「無事に交渉に成功しました!」
「あらら♠ 残念♥ いっぱい殺れると思ったのにな♦」
「今回もヒソカの出番はないから引っ込んでいてね」
「ずるいよバンは♣ 僕の大切な親友のイルミとも勝手に遊んで僕をのけ者にするんだもの♠ 一人お留守番は寂しいんだよ?」
親友と書いてオモチャと読むんですね、わかってるんだよこの殺人鬼。
お前を呼んだらイルミ殺しちゃうじゃん。
「ちゃんと寂しくないようにお友達は残してあげたでしょ。文句言わないの!」
ヒソカの定位置となっているテーブルで、一緒にお茶をしている
「っと、ヒソカと無駄話をしに来たんじゃなかった。溜まってるなぁ」
ゲートの横に設置しているポストを開けると大量のメッセージカードが出てきた。
「なんだいそれ?」
「ダイイングメッセージカード。死者の残した最後の言葉。えーと、あ、ヒソカ宛のカードもめっちゃ多いな」
『この殺人鬼め、地獄に落ちろ!』
『さっさとくたばれこの■■!』
『よくもころしたな。いっしょうのろってやる。おまえをゆるさない』
うん、ハンター試験の最中に殺された受験生からの熱い
「くっくっく♥ もう死んでいるのに『さっさとくたばれ』だって♠ 『一生』はもう終わってるよ♣」
こういう恨み言も大好きなんだなぁ。観客の反応があればあるほど喜んじゃうタイプ。無敵か。
まあヒソカ宛の手紙は渡したので、残りの手紙を配ってしまおう。
「『
現世へ通じる穴を作り、そこにカードたちを放り込む。人間ではないのでゲートを通る必要はない。
ククルーマウンテンからの帰りの飛行船。
開け放った部屋の窓からカード一枚一枚が蝶となってひらひらと飛んでいく。ハンター試験の途中で死んだ人、ハンター試験と関係ないけど俺の近くで死んだ人の最期の遺言が、想いを届けたい人の元へと向かう。
時刻は夜。みんなが寝静まった深夜。念能力者にしか見ることができない幽霊の蝶が淡く輝きながら散っていく。
ちゃんと無事に届きますようね。野生生物なんかに襲われることはないと思うけど、野良念能力者に捕まらないといいな。
「随分と変わった念だね♦ そんなことをしても君にとっては何の得にもならないだろう?」
「まあ、ただの自己満足だね」
このプールに流れ着いた死者の想いを届けるためだけの念だ。戦闘に使えるわけでもないし、普段の生活で何かいいことが起こるわけでもない。
でも、これは俺なりのケジメであり、死者へ敬意を払うための儀式なのだ。
「死んだ人たちから念を集める罪滅ぼしみたいなもんだよ。ギブアンドテイクさ」
「随分優しいギブアンドテイクもあったものだ♥」
◇
ヒソカは知っている。
このプールで多数の死者を見てきたヒソカは気がついていた。
『ゲート通行料(赤) …… あなたの念の半分』
ここで言う『念の半分』とは『怨念』。
あるいは未練、執着、後悔。生きていた頃の記憶や思い出、死した後も抱え続けている想い。
そういったものをあのゲートで回収しているのだ。
あのゲートを潜り抜けた瞬間に、重い荷物をその場で下ろしたように軽やかに死者たちは霊界の穴の向こうへ消えていく。
死んだ魂が安らかに、悔いなく次への人生に旅立てるように。
――前世の未練に囚われないように。赤のゲートは死者の念を集めている。
『
・念能力者にしか見えない蝶。言葉を届けたい人に触れると死者の最期の言葉を再生して消える。
途中で他の人間(念能力者)に捕まってしまうと言葉を届けることなく消えてしまう。とても儚い幽玄の蝶。
――最期の言葉を残すこともできずに死んでしまった後悔。