第四の壁を越えて   作:タカリ

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デュエルスタンバイ!

「第六試合! ハンゾー対キルア! 始め!!」

 

 ついに始まった闇の住人同士の勝負。

 

「バンには降参したのに、オレ相手には降参しないのかよ」

「ああ、あいつには勝てねーから降参した。だが、お前相手なら勝てるからな。降参する理由がないだろう?」

「……舐めやがって!!」

 

 お互いに幼少期から虐待に近い訓練を受けてきた者同士だ。

 だが、キルアがゾルディック家の最高傑作と言えるほどの天才であってもまだ11歳。背の高さも筋肉の厚みも足りない。

 念を使えない純粋な肉体戦において筋力、体重、そして体格の良さというハンデは大きい。

 

「せめてキルアにゴンさん並の筋肉があれば……くっ!」

「おいバン! オレが負けるみたいな言い方やめろよな!!」

「でも残念ながら事実だし」

 

 もちろん、キルアにはゾルディック家の暗殺術、『肢曲』や『蛇活』という技もあるのだが。

 

「すまねーな。俺も知ってるんだ。通用しねーぜ、それ」

「だろうなっ!」

 

 ハンゾーが裏稼業の専売特許『肢曲』を使って複数の分身を作り出す。裏の技術を一番よく知っているのは裏の者。忍者には暗殺者の技が通用しない。

 

「キルア。お前はすげーよ、天才だ。俺がお前くらいの年齢の時にはそこまで届いていなかっただろうな。だが、今は俺の方が強い」

「……っ(ギリッ)」

「実力差はわかっただろ? 大怪我をする前に降参しな。お前ならこの後の相手でちゃんと勝ちを拾えるさ」

「……降参する。オレの負けだ」

 

 11歳と18歳。7年という年月の差は天才キルアでも覆せない……。

 

 いや、ゾルディック家の教育とイルミの針の影響か。『勝ち目のない敵とは戦うな』という、過保護すぎる呪いがキルアの思考と体も縛っている。

 

 俺が見た限り、ハンゾーとキルアの実力にそこまで大きな差はない。10回戦えば2、3回は勝てるんじゃないかと思う。

 もちろん、それはキルアが大怪我を負うことも覚悟して挑めば話だ。実力に劣るのならばその分のリスクを背負わないと話にならないんだから当然だ。

 でも、今のキルアはそのリスクを背負うことはできない。戦いが始まる前に逃げを打とうとする。だから自分と対等以上の相手になると勝てなくなってしまう。それが今のキルアの状況だった。

 

「そこまで! 勝者、ハンゾー!」

 

 こうしてキルアは敗北。

 次の試合はあのギタラクル――原作でも対戦した、イルミとぶつかることになる。

 

 ……ネテロ会長、絶対にイルミの正体に気がついた上で、わざとキルアにぶつけただろ。性格悪いって言われるわけだよ。

 

 ◇

 

 第七試合。クラピカ対ボドロ。

 正々堂々とした戦いを好む両者なので、普通に戦って普通に決着がついた。

 

「ま、まいった。良き戦いであった……、クラピカよ……」

「ああ。私もあなたのような武人と戦えたことを誇りに思う」

「勝者、クラピカ!」

 

 どちらが勝ってもおかしくない接戦だったが、最後は勝利への執念の差が出たのか、ほんの僅かな差でクラピカが勝者となった。

 もちろんボドロもハンター試験合格に対して本気だったと思うが、復讐に燃え滾るクルタ族には及ばなかった……ということだろう。

 

 勝ったクラピカもボロボロだけど、負けたボドロはそれ以上にズタボロで、次の対戦相手のレオリオがボドロの心配をしてしまうほどだ。順当に戦えば無傷のレオリオが勝つだろう。

 

 ◇

 

 第八試合。メイ対幻海。

 

「降参する。あたしの負けでいいよ」

 

 幻海師匠、試合開始と同時にギブアップ。

 うん、まったくこれっぽっちもやる気がない。

 

「おいおい、幻海のねーちゃん! そんなやる気がなくて大丈夫かよ!?」

 

 レオリオから野次とも心配ともとれる言葉が飛ぶけど、正直幻海師匠はこの参加者の中で一番強いので無用な心配だ。

 ハンターライセンスも『あると便利な身分証』くらいの認識だろうし、ぼたんやメイに合格を譲った後で、残った相手を適当にボコって勝ちを拾うつもりなんだと思う。

 もしもレオリオが負け続けたら、幻海師匠の鉄拳の餌食になるのはレオリオだ。自分の心配をした方がいいぞ。

 

