バンの前世の恋人、メイ。
彼女の登場によってレツの胸中は複雑だった。
(僕のことを可愛いって、いっぱい言ってたくせに……恋人がいるんじゃないか)
レツとバンは恋人でもなんでもないけど、それでも彼女が念獣の体で蘇ってからの数年間ずっと一緒に過ごした相手だ。
ゴンは中身がお子様なので一番身近な異性と言える。
そんなバンの前に突然前世で死に別れた恋人が現れたのだ。ショックを受けないはずがない。
そんなバンとメイは、ゆっくりと降下するエレベーターの中で楽しそうに二人で語り合っていた。
「バンくんがハンター世界の美少女でハーレム作るなら、やっぱりマチとシズクはハーレムに入れたいと思うの!」
「メイちゃんは昔から旅団メンバー好きだったよね。パクノダはいいの?」
「パクちゃんも好きだけど、好きだけど……! 原作のように美しい最期を迎えて散ってほしい気持ちと、クロロくんとくっついてイチャイチャしてほしい気持ちが私の中でせめぎあっているの!」
「わかる!」
「『わかる!』じゃないよ! メイはバンの恋人なのに、どうしてバンの恋人を増やそうとしているの!?」
なぜか二人して将来のバンのハーレムメンバーに誰を迎えるかという話し合いをしていた。
理解できない。
「彼氏が自分以外の恋人を作ったら普通は嫉妬するんじゃないの!? どういうこと!?」
「言いたいことはわかるよ、レツちゃん」
真面目な顔をしたメイが言う。
「――私、可愛い女の子は『あり』だから。もちろんレツちゃんも『OK』だよ?」
「この人が何言っているのか理解できない!!!」
レツの知らない世界がそこにあった。
◇◇◇
「メイちゃんはまだ念を覚えてないのかい。そりゃ残念だねえ。あたしも早くメイちゃんとお喋りしたいよ」
「私もぼたんさんを早く見たい! がんばって念を覚えるね!!」
「うんうん、聞こえてないだろうけどがんばるんだよぉ」
メイちゃんは順調にみんなと仲良くなっている。特にぼたんちゃんとは気が合いそうだから念を覚えた後の二人の掛け合いが楽しみだ。
ちなみにツッコミ属性のレツはメイちゃんのボケに振り回されていて、幻海師匠は覆面の下を見せてほしいと頼まれたけどけんもほろろに断っていた。
喧嘩してないから仲良しだな、ヨシ!
というわけで地下100階に到着したエレベーターから下りて緑のお豆の人からナンバープレートを貰った。
俺が406番、メイが407番、レツが408番、幻海師匠が409番、そしてぼたんちゃんが410番。
うん、バッチリぼたんちゃんの姿が見えているみたいだし、念獣の3人が普通に受験生と認められているね。
それでいいのかハンター試験。まあ好都合だから別にいっか。
「やあ、君たちも新人かい」
ゴンたちと合流しようとしてデカい筋肉を探していると、小太りおじさんに声をかけられた。隣のメイが彼を見て歓声を上げる。
「うわあ、本物のトンパさんだ! すごーい!」
「え? ……君、俺のこと知っているの?」
「もちろん知ってますよ! 『新人潰し』のトンパさん! 今年で35回目の大ベテランなんですよね! あ、下剤ジュースがあるなら記念にほしいです!」
「ア、アハハ……く、詳しいね、君。じゃあ、これどうぞ」
「やったー! ありがとうございます!」
影の試験官の噂という噂もあるトンパさんからメイが下剤入りジュースを貰っていた。
俺も記念に貰ってしまった。ラッキー!
「そ、それじゃ、俺はこの辺で……」
トンパさんがフェードアウトしてすぐにゴンたちと合流した。
「――あ、トンパさんに今年の注目のルーキーがいるか聞いておくの忘れた」
もしも俺たち以外の転生者がこの世界にいるなら、今回のハンター試験に参加している可能性は高い。トンパさん以上にルーキーに詳しい人はいないのに、さっさと別れちゃったのは失敗だったな。
◇
「……やれやれ、とんでもねえな。今年のルーキーは化け物揃いじゃねえか」
バンたちと離れた後に、トンパはそう独り言ちるのだった。
メイちゃん
原作のパクノダの最後を見たい気持ちが6、クロロとイチャイチャしているところを見たい気持ちが4。
ハーレム漫画の終盤で負けヒロインの敗戦処理が始まるのが嫌い。
バンくん
楽さんは男らしく覚悟を決めて責任を取るべきだと思うよ。