第四の壁を越えて   作:タカリ

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破壊力が凄い

 二次試験の内容について説明しよう。

 課題は『美食ハンターの二人、メンチとブハラを満足させる料理を用意すること』。

 『用意すればいい』。つまり寿司を自分で握る必要はないんだ。

 

「マグロの大トロです」

「舌の上でとろける! 407番合格! おかわり!!」

「タイです」

「醤油ではなくあえての塩ね! 408番合格! おかわり!」

「肉寿司の豚トロ炙り寿司です」

「ここで魚を避ける意外なチョイス! やるわね! 409番合格! おかわり!」

「締めのホタテです」

「あんまーい!!! 410番合格! 合格合格! あんたたち全員合格ー!!!」

 

 メンチがおかわりを所望したので他の人の分も審査してくれるのか確認したところ、流れるようにメイ、レツ、幻海師匠、ぼたんちゃんの分の合格もゲットしました。いいのかなぁ……?

 

 ゴンとキルアは自分で握ってみるというので、ネタに触り過ぎないとか、握る前にシャリに凹みをいれるといいとか、いくつか注意点を教えた。今は自分で作った寿司を食べながら試行錯誤している。

 

「いやー、気に入ったわ! ちょっとここ座りなさいよ。あなた名前は? どこの店で修行したの? やっぱりジャポン出身?」

「バンです。いや、寿司を握ったのは今日が初めてです」

「な、なんですって!! 今日が初めて? 嘘でしょ!?」

「本当です」

 

 前世は回転寿司によく行っていたし、回らないお寿司屋さんにも数回行ったことがあるけど、自分で握ったことはない。

 美味しい寿司を食べた経験の分だけ他の受験生よりリードしている自覚はあるが、こんなにべた褒めされるほどとは思わなかった。

 

「島育ちなんで魚の扱いには慣れてますよ。お腹が空いた時に海で魚取っておやつ代わりによく食べてました」

「なるほど、随分綺麗な切り口だと思ったけどそういう環境だから自然と身についたわけね。……ああ、そうだ」

 

 メンチが俺の体を引き寄せた。むにゅんと柔らかい感触が腕に当たる。

 周りに聞こえないよう耳元でそっと囁いた。

 

「今回は合格にしたけど、(アレ)を使う時は周りにバレないようにしなさいよ。あの99番、まだ使えないでしょ?」

「もちろん気をつけますけど、あいつは家族が念使いなんでそのうち家族から教わると思いますよ」

「あら? そうなの?」

「ゾルディックの三男」

「あー……、納得だわ」

 

 世界に名をとどろかせる暗殺一家ゾルディック家である。当然メンチでも名前を知っている。

 

「ならいっか。……でも初めてでこれだけの寿司を握れるなんて凄いセンスね。ねえ、あなたも美食ハンターにならない? 私が一から仕込んであげるわよ?」

 

 おお、マジか。若くしてシングルになった優秀なハンターであり、本人も世界有数の料理人であるメンチから直々にスカウト受けちゃったよ!

 でもなぁ……。

 

「嬉しいんですけど、俺の将来の夢は美少女ハンターと決めているんで……」

 

 俺がそう答えるとメンチは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。

 

「そ、そう……別に何をハントしようが構わないけど、犯罪はやめときなさいよ?」

「わかりました」

 

 まあ狙っているのは旅団のメンバーや、マフィアの資金源になっている某占い少女なので、俺が犯罪を取り締まる側だと思うよ。

 

「メンチさんってブハラさんとコンビなんですか? 恋人?」

「私がこいつと~? それはないわ」

「俺もメンチは勘弁だなー」

「あ〝?」

 

 隣でオーラが噴き上がる。うーん、これはヒソカがちょっかいかけようとするのもわかる……。系統はなんだろう、『短気で大雑把』な放出系か?

 

「そんなすごむなよー。っと、次の受験者が来たみたいだぜ」

「ちっ、タイミング悪いわね。はあ、それじゃあ294番、あんたの料理を見せてちょうだい」

 

 お、294番。忍者のハンゾーだ。

 

「ふっふっふ、多少出遅れちまったがとうとう俺の出番だな。どうだ! これがスシだろ!!」

「あんたもスシを知ってたのね。見た感じジャポン出身って感じだし。どれどれ」

 

 パク。モグモグ。

 

「ダメね。おいしくない! やりなおし!」

 

(あ、ヒソカがいなくても落とされるんだ)

 

 原作だとヒソカの挑発にイライラしていたって話だったけど、ヒソカがいなくてもハンゾーは落とされる運命らしい。そんなにマズいんだろうか?

