第四の壁を越えて   作:タカリ

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世界よ刮目せよ、これがゴンさんだ

「立派なハンターになって帰ってくるからー!!」

 

 見送りに来てくれたミトさんや島の皆に手を振ってから振り返る。

 船上には十数人のハンター試験受験者がいて、のんきな発言をした俺たちを嘲笑って……いなかった。

 こちらを横目でチラチラしているが、目が合いそうになると慌てて顔を背ける。

 

「なんだよあの筋肉……」

「間違いない、あれは数十人殺しているぜ……」

「ウホッ、いい僧帽筋♠」

 

 あちこちで男たちが囁く声も念で強化した俺の耳にはバッチリ聞こえている。

 こいつら、ゴンさんにビビってやがる!!

 

「ゴンさん」

「ふんっ!」

 

 はい、サイドチェスト!

 ビクッ!(他の受験者たち)

 

「せいっ!!」

 

 続いてフロントダブルバイセップス!

 ビクビクッ!

 

「はあっ!!」

 

 そしてトドメのモストマスキュラー!

 ビクビクビクビクビクビクッ!

 

 はーっはっはっは! ゴンさんがポーズを決める度にビクビクしやがって! こいつら本当にハンター試験に受かる気あるのか~?

 こんな臆病者はさっさとおうちに帰ってママのおっぱいでも吸ってる方がお似合いだぜ~!!

 

「なにしてるんだい、このおバカ」

「アイタッ」

 

 ゴツンと櫂で後頭部をはたかれた。ぼたんちゃんの愛のツッコミが痛い。

 

「ほら、バンもゴンも、他の人に構ってないでさっさと客室にいくよ」

「「はーい」」

 

 ぼたんちゃんの先導で客室に向かったけど、……ねえ、なんで俺だけ叩かれたの? ゴンさんは叩かれないとかズルいじゃん!!

 

 ◇

 

 その後、凄い嵐が船を襲ってきてほとんどの乗客は船酔いで壊滅。死屍累々の有様と化した。

 三半規管の鍛え方が足りないな。レツだってケロッとしているのにね。

 

「薬だよ。この草を噛むと楽になる」

「ア、スンマセン……」

 

 ゴンさんは大きな体で船内を動き回り、グロッキーな連中の世話をしていた。優しいね。

 そんな優しいゴンさんなのに近くに寄ってくるとみんなビクビクして、薬を受け取る時も蚊の泣くような声でお礼を言うのが面白い。

 

「僕もゴンを手伝ってくるね」

 

 心優しいレツもゴンさんのお手伝いに行ってしまった。

 じゃあその間に俺は船内の様子でも見てこようかな。

 

「バンちゃんは手伝いにいかないのかい?」

「むさ苦しいおっさんたちしかいないから別にいいかなーって」

「まったくもう、この子ったらしょうがないねえ」

 

 俺にお世話してほしいならまず可愛い女の子に生まれ変わってから出直してから来てほしい。

 ……いや、原作でカイトが女の子になった展開はビックリしたし、本当にそうなったら困惑しかないや。

 まあ、船長を探して船のことを教えてもらう方が優先かな。アニオリ回の軍艦島がないとは限らないし、大型船を見学する機会って滅多にないからね。

 俺もハンター試験に向けて真面目に対策しているんだよ?

 

 ◇

 

 次の嵐が近づいていると船内放送が入り、受験者のほとんどは小舟に乗って急いで近くの島へ避難していった。残ったのは俺たち5人とレオリオ、クラピカだけ。

 

「お前らなぜハンターになりたいんだ?」

 

 原作の通りに船長さんに志望理由を聞かれる。

 

「おい? えらそーに聞くもんじゃねーぜ、面接官でもあるまいし」

 

 うーん、初期レオリオはただのチンピラだなぁ。あるいはマフィアの下っ端か。

 まさかこのレオリオが真面目な医大生になって、クラピカがマフィアを乗っ取って若頭に収まるとは思わなかったよ。

 まあ、それはそれとして話が進まないのと点数稼ぎのために口出しをしよう。

 

