「これまで霊光波動拳の基礎である霊波動(霊気の流れ)を瞬時に爆発的に高める訓練と、それを一点に集中する訓練をしてもらった」
幻海師匠による霊光波動拳についての説明だ。
「あたしはこの技術に名前をつけていなかったが、どうやらこの世界ではそれぞれ『堅』と『流』と名前がつけられているようだね」
「カイトはそう言っていたよ!」
幽白世界とハンター世界。
両方の世界の作者が冨樫先生という共通点があるからか、霊力と念にはやはり似通っている部分があった。
「そして霊光波動拳の様々な技。これをこの世界では『発』と呼ばれる必殺技に当たるわけだが、霊光波動拳には五大拳と言われる『攻』『防』『修』『療』『仙』の五つの分類がある」
ちなみに幽白で幻海が使った技を分類するとこんな感じになる。(適当に振り分けた)
『攻』 霊丸、霊光弾(ショットガン)
『防』 霊光鏡反衝
『修』 修の行・呪霊錠、修の拳奥義・光浄裁
『療』 治療術
『仙』 魂を戻す術、霊光波動拳継承者の証・霊光玉
「あたしはこれを特に変だと思っていないが、バンは念のルールに反していると言うんだろう?」
「うん。パッと数えただけでも数が多すぎるし、どの技も強力過ぎる。これが全部『発』だったら
普通の人だったら五大拳の奥義の一つも習得したら容量のほとんど使い切ると思う。容量が多い人でも精々二つか三つ。五つの奥義を習得できる人間がいるとは思えない。
「バンとカイトも発には覚えられる容量が存在していると言っている。だがね、あたしはこの『容量』とやらに違和感を覚えるんだよ」
幻海が目の前で
長い間かけて磨き上げた霊波動の極み。
「見たらわかるだろう? 癒しの霊力を人に流せば治療術となり、破壊の霊力を敵に打ち込めば攻撃となる。これは本当に発なのかい?」
「……もしかして」
ゴンが耳からプスプスと煙を上げている横で、俺は新しい発見を得ていた。
「霊波動は……霊光波動拳は、発じゃなくて純粋なオーラ操作の極み。習得するのに容量を必要としない?」
「あたしはそう思うね。発というのは必殺技を簡単に発動できるようになる裏技さ。自転車に乗れない人間が補助輪をつけて走っているようなもの。そしてこの補助輪の数は限られているから、一度使ってしまえば他の自転車には乗れなくなる」
「だけど、補助輪なしで自力で自転車に乗れるのなら……。他人の作った発を、オーラ操作だけで再現することもできる!」
脳裏に浮かぶのはレオリオの発をコピーした時のジンのセリフ。
『打撃系の能力は一回食らうと大体マネできちまう』。
あれも他人のオーラ操作を察知する能力と再現する能力に長けているということだったんだ。まさに天賦の才と言えるだろう。
「霊丸も霊光弾もオーラの放出による念弾で説明できる! 霊光鏡反衝は相手のオーラと同調するから変化系かな? 呪霊錠は具現化系、治療術は操作系による肉体操作。これらを全部、発ではなくて自分のオーラ操作だけで再現できるようになれば……!」
「霊光波動拳の真髄、五大拳の奥義を全て身につけることも不可能ではないだろうね」
念の秘密を悟ると同時に、俺は目の前に立つ本当に小柄な師匠に対して畏敬の念を抱いた。
『人間界で五指に入る霊能力者』の幻海と、『世界の5本の指に入る念能力者』のジン。
この二人が到達した頂の高さを改めて実感した。
「幻海師匠って本当に凄い人だったんだ……」
「今までなんだと思ってたんだい、殴るよクソガキ」
「そりゃもちろん、強くて美人で、口は悪いけど弟子思いの心優しい理想の師匠――」
ゴンッ!!!
「な、なぜ……。褒めているのに……」
「お黙り」
理不尽な師匠の愛のムチが痛いです。
◇
その後、カイトから教えてもらった系統別修行法(カイトも具現化系なので特に具現化系の修行には非常に参考になった)を織り交ぜながら、霊光波動拳の修行も本格的にするようになった。
「ねえ師匠ー? 俺の呪霊錠、なんかゴンのと比べてデッカくない……?」
「あんたにゃそれがお似合いだよ。ほら、いいからさっさとオーラを練りな! 練だよ練!」
まあ師匠からの期待の表れと思って我慢しよう。
霊光波動拳継承者(自称)として、このくらいの負荷で弱音を吐いていられないからね!
ジンがレオリオの発をコピーしたことから、オーラ操作を極めれば容量を使わなくても霊光波動拳の技を習得できる設定にした。
ただし凡才だと数十年間真面目に鍛錬し続けて奥義を一つ習得できるかどうか。
生きているうちに全ての技を覚えられるのは継承者に選ばれるような天才だけで、普通の人間はその前に寿命が尽きる。
それと特質系能力を含む一部の能力はオーラ操作だけでは習得できない。