原作開始
「今度はミトさんが約束を守る番だよ!」
はい。というわけで長かった修行パートが終わってようやく本編開始です。
ミトさんからの課題が『沼の主(原作)』じゃなくて『近海の主(めちゃくちゃデカい魚。……本当に魚か?)』に変わっていたけど、ゴンさんが素潜りしてワンパンしてくれました。さすがゴンさんだ、なんてことないぜ!
そしてついに180センチを超えた
「さあ、ミトさん」
「……っ」
ゴンさんの圧力に屈するように、本当に渋々とミトさんがサイン(拇印)をくれたので早速応募カードを出しに行く。レツたちも一緒だ。
「ねえバン、本当に僕たちも応募していいのかな? 人間じゃないんだよ?」
「いーよいーよ。ダメならダメってハンター協会が言うでしょう。その時に考えればいいよ」
「うう、バンのその能天気な図太さが羨ましい……」
「みんな身分証明書を持ってないんだし、ハンターライセンス以上の身分証明書はないんだから、とりあえず当たって砕けろでぶつかってみようぜー!」
このハンター世界の住人だったレツはもしかしたらまだ生前の身分が残っているかもしれないけど、幽白世界から来たぼたんちゃんと幻海師匠は身分証がないからね。
念獣(念人間)の三人が受験できるか不明だけど、応募するだけならタダみたいなものだ。なんでもやってみるものさ!
◇
「うう……まだ11歳じゃない。まだ早い……まだいいでしょう……」
港で応募カードを出した夜、1階のリビングでミトさんがワインを飲んでうな垂れていた。
「もう11歳さ。男子の成長ってのは早いもんだ。あの二人の父親だって11歳でこの島を出たんだろう?」
ミトさんの隣には幻海師匠とぼたんちゃんの姿が。みんなで一緒にお酒を飲んでいるらしい。
ミトさんにはぼたんちゃんの姿は見えていないはずなんだけど、コップが宙を浮いて中のお酒が減っていることにも気がついていないみたい。自由な幽霊ライフだ。
いいなー。俺も早くお酒を飲めるようになりたいなー。
「ゴンはこの島に来た時は本当に小さくて、ミトさんミトさんってとっても可愛くて……」
「今もよく懐いているだろう。……図体はデカくなったが」
「ゴンちゃんがあんなに大きくなるなんてあたしもビックリだよ!」
「バンは大きくなったら私と結婚するーって言ってたのに……」
「あれは今も大して変わらんだろう」
「それはそうね」
「バンちゃんは初めて会った時から全然変わらないねぇ」
あれ? 今なんかディスられたような気が……気のせいかな?
あとぼたんちゃんが普通に会話に混ざってるけど、たぶんミトさんには聞こえていないはず。
「レツだって……。あの二人みたいに頑丈な子じゃないから心配だわ。怪我や病気になったらと思うと心配で……」
「あの二人がどうにかするだろうさ、心配要らないよ」
「いざとなったら幻海さんもいるし、あたしも微力ながらお手伝いさせてもらうよ」
「……ええ。あの子たちを、どうかよろしくお願いします」
その後も3人でお酒を飲んでいたので、俺は静かに自分の部屋に戻った。
この翌週、ミトさんに見送られながら5人で島を出た。
俺もゴンも、レツも幻海師匠もぼたんちゃんも。全員で無事にこのくじら島に帰ってこよう。そう思った。
「ミトさーん! いってきまーす!!」
◆◆◆
カキン帝国に転生した少女はなんとか国外脱出に成功していた。
原作でゴンやキルアが念を覚える前から絶を使っていたような描写があったから、地道に絶の訓練を積んでいたのが功を奏した。絶なら家や学校で使っても存在感が消えるだけ、というのも少女にとって好都合だった。
そしてハンター試験が始まる数か月前から、家出(国外脱出)計画を実行した。
本当なら自分の偽の死体を用意して死亡を偽装したいところだったが、そう簡単に若い少女の死体など用意できない。だが少女が行方不明になればすぐに家族や警察に連絡がいって捜索が始まるだろう。
そこで学校が夏季休暇に入っている時に、家族にお願いして学生向けの夏季キャンプに参加させてもらうことにした。
二泊三日の小旅行だが、旅行当日、家を出た後に母親の振りをして旅行会社に電話をかけて予約をキャンセル。キャンプ道具と見せかけた荷物から取り出した男物の服に着替え、事前に調べておいた経路を辿って隣国を目指した。
彼女が幸運だったのは父親がカキン軍人だったことだろう。
何年もかけて酔った父から少しずつ聞き出した国境警備の情報を利用し、危ない場面でも絶を使ってなんとか潜り抜けることができた。
なんとしてでもゴンたちのハンター試験に、原作開始に間に合わせるという執念が彼女の行動を支えていた。
カキン帝国から脱出した後は船と飛行船を乗り継ぎながら北の大陸を目指した。
彼女が辿り着いたのは「格闘のメッカ」、「野蛮人の聖地」。
ハンター試験が始まるまでの数か月間、自身を鍛え、すっかり減ってしまった資金を調達するために、天空闘技場にやってきた。
そして彼女は身寄りのない少年格闘家として振舞いながら、ハンター試験が始まるまで150階前後の階層で闘いの日々を送ったのだった。