第四の壁を越えて   作:タカリ

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旅の終わり

「ゴンさんがいる……」

 

 カキンからやってきた少女は、目的の一行が近づいてくることにすぐに気がついた。

 

 サングラスをかけたチンピラ風の老け顔青年、レオリオ。

 民族衣装に身を包んだ金髪の青年、クラピカ。

 ツンツン頭の11歳くらいの少年と、その隣を歩く少年に似た面影の身長2mほどの筋骨隆々の大男(髪を含めると2m近い)。

 

 原作ではいなかった不思議の国のアリスのような恰好をした金髪の美少女や、見覚えのある道着を着た覆面戦士の姿もあったけれど、それよりなにより、ゴンさんの存在感が半端ない。

 通りを歩く他の人たちもゴンさんの存在に気がつくと慌てて道を開ける。自ずと道を開けてしまうオーラがある。

 

 明らかな原作介入の証。少女は自分以外の転生者の存在を確信する。

 ゴンに似た少年かゴンさんが一番の候補だが、金髪の少女か覆面戦士が転生者という可能性も0ではない。

 

 予想外の光景に少しだけ混乱したけが、『原作主人公一行』が店に入っていくのを見て、少女が急いで後を追いかける。

 彼らに会うためにここに来たのだ。

 『原作』に間に合わせるために、命懸けで追いかけてきたのだ。

 震える足を押さえつけて前に進んだ。

 

「親父、ステーキ定食」

「焼き方は?」

「弱火でじっくり」

 

「すみません、私もステーキ定食をお願いします」

 

 店に入って合言葉を告げた瞬間、注目が集まる。

 その中の一人。ゴンによく似たツンツン頭の少年が驚いた顔で少女を見た。

 

「……メイちゃん?」

 

 何度も耳にした言葉。

 記憶と一致する驚いた時に見せる彼の表情。

 

 ――ああ、やっと。

 

「や〝っ〝と〝、あ〝え〝た〝あ〝あ〝あ〝ぁ〝ぁ〝……!」

 

 長い旅の終わりで、遂に彼女は『前世の恋人』と再会を果たした。

 

 ◇

 

 ぼろぼろと泣き崩れながら飛び込んできたメイちゃんを抱きとめる。

 

 ――あの日、あのプールで、突然ナイフを持った男に襲われた。

 俺は真っ先に刺されて動けなくて、立ちすくんだ彼女が次に襲われた。

 

 守れなかった。すぐ側にいたのに。

 

 そして気がついたらこの世界に転生して、ゴンの兄になっていて。

 もしかしたら彼女もこの世界に転生しているんじゃないかと思っていた。

 でも、くじら島には年の離れたノウコという女の子しかいなかったし、たまに確認していたけど前世の記憶は持っていなかった。

 

 メイちゃんがこの世界に転生しているのかわからない。

 もしかしたら前世の世界で、俺と違って一命を取り留めて今も生きている可能性だってある。

 

 でも、もしもあの時、メイちゃんも殺されていて。

 俺と同じようにこのハンターハンターの世界のどこかに転生していたのなら、『原作』が始まるこのタイミング――『287期ハンター試験』に応募してくる可能性は高いんじゃないかと思っていた。

 

 そして、本当に彼女と再会できた。

 第四の壁(世界の壁)を越えたこのハンターハンターの世界の中で、再び彼女と再会することができた。

 

「バン。その子、バンの知り合いなの?」

「ああ……前世の恋人だよ。ゴンは悪いけどレオリオたちと先に行っててもらえる? 落ち着いたらすぐに追いかけるからさ」

「わかった! 先に行って待ってるね!」

「おい、バン。ゼンセノコイビト……ってのはよくわかんねーけど、女の子泣かすんじゃねーぞ」

「……試験開始の時間までもう間もなくだ。遅刻しないように気をつけろよ」

 

 ろくに説明もしていなくて悪いけど、俺の意を汲んでゴンたちは先に行ってくれた。部屋丸ごとエレベーターになっていて地下に向かったんだ。

 

「ぐすっ……。えへへ、今はバンくんって言うんだ? バン=フリークス?」

「そうだよ。まさかのゴンの兄貴。メイちゃんは?」

「ん……後で話すけど、私はメイでお願い」

「そっか。わかった」

 

 どうやら複雑な家庭に生まれたみたいだ。この会場に辿り着くまでいろいろあったんだろう……。

 

「バン。前世の恋人って、なに」

 

 じとーっとした目が隣から向けられる。レツが冷めた目で俺を見ていた。

 

「そのまんま、前世の恋人だよ。この世界で生まれ変わる前の別の世界で付き合っていた相手」

 

 そして、一緒に殺された。

 

「むうううぅぅぅ……」

「かわいいー! ねえねえバンくん! この子は? アリスちゃんなの? 不思議の国から連れてきちゃったの?」

「わっ! は、離して! 離せー!」

 

 俺の答えに機嫌を損ねたレツを見て、メイちゃんは逆に目をキラキラさせて抱きしめた。メイちゃんは可愛いものが大好きなんだ。

 

「違うよ。彼女はレツ。緋色の幻影のヒロインの子」

「あ、あの子なんだ! うわあ、ゴスロリ風のドレスも似合っていたけどエプロンドレスも似合う! かわいい!!」

「な、なんなんだよ、二人しか分からない話をして!」

 

 一緒に劇場版ハンターハンターを視聴済みなのでメイちゃんはレツのことも知っている。俺の短い説明でも理解したようだ。

 でもレツはメイちゃんのことを知らない。なんとか振り払おうとしているけど、メイちゃんがまだ念を使えないみたいなのでレツも手加減に苦労しているみたいだ。可愛い女の子同士でわちゃわちゃしている姿って眼福だよね。

 

「レツちゃんかわいいなぁ。メイお姉ちゃんって呼んでほしい。あと今度一緒にアリスコスしようね!」

「絶対ヤダ!!!」

 

 メイちゃんもレツと仲良くなれたみたいだね。ヨシ!!!




 メイちゃん

 バンの前世の恋人。
 バンが転生者ということはぼたん、幻海、レツしか知らない。
 バンに前世で恋人がいたことは誰も知らない。
 バンとメイが一緒に殺されていたことも誰も知らない。

 バンがこの世界に転生しているなら『原作』に関わるはずだと推測し、バンと合流するために287期ハンター試験を目指した。

 外見はポケモンBW2のメイ(女の子主人公)。
 所謂コスプレ。転生者アピールのために狙ってやっている。
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