「第二回!Dクラス作戦会議〜!いえ〜い!」
「ひゅー!いぇ〜い!」
「わ、わー!」
「……これ、そんなに盛り上がるイベントじゃなくないか?」
せっかく僕が盛り上げるべくハイテンションでコールしたのに、綾小路君は空気を読まずにマジレスしてきた。
示し合わせたわけでもないのに当然のようにノリノリだった櫛田さんと、ちょっと無理してノってきた洋介君の気持ちも考えてよ。
「話す内容は暗いんだから、無理やりにでもテンション上げないと、お通夜みたいになるけどいいの?空気が重くなったら、綾小路君に歌ってもらう事になってるんだけど……」
「おっけー。マツケンサンバ2でいい?」
「やめてくれ!?……わかった。俺が悪かった」
軽井沢さんが迷いなくデンモクを弄り始めたのを見て、綾小路君は本気で焦ったように止めてきた。もちろん冗談だよ。
ちなみにDクラス作戦会議の第一回は、Sシステムについて公表する直前の話し合いだ。櫛田さんにクラスメイトのメンタルケアを頼んだ時のやつだね。
別にその時はDクラス作戦会議なんて名前を冠してなかったし、ただの櫛田、平田グループの交流会みたいな雰囲気だったけど。
今回はその時から、人数を絞って8人。メンバーは、男は洋介君、綾小路君、僕。女の子は櫛田さん、軽井沢さん、松下さん、佐藤さん、王さんだ。
堀北さんこそいないものの、Dクラスの首脳陣と言っていい豪華なメンバーだね。
佐藤さんは綾小路君にくっついて来た。王さんは洋介君が来るから、櫛田さんに頼んで参加した感じかな。
松下さんはいかにも平田君目当てですよ〜みたいな顔してるけど、あれは多分会議の内容が気になって来てるね。
「じゃあ前回から新しく判明したことについて、なんだけど……何か追加情報ある人いる?…はい、洋介君」
「うん。二つあるよ。一つ目は前回は疑惑止まりだった成績不振による退学についてなんだけど…どうやら本当らしいんだ。中間と期末のテストは、赤点を取ったら即退学で間違いないみたいだね」
「うぇ?!まじ?」
「き、厳し過ぎない?」
軽井沢さんと佐藤さんの勉強できない組が顔を青くして狼狽える。
「そうだね。でも、上級生の退学者数を見る限り、赤点の基準は理不尽に高いわけじゃないみたいだ。みんなで協力すれば、乗り越えられるはずだよ」
「勉強会を開くってこと?」
「うん、そのつもりだよ」
どうやらもう既に勉強会を企画しているらしい。とことんクラスメイトに尽くす男だね。どう考えても面倒な仕事なのに、嫌な顔一つしない。イケメンだ。
僕も教師側で参加させられるんだろうけどね!憂鬱だなぁ……
僕は潮田渚だけど、残念ながら教師志望じゃない。先生への憧れとか特にないし……
「二つ目は、部活動のことだね。どの部活でも、レギュラーに入って結果を残すと、その結果に応じたポイントが貰えるらしいんだ」
「え!本当?!」
「いいなぁ……私も部活入ろっかな?」
「大会に出るような部活って大体運動部だよ?というか、二人は放課後の時間は勉強に当てた方がいいんじゃない?」
「うぐっ……夢ぐらい見させてくれたっていいじゃん……」
「あはは、ごめん。で、他には特に追加情報ないかな?……うん。無さそうだね。じゃあ次、Dクラスの現状についてだね」
「「「………」」」
議題を変えた途端、重苦しい空気が流れ、全員が閉口する。
「この件に関しては、まず謝らせてほしい。情報の伝え方を間違えてしまった僕の責任だ。本当に申し訳ない」
「いやぁ、さすがに洋介君の責任じゃないと思うよ?まぁそれでも、櫛田さんには滅茶苦茶負担かけちゃってるし、それは申し訳ないね。ごめん」
本当にごめんね。これ内心ブチギレてるんだろうなぁと思いながらも、喧嘩の仲裁は彼女に投げっぱなしだ。
「そ、そんな!謝らないでよ!負担だなんて思ってないよ?平田君たちのおかげでほとんどの生徒はちゃんと授業受けるようになったんだし、むしろ感謝しかないよっ!」
「そうそう。それに悪いのはどう考えても三バカ共でしょ。ここの人たちで謝りあってても何も話進まないし、一旦やめよ。これからどうするか考えないと」
軽井沢さんの言うことはもっともだ。ここはこれからどうするかを決める場であって、反省会ではない。
「そう、だね……」
「……どうしよっか」
「「「………」」」
しかし特に打開案がある人はいないらしい。全員がまた口を噤んでしまった。
「綾小路君、マツケンサンバ入れていい?」
「こんな空気で歌えるか?!」
綾小路君って意外と弄りがいあるんだよね。毎回ちゃんと反応してくれるし、頭が良いからネタを拾う力もある。最初は世間知らず天然キャラだったのに、いつの間にか弄られキャラになってた。
「じゃあなんか言ってよ」
「うっ、そ、そうだな。……実は、渚が良い案を持ってる、らしいぞ。聞いてみないか?」
「綾小路君?」
バスケのメンバーになりそうな洋介君と綾小路君の二人には先んじて話していたとはいえ、開示するの早いんだけど?
