難産ついでに原作読み返してたら、ちょこちょこ設定ミスってることにも気づきました。でも脳内プロットを修正できないので、このまま突っ走ります。うちの松下さんは年上好きじゃなくてハイスペ好きって事でお願いします。もちろん、今後のプロットに何の関係もない改変です。
「おい、山内、池、うるせーよ。気が散るから静かにしろ」
「は?…え?ど、どうした須藤!お前、勉強してんのか?!」
「なにぃ?!変なもん食ったのか?頭大丈夫か??」
「だああっ!うるせーっつってんだろっ?!集中できねーから黙れ!」
「わ、わりぃ」
周りの生徒は、そんなやり取りを不気味なものを見る目で見ていた。
須藤君、授業中はずっといびきをかいているイメージだったので、そりゃあもう驚かれている。
この様子を見れば説明する必要はないかもしれないけど、「須藤君と一緒にバスケして仲良し大作戦!」の第一段階は上手くいった。
僕は、週末にみんなでバスケをした時のことを思い返す。
◆◇◆◇
「ぜぇ……ぜぇ……げほっげほっ……も、無理……」
「情けねえなぁ、渚。本当の試合だったら、もっと走るぞ?」
コートの外に出て、地面に大の字になって倒れ込む。須藤君はそんな僕を見て揶揄うように声をかけてくる。
「運動部と、一緒に、しないで、欲しいかな……!」
「チビなのに走り負けてちゃ世話ねーぜ。それに、同じ帰宅部の綾小路は余裕そうだぞ」
今ここに居るメンバーの中で、一番比べちゃダメな人だよね。
ちなみに話に出た綾小路君は、向こうで佐藤さんとイチャイチャしてる。
「二人とも、お疲れ。須藤君、大活躍だったね!」
「当たり前だぜ。俺ぁプロ目指してるからな!……まぁでも平田も、なかなか良い動きだったんじゃねぇか?」
「そうかい?ありがとう。須藤君がフォローしてくれるおかげだよ」
よしよし、目論み通り、かなり良い雰囲気なんじゃない?
綾小路君が相手チームで、僕は須藤君のチームでゲームメイクをしている。実はこっそり二人で協力して、須藤君と洋介君を立てるようなゲームを作っていたわけだ。
僕一人だと、わざとらしくなって須藤君に気付かれるかもしれない。けど相手チームの司令塔と連携できるなら話は変わる。
そのかわり、綾小路君の思考速度にある程度ついていく必要があって、それがぶっちゃけ滅茶苦茶しんどい。僕の体力がゴリゴリ削られていく。
「渚君、大丈夫ー?はい、これ」
「軽井沢さん、ありがとう」
軽井沢さんから受け取ったスポーツドリンクを喉に流し込む。お腹の中から冷やされるような感覚に、ほっと人心地つく。
「なんか思ったより上手くいってるね」
「ん?」
「ほら」
コソコソと声を潜め始めたので、僕も気になって須藤君の方を覗き見る。
「……あー、なんつーか、あれだ。悪かったな。今まで、キツく当たってよ」
「気にしてないよ。僕の方こそごめん。ちょっと無理に近づき過ぎていたよね。でも、こうして須藤君と仲良くなれて嬉しいよ」
「お、おう。……そんな小っ恥ずかしいこと、よく言えんな、お前」
……なんという光のコミュニケーション。陰キャが見たら失明しそう。なんなら聞いてるだけなのに、顔が熱くなってくる。
「--それで、須藤君の夢を僕にも応援させてほしいんだ。だから……」
「あーー…つまりあれだろ?授業ちゃんと受けろって言いたいんだろ?」
「うん。来月から支給されるポイントが減ると、部活にも支障が出るかもしれない。無料の山菜定食じゃ栄養が偏るし、シューズや練習着を買い換えるのにも苦労するようになる。それは須藤君も困るよね」
「そうは言ってもよ。キャラじゃねえって言うか……」
確かに。急に須藤君が真面目に授業を受けるのは、彼のプライドの高さというか、意地っ張りな性格的に難しいだろう。
「そんなことないよ。君は目標の為に努力できる凄い人だ。バスケットでプロになるために、本気で頑張ってる。だから少しだけ、その熱量を他のことにも向けて欲しいんだ」
「お、おう……あー……うん」
須藤君、本気で照れてるじゃん。いや、そりゃ照れるか。洋介君、シラフだよね…?須藤君のこと、褒め殺すつもりかな。
須藤君は洋介君から顔を逸らして、しばらく、あー、とか、んー、とか意味のない呻き声を上げていた。
「……ちっ。しょうがねえか。プロになるためだもんな」
「須藤君……!」
「ああっ?!鬱陶しい!近寄んな!」
洋介君の陽キャパワーの高さを、少し舐めていたかもしれない。まさか愚直に正面から説得するとは。しかもあの捻くれ者の須藤君を相手に。
「うげー……なんか石倉さんとかが見たら喜びそうな光景だわ」
洋介君と話してると時々感じる腐の視線、正体は彼女だったのか……うん、聞かなかったことにしよう。
「洋介君、凄いね……本当になんというか、真似できないよ。うん、凄い」
「語彙力死んでるわよ」
◆◇◆◇
……いや、作戦が上手くいったって言っていいのかな?
