第四の壁を越えて   作:タカリ

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ハンターを目指す理由

「ゴン、バン。お前たちの父親は生きている。彼は俺が知る限り最高のハンターだ」

 

 はい。港でカイトを出迎えた後、ジン=フリークスの息子だと名乗って仲良くなりました。ゴンが積極的にジンの話を聞いて、ジンとの出会いやどういう修行をしたのか聞いています。

 

 ……いやー。最初に出迎えた時は警戒心バリバリだったんだけどね。

 櫂に乗って空を飛ぶ一般人には見ることができない美女(ぼたん)、立ち居振る舞いや身に纏うオーラからカイト以上の戦闘力を持っていることがうかがえる謎の覆面戦士(幻海)、そして年齢不相応のオーラを纏う謎の双子(俺とゴン)。

 

 そんな怪しげな連中にいきなり囲まれたら、そりゃ警戒するよね!!!

 

 まあ、ジンの息子だって名乗ったらすぐに警戒を解いたあたり、ジンがどういう風に思われているのか察することができるけど。今世の父親は弟子の前でも随分とやらかしているみたいだ。

 (一度も顔を合わせた記憶はないけど)父が迷惑をおかけして申し訳ない。

 

「俺、親父みたいなハンターになる!」

「ああ。お前は優秀なハンターの器量だよ。いいハンターってやつは仲間に恵まれるもんだ」

 

 あ、カイトの話を聞いてゴンのやる気に火が付いた。

 原作でもこの出会いがきっかけでハンターになろうって決めたんだよな。

 今までも念の修行や体力トレーニングはしていたけど、ゴンにとっては『遊び』の一環でしかなかった。俺という遊び相手が『念で遊んでいる』から一緒に遊んでいただけに過ぎない。

 

 でも、これからは違う。ゴンに『ハンターになる』という目標ができた。『遊び』から『将来のための訓練』に変わる。

 ただ漠然と目的もなくトレーニングをするのではなく、目指す場所があるから人は成長する。

 ここから始まる。この出会いから始まる。

 

 本当のゴンさん育成計画が、ついに始まるぞ……!

 

 ◇

 

 カイトの話に瞳を輝かせるゴンの姿に、幻海は昔を思い出していた。

 どこまでも真っ直ぐに夢を追いかける力強い瞳。

 真っ直ぐ過ぎたからこそ一線を踏み越えてしまった、引き留めることのできなかった仲間を彷彿とさせる瞳だった。

 

「……もう弟子なんざ取るつもりはなかったんだけどね」

 

 霊光波動拳の継承者に幽助を選んだ。蔵馬の依頼もあって酎や鈴駒たちも鍛えてやった。やることは全部やって天寿を全うし、何の未練もなくあの世に旅立ったはずだった。

 だが、何の因果かバンによってこの世界に呼び出され、修行をつけてくれと頼まれてしまった。やる気はなかったがぼたんのお節介もあって、少しだけ見てみることにした。

 

 そして出会ってしまったのだ。ゴン=フリークスに。戸愚呂弟に似た愚直(バカ)な少年に。

 

 ――奴は必ずまだ強くなる。だが間違えれば俺みたいになっちまう。お前がもう少しお守りをしてやれ

 

 ゴンを一目見た瞬間に、幻海の脳裏に彼の最後の言葉が蘇った。だから幻海は仕方なく、二人を弟子にすることに決めたのだ。

 

「縁もゆかりもない相手だってのに、あたしもとんだお人好しだよ」

 

 覆面の奥に隠した幻海の瞳が優しい光を湛えてゴンを見つめている。

 ハンターになるという目標に向かってこれからどんどん成長していくだろう。その成長の先を間違えないように、闇に落ちないように導くのが幻海の役目だと自らを任じていた。

 

 そして、ゴンを見つめていた瞳が隣に向けられる。カイトの話を聞きながら何かを企むようにニヤニヤと笑っているバンに、複雑な目を向けた。

 

「兄弟っていうのはどこか似るものなんだろうか……。二人の仲は悪くないんだが、あの二人が一緒にいるのを見るのは複雑な心境だよ」

 

 真っ直ぐな戸愚呂弟(ゴン)と、その後ろでニヤニヤ笑いを浮かべる戸愚呂兄(バン)という光景が脳裏に浮かび、幻海は自分の想像にげんなりした。

 

 

 ◆◆◆

 

 カキン帝国のとある街。

 

「ここはカキン帝国。今は原作(1999年)の3年前……。私は8歳だからゴンたちと同年代ね」

 

 家族に隠れて少女は情報を集めていた。

 誰にも気がつかれないように密かに、違和感を抱かせることなく、ただの一般人(モブ)として潜んでいる。

 

「父親は軍人。エリートではないけどそれなりに優秀で、暮らしに不足はなく裕福。家があるのは帝国内でも有数の大都市。――ここなら謝肉祭の対象外のはず」

 

 謝肉祭。カキン帝国内部の村を対象に行われるカキン王族のお遊び。

 原作では詳細は書かれていなかったが、謝肉祭の対象に選ばれてしまったらお終いということは少女にも容易に想像がついた。

 

「人よりも秀でてしまうのもダメ。美しい容姿、優れた頭脳、屈強な肉体。そして念能力。それが王族の目についたら逃げられなくなる。だから息を潜めて目立たずに、その他大勢の一般民衆に埋没しなければならない」

 

 カキン帝国には不敬罪が存在する。王族に目を付けられて召し上げられてしまったら拒むことはできない。拒否すれば即座に処刑だ。

 だから少女は潜み続ける。転生者としての頭脳も大人びた人格も隠して、年相応の凡庸な少女を演じ続ける。念能力を覚えたら他の念能力者に見つかるかもしれないと自ら禁じている。

 

「あと3年。1999年の287期ハンター試験に合わせて計画を立てましょう。家族の目を盗んで家を出る方法、国境の警備状況、ザバン市への移動手段、そしてハンター試験を合格するだけの身体能力……。準備が必要だわ」

 

 11歳の少女であってもハンターライセンスさえ手に入れればどうにかなる。家族の捜索の手を逃れて一人で生きていける。念を覚えるのはハンター試験後になるだろうが構わない。

 

「ごめんなさい、お父様、お母様。私はこの国で生きていくつもりはないの。私の幸せのために私はあなたたちを捨てていきます」

 

 軍人一家としてカキン王室に忠誠を捧げる今世の両親を捨てて、少女は密かに国外脱出の準備を進めていた。

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