うららかな春の日和を楽しむステイゴールドとトレーナー。しかしそれらを邪魔する影が…。

1 / 1
修羅を燃やす春

 担当のステイゴールドと出かけたトレーナー。

 他愛もない会話を繰り広げながら特にこれといった目的もなく、あちらこちらを回っている。

 ステイゴールドにとっては何気ない日常でありながら、旅にも似たかけがえのないひととき。

 二人で河原を歩いていると。

「お、今日はヒバリが鳴いているな、もう春だ。」

 一際高く飛び、美しく囀る声を聞いて、季節の移ろいを感じている。

「見ろよステゴ、もうツバメが飛んでいるぞ。」

 そう言ってトレーナーが指差した先には、風を切って飛ぶツバメの姿。

 暖かな日差し、そよぐ春風がとても心地よい。

 春を感じながら歩く二人に、突然忍び寄るあやしい影。

「あらぁ、私よ、ワ・タ・シ。同級会以来じゃなぁい?久しぶりねえ。」

 トレーナーの腕に素早く縋りつき胸を押し付けながら、下品な香りを撒き散らし媚びる肉感的な女。

「ちょ、ちょっと、離してよ。」

 ドン引きしたトレーナーがそう言ってもガン無視。

「こんにちは。」

 そう言って挨拶した傍らのステイゴールドには一瞥をくれただけで、挨拶もしない。

「ねえ、あなた中央のトレーナーなんですって?とっても素敵!今度、トレセン学園に行ってもいいかしら?」

 下心を隠しもせずに、高給で有名な中央トレーナーに近づきたい野心満々。

 ステイゴールドは表情を変えずにトレーナーに言った。

「私は先に学園に帰る。じゃあな。」

 ウマ娘専用レーンに入って瞬く間に加速するステイゴールドの姿は、あっという間に見えなくなった。

「待ってくれ!ステゴ…!」

 なんとか女を振り切ったトレーナーは駆け出したが、担当の姿は消え失せたままだった。

 

⏰

 

 その後もステイゴールドのトレーナーに女は粘着していた。

 そういうわけで楽しみの外出もままならない。

 ステイゴールドは女の身元調査をドリームジャーニーに依頼した。

 時を待たずして報告書が届く。

「アネゴ、これがご依頼の調査報告書です。

「お、ジャーニー助かるよ。で、どんな女なんだ?」

 遠征支援委員会室で会話する小柄な二人のウマ娘。

 ドリームジャーニーの手には分厚い書類の束。

「一言で申しますと、″太えアマ″といったところでしょうか。もともと二股かけていたところ、バレそうになったため第三の男、つまりアネゴのトレーナーさんに粉をかけたと思われます。」

 調査報告書に目を通しながら、ドリームジャーニーの言葉を聞くステイゴールド。

「つまり、″私のトレーナー″を横取りしようとしたわけか。」

 黄金の瞳に宿る嫉妬の炎に内心身震いしながら、水色の瞳もますます温度を下げていく。

「おっしゃる通りです、アネゴ。どうなさいますか?」

 小首を傾げて問うドリームジャーニー。

「この資料を一部もらえるか?あの女に『″私のトレーナー″に手を出すな』と送りつけてやるさ。」

「もちろんです。アネゴはお優しいですね。」

 それを聞いて訝しむステイゴールド。

「ジャーニー、私は優しくなどないぞ?」

「いえいえ。私でしたら本人だけではなく、交際相手や二股相手、家族、職場や友人にまで送ったでしょうから。」

 それを聞いて呆れるステイゴールド。

「女房焼くほど亭主モテもせず、とはいうがなあ。お前のトレーナーは、お前という一筋の黄金にしか興味がないようだぞ?」

 眼鏡を直して微笑むドリームジャーニー。

「ええ。ですから例えば…、の話です。ふふ、これからもよそ見をしないよう陰に陽に躾けて参りますので。」

「ありがとうな、ジャーニー。じゃ、これはもらっていくよ。』

 そう言って去っていくステイゴールドをドリームジャーニーは見送った。

 

⏰

 

 あの日から休んでいたトレーニングは、付きまとい女が消え失せてから再開された。

 トレーナーはステイゴールドに詫び、女の素性を打ち明ける。

 同級生には間違いないが、いつも都合の良い時だけ擦り寄ってこられたこと。

 人を踏み台としか考えていないこと。

 だから異性はおろか、友人としてすら見ていないこと。

 それらを聞きながら、トレーナーには例の調査報告書は見せない方がいいだろうと思っていた。

 懸命に釈明するトレーナーの手をそっと握るステイゴールド。

「もうその女の話はいい。あんたは私だけを見ていてくれないか?」

「もちろんだよ。疑うなら結婚してもいいよ?」

 そう冗談めかして言うトレーナー。

 それを聞いて真顔になるステイゴールド。

「私も成人済みだから、それでもいいな。なあ、今度のお出かけは役所にするか。」

「わかったよ。」

 これぞ怪我の功名?嫉妬から出た結婚。

 ステイゴールドとトレーナーが入籍したという知らせが回っても、『今更?』『知ってた定期』『いつのまにか入籍してるウマ娘ステークス単勝元返し』などというリアクションだったという。




ステゴに焼き餅焼かれたい

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。