「これよりハンター試験を開始いたします」
ついに始まったハンター試験、一次試験!
サトツさんの後を追いかけて二次試験会場まで移動する長距離マラソンの開始だ。
「おい、汚ねーぞ!! そりゃ反則じゃねーか!! オイ!!」
開始早々にレオリオが切れているが、そんなルールは存在しない。
「レオリオ、試験官はついて来いって言っただけだよ」
「だがなあ、バン!!
ゴンさんの両肩に『座席』をつけて移動するのは違うだろ!! 自分で走らなきゃ試験にならねーよ!!!」
「でも、ゴンさんに乗ったらいけないなんてルールは存在しないよ?」
「あるわけねーだろバカ野郎!!!!」
はい。昨日の移動時に、ちょっと乗りにくかったので簡単な搭乗席を用意してみました。
長めの木の棒をゴンさんの肩に担いでもらって、座席になる部分にはクッションを敷いて乗り心地を良くしているよ。
「諦めろ、レオリオ。……ハンター試験は持ち込み自由だ」
「ゴンさんの持ち込みはルール違反だろ!?」
だが残念、そんなルールは存在しないのだ。
「ゴンさんもゴンさんだ! そんな重いもの持って長距離走なんて、いくら力自慢でも途中で潰れちまうぞ!」
「ありがとうレオリオ。でも俺なら大丈夫だよ。このくらいのウェイトならあってもなくても変わらないもん」
「ふっ、ゴンさんを舐めないでもらおうか」
「だからなんでバンが得意げなんだよ!」
「レオリオ、いいから落ち着け。そんなに怒鳴ったら無駄に体力を消費するだけだぞ……」
「レオリオが落ち着いたところで、二人は乗り心地はどう?」
「あ、あの……。周りから見られているし、レオリオが言うように僕も下りて一緒に走った方がいいと思うんだけど……」
「えー、そんなの気にしなくていいよ。それより目線の高さが高くて新鮮だし、レツちゃんも一緒に乗っていようよ」
ゴンさんの搭乗席に座っているのはレツとメイの二人。二人分しか作ってなかったので女の子たちに譲り、俺はちゃんと自分の足で走っている。
他には……ぼたんちゃんが櫂に乗って優雅に並走しているくらいか。念が使えないレオリオは気がついていないけどね。
「おもしれーじゃん。ねぇ、君。年いくつ?」
「俺か? 11歳。もうすぐ12歳だよ」
「ふーん、同い年か」
ゴンさんが目立つお陰か、スケボーに乗ったキルアが俺に声をかけてきた。
「ちなみに隣のゴンさんは俺の双子の弟。だから同じ11歳だよ」
「「「「嘘だろ!?!?!?」」」」
周りにいた受験生も含めて全員の心が一つになった瞬間だった。
◇
その後、キルアはスケボーから下りた。
「スゲー! ゴンさんマジヤベーって!! 俺専属の執事にならねー?」
そして代わりにゴンさんに乗った。肩車だ。
「行け、ゴンさん! スピードアップ!!」
「これ以上速くしたらサトツさんを追い越しちゃうよ」
なんか思ったより仲良くなったなぁ。
ゾルディック家のツボネに体格が似ているし、デカいゴンさんとも相性がいいのかもしれない。
「俺は後ろのレオリオたちの様子を見てくるよ」
試験開始から4、5時間……そろそろ60kmに差し掛かる。
疲れてきたレオリオが鞄を放り出す頃だ。原作だとゴンが釣り竿で回収するけど、ゴンさんがキルアやメイたちと一緒に先頭集団にいると回収できないだろう。
あの鞄の中に医薬品や武器のナイフを入れているらしいから、ちゃんと回収しておいた方がいいだろう。
「絶対ハンターになったるんじゃー!! くそったらァ~!!!」
そろそろかな、と様子見をしていたら予想通りにレオリオがブチ切れて走り出した。まだまだ元気だね。
鞄もしっかり回収して『念空間』に仕舞っておく。持ってると邪魔だし。
さて、それじゃあまたペースを上げてゴンさんたちに合流するか。
◇
「……なあ、レオリオ。バンのことをどう思う?」
「あ? バンか? 変わった奴だが悪い奴じゃあないと思うぜ! ただちょっくら女好きが過ぎるのが困りもんだな! いつか後ろから刺されねーか心配だ!」
地下道から地上に上がる階段の途中で、クラピカとレオリオは、奪われたクルタ族の緋の目とレオリオの病気で亡くなった友人の話をした。
相手がハンターを目指している理由を知ったことで絆を深めた二人は、もう一人の仲間――『美少女ハンター』を目指すバンについて話をしていた。
「私はバンにも事情があって美少女ハンターを目指していたのではないかと思う」
「はあ? 事情? 世界中の女を追いかける事情ってなんなんだよ! ただの女好き以外に理由なんかねーだろ!」
「……先ほどのメイという少女。『前世の恋人』と言っていた、彼女のことだ」
「あのお団子ツインテールの不思議ちゃんかぁ? 前世の恋人とかわけわかんねーこと言ってた」
「もしかしたら、バンは彼女を探すためにハンターになろうとしたのではないか?」
「そりゃあ……」
レオリオが言葉を失う。
あの定食屋の中で見た光景。長い間離ればなれだった恋人同士がやっと再会した瞬間。
だが、双子の弟のゴンはメイのことを知らなかったし、くじら島で見たこともなかったと言っていた。
一度も会ったことのない相手を『前世の恋人』と呼ぶのも奇妙なら、両者が示し合わせたようにハンター試験の会場で再会したのも奇妙だった。
「……あの二人にもなにか理由があったってことか。お互いの居場所が分からず、連絡も取れないような何かが」
「ああ。そしてバンはどこにいるかも知れない少女の行方を探すために、世界中の美女や美少女を探し続ける『美少女ハンター』を自称した。私はそう考えたが、レオリオはどう思う?」
「俺もいい線行っていると思うぜ。あの二人が出会った時の喜びようは本物だった。……へっ、バンの野郎。照れ隠しか知らねーが、分かりにくいってんだよ! そういう事情なら最初っからそう言いやがれってんだ!!」
「レオリオ、バンも君にだけは言われたくないと思うぞ」
「うるせー!! 俺はいいんだよ、俺は!! だがな、お前やバンがどんな理由でハンターを目指していようと手加減はしねえ!! 俺は俺の目標のために絶対にハンターになるんだ!!」
「それはもちろん、私も同じこと。この先の試験でぶつかることになっても手加減はしないから覚悟しておけ!!」
体中に伸し掛かる重い疲労と裏腹に、二人は心軽く、地上への階段を駆け上がっていった。