「筋肉だ! 筋肉を鍛えるんだゴン! 筋肉は人を裏切らない! 裏切るのはいつも人間なんだ!」
「きんにく! きんにく! きんにく!」
ハンター目指してやる気満々のゴンと一緒にマッスルトレーニングの時間だー!
「イメージだ! イメージするんだゴン! 最強の自分を! 理想の筋肉を! 強く願い続けたらお前の肉体は答えてくれる! イメージするのは常に最強の自分!」
「イメージ! さいきょう! きんにく!」
家の中にも筋肉ポスターを大量に貼っていく。
ミトさんやお婆ちゃんに嫌そうな顔をされたけど、これもゴンさん育成計画のために必要なんだと一生懸命説得した。
「トレーニングをしたら食え! 強くなりたければ喰らえ! 消化器官を強化して大量のご飯を消化し、栄養を効率よく吸収! 骨を、肉を、内臓を、全身を強くするんだ!」
「たべる! たべる! たべる!」
目の前の海に潜って魚をつかみ取りし、網を引っ張って大量の魚を確保し、骨と筋肉を育てるためのカルシウムとタンパク質を摂取する。
いけゴン! お前なら頭からバリバリ食ってしまうこともできるはずだ! 丈夫な歯は健康の証!
「トレーニングと食事が終わったら休息の時間だ! 筋肉は休ませることで超回復する! 絶をしろ! 体内にオーラを貯めこめ! 細胞の一つ一つがさらに強靭になるように! 筋肉とオーラがお前の体を最強にするんだ!」
「やすむ! オーラ! きんにく!」
全力で鍛え、全力で食らい、全力で休む!
幼少時に体を鍛えすぎると成長に影響が出るという話もあるけど、強く願えば肉体は応えるとビスケが言っていた。たぶん。
だからこそイメージを、最強のゴンさんのイメージをより鮮明に、鮮烈に焼き付ける必要があるのだ!
あ、ぼたんに頼んでヒーリングもやってもらおう。筋肉の回復が早くなると思う!
◇
「えーと、バン? 言われていた人形が出来たんだけど……」
ゴンにお昼寝(瞑想)をさせていると、10歳くらいの少女が困惑した顔でトレーニングルーム(ただの部屋)に入ってきた。
長い金髪の髪に明るい青い瞳の美少女。不思議の国のアリスの童話に出てくるようなエプロンドレスがよく似合っている。
「え、もうできたの! ありがとう、レツ! 見せて見せて!」
この可愛らしい女の子はレツ。劇場版の『緋色の幻影』の悲劇のヒロインだ。
人形師の兄オモカゲが『神の人形師』に至るために、妹のレツの目を抉り取って殺してしまうんだけど、その殺された被害者が彼女だ。
オモカゲは映画補正もあってかなり強力な念能力を持っているんだけど、頭がおかしい奴ほど念が強いという法則にもバッチリ当てはまっている。たぶん妹を殺して目を抉りだしたら究極の人形が作れる気がする!とか考えたんだろう。そういう思い込みが念を強くするから厄介だよなぁ。
ちなみに劇場版で出てくるのは生前のレツを模倣してオモカゲが作った『レツ人形』、俺の能力が呼び寄せるのは『死んだレツ本人』なのでたぶん別人(別の存在)。見た目も性格も同じだけど本質が違う。
そんなレツ(本人)に、俺は生前の知識と経験を生かして人形作りをお願いしていた。そしてつい完成品が出来上がった。
「うわあああ!! 凄い! 等身大ゴンさんフィギュアだあああああ!!!」
髪は短くカットされてしまったけど、それでも全長2m以上。腕も足もパンパンに引き締まったまさに筋肉要塞! マッスルインパクト! 背中に鬼を背負ってる!
「これで置き場所さえ確保できれば、髪の毛をもっと長く伸ばせたのに……!」
「髪の毛を身長の3倍以上の長さにしたいっていうバンの拘りはなんなの?」
「そこがゴンさんの魅力なんだよ!!!」
やはり原作を見なければゴンさんの魅力は理解されないのか……!!
「でも本体の仕上がりは本当に素晴らしいね。筋肉が喜んでいるのがよくわかる。これならゴンも今まで以上のイメージができるはずだ」
「筋肉が喜ぶ……? ま、まあ、資料(筋肉ポスター)がたくさんあったお陰かな。でも、そう言ってくれると僕も嬉しいよ」
レツが俺の言葉に嬉しそうに微笑む。
オモカゲのせいで悲惨な最期を迎えたけど、それでもやっぱり彼女は人形作りが好きなんだろうね。