 

「なんでだよ! そのガキが作ったスシには合格を出していたじゃねえか! 俺のスシがそのガキより劣るってのか!?」

「わかってるじゃない。そう言ってるのよ。あんたのスシは不味い。この子はスシは美味しい。ただそれだけよ」

 

 ……あれ? これって俺のせい……? あれ???

 

「はあ? スシなんて一口サイズの飯の上にワサビと魚の切り身を乗せるだけのお手軽料理! こんなもん誰が作ったって味に大差ねーべ!!」

 

 思いもよらぬ展開に驚いているとハンゾーが原作通りに大声でスシの詳細をバラしてしまった。こんなに口が軽くて忍者なんてやれるんだろうか?

 そんなハンゾーに対し、メンチは落ち着いた様子で対応しているのが原作との違いかな。

 

「あんたも食べたら違いがわかるわよ。バンくん、悪いんだけどこいつにもスシを一貫握ってやってくれない?」

「いいですよ。それじゃあネタは王道のマグロで――」

 

「あ、すまんが忍びの習慣でな。人から貰った飲食物は喉が通らねーんだ。悪いな」

 

「……」

「……」

「すまんすまん、まあでもたかが料理だし変わらねえって。なあ?」

「――ざ」

「「ざ?」」

 

「ざけんなこのハゲ!! 一流の料理を味わったこともないくせに、知った口をたれんな!! テメーみたいな素人は引っ込んでろボケ!!!」

 

 あー、うーん。

 ……これはメンチも悪くない、よね?

 

 いや、ハンゾーも忍者の掟によって育てられた悲しき忍者なんだろうけど、本職の料理人の料理を食べたことがないくせに「誰が作っても大差ない」なんて言ったら切れるよ。

 もうちょっと空気読んでくれないかなぁ……。

 

 ◇

 

「はあ、本当に! どいつもこいつも! 料理を舐め腐ってる奴らばかり! こんなんで本当にハンターになる気があるのかしら!」

 

 ハンゾーの発言の後、一気に機嫌を悪くしたメンチが次々に受験生を落としている。

 原作だとメンチの理不尽さが強調されていたけど、試験官の立場から見ていると気がつくこともある。

 こいつら、誰も味見してない。

 素人が味見もしないで適当に作ったマズい料理を食べさせられ続けるってどんな拷問かな?

 

「試食もしないで適当に作ったモノを手当たり次第に持ってくるって、正直どうなんだって感じですね……」

「――バンくん!!」

 

 ガシィ!!

 

「そう、そうなのよ!! ブハラの豚の丸焼きの時もそうだったけど、急いで丸焼きを持ってくることしか考えていなくて、バンくんたち以外に試食していた奴がいないよ!! ブハラのバカは黒焦げでも半生でも美味いとしか言わないしほんと最悪だったわ!!!」

「え。マジか……」

 

 俺はお腹空いたから昼食も兼ねて試食をしようと思ったんだけど、他の受験生は誰も食べなかったんだ。昼飯抜きで頑張ってるなんて偉いね。偉いか?

 

「あと、ハンターの仕事って人里離れた場所で活動することも多いと思うんですけど、料理できない人はそういう時どうするつもりなのかなって」

 

 幻獣ハンター、プラントハンター、密猟ハンター、遺跡ハンターなどは野外が主な活動場所になるし、賞金首ハンターや犯罪ハンターも犯罪者の追跡で山中を移動する機会があるかもしれない。

 そういう時に身近な食材で美味しいご飯を作るスキルはほぼ必須技能だと思うんだよね。

 

「~~~~!! よく言ってくれたわ! 絶対にあんたには美食ハンターの素質がある! ねえ、やっぱり私と一緒に美食ハンターを目指しましょう!!」

 

 あー、いけませんいけません。美人でエッチなお姉さんが誘惑してくるぅ……。

 この網Tシャツ、間近で見ると破壊力が凄いね。




 原作を見返していて思ったけど、生きた魚に酢飯を巻き付けただけの料理を出した三人。ゴン、レオリオ、クラピカ。

 その料理は試食したのか? 自分で食って美味いと思うのか?

 そんな料理ばっかり出されたら怒って当然だよ……。

 ※注意※
 しっかりと火が通っていない豚肉、川魚や淡水魚の生食は病気や寄生虫の危険があるので絶対にやめましょう。
 ブハラとメンチは特別な訓練を受けているので大丈夫です。
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