第四の壁を越えて   作:タカリ

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霊光波動拳の奥義と言っておけばとりあえず許される

「末恐ろしい子供たちじゃのう」

 

 大穴が開いてた壁の前にネテロとビーンズが立っている。

 先ほどのイルミとゴンさんたちの戦い。

 最後のトドメとなった『ジャンケン・パー!』の念弾によってできた穴だった。

 

「あの最後の攻撃、『硬』で殴っておったらイルミは死んでおったじゃろう。咄嗟に念弾に切り替えたのはいい判断じゃった」

 

 友達のキルアの兄だから殺さないように手加減をした。

 その結果、イルミは一命を取り留めたが、念弾をガードした手足は完全に破壊され、体中がこんがり焼けて顔も二目と見られない酷い怪我を負った。

 『まだギリギリ死んでいない』。そんな状態。貧者の薔薇の直撃を受けたキメラアントの王のような有様だった。

 

「ゴンさん……あれで11歳なんですよね」

「ゴンさんの陰に隠れがちじゃが、バンも11歳じゃろ。今回のMVPはバンの方じゃな。イルミの狙いを確実に潰し、最後の一撃の隙を作り出したのもバンじゃ」

 

 イルミはゴンさんと幻海を相手にまともに戦うつもりはなかった。

 狙ったのは混乱、そして乱戦。ボドロとポックルを念人形に、黒服たちにも針を刺したように、ゴンさんたちの仲間を狙って手駒にするつもりだった。

 

 レオリオ、クラピカは念を使うこともできず、ポンズとスパーは念に目覚めたばかりの初心者。さらにレツとメイ、ぼたんの実力もイルミから見れば取るに足らない。

 そんなお荷物を大量に抱えているのだ。バンが庇っても限界はある。一人か二人、人形にできればそれを人質に使うことも可能になる。

 そこから突き崩すというのがイルミの戦略だった。

 

「イルミの計算違いはバンが作り出したあの念空間じゃな。針を突き刺そうとした相手が全員引っ込んでしまい、さらには操作系能力まで無効化されてしまった。対多数戦で本領を発揮するイルミの能力の天敵と呼ぶべき能力じゃったのじゃ」

「それでも冷静に隙を伺いながら、ゴンさんか幻海さんに針を刺せれば一発逆転の可能性はありましたが、バンくんがキルアくんを保護しようとしたことで逆に隙を作ってしまった、と」

「そういうことじゃな。まあ、イルミもあれほどの使い手相手に3対1で善戦した方じゃて。ほっほっほ」

 

 ネテロは先ほどの3人の戦いを思い浮かべる。

 ゴンさんの身体能力の暴力と、積み重ねられた研鑽を感じさせる武術。実に強化系らしい戦い方だった。

 

 幻海はゴンさんの補助に回り、イルミの反撃を許さない高度な立ち回りを見せていた。ゴンさんよりも数段上の実力を感じさせるが、サポートに徹していたので実力のほとんどを秘めていた。

 

 そしてバン。ネテロに働けと言った少年だが、あの少年はイルミを警戒しつつ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 あの操作系能力を無効化する能力はおそらく奥の手の一つ。

 それを余人に見せたくないというのがわかる。だが、それ以上にハンター協会の会長であるネテロを警戒しているように感じられた。

 

 どこまで育つか天井が見えないほどの伸びしろのゴンさん。

 そして、ネテロをしても底が伺えないナニカを感じさせるバン。

 

「フリークス兄弟……。面白ぇじゃねえか」

 

 自分の背後から迫る新時代の足音に、生ける武神は獰猛な笑みを浮かべるのだった。

 

 ◇

 

 ハンター試験終了! みんな(キルア以外)合格おめでとう!!

 

 ――というわけで、生き残った合格者諸君を集めて念について説明をしました。

 あの状況を見られて今更誤魔化すとか無理だし、ハンター試験に合格しているなら遅かれ早かれなので関係ない。

 

「念能力……! あの力があれば旅団も……!」

 

 なんか目を紅く染めて闇落ちしかけているクラピカさんがいるけど、旅団ももちろん念能力者だからそう簡単には倒せないよ?

 

「オレの頭に針が……。はは、マジかよ。今まであのクソ兄貴に操られていたってわけか……。親父たちも知っていたんだろ……」

 

 幻海師匠の霊的治療を受けながら頭の針を引っこ抜いたキルアの顔には複雑な感情が渦巻いていた。家族(キルア)を守るための安全装置だったと言われてしまうと否定できない。だがイルミに操られていたことを許せない。そんな感情だ。

 

 他にはレオリオが幻海師匠の心霊治療に興味を持ったものの、医大受験とどちらを優先するか悩んでいたり、ハンゾーが一部の上忍や忍頭の妙な威圧感はこれか……と納得したり様々だ。

 

「バン。私もバンに弟子入りしたらポンズやスパーのように念を教えてもらえるのか?」

「え、クラピカの弟子入り? 拒否はしないけど……うーん」

「ダメなのか?」

「いや、ダメじゃないけどさ。この後ネテロ会長にお願いして念の師匠を紹介してもらおうと思ってるから、そっちに頼んだ方がいいかもしれないよ」

「なんだと!? バンでも今から弟子入りするのか!?」

 

 驚く気持ちはわかるけどね。

 俺やゴンさんが修行してきた方法って『霊光波動拳の修行』であって、『念の修行』ではないから、ちゃんとした心源流の師範から一度きっちり教わりたいんだよね。

 

 ◇

 

 さて、健常者組はともかく、あの戦いで犠牲になった者たちの話に移ろう。

 

 イルミの針に刺さり、イルミの命令だけを聞く人形となってしまった者たち。

 ボドロ、ポックル、そして協会の黒服さんたち。

 

 あの針が刺さった時点で助かる方法はなく、イルミ曰く「がんばり過ぎて死ぬ」と言われた彼らだが――なんだかんだで全員助かった。

 

 嘘みたいな話だろう? だがこれが本当なんだ。

 

 冨樫先生のファンなら当然幽遊白書も読んでいると思うが、暗黒武術会で幻海師匠が放った『修の拳の奥義・光浄裁』を覚えているだろうか。

 

 Dr.イチガキが作った『操血瘤(そうけつりゅう)』によって支配され、死をもってしか解放されることがないという状態――それって、イルミの針人間に似てないか?

 

 というわけで、幻海師匠が霊光波動拳の力でポックルたちを浄化したところ、針の呪縛から逃れ、廃人になることも免れたのだった。

 

 まあ、ポックルとボドロは針が抜けた途端に全身の精孔が開いてしまって、体中のオーラを使い果たして気絶。数日間の絶対安静を言い渡されて協会の病院に入院中だ。

 それでも二人とも死なず、『念の洗礼』を受けて五体無事で済んだんだから奇跡だろう。

 

 他の黒服さん達も無事に快復し、元気に元の仕事に戻っていった。

 

 イルミもまだ死んでいないし、ぼたんが死なないようにヒーリングで回復させているので死者、再起不能者0という驚きの結果になったのだった。

 

 ちなみにハンターライセンスだけど、キルアの失格によって他の全員がライセンスを手に入れた。ボドロもポックルも、イルミも含めて全員だ。

 レオリオが怒り狂ってイルミの合格は無効だろと叫んでいたが、会長が頑として曲げなかったのでイルミにもライセンスが発行されている。

 本当にあのジジイはさぁ……。そういうとこだぞ。




 イルミの針人間が操血瘤に似ているなーと思ったので霊光波動拳で浄化可能に。
 霊光波動拳は除念能力と治療能力を併せ持つ。
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