第四の壁を越えて   作:タカリ

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ニッケスの胃痛

 Aランク 095『秘密のマント』

 G・I内のとある都市で発生するイベント。

 街の中を歩き回るターゲットを尾行し、最後まで気がつかれなかったらクリア。

 

 『秘密のマント』は身につけると永続的に『暗幕』の効果が得られる。防御用のスペルカードを使わずに『盗視』と『透視』を防げるアイテム。ただし『念視』を防ぐ方法はゲーム内には存在しない。

 

 『暗幕』を使う手間が省けるのと、フリーポケットの枠の圧迫を避けられるので入手した。

 一枚手に入れた後は『複製』のカードで増やし、人数分をゲインした。

 

 ◇

 

 Aランク 046『金粉少女』

 とある屋敷の地下4階に監禁されている少女。

 罠が張り巡らされた屋敷から脱出し、外に連れ出すとクリア。

 

 全身から金粉を吹き出し、1日1回の入浴で金粉500gが取れる。

 

 全身から金粉が出るという効果だからか、Aランクのカードの中でも特に売却額が高い。一枚5000万ジェニーで売れる上に、屋敷に忍び込むたびに新しい金粉少女が閉じ込められているので何枚でも手に入る。金策としてとても優秀。

 

 ◇

 

 Bランク+Dランク 各種

 それぞれのイベント入手の他に、トレードショップでお金を払うことで入手できる。

 月例大会の商品など、期間限定でしか入手できないカードも含まれているので、購入資金さえ用意できるならショップで買うのが一番早くて楽。

 

 『リスキーダイス』や『スケルトンメガネ』、『聖騎士の首飾り』などG・I内のイベントをクリアするのに必要なアイテムたち。最低でも一枚はゲインして持っておくのがおすすめ。

 

 大量の金粉少女を人身売買した資金で全種類のカードを購入した。

 『聖騎士の首飾り』は便利なので人数分購入し、ゲインして全員が身につけている。

 

 ◇

 

 SSランク 017『大天使の息吹』

 全種類のスペルカードを手に入れることでイベントフラグが立つ。

 マサドラのスペルショップで40種類のスペルカード全部と交換してもらえる。

 

 どんな怪我や病気も治してくれるカードだが、アルカがいるので必要性は薄い。

 だからオリジナルの1枚を手に入れた後、『複製』で増やす→トレードショップに売る→『複製』で増やす→売る→増やす→売る、という手順を繰り返して大量の資金獲得に成功していた。

 

 ◇

 

 上記とは別に『堅牢』と『擬態』を11枚集め、『神眼』もダブったので使用した。

 これが一週間である。

 

 ◇

 

 ニッケスは目の前に集まった『緑のマントの集団』に気圧されていた。

 彼らは全員が緑のマント――Aランクアイテムの『秘密のマント』をつけているのだ。5年間ずっとゲームをプレイしているニッケスでさえそんなことはしていないのに。

 

(バンくんがスカウトしたという14人。あいつらの顔を見たことがある。だが……俺の知っている時とは顔つきが違う)

 

 新人がやってこない時はニッケスも資金集めやスペルカード集めに参加している。当然、スペルカードショップの行列に並んでいるプレイヤーの多くは見覚えがある。

 だが、ニッケスが知っている彼らは敗残者であり、全てを諦めてただ現実への帰還を考えている負け犬に過ぎなかった。

 

(オレも仲間に誘ったことがあったが、カード在庫の整理中に『離脱』を盗んで勝手に使用し、現実世界に帰ってしまった。あの事件があってから俺は仲間に誘う相手に基準を設けたんだ……)

 

 マサドラで『離脱』を手に入れようと必死になっている、死んだような目をした連中は仲間に誘わない。このゲームを攻略してやろうという気力に満ちた人間だけを勧誘対象に据えた。

 

(だが、そんな俺の目から見て、今のこいつらは以前のような負け犬の顔じゃない。ゲームクリアを目指すやる気に満ちた顔をしている。一体、バンくんはなにをしたんだ?! たったの一週間だぞ!)

 

 確かに、ニッケスが言うようにほんの一週間しか経っていない。

 だが、その間にバンが魅せた快進撃とゲーム内資金を大量に獲得した鮮やかな手口、チームの一員の証としてマントを支給され、一緒にパックをめくってスペルカードを集めたことなど。

 

 14人は久しぶりにワクワクしたのだ。

 

 長い間ゲームに閉じ込められていた間にすっかり忘れていた気持ち。このゲームの初めての攻略者になってやろうと野望に燃えていた頃の感情を思い出した彼らは、今は『バンのゲームクリア』を手助けしたいと願っていた。

 そして、『バンのチームメイト』として攻略の一助になれたら――敗北者ではなく、勝者として胸を張ってゲームから脱出できる。

 自分の身の程を知ったからこそ、バンのサポートに専念する。それが14人の今の心境だった。

 

「ニッケスさん、お待たせ! ちゃんと14人集めたよ。これで仲間集めを終わらせてスペルカード集めに専念できるよね?」

「あ、ああ……。多少、予定の変更が必要だが、大幅な前倒しができるだろう。ありがとう、バンくん」

「どういたしまして!」

 

 ニッケスの目には、目の前の小さな少年が異常な存在に映っていた。

 たった一週間。一週間前は世間知らずの自信過剰な少年にしか見えなかったのに、今は22人の仲間を引き連れてニッケスのグループに殴り込んできた圧倒的上位者のように思えた。

 

「と、ところで、……もしかして、SSランクの『大天使の息吹』の手に入れたのは、バンくんなのか?」

 

 ハメ組も把握していない間に誰かが手に入れていた『大天使の息吹』のカード。

 スペルカード40種類と交換という条件から、ハメ組が入手に一番近いと思っていたカードを、誰かが手に入れていた。つい先ほど発覚した大事件だ。

 その情報はニッケスたち上層部に共有されていて、今は誰が『大天使の息吹』を持っているのかの捜索中だった。

 

「ああ、それなら俺だよ。『複製』で増やすなら増やしてあげてもいいよ」

 

 あっけらかん。

 ニッケスたちの混乱など知らないとばかりに、あっさりとバンは自分だと認めた。

 

「確かSSランクだと5億で取引しているんだっけ? ちょっと安い気がするけど、まあいいや」

「そ、そうか……。だが、『複製』の方か? オリジナルじゃダメなのか?」

 

「俺がオリジナルを持っていてもいいでしょ? 仲間なんだから問題ないよね?

 

「……わかった。それなら『複製』を受け取ろう」

 

(本当に彼は仲間なんだろうか……)

 

 SSカードを手土産に新たにハメ組の仲間になったバンと22人の仲間たち。

 本当にこの選択は正しいのだろうか、とニッケスは思い悩むのだった。

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