なんか、ほとんど洋介君の人たらしの才能で押し通した感じだった気もする。
「須藤君、お疲れ様」
「おー平田か。また今度バスケしようぜ」
「もちろん。……それと、須藤君が良ければ勉強教えるよ。理解できるようになれば、勉強も今よりは面白くなると思う」
「本当かよ?……ま、でもそうだな、世話になることにするぜ。ぶっちゃけ、全然わかんねえし、眠くてしょうがねえんだわ」
洋介君と須藤君の仲が良くなったとはいえ、まだ作戦の半分といったところだ。
一番改善したいのは、Dクラスの治安というか、もっと言うなら池君、山内君とその周辺の男子生徒達の授業態度だ。
「何やってんだよ須藤!裏切ったのか?!」
「あぁ?俺が誰とつるもうが勝手だろうが。てかいい加減、お前らも現実見ろよ」
「げ、現実?」
「俺が言えた事じゃねえけどよ、無駄に意地張ってもいいこと無えぞ」
「うぐっ」
実のところ、彼らも気づいてはいるんだろう。このまま意地を張っていても後が辛いだけということは。
「池君、山内君。今ちょっといいかな?」
「く、櫛田ちゃん……」
「な、なんか用か?ですか?」
「私からもお願い。五月一日まででいいの、少しだけ真面目に授業受けてみない?」
「それは……その……」
実は事前に、山内君と池君の説得は自分に任せて欲しいと、櫛田さんから要請があった。
僕も櫛田さんに説得を頼むのは賛成だ。
須藤君に直接説得を頼むと、そのために仲良くなったのかと思われて、反感を買うかもしれない。それに、そもそも彼の話術に関してあまり期待できなかったという理由もある。
まぁ櫛田さんの思惑は、自分の活躍の場が欲しかった、とかそんな感じだと思うけど。
「二人の言うとおり、もしかしたら心配のし過ぎで、普通にポイントを貰えるかもしれない。けど、そうだとしても、別に真面目に授業受けることは、損にはならないよね?」
「そ、それはそうだけど」
「それに、もし、平田君の言う通りにポイントが減ってたら、二人は多分、みんなから凄く責められることになっちゃう。私、二人がそんな目に遭うのを見るのは、嫌だよ」
「「……」」
「あと二週間だけだから、お願い。私の事を助けると思って、協力してくれないかな?」
上手い言い方だ。元々プライドのせいで反発していただけなんだから、そのプライドが発揮される方向を変えてやればいい。
男に注意されて言うことを聞くのが嫌でも、可愛い女の子に助けを求められるのはむしろ嬉しいはず。
それに、須藤が先んじてこっち側に来ているのも大きい。
最初に折れたのは自分じゃない、という事実は心理的なハードルを大幅に下げる効果があるからね。
「そ、そういうことなら、うん。俺、真面目に授業受けてみるよ」
「本当?!池君、ありがとう!」
「あっ!ず、ずりぃぞ!!俺!俺!俺の方が真面目に授業受けるから!」
「山内君も、ありがとう!期待してるね、二人とも!」
櫛田さんは二人にとびっきりの笑顔を見せる。全くもって裏の意図なんて見えない、純粋に嬉しくて堪らないと言うような、完璧な微笑みだった。
「はぁ、よかった〜。上手くいった……」
「お疲れ様だな、渚」
自分の席に戻り、机に体を投げ出す。
「綾小路君もね。お疲れ様」
「俺はバスケしてただけだからな……でも上手くいってよかったな」
「そうだね。やっと肩の荷が下りた気分だよ」
「……はぁ、ただスタートラインに立っただけじゃない。先が思いやられるわね」
堀北さんが読んでいた本を閉じ、そんな事を言う。
しかし正論だ。どうして「授業を真面目に受けましょう!」「わかったよ!」で済むはずの話をここまでややこしくできるのか。
毎度これだとさすがに困る。
それはそうとして。
「堀北さんもありがとうね」
「感謝される謂れは無いわ。私は何もしていないのだから」
「いや、それだよ。本当に、本っ当にありがとうね。何もしないでいてくれて」
ありがたや……と手を擦り合わせて堀北さんを拝み倒す。
「……嫌味かしら。あれだけ念を押されたのだから、何もしないに決まっているでしょう」
それはそう。でも堀北さんがこの一週間のうちにもし動いていたら、絶対にもっと拗れてたからね。
お願いだから僕たちを信じて何も口出ししないで!と頼み込んでおいたのだ。
彼女の毒舌のせいでクラスが男女で分裂して、そのまま空中分解しました。なんてさすがに洒落にならない。
ちなみに、嫌味かどうかと言われたら、嫌味だよ。当たり前だね。
堀北さんは自分が問題児であることを全く自覚してないタイプの問題児だからなぁ……原作だと勉強会でその辺を自覚するようになるんだっけ?
というか、堀北さんと須藤君のフラグ折っちゃってるのか、これ。どっかで帳尻合わせないと、堀北さんが幸村君ばりに存在感の薄い生徒になっちゃいそうだ。
ん?洋介君をリーダーに擁立するなら、その方が都合が良いのか?いや……でも、原作が……うーん悩ましいね。
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