「船長さんは面接官だよ。ハンター協会から依頼を受けたね。そうでしょう?」

「は? なんだと!?」

「どういうことだ?」

 

 レオリオとクラピカの驚く顔についにやけそうになる。こういうネタバラシって楽しいよね。

 

「もうハンター試験は始まっているんだ。さっき船から下りた人たちは不合格。残っているのはこの七人だけってこと。そうでしょう、船長さん?」

「よく知っているじゃないか。その通りだ坊主。さっきの連中は審査委員会に報告している。別ルートから審査会場に辿り着いたとしても門前払いになるってわけだ」

 

 数百万人の受験希望者を篩にかけるわけだし、容赦なく落としていくんだよね。効率的とも言えるし意地が悪いとも言える。

 

「さあ、誰からでもいいぞ。細心の注意を払ってオレの質問に答えな」

「俺は親父の魅せられた仕事がどんなものかやってみたくなったんだ」

 

 まず最初に答えたのがゴンさん。

 ゴンさんの志望動機を聞いた二人は「こいつの親父だって? まさか地上最強の生物とか言わねえよな……?」「なんという鍛え抜かれた肉体。さらにプロハンターの息子……これは手強いライバルになりそうだ」とそれぞれ戦慄していた。

 ゴンさんが11歳だって知ったら二人がどんな反応するか楽しみだな~。

 

「私はクルタ族の生き残りだ」

 

 次に答えたのがクラピカ。

 

「金さ! 金さえあればなんでも買えるからな!」

 

 そしてレオリオと答えていく。

 クラピカもレオリオもお互いが気に入らないのかチクチク言葉で空気が悪いですねー。「品性は金で買えないよレオリオ」のセリフはちょっと好き。

 

「俺の目標は女! 世界中の美女と美少女をハントする美少女ハンターになるのが俺の夢だ! だからハンターを目指しているよ!」

 

「「「……」」」

 

 俺が志望動機を口にすると、レオリオとクラピカと船長が信じられないと言わんばかりの顔でこっちを見てきた。

 

「あー、おいガキ、お前今いくつだ?」

「11歳! もうすぐ12歳!」

「11歳でこれとかマセガキがよぉ……。先が思いやられるぜ!」

 

 レオリオが天を仰ぐように嘆き。

 

「あいつの息子は……あいつには似なかったようだな……」

 

 船長は遠い目でどこかを見つめ。

 

「君たちは彼の連れか? ……正直、なぜ同行しているのか理解できない。例え子供とはいえこんな男とはさっさと別れた方が身のためだぞ」

 

 そしてクラピカは俺に直接言うのではなく、レツと幻海師匠に俺と距離を取るように忠告していた。ぼたんちゃんは目に入らないようだ。

 

 その後、レツが「兄を探しているから」、幻海師匠とぼたんちゃんが「特に理由はないが身分証として便利そうだから欲しい」と答えたところで、船員が慌てた様子でやってきた。

 風が予想以上に強いという報告に全員で慌てて甲板に出ると、強風でマストが吹き折れ、作業中の船員に飛んでいく。

 

「うわあああああ――あ?」

 

 ――ボッ!

 

「怪我はない?」

「え、あ……。アリガトウゴザイマス……」

 

 強風と大波に激しく揺れる船上で、船員の前に一瞬で移動したゴンさんが大人の腕ほどの太さのマストを一撃でボッ!したのだ。

 カッツォという名前の船員の無事を喜ぶ前に、この船に乗っている全員が、頭ではなく魂で理解した。

 

 これがゴンさんだと。

 

 ゴンさんつええええええええ!!!(大歓喜)




ゴンさんの仕上がりに大満足の厄介ゴンさんファン(バン)。

なお戦闘力ではまだまだ幻海には及ばない模様。
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