第四の壁を越えて   作:タカリ

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ちょっと分かりにくかったので説明を補足。
バンのプールは『無意識の発』で作られたもの+バンが追加で『調整』した能力となっている。


嵐を乗り越えろ

「外に出る時はこのゲートを通らないと出られないから気をつけてね」

「これって向こう側のゲートはどうなっているの? ずっと出たまま?」

「いや、ゲートは俺が消せば消える。プールの中から外に出る時はまたゲートが出現するけど、通り抜けたら消える」

 

 いろいろと便利な念空間だけど出入りにも当然ルールが存在する。

 

 ①物の出し入れ

 これは簡単。小さな出入り口を作って直接出したり入れたりできるから目立たない。直接フードコーナーの冷蔵庫の中に繋げるというような調整も可能。

 

 ②俺の出入り

 俺が通れるサイズの『従業員用通路』を作って出入りが可能。プール内のドアがある場所ならどこでも繋げられる。

 

 ③人の出入り

 これが一番制限が多い。必ずゲートを通らないといけない。ゲートの大きさは調整可能だけど最低でも横幅が2mは必要。場所が足りないのに無理やりゲートを出そうとすると設置場所に存在する物を破壊しながらゲートが出現し、俺のオーラを大量に消費する。

 それと目立つので人目がある場所では注意しないといけない。

 

「ゲートができる場所は必ず俺の側になるよ。俺が中に入っている時は俺が入ってきた場所に。俺が外で移動している時は俺の側にできる」

「ノヴさんの能力みたいな瞬間移動はできないって言っていたけど、バンくん付属の移動倉庫か移動ホテルみたいな使い方はできるんだね」

「俺は自分で移動しないといけないから大変なんだけどね」

 

 ノヴの代わりになる類似能力者がなかなか見つからないって話だったけど。確かにあれだけ便利で強力な能力は作るのが難しいだろうね。

 

「バンくんが人間を瞬間移動させる能力を持っている人と協力したら、ノヴさんの代わりもできるんじゃない?」

「……言われてみると、できるかも」

 

 能力者同士の協力。相性次第でどんなことも可能になるのが念能力。

 

「やっぱり人数集めた方がいいよなぁ」

 

 数は力。力こそパワー。相互協力型はロマン。

 でも今から相互協力型を作るのは無理そうな気がする。残念……。

 

 ◇

 

「これ、ゲートの通行証」

 

 永久パスポート

 出入りする度に通行の許可を与えるのは大変だし、俺が死んだらプールから出られなくなってしまうので用意した。

 まあ、用意したというか、こういうのがほしいなと思った時には出来上がっていたんだけど。ほとんど自動で作った無意識の発なのでこういうことがある。

 

「あれ、消えちゃった」

「パスポートの形をしているけど本質は『通行権限』だからね。無くさないし他の人間に譲渡することもできないようになってるんだ」

 

 この永久パスポートがあれば俺が作ったゲートを自由に出入りできるようになる。

 

「というわけで、こんな感じの能力だけど満足した?」

「うん! ありがとうバンくん!」

 

 ぎゅっ、とメイが抱き着いて耳元で囁く。

 

「でも、今日は時間がないけど……次は全部見せてね? 約束だよ」

「……うん。わかった。約束するよ」

 

 自分の体に絡みつく()を感じながら、俺たちがゲートから外に出た。

 

 ◇

 

 深夜。飛行船が夜のホテルを出発する。

 管理人である銭ゲバ老夫婦もその飛行船に乗っていて、受験生36名はホテルに置き去りだ。

 

「私が感じた胸騒ぎはこれだったのか」

「油断したかな」

 

 飛行船の出発に気がついた受験生たちがホテルの外に出てきたが、小さくなっていく飛行船を見上げることしかできない。

 絶海の孤島に取り残されてしまったのだ……。

 

 ◇

 

 はい、というわけであの老夫婦がいなくなって無人の管理人室に忍び込んでいます。

 昼間みんなが集めた財宝が置いてけぼりになっているので、俺がちゃんと回収しておく。うーん、これ全部ヨークシンのオークションに出したらいくらで売れるんだろう?