「え〜あるんなら言ってよ」
「いや、僕の案を言ったらそこで会議終わっちゃいそうだなって思って。みんなで色々考えてからにしようと思ってたんだよ」
「……会議は話し合いの場だ。みんなの考えを持ち寄って討論するためにある。アイデアを出すのはその前の段階で済ませておくべきことで、今やることじゃない」
「それっぽいこと言ってるけど、歌いたくないだけだよね?まぁいいけどさ」
コホンと咳払いをして声を整え、僕は体育の時間に思いついた案を話し始める。
「みんな今日のプールで、池君と篠原さんが口論になった時のこと、覚えてる?」
「勿論、覚えてるよ」「うん」「は、はい」
「あの時、須藤君も仲裁に入ったでしょ?三バカなんて言われてるし、喧嘩っ早かったり素行が悪かったりするけど、根は良い人なんじゃないかなって思って」
「それは……どうなの?不良が猫拾ったらギャップで良い人に見えるやつの典型じゃない?」
「そうかも。でも、別にそれでも良いんだよ。重要なのは、池君、山内君は須藤君の注意なら割と素直に聞き入れることと、須藤君は話が通じないわけじゃないってことだよ」
あの例の賭けにも、須藤君は難色を示して参加してなかったみたいだし。そう言うと明らかに女子生徒たちの反応が変わった。
「え?嘘まじ?」「須藤君、怖いけど、悪い人じゃなかったんですね……」「意外〜」
ああ、須藤君が賭けに参加してないの、みんな知らなかったのか。というか、たったそれだけで好感度上がりすぎじゃない?これこそギャップのやつの話だと思うんだけど。
「僕からの提案は、題して「須藤君と一緒にバスケして仲良し大作戦!」だよ!」
「まんまだな」
「わかりやすくて良いでしょ?」
「そうだね。凄く良いと思うよ、うん」
洋介君はしきりに頷いて嬉しそうに微笑んでいる。間違いなく君好みの作戦だろうなとは思ってたよ。
「なるほど〜仲良くなって池君たちに注意してもらうってワケね。でも上手くいくかな?」
「池君と山内君はともかく、須藤君って別に洋介君を嫌ってはいないと思うんだよね。自己紹介の時に反発したから、意地になっちゃってるんだと思う。だからきっかけがあれば仲直りできる、と思う、多分……?」
「全然信頼できないんだけど」
「一応サブプランとしては、「須藤君と河原で殴り合い?!雨降って地固まる作戦!」もあるよ」
「う、上手くいくかなぁ……?」
松下さんは半信半疑だ。でもサブプランの方は保険とはいえ、まず上手くいくよ。
上手くいかなければ、ボコボコにして無理やり言うことを聞かせればいいだけだし。
池君、山内君と違って須藤君は喧嘩で負けた事を言いふらすタイプじゃないし、僕は初見の相手との喧嘩なら確実に勝てる自信がある。言えないけど。
「ただ、須藤君はバスケに関してはかなり本気だから、中途半端は良くないと思うんだよね。楽しく遊ぶだけにしても、バスケが上手いメンバーを集めるべきだと思う」
さすがに遊びで部活レベルの強度を求めてはこないと思うけど、馴れ合いだと思われるとすぐに冷めるだろうっていう確信がある。
「なるほど……練習が必要だね」
「うん。まぁ付け焼き刃でも、やらないよりはマシだよね。それと、上手く誘えるかどうかなんだけど……」
「それは私も協力するよ!……かわりと言ってはなんだけど、私もバスケ参加したいなぁ、なんて」
「ありがとう、櫛田さん。百人力だよ。バスケも是非お願い!ああでも、最優先は須藤君だから、メンバーのバスケの腕前によっては応援に回ってもらうことになるけど……」
「うん!それでいいよ!楽しみだね」
話が上手い具合にまとまり、弛緩した空気が流れる。
「じゃあもう話し合うことないよね?会議終わりでいいよね?はい、終わり!せっかくカラオケに来てるんだから、みんなで歌お!」
その隙を突くように、軽井沢さんが強引に会議の終了を宣言した。やっぱり僕の提案最後にするべきだったよね?
そのままデンモクを操作したかと思うと、すぐに曲がかかり始めた。曲名は……え?
「えーこほん。僭越ながら、私、綾小路清隆が、トップバッターを務めさせていただきます。曲名は『津軽海峡 冬景色』です。お聴き下さい」
「ぷっ、ちょっ、まじ?」「あははは」「いいぞーがんばれー」
なんか軽井沢さんと二人でコソコソ喋ってるなぁと思ったら、何してるのさ綾小路君?!
綾小路君はとんでもなく歌が上手かった。カラオケは大盛況のまま終わった。
ストックが切れました。
ここから先どれだけ息切れせずに進めるかは、モチベ次第になります。
対戦よろしくお願いします。