暗殺教室 零の瞳に映るもの   作:ディーエー

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第6話 訓練の時間

 

「昨日あいさつした生徒もいると思うが改めて、防衛省からきた烏間惟臣だ。今日からこの教室の副担任……表向きには担任ということになった。君たちに技術面、精神面でのサポート並びに君たちの安全確保に尽力させていただく。また、今日から体育は俺の受け持ちになる。これからよろしく頼む」

 

昨日聞いていた通り烏間さんが今日から副担任としてE組へやってきた。烏間さんの挨拶にクラスの連中は拍手で応える。

 

「ねえ渚、烏間先生の体育の授業ってどうなるのかな?」

 

「うーん……武器の扱い方や体力作りとかじゃないかな?」

 

「やっぱり?確かにナイフとか何となく振っているだけだもんね」

 

「でもさあ、それって意味あるのかよ?殺せんせーはともかく人間相手ならテキトーに振るってるだけでも避けるのって難しいと思うぞ」

 

「でも烏間先生特殊部隊のトップ出身って話だよ」

 

「それでも複数人でかかれば一回は当てることができるんじゃないか?」

 

「でも烏間先生に当てられたところで殺せんせーに当てるのなんて無理だよー」

 

「これまでどんな殺し屋や特殊部隊も指一本すら触れられてないらしいからね……」

 

「やっぱり人間相手の訓練じゃ物足りないか〜」

 

烏間さんが去った後、教室では5限目の体育の授業の話題で持ちきりだった。全員が、烏間さんの授業の内容についてや、烏間さんについての話をしているが……

 

舐めてるなこれは。

 

特殊部隊なんて表向きには国の最高戦力の集団だぞ。そこには暗殺組織で訓練を積んだ人間なども含まれているし、裏社会で有名な武闘派極道や殺し屋の中にもそこ出身の人間も多い。そこのトップってことは一部の裏社会の人間を除いたらこの国で一番強いということになる。

 

何よりこいつらは鉄火場のことを舐めすぎている。まあカタギの中学生ならそんなもの想像することがないだろうが、ここは世界中の殺し屋から狙われている最前線だ。そのような意識のやつは命のやり取りの場面で真っ先に死ぬ。

 

これについてはまじでお灸を据えられたほうがいい。

 

そう思いながら、俺は教室の様子をじっと見ていた。

 

 

***

 

 

昼休み

 

「ホームルームでも伝えていた通り、5時間目の体育は暗殺の訓練を行う。昼休み終了後、校庭のトラック3週を済ませてから整列しておくように」

 

4限目の授業が終わって昼休みに入ったタイミングで烏間さんから5限目の説明があった。他の生徒たちに、授業前の準備について話している。

 

すると、烏間さんの視線がこちらに向けられた。

 

「それと周防くん。後で職員室に来るように。以上だ。」

 

え?なんか呼び出しくらったんだけど……

 

「おい、周防のやつ呼び出しくらったぞ」

 

「あいつ暗殺サボってるから烏間先生の逆鱗に触れたんだろ」

 

「めちゃくちゃ怒られるんじゃね?」

 

「ふん、あんなやつ泣かされればいいのよ!」

 

「ひなた私怨入りすぎ……」

 

これを聞いた俺のことを嫌っているクラスの連中は俺が説教されるものだと思い込み盛り上がってやがる。だが、おそらく用件はあれだろう。俺は許可を得てサボっているんだ、怒られる筋合いはない。

 

俺はやつらを無視して職員室へ向かった。

 

「失礼します」

 

職員室に入るとそこには烏間さんしかいなかった。烏間さんは俺を一瞥して口を開く。

 

「……周防くんか、昨日話していた武器の研究資料だ。本当なら放課後に渡そうと思ったのだが、奴がいなくなったのでな……」

 

やはり呼ばれたのは昨日頼んでいた件だった。1日で用意してくれるなんてありがたい。

 

俺が説教されることを期待してたみなさん残念でした。ざまあみやがれ。

 

「あいつは昼休みになると大体何処かに出かけてるので……」

 

「全く……朝キツく言ったんだがな……」

 

……苦労してるなこの人。

 

「それと奴の抜け殻の研究については時間がかかる。もうしばらく待っていてくれ」

 

「さすがに1日経たずに調べられるとは思ってませんよ。他に用件がなければ失礼します」

 

「いや、ちょっと待ってほしい」

 

研究資料を受け取り退出しようと思っていたら引き止められた。え?説教?