 ◇

 

 第九試合。ポンズ対ポックル。

 

「シッ!!」

 

 ポックルもまた飛び道具の使い手。近距離から放たれた矢をポンズが避けようとした、完全に回避はできずに体を掠めてしまう。まだまだ未熟なポンズの纏では完全に矢を防ぐことはできなかった。

 ポックルの矢には即効性の痺れ薬が塗ってある。これで勝利を確信したポックルだったが、次の瞬間には驚愕に目を見開くことになった。

 

「は、蜂!? 蜂の群れだって!? う、うわああああああ!!!」

 

 ポンズの指示によって帽子の中から大量の蜂が飛び出してポックルに襲い掛かった。

 この蜂はシビレヤリバチと言って、刺されるとマヒにしてしまう毒を持っている。偶然にもポックルの使った毒と似たような効果があった。

 そしてすぐに毒が回り、二人とも体が痺れてその場に倒れてしまった。

 

「……どうやら、両者とも狙いは同じだったようだな」

「なあおい審判さん。この二人、どっちも動けないみたいだがどうするんだ?」

「まだ試合は続行中です」

「続行中って言われてもよぉ……」

 

 ――その後、念を覚えていたポンズが“絶”を使って回復を図る一方、ポックルは継続的に蜂に刺されまくって身動きができない状態が続いた(アナフィラキシーショックが起きなくて良かった)。

 そして、ある程度動けるようになったところでポンズが自身に解毒薬を投与。無事に自由を取り戻した。

 

「ようやく痺れが収まってきたわ。それでどうする? まだ続ける?」

「お、おお、おれの、まままけけけ、だ。たたす、すけけけけ」

「OK。蜂たちを戻してあなたにも解毒薬を投与してあげるわね」

 

 ポックルの毒矢とポンズの毒蜂の対決は、ポンズの毒蜂の勝利で終わった。

 

 ◇

 

 そして運命の第10試合。

 

「久しぶりだね、キル」

「……兄……貴!!」

 

 ついに変装を解除して真の姿をさらけ出したイルミが、キルアの前に立ち塞がる。

 

「お前はハンターに向かないよ。お前の天職は殺し屋なのだから。お前は熱を持たない闇人形だ」

 

 この『闇人形』という言葉、連載当時はそういう『教育』なんだろうと思っていたけど、キルアの脳内に『針』が刺さっているの知っていると、別の意味に聞こえてくるよね。

 イルミの念能力、針によって操られている操り人形(キルア)

 連載初期のハンター試験の時からこういう伏線を差し込んでくるんだ。冨樫先生はやっぱりエグイですね。

 

「ゴンさんと、バンと……友達になりたい」

 

 そうこうしているうちにキルアとイルミの会話もクライマックス。

 キルア、そんな風に思っていてくれたのか……。ほろり。

 俺は転生者だから中身は11歳じゃないんだけど、それでも友達になりたいって言ってくれるのはやはり嬉しい。

 

「キルア! 俺たちもう友達だよ!」

「そうだそうだ! 友達だぞー!」

「ゴンさん……バン……」

 

 ゴンさんが「俺たちズッ友だぜ!」と言ってキルアが喜んでいるけど、原作のゴンはキメラアント編でキルアに酷いことしたよね……。

 

「うーん、まいったな。あの二人はもう友達のつもりなのか。――よし、ゴンさんとバンを殺そう」

「「「……ッッ!!!!」」」

 

 ゴンさんを……殺す……!?(驚愕)

 

「さあ、どうするキルア。オレと戦って勝たないとゴンさんとバンを助けられない。友達のためにオレと戦えるかい?」

 

 イルミがキルアに向かってゆっくりと腕を伸ばし、同時にキルアの全身をねっとりとした嫌な感じのオーラが包み込む。

 キルアがオーラを見えないのをいいことにベタベタと気色悪く纏わりついて……。きっと小さい頃からずっとこんな拷問みたいな日常を送ってきたのね。哀しい子……。

 

「……」

 

 蛇に睨まれた蛙のように身動きできなくなったキルアは、今はまだイルミの念を振りほどくことはできなかった。




やめて!

イルミの念能力を使われたら、脳に打たれた針でイルミと繋がってるキルアの精神まで操られちゃう!

お願い、負けないでキルア!

あんたが今ここで降参したら、ゴンさんやバンの命はどうなっちゃうの?

試合はまだ終わってない。ここを耐えれば、イルミの呪縛に勝てるんだから!


次回「キルア失格」デュエルスタンバイ!
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