやがった!」

 

「ぬぅ……あと少しだったのに!」

 

「ここまでは来られないでしょう!君達とは基本性能が違うんですよっ!ヴァーカ、ヴァーカ!ナルフフフフフ!」

 

ロープと触手が絡まって脱出に手こずっていた奴は何とか解けたようで、校舎の上へジャンプで移動するとヤケクソ気味に校舎の上で叫んでいた。

 

そして息を切らせながら……

 

「ふぅ……。明日出す宿題の量を2倍にします。」

 

「「「小せえ!」」」

 

そう言い残すと奴は逃げ出した。

 

「あ、逃げた」

 

「でも今までで一番惜しかったんじゃない?」

 

「この調子なら殺すチャンス必ずくるぜ!」

 

「「「わーい!」」」

 

「殺せたら100億円何に使おう?」

 

……中学生が嬉々として暗殺のことを語っている。どう見ても以上な空間だ。

 

俺は彼らの姿を見ながら考える。

 

「渚、殺せるかな?」

 

「殺すよ。殺す気じゃないとあの先生とは付き合えない」

 

だが不思議だ。この学園で生徒の顔が最も生き生きしているのは暗殺のターゲットが担任のこのE組だ。

 

ここでひとつ気になることがあった。()は奴やこの空間のことをどのように見ているのだろうか?

 

「潮田くん、茅野さん」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「周防零二くんはどこにいるか知らないだろうか?」

 

俺は周防くんの意見を聞こうと思い、彼の居場所を聞いた。

 

だがその瞬間、2人の空気が暗くなる。

 

「……すみません、僕たち周防くんと喧嘩をしてしまったんです。それから僕らと距離が開いてしまっていて……」

 

「そうか、わかった。申し訳ない」

 

喧嘩か……。おそらく彼は“暗殺に参加しない”と宣言して揉めたのだろう。

 

「あ、あの!」

 

すると、移動しようとした俺を潮田くんが呼び止めた。

 

「烏間先生から見て周防くんはどんな人なんですか?」

 

2人は気まずそうにこう聞いてきた。

 

「……俺も彼とは少ししか話していないからあまりよくわからない。……この様子を見る限りおそらく彼が暗殺不参加を明言して揉めたのだと思うが、まず暗殺は強制では無いと言ったのは俺だ。そしてそれは君たちにも言えることだ。明日から体育の時間では俺の受け持ちで暗殺用の訓練を行うが、おそらく彼は参加しないだろう……それについて咎めることは我々にはできない」

 

「そうですか……」

 

潮田くんが残念そうに呟く

 

「ただ、彼の観察力と洞察力は過去に俺が出会ってきた人間の中でもずば抜けていると考えている。もし、彼が参加してくれたらかなり大きな戦力になるだろう……そして、彼がこの数週間で見てきたことを俺は聞きたい。俺は彼が奴の暗殺の役に立つヒントを持っているのでは無いかと思っている。君のそのメモのようにな……」

 

「ありがとうございます!」

 

俺がこう言うと何かを決意したような顔付きになった。

 

「こちらこそ時間をいただいて悪かった。感謝する」

 

「烏間先生!僕のことは渚って呼んでください!明日からよろしくお願いします!」

 

「そうか、よろしくな渚くん」

 

そして、彼らと別れた俺は校舎の中へと足を進めた。

 

 

***

 

 

俺は校舎の中を見回る。明日以降の訓練のことを考えながら……

 

すると、校庭につながる石階段に周防くんが座っているのが目に入った。俺は彼の隣に行き、腰を下ろす。

 

「久しぶりだな、周防くん」

 

「……烏間さんですか、ご無沙汰してます」

 

「俺も明日からこのクラスの副担任になることになった。よろしく頼む」

 

「なるほど……体育の時間とか使って暗殺訓練でもするんですよね?悪いですけど、俺は出ませんよ」

 

軽い挨拶のつもりだったが、それだけで彼は全てを理解した様子だった。この洞察力は恐ろしいものだ。下手なことは言えないな……

 

「……相変わらず君の洞察力には驚かされるな。個人的には君にも参加してほしいところだが……」

 

「だってあいつら武器の扱いの基本すらできてないですからね。ナイフについてはテキトーに振ってるか、目線と肩の動きからどこを狙っているかバレバレかのどちらかですし、チャカの扱いについても目線、指先の動き、銃口の向き、息遣いは単純そのもの、おまけに殺気は丸出しです。そんなんじゃ当たるわけがない。多少喧嘩慣れしている人間なら簡単にかわせますよ」

 

周防くんは若干呆れ気味でこう言った。

 

喧嘩慣れしている不良だという話は聞いていたが、この話だけでもそこらへんの不良とは訳が違うのは察しがついた。だが、随分武器の扱いに詳しいことは気になったが……

 

「なぜ君が武器の扱いにそこまで詳しいのかは置いておくとして、やはりまだ基礎ができていないか……ありがとう訓練の参考にしよう。」

 

やはり、彼は周りをよく見ている。まだ本題に入る前なのにここまで情報が手に入るのはこちらとしても非常に助かる。

 