 

すると烏間さんは一息ついてから何か試すような視線を俺に向けて静かに口を開く。

 

「……周防くん、君ならこのクラスの訓練メニューはどのように組み立てる?」

 

烏間さんはなぜか()()()の俺に暗殺の訓練メニューをどうするか聞いてきた。だが、理解できない。こういうのはプロの人間が考える方がいいはずだ。なぜ、()()()の中学生にこんなことを聞くのだろうか……?

 

「なぜそれを俺に?俺は暗殺に参加していない……いわば部外者ですし、……素人ですよ?」

 

「このクラスのことをよく知っている生徒側の意見を聞きたいのだ。それに君は武器の扱いに精通しているようだからな」

 

(なるほどな……)

 

正直お断りしたいが下手に断ったら授業に参加させられる可能性があるか……。まあいいや。

 

「……それは今日の訓練メニューですか?それとも中長期的な訓練計画ですか?」

 

「可能なら両方お願いしたい」

 

烏間さんにこう言われた俺はこれまでのあいつらの動きを思い出しながら思考を回転させた。ナイフの使い方や、チャカの使い方をもう一度思い出す。

 

「えーと……能力や飲み込みには個人差があるので期間については目を瞑っていただきたいですが……まず、最初の目標として烏間さんに当てられるようにすることですかね。まあ、チャカについては“どんな体制からでも的に当てられるようにすること”、ナイフについては“急所に素早く正確に当てること”。可能であればナイフは両手で扱えるといいと思います。もちろん利き手と全く同じ動きで。細かい技術はこの後です」

 

俺がこう言うと、烏間さんの目が見開かれて、表情が変わった。何か驚いたような表情をしている。

 

「なるほどな……メニューはどうする?」

 

「チャカについては最初は的を狙う感じにしてそこからアレンジを加える感じでしょうか。止まっている的にある程度狙いが定まるようになったら実践的な内容も入れたいですね。ナイフはまずは徹底的に素振りです。もちろん左右両方。それとマネキンとか人形相手に振るのとかですね。これもある程度形になったら実践的な内容も織り混ぜましょう。まあ今日は延々に素振りか人形でいいと思いますよ」

 

「……そうか。大方俺も同じ考えだ」

 

正直、体格も骨格にも個人差があるし、筋肉のつき方がそれぞれ違うから得て不得手はあると思うが、基本を徹底して損することはない。それに多少苦手でも基礎的なことすらできてないと、いざという時に命取りになるから、まずは基礎固めを徹底したい。

 

だが、今日はそれ以上にやるべきことがある。

 

「それと、あいつら烏間さんや鉄火場のこと舐めているので今日はお灸を据えたほうがいいです。特に鉄火場を舐めてると文字通り命に関わります。国やあいつが守っていると言っても絶対に安全とは言い切れないので。あと最低限の護身術も身につけさせておくのも必要だと思います」

 

今朝の教室の会話の内容を話すと烏間さんの眉間のシワが深くなった。これは説教コースだな。かわいそうに。

 

だが、あいつらはちゃんと説教された方がいい。あいつらの認識は甘すぎるのだ。この場所がいかに危険で重大な場所なのかが全くわかっていない。

 

そして俺は、最後に烏間さんに強い視線を向ける。

 

「この訓練で得る“力”はとても強大です。扱い方を間違えたり、力を暴走させれば自分や周りの人を破滅させるくらいの猛毒です。そのことをあいつらにはしっかりと認識させてほしいです」

 

……取り返しがつかないことが起きる前に。

 

「当然だ。任せてほしい。それと周防くん、このクラスで動ける生徒は分かるかい?」

 

なるほど……鼻っ柱へし折るつもりだな。まあ、自分たちの実力をしっかり認識するいい機会だろう。

 

「戦闘能力でいうなら、寺坂、磯貝、前原、女子なら片岡、岡野、速水あたりですね。特に磯貝と前原はコンビネーションもあると思います。おそらく奴らの相手をして鼻っ柱へし折るつもりでしょうが、舐めた態度とっていたら俺が『お前らがいくら束になってかかっても当たらない』って言ってたって言えば、顔真っ赤にして襲ってくると思いますよ。俺、あいつらと冷戦状態なので」

 

俺がこう言うと烏間さんは呆れたような顔をしてため息を吐く。だが、俺は間違ったことは言っていない。だから俺は悪くないはず……たぶん。

 

