「――私の父さんはスパイス鉱山を取り仕切る貿易商人だったわ。最盛期には小さな国を丸ごと買い取れるほどの利益をあげていた」
実は二次試験の時に見かけたんだけど、黒髪ツインテールのアニタがいた。
旧アニメ(1999年)のアニオリ回に出てくる、二次試験で落ちたけど飛行船に密航してコッソリ乗り込んできた人だ。
「だけどその成功をねたむ奴が居てね。ライバルの交易商人が殺し屋を差し向けたってわけ」
この人がいるってことは旧アニで好評だった軍艦島もあるんだろうか?
漫画、旧アニ、新アニで細かい部分が変わったりするから今後の予想が難しくなって困る。
まあ、二次試験の様子だと漫画ベースな気はするけどね。
「調べるまでもなかった。その殺し屋は――ゾルディック家。世界に名を轟かせる暗殺一家だもの」
アニタさんは父を殺されて仇を取るために密航した。
ゴンさんと一緒に夕食を食べているキルアを睨みつけている。
「ふーん、うちの誰かが殺ったんだろうね。父さんか兄貴かそれとも母さんかな。で? その敵討ちをしにきたってわけ?」
だけど、キルア本人はあっけらかんとした様子。
「実家じゃあんたみたいな敵討ちをしに来たって連中や、ゾルディック家を討伐して名を上げようって連中が山ほど来てたよ。だけど……」
心の底から馬鹿にした顔でアニタさんを上から下まで見やって、鼻で笑う。うーん、憎たらしい!
「ほとんどは執事たちに返り討ちにされるんだけど、ま、あんたじゃ100人集まってもうちの見習い一人倒せないね。諦めたら?」
「この――!!」
アニタさんがナイフを抜いてキルアに飛びかかろうとした瞬間、一陣の風が吹いた。
「――おいゴンさん。なんで邪魔するんだよ、オレの獲物だぜ?」
「ダメだよ。だってキルア、今この人を殺そうとしたでしょ?」
「ひぃ……」
それは力。それは壁。それは筋肉。
ゴンさんがアニタの首を掴んでプラプラさせていた。
顔面蒼白で余程怖い思いをしたんだろう。可愛そうに。
「ちょっと向こうに行ってくる」
「はーい。主人公一行も大変ねー」
一緒にテーブルでご飯を食べていたみんなに一言断ると、ちょうどクラピカとレオリオも騒動に気がついて集まってきたところだった。
「ゴンさん、キルア。一体どうしたんだ? 彼女は?」
「おいおい、顔面真っ青じゃねえか……。大丈夫か?」
「彼女は密航者だよ」
「「「「バン!」」」」
そういえばアニメで彼女を捕らえて密航者だと言ったのはネテロ会長だったっけ。なぜか会長が飛行船に乗ってないんだよなぁ。
「二次試験の追試で落ちた人の中に彼女がいたのを覚えてるよ。これでも美少女ハンター志望なんでね!」
どやっ!!
「おいクラピカ。これって威張れることなのか……?」
「私に聞かないでくれ。頭が痛くなりそうだ」
「それじゃあこの人は俺が回収するから、みんなは自由にしていていいよ」
「あ、俺はバンと一緒にこの人を連れていくね。キルアも一緒に行こうよ」
「えー。まあいいけど」
「まあ、お前らなら任せても問題ないだろうし、休ませてもらうか~」
「そうだな。今日は大変な一日だった……。あとは頼む」
早朝からマラソン、昼から狩猟と料理。頭も体も酷使してクタクタなんだろう。
眠そうな顔をしている二人と別れて、ゴンさんとキルアと一緒に
「うう……、どうしてあなたたちが邪魔をするのよ。あと少しで父さんの仇が討てたのに……」
◇
(ゴンさんすげー速かった。あーあ、自信なくすぜ)
キルアは集まった受験生の中でトップになれる自信があったが、目の当たりにしたゴンさんの
◇
「メンチさーん、起きてるー? メンチさーん!」
呼びかけるけど返事がない。誰も出てこない。
「ねえバン、もう寝ちゃってるんじゃない?」
「それならやることは一つ! 突撃だー!!」
ガチャ。鍵がかかってないので普通にドアが開く。不用心だね。
そして空気を切り裂いて飛んできた包丁を受け止めた。
「メンチさん、ちょっといい?」
「バンくん、こんな夜更けに私の部屋に来るなんていい度胸ねぇ。夜這いに来たの?」
包丁片手にバスタオル姿のメンチが立っていた。
お風呂タイムだったらしい。もっと早くドアを開けていれば……くっ!
「それもいいけどね。残念ながら密航者を捕まえちゃったから連れてきたよ」
「密航者? あぁ、さっき下から連絡があった奴か。脱落者の頭数が一人足りないとか言ってたわね」
ゴンさんが連れてきたアニタを見て、バスタオル姿のままドスンとソファーに腰を下ろす。
「この船に密航したからって三次試験を受けられるわけでもないのに、バカなことをしたもんね。あんた、ハンター協会を敵に回したらどうなるかわかってんの?」
うーん、まるでヤのつく自由業みたいな言い分だ。実に堂に入っている。
「それがね、アニタさんってスパイス鉱山を取り仕切っていた貿易商の娘で、父親をゾルディック家に殺されたからってキルアを狙っていたんだよ」
「うげぇ……あのスパイス鉱山の関係者の娘ぇ……? 最悪じゃない。あんな奴ら死んで当然よ」
「父さんをバカにするな!!!」
アニタ、切れる――!!
「私のお父さんは優しい人で……父さんの周りには、いつも笑顔の人がいっぱいいて……!!」
「……あーぁ。嫌になるわ」
「あんな薄汚い暗殺者なんかに殺されるような、そんな人じゃなかった! 何も知らないくせに父さんをバカにするな!!」
「何も知らないのはあんたでしょうが。父さんをバカにするな? あんたがあいつらの本当の姿を知らないだけよ」
「……父さんの、本当の姿……?」
美食ハンターにしてシングルハンターであるメンチはスパイス鉱山についても詳しかった。
「あの鉱山から発掘される
「う、嘘……そんなの嘘よ!!」
「本当よ。むしろなんであんたは知らないの? 少し調べればすぐにでもわかったはずなのに」
「……そん、な」
あれだね、チェンソーマンに出てくる俺の爺ちゃんは正義のヤクザでさあ……みたいな話。
きっとヤク売った金で欲しいモンなんでも買ってくれて、みーんなに好かれる江戸っ子気質のいいお父さんだったんだろう。知らんけど。
「それでも、私にとっては大切なお父さんだったの……」
「あっそ。私は料理を使って人を破滅させるような連中が死ぬほど嫌いだけどね。生きてたら私の手で息の根を止めてやったのに残念だわ!」
「……」
ああ、アニタがメンチの死体蹴りで真っ白に燃え尽きている!! いいぞもっとやれ!!
◇
――数年後。
「アニタ。あんたの父親は料理で大勢の人を不幸にしたわ。だからその人たちの分だけあんたが料理で人を幸せにしなさい」
「はい……! 今までありがとうございました、メンチ師匠……!」
賞金首ハンター志望だったアニタはメンチの