ニッケスが仲間に誘った相手、バンという少年は奇妙な少年だった。
五年以上このゲームをプレイしているニッケスでも見たことがなく、10歳程度の外見なので新規プレイヤーなのは間違いない……はずだ。
このゲームには『魔女の若返り薬』や『マッド博士の整形マシーン』、更に『ホルモンクッキー』など年齢も外見も変えられるアイテムが大量にある。バンがそれらのアイテムで外見を変えている可能性は否定しきれない。
それでも最初はただの若さからくる無鉄砲さ、『自分ならできる』という根拠のない自信だと思っていた。
「仲間を10人以上集めたら連絡する」と言っていたが、そう簡単に仲間が集められるわけがない。このゲームに参加するプレイヤーは全員がバッテラ氏の掲示した攻略報酬500億ジェニー目当てで集まった人間たちなのだ。
隙を見せればカードを奪い、情報を奪い、敵対プレイヤーに高値で売りつけることも厭わない。
5年かけても仲間を37人しか集められなかったのは、そういうプレイヤーの裏切りに何度もあい、ハメ組の情報を得た武闘派プレイヤーの略奪の被害にあい、何年かけても遅々として進まない計画に嫌気がさした人間が抜けていったからだ。
ニッケスたち『始まりの10人』の他に今でも残っている仲間は27人。これが5年間の成果だった。
(だが、ようやく計画の準備が整った。年内に攻略できる見通しもできた。あと九か月の我慢でこのゲームを攻略できる。バッテラ氏の報酬が手に入る。この『
その為に必要なのが新たな仲間。フリーポケットを確保するための人間たち。
新しくログインしてきたプレイヤー、バンたち9人が仲間になれば目標数の60人にぐっと近づく。
(その為には多少の生意気な態度は大目に見よう。このゲームで信頼できる仲間を得るための苦労を知らない新参者なんだから。すぐに音を上げてあの条件を撤回させてくれと言ってくるだろう)
――そう思っていたニッケスだが、バンからの連絡は入らないまま一週間が経過した。
もしかして死んだのか?と思ってブックで確認するとしっかりと全員生存していた。
(バンくんは一体何をしているんだ? まだ仲間集めを諦めていないのか……もしかして、実力不足でどこかで詰まっているんじゃない?)
ニッケスは戦闘型の能力者ではない。だからこそ頭を使ったゲーム攻略を考えたわけだが、バンたちの実力がどれほど強いのかよくわかっていなかった。
魔法都市マサドラに『同行』で送ったが、マサドラ周辺の敵の強さに立ち往生してしまい、そこから身動きできなくなっている可能性があると考えた。
(『交信』で連絡を……。いや、その前にバンと仲間たちの手持ちカードを確認しよう。何も目ぼしいカードを持っていないなら、本当に攻略に詰まっていると確認できる。このゲームの難易度を実感した後なら前のような大言壮語は言えないはずだ)
プレイヤーが所持カードしているカードを確認する方法は主に2つ。
一つはスペルカード。フリーポケットを確認できる『盗視』。指定ポケットを確認できる『透視』。手持ちカードを全て確認できる『念視』。三種のスペルカードがこのゲームには存在する。
もう一つはトレードショップを活用することだ。指定したプレイヤーが何種類の指定ポケットカードを持っているか。そして、追加料金を払うことでどの番号の指定ポケットカードを持っているかまで確認できる。
(わざわざスペルカードを消費する必要もないか。トレードショップで指定カードだけ確認しよう)
「店主。プレイヤー・バンが今何種類のカードを持っているか教えてくれ」
「了解した。バンの所持カードだな」
ニッケスが店内のカウンターに情報料を置いて質問すると、すぐに店主が教えてくれた。
「バンの所持している指定ポケットカードは99種類だ。番号の内訳も知りたいなら別料金だぜ」
「……は?」
◇
バンはたった一週間で99種類の指定ポケットカードを集めていた。
グリードアイランド攻略RTA――完了!