「……できれば仲良くしてくれ。だが、ありがとう。とても参考になった。時間をとって悪かったな」

 

烏間さんは呆れたようにため息を吐くも、特に説教されることはなかった。

 

「まあ実質5限休みみたいななんでいいですよ。あいつらのこと頼みます」

 

「ああ」

 

そして、用件が終わったことを確認した俺は、今度こそ部屋を出た。

 

 

***

 

 

岡野side

 

昼休みが終わり私たちは昼休み前に指示されていた校庭のトラック3周を終わらせて身体をほぐしながら烏間先生がくるのを待っていた。

 

「ひなたちゃん走るの速過ぎ……」

 

トラック3周を終え息が上がっている矢田っちが声をかけてきた。

 

「矢田っちこれで疲れていたらこの後大変だよ。どうするの?めちゃくちゃきついメニューだったら」

 

「えー、そんなの無理だよー」

 

「大丈夫だよ。みんなで乗り越えよう!」

 

茅野っちや渚も合流し、徐々にクラスメイトが揃い始める。

 

すると、烏間先生が絡んでくる殺せんせーをあしらいながらやってきたので整列する。

 

「では前から伝えていた通り、今後は俺が体育の担当をやらせてもらう。全員揃っているな」

 

「……烏間先生、周防が来ていません」

 

どうやらあいつは体育の授業をボイコットするつもりのようだ。本当にありえない。

 

だけど、烏間先生はそれに表情を変えることはなかった。

 

「彼からは事前に不参加の申し出があった。彼には()()()()()()に取り組んでもらっている。君たちにも伝えておくが暗殺は強制ではない。それぞれ自分の意思で参加してもらいたい」

 

やっぱり、周防は烏間先生にも参加しないと宣言したらしい。この前のあいつの音声も本当のようだった。まあ、やる気がないやつなんていても邪魔なだけだ。やる気のある人たちで頑張ればいいんだ。

 

「それでは体育の授業を始める。内容としては君たちも予想している通り暗殺に必要な技術の習得を目的とした訓練になるが……まずはじめに3つ君たちに伝えたいことがある。しっかりと聞いてほしい」

 

「「「……」」」

 

烏間先生はここまで言い終えるとそれまで以上に真剣な目つきになった。

 

「まず最初にこの訓練の中にはひとつ間違えると怪我につながるものもある。だが俺は加減するつもりはない。気を抜かずに取り組んでほしい」

 

烏間先生の気迫に圧倒されそうになる。

 

(でもそうだよね……)

 

体操だって気を抜けば怪我をする危険な競技だった。私は気持ちを引き締め直した。

 

「2つ目はこの授業以外にも言えることになるのだが、奴を狙っているのは君たちだけではない。世界中の殺し屋が奴を狙っている。つまりここは戦場の最前線だ。中には君たちを巻き込もうとする危険な殺し屋もいるだろう。当然、我々国がそういうふうにさせるつもりはないが万が一という可能性もある。ここは戦場だという意識を持つこと、そして自分の身を自分で守れる力をこの時間で身につけてもらいたい」

 

「「「——!」」」

 

確かにそうだ。殺せんせーを狙っている殺し屋は世界中にいる。今まで自覚していなかったが私たちだって狙われる可能性があるんだ。そのことを考えると背筋に冷や汗が流れる。

 

そして、一息ついた烏間先生はより真剣な表情で口を開く。

 

「最後、これが一番大切だ。ここで得る力はとても大きなものだ。その力は扱い方を間違えれば周りの人を傷つける凶器になり得る。下手をすれば命を奪いかねないくらいの……」

 

こう言われてハッとした。ここで学ぶ力はとても危険なものだと。これまでは実感はなかったけど、使い方を間違えたら誰かを怪我させてしまう可能性だってある。

 

「そのことを肝に銘じてもらいたい。当然、許可なくこの山以外での暗殺行為は禁止だ。また訓練以外の場面で人に使用することも禁止する。何度も言うがこの力はうまく扱えなければ自分自身や周りの人を破滅に追いやる危険なものだ。それを肝に銘じてもらいたい」

 

「……」

 

烏間先生は今日一番のオーラでこう言った。そのオーラに私たちはただただ圧倒されるしかなかった。こんなこと今まで意識したことがなかったからだろう。私たちはただ黙っていることしかできなかった。

 

だけど、なんでだろう。なぜか烏間先生に周防(あいつ)の姿が重なった。

 

