オオタチですか 作:メガオオタチ
某日、ブルーベリー学園職員会議にて…
「え、えー…それでは次の議題ですが…ここしばらくは例のオタチ君の暴走もなく…学園内のBP及び、治安は正常と言えます。また、密造基礎ポイントドリンクの工場においては場所を特定。無人での完全自動生産だったので、抵抗なく工場を閉鎖できました」
その言葉にこの部屋にいた教職員全てが「ふぅ……」と安堵のため息をついた。
「いやぁ…よかったよかった…おかげで胃薬を飲まずに済んでるよ…」
「まったくですな…生徒たちの精神状態も安定しておりますからこの状態を維持していきたいもんです」
「…でもねぇ…」
教職員たちの安堵を遮るように、校長のシアノはどこか遠くを見つめるように天井を仰いだ。
「確かに混乱はあったけども…全部が全部悪かった、とは言えないんじゃないかな?真似できないとはいえ戦い方も独特でバトル学へのいい刺激だっただろうし、生徒たちの中にも彼を慕っている者はいるし、食堂スタッフからも感謝されていただろう?現に僕が考案したメニューより100倍以上は注文されてるって聞いたよ?」
「…そ、それは…」
「たしかに聞き及んではいますが…」
煮え切らない感情を持っているのはシアノだけではなかった。ガブリアスの問題を解決してもらったバトル学の教師も実はオタチを…いやオオタチを密かに慕っていた。問題児よりも問題児だったが、その分、助けられたこともあったのだ。
「…僕はね、この学校は優れたトレーナーを排出するための学校にしたいと常々考えている。でも優れたトレーナーって何だろうね?よく考えてみなよ、ポケモンがいなきゃあポケモントレーナーにはなれないんだよ?」
そして、シアノは机の上にあった一枚のファイルを手に取った。そこにはブルーベリー学園、ブルーベリーグの新チャンピオンとなったスグリに関しての資料が入っていた。
「僕は今のスグリ君の方が…どうにも心配でならないんだ…林間学校からこっちまで、彼の手持ちポケモンはガラッと変わった…そして勝率は断トツでトップ…でも…以前の彼と比べると…やはり何かが足りないと思うんだ…そして、僕はね?以前のスグリ君と、今のスグリ君、これが戦うと…今のスグリ君は負けると思っちゃうんだなぁ…」
資料をめくり、いまのスグリの手持ちポケモンのデータを眺めるシアノの目には、このポケモンたちに…スグリに輝きを感じてはいなかった。勝利するための構成。確かにそれはポケモントレーナーとして重要な物だろう。だが……
「…オタチ君がいないと、どうにも締まらないんだよねぇ…スグリ君は…」
それ以上に大事なものがあるのだ。
そんな時、机の上の内線電話が鳴り響いた。
「…はい、会議室…はい、はい、えぇ、シアノ校長は今いらっしゃいますが、会議中で…」
「ん?誰からだい?」
「あぁ、えっと……その、ゼイユさんからで…」
「おやまぁ、スグリ君の話をしていたのが聞こえたのかな?いいよ、ちょっと電話しよう………やぁゼイユさんどうしたんだい?…うん、うん……ふーん…おもしろいことを考えたね?分かった校長権限で何とかしてみよう、また電話するよ」
ガチャリ、と受話器を置いたシアノは「ふーっ…」と息を吐きながら椅子の背もたれに身を預ける。
「こ、校長…ゼイユさんが…なにか?」
「んっふっふ…ナイショ!あぁそうだ、皆に朗報があるよ!スグリ君のオタチ君だけどね…オオタチに進化してるんだってwww」
「なっ…!!?」
「タスケテ…」
「うそだろ…」
「より強くなって問題起こすじゃないですか!」
「(学内治安が)もうだめだぁ…おしまいだぁ…」
教師陣に戦慄が走る中、シアノはゼイユから頼まれたことを実行するため、パソコンを開き、管理者権限で『ある処理』を行う。
(ま、本来コレはやっちゃいけないけど…僕が直接オオタチ君に会うってワケにはいかないからね…さぁて頼んだよ!)
