第四の壁を越えて   作:タカリ

21 / 66
合格?不合格?

「ゴンさん! シャリが固い! 舌の上でほぐれるように柔らかく握りなさい!」

「99番! タネの切り方が荒い! 包丁の使い方をもっと練習しなさい!」

 

 ズズー。お茶を一服。

 

「――とはいえ、他の連中が作ったスシより遥かにマシだわ。あんたたちが美味しいスシを作ろうとして試行錯誤した努力が見られる。よって二人とも合格!!!」

 

「やったー!! 合格だー!」

「合格したのは嬉しいけどさ。ナイフなら慣れてるけど包丁持つのは初めてなんだから仕方ねーじゃん。こまけーなー」

 

 握りの練習をしていたゴンとキルアが無事に合格した。ダメ出しはされたもののメンチから見ても満足がいくものだったってことだろう。

 いやー、良かった良かった。

 

「今のでお腹いっぱいになっちった」

 

 ……うん。そろそろだと思った。

 合格者は俺、メイ、レツ、幻海師匠、ぼたんちゃんに、たった今合格が出たゴンとキルアだけ。

 レオリオもクラピカも合格していないんだけど……これ、どうなるんだ?

 

「というわけで、二次試験の料理審査! 合格者は7名よ!!」

 

 ドゴオオオオオン!!

 

「納得いかねえな。とてもハイそうですかと帰る気にはならねェな」

 

 おー、あれは確かプロレスラーのトードーだっけ? ブハラに吹き飛ばされる人だ。

 

「俺が目指しているのは賞金首(ブラックリスト)ハンター! 美食ハンターごときに合否を決められたくねーぜ!!」

「美食ハンターだろうと賞金首ハンターだろうと、ハンター試験に合格していて試験の審査員を任されている人をただの受験生がバカにするのはどうかと思うんだけど……」

「ああ? なんだとこのガキ!!」

 

 おっと、思わず本音が漏れてしまった。

 

「この女に媚び売ってたテメェみてえなガキが合格で、俺が不合格なんて納得いかねえ!! ふざけんじゃねェーーーー!!!」

 

 え? ここで俺に突っ込んでくるの!?

 メンチもブハラも動く気がなさそうだし、このくらい自分で対処しろってことか。

 トードーが怒って真っ直ぐ突っ込んでくるけど……正直、グレイトスタンプの突進の方が迫力あったな。

 

 ガシッ。

 

「なっ、俺のパンチを、受け止めただと! ――ガアアアアア!?!?」

 

 メキメキメキ。

 

「ちょっと力を込めただけだけど、そんなに痛かった? ごめんね」

「ぐうっ、こ、こいつ……ガキのくせになんてパワーだ……」

 

 右手を離すと痛みからへたり込む。骨折まではいってないはずだけど、ヒビくらいは入ったかな?

 

「でも賞金首ハンター『志望』なんて誰でも言い張れるんだから、プロのハンターを馬鹿にするのはやめた方がいいよ?」

 

 マジレスでごめん。イキリ過ぎてて見てて辛いんだ。これが共感性羞恥ってやつか。

 

「あっはっは! 本当にサイコー!! まさにその通りよ!」

 

 ご機嫌ですねえ、メンチさん。

 

「いい? あんたたち! どのハンターを目指すとか関係ないのよ! ハンターたる者誰だって武術の心得があって当然!」

 

 二本の包丁を抜いてギュンギュン振り回したと思ったら四本に増えている。無限四刀流が使えそうな見事な包丁さばきだ。

 ヒソカが脱落したけど、トリックタワーの無限四刀流の人っていまどうしているんだろう?

 

「武芸なんてハンターやってたらいやでも身につくの! あたしが知りたいのは未知のものに挑戦する気概なのよ!!」

 

 原作だとここで会長がやってきてメンチを説得するんだけど。

 

「「「……」」」

 

 し~ん。

 

 会長ー!? 会長どこなの!? 会長おおおおおお!!!!

 

 ◇

 

(やはり試験が厳しすぎましたか。ですが合格者7名ならまだマシですね)

 

 物陰からメンチの試験を見学していたサトツさん、合格者がそこそこいるからいいかとスルー。

 

(うーん、本来の予定とは違うけどそれを言ったらメンチが切れるだろうし、合格者が7名いるなら別にいいかな?)

 

 本来の審査内容とは違っていたが、これだけいればいいでしょ、とブハラもスルー。

 

 誰も協会に連絡を入れていないのである。

 

 ◇

 

 仕方ない。クラピカとレオリオのために俺がメンチを説得するしかない!

 

「……ねえメンチさん」

「ん? どうしたのバンくん?」

「この人たち、全然納得しているように見えないんだけどさ」

 

 周囲にあふれる不満と困惑と絶望に彩られた顔。特にハンゾーとレオリオは今にも噴火しそうな有様だ。

 

「別にー。不満があろうとあたしは合否を覆すつもりがないし、今回のテストは試験官運がなかったってことでまた来年がんばればいいんじゃないー?」

「うん、でもさ。それだとこの人たち、ずっと美食ハンターのことも料理のこともバカにしたままだと思うんだ。むしろ根に持って余計に拗らせそう」

「……で?」

 

 何を言われても絶対に意見を変えない、という態度だったメンチが俺の話を聞く姿勢に変わった。今がチャンスだ!

 

「だからさ、メンチさんが考えるちょうどいい難易度で、自分で作ることができて美味しさに感動するような料理ってないのかな?」

「……ふ、うふふ」

 

 おや? メンチの様子が……?

 

「まさか、このあたしに料理で注文を突き付けるなんて思わなかったわ! いい度胸ねバンくん! いいわ、その挑戦受けて立つ!!」

 

 え? 注文? 挑戦? いや、原作路線に修正できないかなと思っただけなんだけど……。

 

「聞きなさい不合格者ども! あんたたちに最後のチャンスをあげるわ! 向かうのはここから見えるマフタツ山! あの山の山頂まで登るから、あたしに遅れないようについてきなさい!!」

 

 やる気に満ちたメンチが走りだす――受験生たちでもなんとかついてこられる速度で――と、慌てて受験生たちも追従した。

 あの山の頂上に何があるのかわからないが、まだ試験は終わっていない。突然降って湧いたクモの糸に縋るように、最後の希望を胸に彼らは走り出した。

 

 まあクモはクモでも、クモワシの糸なんだけど。

 この糸を掴んで這い上がって来れるかどうかが運命の分かれ目。レオリオとクラピカならきっと大丈夫だろう。

 

「ねえメンチさん。俺もその料理食べていい?」

「もちろんよ。作り方は教えてあげるから一緒に食べましょう」

「やったー!」

 

 原作でも気になっていたクモワシのゆで卵、どんな味なのか今から楽しみだ!

 

 ◇

 

 二次試験後半、メンチのメニュー。

 再試験合格者を合わせて、46名合格。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。