第四の壁を越えて   作:タカリ

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ラブ・アンド・ピース

 シルバさんたちが俺に殺意を向けているがこれは契約違反か?

 

 答えはNO!

 

 先ほどの契約は『キルアの友人』に手を出さないという契約だったが、俺がアルカに手を出そうとすればキルアは必ず『敵』に回る。もちろんゴンさんや幻海師匠も含めて全員『キルアの敵』になる。

 キルアが俺をどうやって殺そうかと考えている時点で、先ほどの契約には何の意味もないし、当然シルバさんもゼノさんもそのことに気がついている。

 

 だからこそ、このプールから出るまでにゾルディック家の3人を説得し、キルアとの仲を修復する必要がある。

 失敗すればゾルディック家との全面戦争――。俺の言葉に全てがかかっている。

 

「もしも俺の予想が正しければ、重要なのはです」

 

「「「……愛?」」」

「ええ。愛。LOVE。誰かを大切に思う気持ち。それが必要なんです」

 

 俺の言葉が予想外だったようで、目をぱちくりとさせている。驚いた表情は3人とも似ていて血のつながりを感じさせるね。

 

「愛……が、どうなると? 愛があれば何か変わると?」

「ええ、シルバさん。『愛された者』がこう言えばいいんです。『他の人間のお願いは聞くな、自分のお願いだけを聞け』と」

「……」

 

 ナニカ。『お願い』。

 この二つのキーワードを口にしたことで、『お前たちが隠している存在(アルカ)の能力について知っているぞ』と伝えることができる。

 

 さらに、キルアに対しては『命令』の存在も匂わせる。

 

 隣に座っているキルアは動揺を抑え込み、獲物を品定めするような目で俺を見ている。アルカにとって味方(プラス)(マイナス)かを見定めているんだろう。

 目が合ったのでにっこりと笑うと、なぜか怯んだような顔をした。

 

「シルバさん、詳しい説明をした方がいいですか?」

「……いや、大丈夫だ」

「そうですか」

 

 シルバが考え込む。アルカに関するルール。『おねだり』と『お願い』。ゾルディック家を簡単に破滅に追いやる諸刃の刃。

 誰でもお願いができる状況は危険すぎるが、『愛する者(キルア)』だけがお願いをできるようになれば、危険度は一段下がる。

 

「『キルアを操ろうとしない』か……。先手を打ったというわけじゃな」

 

 ゾルディック家の、特にイルミに対して課せられた制約。

 アルカのお願いの力を独占するキルアがイルミに操り人形にさせられないようにするセーフティ。

 

「そうか、あのクソ兄貴なら……」

 

 キルアも同じ結論に達したようで俺への警戒度を一段下げたように見える。

 イルミの針は廃人にする針だけじゃなくて、暗示や行動を操る針もある。そういうものを全部禁止にしたのでキルアの安全はすでに確保されている。

 

「そしてもう一つ。――『お願い』を治療に使う時は、怪我や病気の度合いに関わらず、残酷な『おねだり』をすることはない。知ってました?」

「……イルミはそのための実験台か」

「そんなまさか。うちのゴンさんがちょっとやり過ぎてしまっただけですよ」

 

 さすがのイルミでもゴンさんと幻海師匠相手に無傷で済むわけがないとは思っていたけど、メルエムしちゃうとまでは思ってなかったよ。

 でも四肢全損に顔もぐちゃぐちゃで死にかけの状態だし、検証にはちょうどいいんじゃないかな?

 

「――まあ、これは全部、俺の予想が当たっていた場合の話です。外れていたらただのガキの妄想だと思ってもらえると嬉しいですね」

「いや、なかなか面白い話じゃったな。シルバ、キル。もう少しこの子の話が聞きたいから二人はちょいと席を外してくれんか?」

「……わかった」

「ごめんな、バン。少しじいちゃんの相手を頼むわ」

 

 シルバさんとキルアがプールから出ていった。おそらくルールの確認と、俺が言ったことが可能か、正しいかどうかの検証に向かったんだろう。

 

「ゼノさんが聞いていて楽しいかどうか分かりませんが……。それじゃあ、こういう話はどうでしょう?」

「おう、なんじゃ? 面白い話だといいんじゃがのう」

「面白いかどうかは保証できませんが、耳寄りな話ですよ」

 

 ゾルディック家の思惑を吹き飛ばすくらいの、最大の爆弾(本当の本命)

 

「禁止されている暗黒大陸に渡って、今度こそ希望(リターン)を持ち帰ろうと計画している大馬鹿者たちの話。興味はありますか?」

 

「……それはまた、随分と興味がそそられる話じゃな」

 

 どこから来たのか分からないナニカではなく。

 暗黒大陸からやってきた災厄(ナニカ)だと知ってしまったから、ゾルディック家はこの話を無視できない。

 

 もしも暗黒大陸に第二第三のナニカがいたら。

 ルールを知らない誰かがナニカにとんでもないお願いをしたら。

 そして、そのおねだりに失敗してしまったら。

 

 ゾルディック家が無縁でいられる保証はなく、何の前触れもなくある日突然全滅するかもしれない。

 

「俺が知っているだけでも3つ。それぞれが別々に活動していたり、協力関係にあったりしていますが、そのどれ一つ取っても俺みたいな小僧じゃ手を出せない『組織』です」

「『組織』か。なるほど。バンが欲しいのはゾルディック家の組織としての『力』じゃな」

「その見返りに俺は俺が知っている『知識』を提供できます」

 

 ゾルディック家が世界一の暗殺者一家であり続けるためには、常に最先端を走り続けないといけない。

 これから始まる暗黒大陸進出をかけた争いを、座して見ているだけではダメなのだ。ゾルディック家が時代の敗者に転落しないよう、暗黒大陸に目を向けねばならない。そして、それは俺の目的と合致する。

 

 ズン!

 

「……詳しい話はシルバたちが戻ってきてからじゃな」

「ええ。できればキルアの家族も紹介してほしいですね。可愛い女の子だと嬉しいです」

「くかかか! 美少女ハンターじゃったか! 面白いハンターもいるもんじゃな!」

 

 その後、間もなくシルバとキルアが可愛い女の子を抱きかかえたまま戻ってきた。

 名前はアルカ。キルアの妹で、今は疲れて眠っているらしい。

 

 アルカちゃんが可愛いので、俺のことも是非ともお兄ちゃんと呼んでほしいね!!!




※性別不明のアルカとカルトは女の子ということにします。可愛い女の子が増えたよ、やったねバンくん!
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