第四の壁を越えて   作:タカリ

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君達バッテラ氏の依頼でここに来たんだろ

 ホテルでの作戦会議の後、アントキバの街を探索していたらハメ組の勧誘担当、ニッケスが声をかけてきたのでホイホイついていってしまった。

 

「君達バッテラ氏の依頼でここに来たんだろ」

「ご存じでしたか」

「ああ。20人以上のプレイヤーが一気に参加するなどそれ以外に考えられないからね」

 

 まあバッテラ氏の依頼は俺たちが解決したから実質終了してるし、俺たちがこのゲームを遊んでいるのは依頼でもなんでもないんだけど。ニッケスたちはそのことを知らないし、俺たちもわざわざ教えたりしない。

 ちなみに新規プレイヤーの募集は止まっているし、俺たち以外の誰かがG・Iをクリアした場合、バッテラ氏が500億を支払って俺たちが報酬のカード3枚を頂くということですでに話がついている。

 

「オレ達もそうだ。バッテラ氏に雇われプレイしている」

「そうだったんですね」

 

 100人以上のプレイヤーを雇っても指揮系統らしい指揮系統もなく、各自が潰し合ってるんだから本当に無駄だよなぁ。人数が無駄に増えた結果、現実に帰れない難民も増えてるし、まともにプレイできる少人数のプレイヤーはカード化限度枚数の関係でクリアできない。

 言ってはなんだけど、バッテラ氏がまともに統率取ってプレイヤーを団結させてたら婚約者さんが死ぬ前にクリアできたと思うよ。

 

「クリア報酬の500億は参加者全員で山分けする。君達一人一人の報酬はおそらく2億程度になるだろう」

「なるほど。それであとどのくらいでクリアできる予定なんですか?」

「今はまだ仲間を募集している段階だ。仲間は現在37名。君たちの次か、その次に参加したプレイヤーたちで募集を締め切る。おそらく半年程度はかかるだろう。その後は遅くとも二か月でスペルカードを独占し終え、勝負に出てから一か月で全ての指定カードを集める! つまりあと九か月。新年を迎えるころにはこのゲームをクリアできるはずだ……!」

 

 この予想がほぼ当たるんだから凄いよな。

 最後の最後でゲンスルーたちに裏切られなかったらいい線行っていたと思う。

 ただ、『一坪の海岸線』を攻略できる実力者を集めるのが難しいから、ハメ組の快進撃もそこで終わっただろう。ただ人数を集めるだけではクリアできない仕組みになっているのが性格が悪い。

 

「どうだ? 俺たちと一緒にこのゲームを攻略しないか?」

「仲間になってもいいよ、ただし条件がある」

「条件……?」

「『仲間集め』『スペルカード集め』『指定カード集め』。俺たちが全部やってあげるよ。だから働きの分だけ報酬も貰うし、俺たちのやり方でやらせてもらう」

 

 九か月もかけてちんたら集めてたらヨークシンのオークションが始まっちゃうんだよ!!!

 クリア目標、8月いっぱい。全力で巻いていくんだよ!!!!

 

 ◇

 

 ――仲間集め。

 

「仲間が37人で俺たちが9人、合わせて46人。で、あと何人集めればいいの?」

「あ、ああ、最低でも60人はほしいから、あと14人は勧誘するつもりだが……」

「わかった。じゃあ最低でも10人集めてから連絡するよ。上限は何人まで?」

「……65人、といったところだな」

「OK。あとスペルカードを買いたいからマサドラまで送ってもらえない?」

「……わかった」

 

 というわけで、ニッケスたちと別れた俺たちはまず仲間集めから始めることにした。

 防御スペルを独占するために、まずフリーポケットの数を増やさないといけないんだ。

 

「ちょ、ちょっと、バン。10人以上仲間にしたらって、どうやって仲間にするのだわ?」

 

 まだこのゲームを始めたばかりのビスケや他のみんなは、俺の仲間を集める発言に驚いている。

 ただ一人、メイだけはマサドラという単語に心当たりがありそうな顔をした。

 

「大丈夫、このゲームのことは事前に調べてあるから、作戦はあるんだ」

 

 さーて、仲間作りRTA、始まるよー!

 

 ◇

 

 まず最初にするのは資金作り。

 最初に出会った初心者狩りの持っていた指定ポケットカードをマサドラの交換ショップで全部売る。

 指定ポケットカードは最低でも1000万ジェニー以上で売れるんだけど、合計で1億ジェニーほど貯まったので交換ショップに預けておく。

 資金ができたらマサドラのスペルカードショップへ移動。

 

「レルート。このゲームにうんざりしていそうな、良さそうな人はいるかな?」

「ええ、見つけたわ。早速を声をかけてくるわね」

 

 長い行列ができているマサドラのスペルカードショップ。その列に並んでる人の中から『離脱』を求めて並んでいる難民プレイヤーを探してもらう。レルートの観察眼なら間違いないだろう。さすがは元精神科医、頼もしいね。

 

「え、あと半年以内にこのゲームをクリアする予定だって!?」

「しー、声が大きいよ。とにかく、今の俺たちは仲間を探しているんだ。もう一度言うけど、あと半年でゲームを攻略する予定を組んでいて、この計画に協力してくれるならゲーム攻略後に1億ジェニーを渡すよ」

「い、1億ジェニー……」

 

 それまで死んだ目をしていた男の目に生気が宿った。

 このゲームから脱出できるという希望、そして成功報酬の一億ジェニー。どちらも男が喉からほしかったものだ。

 

「とりあえず100万ジェニー渡すから、これで今日は美味しいものでも食べてホテルでゆっくり休みなよ。もしこの話を断ってもお金を返せなんて言わないから、好きに使っていいよ」

「100万……ジェニー……!?」

 

 一生懸命お金を貯めて、苦しい生活をしながらスペルカードのパックを買い、外れのカードばかり出ては落胆する。そういう生活を何年も送ってきた彼にとって、100万ジェニーは本当に大金だった。

 

「ああ、スペルカードショップでパックを買ってもいいですよ。1パック1万ジェニーだから100パック買えますね」

「100パック……、1パック3枚のスペルカードが入っているから300枚……」

 

 それだけカードを買えれば『離脱』のカードも出るかもしれない、と考えているんだろう。

 

「『離脱』が出たらそのままゲームから出ちゃってもいいですよ」

「え、いいのか!?」

「ええ。問題ないです」

 

 本当に嫌で嫌でたまらないならさっさと出てもらった方がいい。

 だが。

 

「ただ、あと半年働いてもらえるなら先ほども言ったように一億ジェニーをお渡しします。よく考えてみてくださいね」

「あ、ああ……、1億ジェニーか……1億……」

 

 目の前にある安全を取るか、半年後の1億ジェニーを取るか。

 

 ――翌日、レルートが選んだ15人の離脱難民は、昨日とは打って変わって欲望(やる気)に満ちた顔で計画への参加を表明した。

 

 15人の仲間の確保、成功!

 

 ◇

 

「ねえバン。ニッケスの言っていた報酬は一人2億だったはずだわさ。それなのに一人1億ってどういうこと?」

「え? もちろん仲介料だよ。あの人たちに2億なんてもったいないじゃん」

「あ、あんたって子は……」

 

 ゲームの攻略にほとんど関与しない数合わせなんだから1000万でも十分だと思うけど。まあ半額で勘弁しておこう。

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