「以上だ。君たちの頑張りに期待する」

 

「「「はい!よろしくお願いします!」」」

 

「まずはストレッチだ!2人1組を組め!」

 

「はい!」

 

こうして訓練(体育)の時間が始まった

 

 

***

 

 

「「「1、2〜、3、4〜、5」」」

 

「晴れた午後の運動場に響く掛け声、平和ですねぇ……生徒達の武器(得物)がなければですが」

 

「八方向から正しくナイフを振れるように!最終的には両方の手で振れるようになることを目標にしてもらう!いいな!」

 

烏間先生の指導を聞きながら私たちはナイフを振る。八方向から正しくと言うがこれがまた難しい。素振りの前に烏間先生からの説明とお手本を見せてもらったが、先生の動きを再現できているとはとても言えなかった。

 

(なるほど……周防くんの言っていた通りか、確かにこれでは当たらないな)

 

利き手ですらこの有様だ。これを両方の手で振るなんて夢のまた夢だろう。どれくらい訓練する必要があるのか私には想像すらできなかった。

 

「この時間はどっか行ってろと言っただろう。そこの砂場で遊んでろ」

 

「グスっ……。酷いですよ烏間先生。私の体育は生徒達の評判よかったのに……」

 

烏間先生はそんな私たちの様子を見ながらダル絡みをしてきた殺せんせーをあしらっていた。

 

「嘘吐けよ、殺せんせー身体能力が違いすぎんだよ」

 

「この前もさぁ……」

 

数日前の体育の様子が頭の中に思い浮かぶ。殺せんせーはこの前の体育の授業で反復横跳びと言いながら分身してあやとりまでやっていた。正直、規格外すぎてついていけなかった。

 

「異次元すぎてできねぇ……」

 

「体育は人間の先生に教わりたいわ」

 

「ギュヤッッ!……シクシクシクシク」

 

生徒たちの反応にショックを受けた殺せんせーは泣きながら砂場で石を積みはじめた。

 

「よし!授業を続けるぞ」

 

殺せんせーを追い出した烏間先生は何事もなかったかのように授業を再開する。だけど、前原がこんなことを言い出した。

 

「でも烏間先生。こんな訓練意味あるんですか? しかも当のターゲットが居る前でさ?」

 

「……」

 

これは私も思っていたことだ。だが前原がそう言った瞬間に烏間先生の表情が変わる。

 

「勉強も暗殺も同じことだ。基礎は身につけるほど役に立つ」

 

(……同じ?)

 

私にはわからなかった。正直ナイフなんてテキトーに振るってもあまり差はないんじゃないだろうか。マッハ20の怪物を相手にするなら特にそう思う。

 

(……どうやら、これも周防くんの言っていた通りだな)

 

すると、烏間先生の眉間に皺が寄った。しかし、私にはその言葉の意味がピンときてない。

 

「「「???」」」

 

「磯貝くん、前原くん、前へ」

 

烏間先生の言葉がピンと来ていないのはクラスのみんなも同じようだった。その様子を見た烏間先生は磯貝くんと前原を前に呼び出す。

 

「そのナイフを俺に当ててみろ」

 

「え……いいんですか?」

 

「2人がかりで?」

 

予想していなかった言葉に呆気をとられる。しかし烏間先生は表情を崩すことなく淡々と答える。

 

「そのナイフなら俺たち人間に怪我はない。一度でも擦りでもしたら今日の授業は終わりでいい」

 

烏間先生はそう言いながら余裕そうに第一ボタンを外しネクタイを緩める。

 

いくらなんでも私たちのことを舐め過ぎじゃないだろうか。いくら特殊部隊出身で相手が中学生といえど、烏間先生は同じ人間だ。複数人でかかれば掠らせることくらいはできると思う。

 

しかも、磯貝くんも前原も運動神経はいいし、戦闘能力もE組トップクラスだ。彼らに正面から勝てる可能性があるのは寺坂と……悔しいけど周防(あいつ)くらいだろう。さらに、彼らは小学校からの幼なじみでコンビネーションも優れている。彼らが2人でかかれば寺坂や周防(あいつ)にも遅れをとることはないと思っている。

 

……正直残念だなと思った。烏間先生は私たちのことをしっかり見てくれる人だと思っていたのに。子供だからと舐めて接するような人だとは思わなかった。

 

そう思っていると、烏間先生が神妙な顔でこう言った。

 

