「なんなの……ここ……」
「日差し? 空? 洞窟の中にどうしてこんな場所が……」
ゲートを隠すのに良さそうな洞窟を見つけたので、早速ゲートを設置してポンズとスパーをご招待。
青々とした快晴と夏の日差しに混乱しているのがわかる。念を知らないとそうなるよね。
プール二回目のメイはまだ珍しそうにしているけど、レツ、幻海師匠、ぼたんちゃんの3人は慣れた様子。すでに何年もこのプールを使っているんだから当然だ。
「それじゃあみんな、更衣室で水着に着替えてきたら修行を始めよう。オーラを見えるようになるまでは俺が担当するよ」
念は瞑想から始めて自分の体内のオーラを感じとれるようになるのが一番いい。正攻法と呼ばれる方法で念に目覚めれば纏の習得がスムーズになる。
原作でゴンやキルアがやっていた外法、オーラをぶつけて精孔を開ける方法は、纏ができないとオーラが枯渇するまで止まらないし、回復するまで数日間寝たきりになるというデメリットがある。
ただ、今回は時間がないのでこの両者のハイブリッド。俺流の方法でやっていく。
「ポンズとスパーの水着姿をついに見られた! やったぜ!」
ポンズはピンクのワンピースで、スタイルの良さを隠すように大きめの上着を羽織っていたけど師匠権限ではぎ取った。修行の邪魔です!
スパーは大人の色気が漂う黒ビキニ。ちなみにスパーの髪の色は金髪なんだけど、金髪と黒の組み合わせっていいよね。好き。
もちろんメイも着替えていて、前回よりも露出が多めの白のビキニを着ていた。本当に年齢不相応の発育の良さをしているよ……。
「それじゃあ、念を知らない二人もいることだし、基本から説明していくね」
「念?」
「それがこの不思議な空間に関係あるのかしら?」
さて、師匠権限でみんなを水着に着替えさせた後、念――超能力と呼ばれる不思議な力について説明していく。
人間の体内にあるオーラを操ることで様々な恩恵を得ることができて、念能力を使えるかどうかがプロハンターとアマチュアハンターの一つの区切りとなっている。
ハンター十か条に念能力を使えるようになれってハッキリ書いてあるんだよね。
「いきなり体内のオーラを感じ取れと言っても難しいだろうから、まずは俺が3人にオーラで触れるよ。オーラの感触をしっかりと感じ取ってね」
ビーチチェアを持ってきて3人を横たえると、皮膚の上を撫でるようにオーラを動かしていく。実際には指一本触れていないからセクハラじゃありません。無罪!
「わー。これがオーラで触られている感覚なんだ。本当に見えないぶよぶよが薄皮一枚を挟んでまとわりついているような感じがする」
メイが喜んでるけど、そのセリフってキルアのセリフじゃなかったっけ。
「見えないけど何かに押されているみたいな圧迫感がある……」
「私はとてつもなく熱いエネルギーの塊みたいに感じるわ」
ポンズとスパーも俺のオーラを感じ取れているようだ。今まで半信半疑という様子だったけど、自分の体で実際に体験してオーラの存在を確信したんだろ。
このオーラをそのまま体内に注ぎ込むと原作のウィングさんが行った「外法」になる。寝ている体を無理やり叩き起こしてビックリさせる方法だ。
だけど、俺は体内には入れずに、体の表面をオーラで撫でるだけ。寝ている体を優しく揺すってあげて目覚めるように促してる。
もう何年も前、ゴンがまだ念に目覚める前にやってあげた方法だ。懐かしい。
「はい、一旦オーラを止めるよ。そしたら瞑想。自分の体の中のオーラを感じ取る!」
俺のオーラの感触を覚えている状態なら、自分の中のオーラを感じやすくなる。細胞の一つ一つから生み出されるエネルギーが体から漏れ出して垂れ流しになっているのを感じ取り、それを全身に留めるイメージを持つ。
「最初は俺のオーラに10分間触れて1時間瞑想してから休憩。慣れてきたら30分間触れて3時間の瞑想してから休憩! 目標はこの四次試験の間にオーラを纏えるようになること! がんばれ!」
心源流の念の目覚め方とは違うけど、ズシは瞑想のみで半年に目覚めたと言っていた。
俺の方はちょっと外法に近いけど、その分早く目覚めるんじゃないかなと思う。
◇
念を教え始めて一日。
「バンくん、オーラが見えるようになったけど、ちゃんと纏ができているかな?」
「……めちゃくちゃ早いね、メイちゃん」
オーラマッサージで刺激したお陰か、元々原作で知っていたからか、それとも才能か。
わずか一日でメイは纏をものにしていた。
「ポンズとスパーは……もうちょっとかかりそうか」
昨日と比べてオーラの量が増えていて、精孔が開きかけているのが見える。しっかりと瞑想してオーラを留めるイメージを持つように注意しないと危ないな。やっぱり俺のやり方は外法に近いみたいだ。
「まあ、あの二人はまだ修行してもらうとして。……メイちゃん、例の約束を果たすよ。しっかりと纏を維持したままついてきて」
「わかった!」
俺のプールの中心から少し外れた位置にある大きなプレハブの建物。その『関係者以外立ち入り禁止』の扉の前に立った。
「メイちゃんならわかるよね。この場所は流れるプールがあった場所だって」
「うん。……私たちが前世で殺されたのが、この場所だった」
「ここに……あの当時のままなんだ。覚悟してから見てね」
手を伸ばしてくるメイちゃんとしっかりと手をつないで、隠していた扉を開けた。
大量の血。血だまり。
どくどくと、二人分の血だまりから鮮血が溢れ出し、すぐそばの流れるプールの水面を真っ赤に染めている。
まるでそこに『殺されたばかりの死体』が転がっているかのように。鮮血は止まらない。
扉の向こうを潜った向こう側に溢れる、濃厚な血と死の臭い。
俺たちが死んだ場所。
「……っ」
「大丈夫?」
「だい、じょうぶ……」
あまりにも強烈な殺人現場の光景に、他の人間が気付いてしまわないように壁を建て、天井で塞ぎ、扉を付けた。
この世界にあるものは誰も壊せない。隔てた扉を破壊することはできず、扉の向こうに隠したモノを見ることはできない。
でも、扉で隠しただけで……そこに在ることに変わりはない。
「ちょっと休もうか。無理しないでいいよ」
「……ごめんね、バンくん。全部受け止めるなんて偉そうなことを言ったのに」
「ううん。あれを見たら……そうなるのも仕方ないよ……」
俺も初めてこのプールの中に踏み込んで、あの殺人現場を見た時は何日もうなされたものだ。
覚悟があっても辛いものは辛い。
ぐったりとして横になって休むメイの手を握り、弟子二人の修行を眺めながらその日は終わった。