第四の壁を越えて   作:タカリ

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 ぼたんたちの状態。

・ぼたん 一般人には見えない幽霊状態。触ろうと思えば物に触ることはできる。かりそめの肉体(憑依用の人形)があれば普通の人にも見えるようになるがこの世界には存在しない。ミトさんは知らない。

・幻海・レツ 一般人にも見える受肉(物質化)状態。ミトさんも知っている。


水見式

「あらレツ、何しているの?」

「あ、ミトさん……」

 

 洗濯物を持ったミトがたまたまリビングを通りがかると、水の入ったコップに葉っぱを浮かべてレツが何かしていた。

 

(どこかで見覚えが……。ああ、思い出した。何年か前にあの子たちも同じような遊びをしていたわね)

 

 フリークス家の奇妙な居候、幻海とレツが来る前のことだ。

 真剣な顔でコップに手をかざしながら何十分も動かない様子に、何か変な遊びでも思いついたのかと首をかしげていた記憶がある。

 

(あの頃は二人とも小さくて可愛かったのに、時間は残酷だわ)

 

 あれからほんの数年しか経っていないのにゴンはすくすくと育ち、今ではミトよりも背が高くなってしまった。鋼のような筋肉が全身が包む生ける彫刻のような益荒男振りである。可愛いゴンを返して……。

 

(いえ、ゴンはまだいいのよ、ただ体が大きくなっただけだし。問題児はバンの方だわ。なんてったって私に黙って勝手に幻海さんとレツを家に連れてきたのよ! 本当になんて子かしら!!)

 

 身元も不明でどこの誰とも知らない人間を連れてきた挙句「この家に置いてくれないなら俺が家を出る! 野宿して外で一緒に暮らす!」と言ってきたのだ。ミトが見捨てられないと知った上での脅迫である。

 

 仕方なく家に招き入れたものの最初は双方ともに困惑しきりで、お互いに探り合いをしながら少しづつ歩み寄ったものだ。しかもそんな状態なのに本人のバンはケロッとしているのだから質が悪い。

 ゴンとは比べ物にならない問題児である。というか、ゴンが筋トレに目覚めた原因もバンなので間違いなく諸悪の根源である。

 

「な、なんでもないです……!」

 

 ミトがちょっと昔のことを思い出していると、レツはコップを手にそそくさと出ていってしまった。

 

「レツもいい子だし、もっと仲良くなれたらいいんだけど、あの二人と違ってどういう風に接したらいいのかわからないわね。女の子って難しいわ」

 

 思春期の娘に苦労する母親のようなセリフを言いながら、ミトは洗濯物を干すために庭に向かった。

 

 

「……やっぱりダメだ」

 

 水見式。念の系統を判別するための最もポピュラーな方法。

 幻海が放出系だと判明したように、レツも自分の系統を知るために水見式を行っていた。

 今も世界のどこかで凶行を繰り返す兄オモカゲを止めるために、彼女は念を覚えて戦う力を得ようと考えた。

 

 生前のレツはオモカゲの念能力を完成させるためのイケニエとなり、死後のレツはバンの念能力で呼び出された念獣(念人間)となった。

 そのためかレツは念を自然と使いこなし、ほんの少しの修行で練も問題なく行えるようになっていた。

 

「どうして? どうして何も起きないんだ?」

 

 だが、レツが何度水見式を行っても何も変化が起きない。

 もしかしたら水の味が変わったのかもしれないと味見したが、ただの水だった。

 強化系でも、変化系でも、放出系でも、操作系でも、具現化系でもない。

 

 そして特質系でもない。

 

「まさか……、僕には系統が存在しない……?」

 

 六性図のどの系統にも当てはまらない無系統

 自分には系統が存在しないと、レツは直感的に悟ってしまった。

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