第四の壁を越えて   作:タカリ

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メンチ「クラピカやハンゾーが勝手に騒いでいただけで、生魚限定とは一度も言っていないのよね。伝統的な寿司でも煮アナゴも玉もあるでしょ」
バン「豚トロ炙り寿司で合格しました」


のんびり優雅な空の旅

 ハンゾーはきっと日常が兵糧丸か自分で獲ってきた獣の丸焼きだったはず……。

 街に行ってもお店でランチも食べられない哀しい子……。

 今こうして笑顔でいられるのが奇跡的なほどの……。

 

「バンくん」

「はい?」

 

 会長不在の飛行船の中でメンチが声をかけてきた。

 

「今回はバンくんにのせられてあげたけど。『料理を美味しく作る努力も工夫もしないのは、未知のものに対する気概がないのと一緒。マズい料理をそのまま出すのは、やる気もなく、料理をバカにしているのと一緒』ってね。お友達に伝えておきなさい」

「……はい」

 

 バレテーラ。ぐうの音も出ないほどの正論である。

 

「ま、度胸と根性だけはギリ合格ってところかしら。それじゃ残りの試験もがんばってね~」

 

 去り際に渡された紙を見てみると、メンチのホームコードと『弟子入りはいつでも大歓迎! 連絡待ってるわ!』のメッセージ。

 メンチの連絡先ゲットだぜ! やったー!

 

「――随分とメンチさんと仲良くなったんだね」

「……メイちゃん、いつの間に!?」

 

 メンチたちが姿を消したあと、にこにこ笑顔のメイが背後に立っていた。なんという見事な絶……っ!?

 

「バン、デレデレしてた……。そんなに大きなおっぱいが好きなんだ」

「おっと、それは違うよレツ」

 

 確かに大きなおっぱいも好きだ。メンチの服装と合わせてとんでもない破壊力だったのは認めよう、だが!

 

「俺は可愛い女の子のおっぱいなら、巨乳もちっぱいもどっち好きだ! おっぱいに貴賤はない……!」

 

 これこそが世界の真理! でもちっぱい少女が自分の胸の大きさに悩むのは良き!

 

「……変態」

「でもレツちゃんも意外とおっぱいあるよね」

「ちょ、ちょっとメイ! なんでそういうこと言うの!?」

「えー、別に減るものじゃないしー」

 

 ほうほう。確かに、映画でも見た目はぺったんこだけど、キルアが胸を触って女だと気がつくくらいにはあるんだよな。

 あんなにぺったんこだと触っても気がつかないだろと思ったが、どうやら着痩せ(?)するタイプだったらしい。胸だけ着痩せするって金髪の妾の子かな?

 

「それはともかく! 私とレツを放置した罰でバンくんにたっぷり甘えさせてもらいます! それー!」

「な、なんで僕まで……!?」

 

 どーんと体当たりしてきた二人を受け止めた。

 

「イチャイチャするのはバッチ来いなんだけど、まだ一波乱ありそうなんだよなぁ……」

 

 会長不在の飛行船、一体どうなることやら。

 

 ◇

 

 飛行船内で夕食中の試験官たち。

 

「ねェ、今年は何人くらい残るかな? なかなかのツブぞろいだと思うのよ」

「それはこれからの試験官次第じゃない?」(メンチみたいな試験官じゃ一人も残れないだろうし)

「そりゃまそうだけどさー。けっこういいオーラを出している子もいるじゃない。サトツさんどぉ?」

「ふむ、そうですね。新人がいいですね、今年は」

「あ、やっぱりー!? あたし406番のバンくんがいいと思うのよね、スシも美味しかったし!」

 

(そりゃ弟子にしようとしていたくらいだしね)

(まあそうでしょうね)

 

「私は断然ゴンさんですね。筋肉がいい」

「え!?」

 

 我らの筋肉、ゴンさん。

 

(いま筋肉って言った!?)

(オレの聞き間違いかな……)

 

「彼のあの真っ直ぐなオーラも見ていて気持ちがいいですね」

「う、うん、そうよね……」

「ニギリズシも形になってたし……うん」

 

(サトツさんって表情が変わらないから本気か冗談かわからないわね)

(筋肉……いや、忘れよう……)

 

「ごほん。ブハラは?」

「そうだね――410番かなぁ?」

「ああ……彼女ですか」

「青いポニーテールに着物の子よね……」

 

 410番、ぼたんである。

 

「……あの子のあれって念? 絶か陰の応用なの? ナンバープレートはつけてるけど他の参加者で気がついているのほとんどいないでしょ」

「私はマラソンの間もずっと浮いていたのが気になりましたね。よほど燃費がいいか、あるいはオーラを消費しない能力なのかもしれません」

「ビーンズさんがナンバープレート渡したなら、受験資格はありってことなんだろうけど――」

 

 406番、バン。

 ゴンさん。

 410番、ぼたん。

 

「あのグループは……まあ、まず間違いなく合格でしょ」

「だろうねー」

「そうですね」

 

 綺麗な纏をしていたレツと幻海、そして念は使えないがしっかりと鍛えてきたメイも含めて合格ラインに達している。

 

(――ですがやはり、44番の行方が気になります)

 

 すでに脱落しているので二人には言わなかったが、一次試験の途中で姿を消したヒソカのことが気になってしまうサトツだった。

 

 ◇

 

「なるほど、ここのルールが少しわかってきたよ♥」

 

 赤く染まったプール。空の色まで赤くなっているのでわかりにくいが、頭上には太陽があり、雲もある。

 だが、どれだけ時間が経っても太陽の位置は変わらず、雲も同じ場所でずっと止まったままだ。

 

 また、ヒソカがプールの中を歩き回って見つけた大きな壁かけ時計があったが。ヒソカの見慣れた時計とは()()()()になった時計の針が1時23分で止まっていた。

 

「ここのルール①この空間の中は()()()()()()()()()♠」

 

 足元に転がる死体はいつまでも瑞々しさを保っている。

 腐らないのではない。劣化をしない。時間が止まっているから変化をしないのだ。

 

「『念空間』の内部に特殊なルールを制定する。具現化系の能力かな?♠」

 

 ヒソカの探索はまだまだ終わらない。




死体安置所(デッドプール)』:具現化系能力?

・ルール① 内部の時間は1時23分で止まっている。内部に収納された物体は劣化しない。

 ――××が××した時刻。時計は最期の時を刻んだまま、二度と前に進むことはない。
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