第四の壁を越えて   作:タカリ

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ようこそ、グリードアイランドへ

 さて、グリードアイランドに入る前に回収しなければならないものがある。

 今世の親父、ジン=フリークスが残した箱だ。

 念とハンターライセンスの両方を手に入れないと蓋が開かないあの箱は――俺の手元にあります。うん、回収済みなんだ。

 

 あれは今から数年前。とある夜、ミトさんがゴミ箱に見覚えのある箱を捨てていたのを目撃した時だった……。

 原作でもゴンに渡す前に何度もゴミ箱に捨てて、おばあちゃんが拾って戻していたらしいからね。これがジンの残していった箱か、とそのまま貰いました。めでたしめでたし。まる。

 

 翌朝、真っ青な顔で家中探し回って、おばあちゃんに箱を知らないかと尋ねていたミトさんは可愛かった……。

 

「あの箱なら廃品回収に出したよ。今頃ゴミ回収船に積まれて海の上じゃない?」

 

 呆然とした顔でへたり込んだミトさんが可愛かった……。

 もちろんすぐに冗談だと言ったけど、俺とゴンさんに残された手掛かりを勝手に捨てたんだからこのくらいいいよね。

 そんなわけで箱も開けてジンからのメッセージも聞いた。指輪とセーブデータはちゃんと二組入っていて、俺とゴンさんの名前も書いてあった。

 

「ジンからの挑戦状、思い切り楽しもう」

「うん! 絶対に俺たちでゲームクリアしようね!」

 

 ◇

 

「貴方は……もしやバン様では?」

「うん、俺はバン! よろしくね! お姉さんの名前はなんていうの?」

「私はイータと申します。それではこれより、ジン様よりのメッセージを申し上げます」

 

 そして流れるジンからのメッセージ。

 このゲームは仲間と一緒に作ったゲームでただ自慢したかっただけ。

 ジンの手掛かりもないし思う存分プレイしてくれ、とそれだけの内容だった。

 カセットテープの内容もそうだったけど、息子が一人でも二人でもメッセージの内容が変わらないっていうのが、なんとなくジンっぽい。

 

「ねえ、イータさん」

「はい、なんでしょうかバン様」

「さっきのジンのメッセージ、実の息子宛てのメッセージにしては味気ないと思わない?」

「それは……。ええ、まあ……」

 

 NPCのフリをしているイータがどういう返事を返そうか困るくらいにどうしようもないメッセージだ。本当にダメな親父である。

 

「でもさ、このゲームが発売したのって1987年でしょ?」

「はい、そうですね」

「そして、俺たちが生まれたのも1987年だった。ジンはさ、俺たちが生まれた時にこのゲームを作って、このメッセージを吹き込んだんだ」

「……ええ、その通りです」

「このメッセージを吹き込んだ時、俺たちはまだ生まれたばっかりの赤ん坊で、それでもジンは俺たちがいつかこのゲームに来ると思っていた。このゲームを遊んでくれると思っていた」

 

 原作でビスケはこのゲームをゴンのための修行場だと言っていた。そういう要素もあるだろう。まだまだ未熟なゴンを鍛えるために、難易度を調整してステップアップしながら長く楽しめるようにと作ったに違いない。

 でも、それ以前。修行場である前に。

 

「このゲームって()()()()()()()()なんじゃないかな。素直になれない父親から、生まれたばかりの息子へ残したプレゼント。そんな気がするんだよね」

 

 とある国では子供が生まれた時に、生まれた年のワインを買うという。

 そして子供が大きくなってワインを飲める年になった時に、大人になった子供と一緒にそのワインを飲むんだ。

 

 俺はこの世界のジンのことを何も覚えていない。父親だという実感もない。

 でも、いつか大きくなった息子たちがこのゲームで遊んでくれて、楽しんでくれたらいいと。そんな気持ちが籠っているんじゃないかって思っている。

 

 まあ、俺の勝手な想像なんだけどね。

 

「バン様」

 

 イータさん。ジンと一緒にこのゲームを作った、ジンの仲間の一人。

 

()()()()()()()を心からお待ち申しておりました」

 

 ――ようこそ、グリードアイランドへ。

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