◆◆◆
一方3日後キタカミの里――
ギャーハハハ!見ろよイイネイヌ!このバイク時速200キロ出るようになったぜぇ!!走ってる途中で負荷に耐えかねて自爆するけどなぁ!!!
「イイネ!!」
あ、どうもオオタチです。見てくれこの『ハーレーダ〇ッドソン風オオタチカスタムバイク』!!ヒューッ!イカすぜぇ!!!あん?安全装置だぁ?バッキャロウ!んなもんチキン野郎がやるこった!!!漢は黙ってリミッターぶっ壊すんだよゲヘヘヘヘヘ!
ゼイユが来てからあれから3日。相も変わらず食っちゃ寝、爆走、どんちゃん騒ぎを繰り返す。あぁん?そーいやそろそろ新しい食いもんが欲しいな…よォお前ら!またスイリョクタウンに降りてたんまり美味いもんを貰いに行こうぜ!
「イーネッ!www」
「マッシシシ!ww」
「キチチチ!www」
はい!てなわけでやってきましたスイリョクタウンですが……ふむ、妙だな…人の気配がしねぇな???おん?みんなして旅行にでも行ったかね?
…いや、いるなァ…?そこの建物の影にィ!いけマシマシラ!!ヘドロウェーブ!!
「マッシシシwwwマァッ……シィッ!!?」
マシマシラがヘドロウェーブを放つその直前…!上空から風の刃が俺たちを襲った…!?
こいつはエアスラッシュ!?敵襲か!?クソッ!キチキギス!空を見ろ!!誰がやりやがった!!なに!?誰もいねぇ!?
ここいらの野生ポケモン共は俺たちの支配下のはずだろうが!!それともトレーナーのポケモンか!?いいや違う、そんなホネのあるやつァいねぇ!!!
だとすれば…第三者か…!!ヤロウ…!まさか、アオイじゃあねぇだろうなァ!?
…チィッ…!イイネイヌ!匂いはどうだ!人間の匂いはするか!?
「……ヌ…!」
なに…?ハッ、そうかいそうかい…まぁた負けに来たかい…えェッ!?ゼイユさんよォ!!
いけ!イイネイヌ!そこの壁にどくづきだ!
「ヌンダフルッ!!!」
イイネイヌがボコンッ!と砕き割った壁の先にはその攻撃を寸でのところで回避したゼイユがいた。
「…っ…!そう!思ったより見つかるのが早かったわね…!」
ハッハァッ!!何を気取ってやがる!!追い詰められてんのが分かんねぇか!?俺たちの邪魔したんだ…今度は金だけじゃねぇ!ちっとばかし痛い目に――
「イヌグォ―ッ!!?」
あ?どしたイイネイヌ……って何ィッ!?
「マシ……シ…」
「キチ、チチ……」
マシマシラ!キチキギス!!テメェらもどうしたってんだ!何で倒れてやがる!!ゼイユのポケモンごときじゃやられねぇはずだろ!!
「ふ、フフン…!さすがのアンタもびっくりしたみたいね!」
追い詰めているはずのこちらにニヤリと笑って見せるゼイユ。なんだ…こいつ、なにしやがったんだ…!?
…!さらにちょいと冷静になれば辺りに複数のポケモンの気配を感じる…その数…4体…!?チッ…囲まれてやがる…
「………あとはアンタたちに任せたから!!」
なに…?『アンタたち』って……!
なっ!!?
気配を手繰ってぐるりと見渡す、そして分かった俺を囲む4つの気配は…
ハッ…なんだよ、久しぶりじゃあねぇか…
えェッ!?メガヤンマ!ニョロボン!ウッウ!コノハナ…が進化したダーテング!!
「メガヤァン……ッ!!」
さっきともっこ達がやられたのはお前たちのせい…ってか…
クックック…感動の再会じゃあねぇかよ…!!なァ!?そう殺気立つなよ…!!俺もイライラするだろうが…!!
俺はそのまま右手に炎を、左手に氷を纏わせてギリッとメガヤンマを睨みつけてやった。