 

 机の上に『ゼブル島への地図』が置いてあるので回収。代わりに俺が書いた書置きを置いていく。

 

『嵐を乗り越えろ』

 

 昼間に船内を探索して見つけておいた『古い航海日誌』も添えて、ヨシ!

 

「バンくん、コンパス見つけたよ!」

「でかした!」

 

 メイちゃんが人数分、36個のコンパスが入った箱を見つけたのでそれも回収。

 ちゃんと絶を使っているから他の受験生に見つかる心配は……イルミがいたっけ。まあ大丈夫でしょう。

 

「さて、夜明けから動き始めると思うからそろそろ寝ようか」

「寝不足はお肌に悪いのに~」

「ぼたんちゃんにヒーリングをお願いしてみる?」

「さすがにそれは、うーん……。ビスケちゃんの能力がほしくなるね」

 

 30分で8時間分の睡眠を取れるし他にもいろんなマッサージができるって、こういう時に本当に便利だよね。

 

 ◇

 

 そして翌日。太陽が水平線から上がる頃には大勢の受験生が甲板に集まっていた。

 

「ここからどうすればいいのか、判断材料が足りないな」

 

 真剣な顔で思案する頭のいい受験生(クラピカ)もいるが、

 

「兄ちゃん。飯は誰が作るんだ!?」

「そりゃ作れる奴だろう」

「この中にいるのか?」

「じゃあ俺たち餓死しちゃうよ! こんな絶海の孤島で!」

 

 今日の飯の心配をしているのんきな受験生(アイウモリ兄弟)もいる。

 

 ……目の前の海に潜れば魚介類がいくらでも取れるのに、彼らはこんな有様で本当にハンター志望者なんだろうか。

 

 ◇

 

「ポンズさん、どこ行く?」

「あ、バンくんと……メイちゃんだっけ? この船《ホテル》の中に何か手掛かりがないかと思って探しているの」

「そうなんだ! じゃあ俺たちも手伝うよ!」

 

 偶然()ポンズと出会えたので一緒に探索すると、無線機の前で悪戦苦闘しているポックルを発見した。

 こいつ、三次試験で俺たちの後をつけて楽していたんだよな……。

 

「ポックルさん、なにしているの」

「っ! お、お前は……」

 

 負い目もあるのか俺の存在に気がつくと目に見えて動揺した。自力でトリックタワーを降りられるくらいの実力はあるんだからズルなんかしなければ良かったのに。

 

「なに?」

「な、なんでもない……。無線機を見つけたんだが変なんだ。全周波数に合わせても何も聞こえなくて……」

 

 これもヒントなんだろうなぁ。何も聞こえない無線機。

 メイが無邪気そうにヒントを出す。

 

「その無線機が壊れているんじゃないんですか?」

「いや、こう見えて機械にはちょっと詳しいんだ。確認したけど壊れている様子はなかった」

「じゃあなんで無線機が使えないのかしら……」

「それがわからないんだ」

 

 ポンズとポックルはピンと来ていないみたいだ。

 

「このホテルにわざわざ無線機が置かれている、無線機は壊れていない、けれど無線機からは何も聞こえない。この三つの条件から導き出される真実は常に一つ!」

 

 謎は全て解けた! じっちゃんの名にかけて!!

 と言いたいところだけど、メイちゃん以外はわからないからやめておこう。

 

「バンくん、何か思い当たるの?」

「普段はこの無線機を使えるんだよ。ただ、今は使えない。つまり気圧の変動が原因の可能性が高い!」

 

 前世は大人、今世は子供、名探偵バン!!

 

「わー、バンくんすごーい!」

「なるほど、気圧の影響によって一時的に無線が不通になっている可能性はあるな」

「海のど真ん中だし台風が迫っているかもしれないね」

「大変! 急いでみんなに知らせなきゃ!」

 

 ポンズとポックルが慌ててみんなに状況を説明し、全員で船内を探索した結果、管理人室にあった『嵐を乗り越えろ』という書置きと、『古い航海日誌』を発見する。

 

「10年に一度の気象現象がこの島を襲う。このままでは全てが飲み込まれて全員死んでしまうぞ!!」

 

 無事に誘導完了。36人全員が生き残るために力を合わせることとなった。

 

 ……四次試験の前にこれをやらせるって、本当にあのリッポーって試験官は鬼畜だよ。

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