「ところで周防くん。明日以降の訓練を免除する代わりに君に聞きたいことがある。この数週間で奴はどうだった?殺せると思うか?」

 

本題はこれだ。この教室で一番冷静に状況を見れている彼の目線を確認したかった。

 

彼は少し考えるようなそぶりを見せてから口を開く。

 

「現状は性能が人間離れしている以外はただのお節介エロ教師ですね。ただ、人をよく見ているなと……ああ1つ思い出しました。烏間さん、あいつが毎朝、俺の家に来るんですけど、やめさせてもらえませんか?」

 

彼は最初こそ真面目な口調で話していたが、途中から表情がげんなりしはじめ、個人的な愚痴のような内容になった。

 

……奴は何をしているんだ

 

「それとあいつ国家機密ですよね?普通に街とか出歩いてて大丈夫なんですか?本人はバレないようにしているつもりでしょうけど、下手したら裏の情報屋にネタつかまれてますよアレ」

 

いや、大丈夫じゃない。普通に大問題だ。裏の情報屋ならまだしも、一般人に見られたらシャレにならない。

 

「……これについてはこっちからキツく言っておく。完全には抑えられないと思うがな……」

 

空気が気まずくなる。だが、次の一言でその空気は変わった。

 

「あ、そうだ少し待っててもらえませんか?」

 

すると、彼は何かを思い出したかのようにこう言うと校舎の中に何かを取りに行った。

 

「すみませんお待たせしました。これについて調べてもらえませんか?俺もある程度調べたんですが、こういうのはプロに任せるのが適任でしょう」

 

そう言って彼は謎の抜け殻のようなものを差し出す。

 

「これは……?」

 

「あいつの抜け殻です。衝撃に強くて月に1度使える奥の手らしいですよ」

 

「——!それをどこで?」

 

これはこれまで知らなかった情報だ。その情報に俺は一気に表情を変える。

 

周防くんは冷静に説明を続けてくれた。

 

「前に寺坂、吉田、村松ってバカが潮田ってやつに自爆テロみたいな真似をさせたときに、この抜け殻を使って潮田のことを守ってたんです。ただ危険すぎて、まじでキレてたので今後はこのやり方はできないと思いますが」

 

なるほど、奥の手と聞いたから奴を追い詰めた生徒がいるのかと期待したが、生徒を守るために奥の手を使ったのか。

 

「なるほどな……やり方はともかくこのような奥の手を知れたのは大きな収穫だな。今まで奴には指一本触れた者がいない。どんな殺し屋や特殊部隊でもだ。そう考えると君たちは世界で一番結果を出しているのだろう」

 

彼の言葉に俺はこう返した。

 

すると、彼の視線が一瞬鋭くなった。

 

「ああ、あとあいつ用の武器の研究資料っていただくことはできますか?()()()()()()()()()()()のにどうやって研究したのか気になって……」

 

「……」

 

……どうやら今のは彼の前では失言だったようだ。恐ろしい生徒だな。

 

「……わかった。奴専用武器と抜け殻の研究資料は用意でき次第、君に渡そう」

 

「ありがとうございます」

 

「こちらこそ有益な情報感謝する。これからも奴の“監視”をよろしく頼む」

 

「わかりました。明日からよろしくお願いします」

 

「ああ、気をつけて帰るようにな」

 

周防くんはこちらに一礼してからゆっくりとこの場を離れた。

 

その後ろ姿を見ながら彼の言葉を思い返す。

 

彼は何か掴んでいるとは思ったが、正直ここまで収穫があるとは思わなかった。

 

“周防零二”

 

いったい彼は何者なのだろうか……

 





あとがき

ここまで読んでいただきありがとうございます。

零二くんは過去に犯した自分の失敗を後悔しています。彼が腹を立てたのはE組に対して似たようなものを感じたからというのもあります。しかし、零二くんは現実から逃げずにその十字架を背負って足掻いています。2度と同じ過ちを繰り返さないように力を付けようともがいています。そこが今のE組のメンバーとの違いです。

正直、言葉が悪かっただけで、零二くんの伝えようとしていたことは的を得ていました。ただ伝え方が悪かっただけ。だけど、そのせいで零二くんの言葉は届かなかったのです。

余談ですが彼のギャンブルの強さも生きていくために身につけた力の1つです。零二くんの過去についてはいつか描こうと思います。

では、次回もよろしくお願いします。


【次回予告】

「……それと、これはさっき周防くんが言っていた言葉を借りるが『君たちがいくら束になってかかっても多少戦闘慣れしている相手には当たらない』」

「それどう言う意味ですか!?」

その言葉にクラスのみんなは怒りをあらわにする。私も思わず声をあげた。

だってそれは、『お前らがいくら束になってかかっても喧嘩慣れしている俺には勝てない』という宣戦布告とも言える内容だったのだ。

マジでなんなのよ周防(あいつ)。訓練もしないで上から目線で見下して……。

「クッソ!あいつ舐めやがって!!」

「訓練も出ていないくせに!」

「……違うと言うのならそれを証明してみせればいい」


次回 『訓練の時間』
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