「……それと、これはさっき周防くんが言っていた言葉を借りるが『君たちがいくら束になってかかっても多少戦闘慣れしている相手には当たらない』」

 

「それどう言う意味ですか!?」

 

その言葉にクラスのみんなは怒りをあらわにする。私も思わず声をあげた。

 

だってそれは、『お前らがいくら束になってかかっても喧嘩慣れしている俺には勝てない』という宣戦布告とも言える内容だったのだ。

 

マジでなんなのよ周防(あいつ)。訓練もしないで上から目線で見下して……。

 

「クッソ!あいつ舐めやがって!!」

 

「訓練も出ていないくせに!」

 

「……違うと言うのならそれを証明してみせればいい」

 

先ほどまであった戸惑いが磯貝くんと前原から消えた。どうやら本気でやるようだ。

 

(磯貝くん、前原、頑張って!)

 

勝って私たちのことを見下してるあいつを見返してほしいそう思った。

 

だけど、その考えは甘いものだったと思い知らされる。

 

「いくぞ!」

 

磯貝くんが繰り出した渾身の突き。それを烏間先生は顔色一つ変えずに躱す。

 

「さぁ」

 

そして余裕そうな表情で2人の連撃をいなし続けた。

 

「このように多少の心得があれば素人2人くらいのナイフくらいは俺でも捌ける」

 

「「クッ……!」」

 

すごい……そう思った。私も身軽さなら自信がある方だ。だがあの2人相手では全て避けきることは難しいだろう。それをいとも簡単にやってのけるとは……

 

「「チッ……!!」」

 

そして烏間先生は熱くなった2人の腕を掴み合気道のような技で投げ飛ばす。これで勝負あり。結局2人がかりでも当てることはできなかった。

 

「俺に当てられないようではマッハ20の奴に当たる確率は皆無だろう……」

 

烏間先生は最後まで表情を変えることはなかった。

 

「クラス全員が俺に当てられるようになれば少なくとも暗殺の成功率は格段に上がる。ナイフや狙撃、暗殺に必要な基礎の数々、体育の時間で俺から教えさせて貰う」

 

「「「はい!」」」

 

烏間先生の実力をまざまざと見せつけられた私たちは返事をすることしかできなかった。

 

かっこいい。

 

そう思った。あの2人を圧倒するその強さに憧れを持つ。しかしそれと同時にこう思った。

 

——悔しい……。

 

結局、周防(あいつ)の言う通りだった。2人がかりでかかっても掠らせることすらできなかった。

 

『今のお前らじゃ奴を殺すことは不可能だ。天変地異が起きようとありえない。』

 

この言葉は私たちの実力を見抜いた上で言っていたのだろう。思えばあの日、怒りに任せてあいつに何度か攻撃をしたが全て躱された。“束になっても当たらない”というのはそれもあったからなのだろう。

 

周防(あいつ)に見下されているのはムカつく。ただそれを言い返すことができないくらいに私たちは弱かった。その事実が悔しい。

 

そして、今のこの状況が周防(あいつ)の手のひらの上で踊らされているような気がしてとても悔しかった。

 





あとがき

ここまで読んでいただきありがとうございます。

零二くん、本当に周りをよく見ていますね。E組の生徒の弱点や強みをしっかりと把握して、彼らがやるべきことをよく理解しています。この力をもっとE組のために使えればいいのですが、岡野さんの反応から見てもわかるとおり他の生徒との溝は大きいです。どこかで和解できればいいのですが……

そして、零二くん。武器や戦いに随分詳しいですね。烏間先生が驚くほどです。最悪の不良が経験してきた修羅場はとんでもないものだったんでしょうね……

では、次回もよろしくお願いします。


【次回予告】

体育の授業が終わったので一足先に教室に戻る。めんどいやつもいたからな。絡まれないように気配をいつもと変えて寝るとしよう。

「あれ?周防くんじゃん。いつもと気配が違うからわからなかった!体育でてなかったけど、サボり?」

「あ゛?」

だが、俺の計画は隣の席に座った男により呆気なく失敗に終わった。コイツ隣かよ……

すると、赤羽はニヤニヤした笑みを浮かべて俺に話しかけにくる。

「あーそういえば周防くん、暗殺やらないって言ったらしいね。聞いたよ?岡野さんのこと泣かせたって、いやー、俺そういうのよくないと思うなー」



次回 『カルマの時間』

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