オオタチですか 作:メガオオタチ
ゼイユは安全が確保できる少し離れた位置からその様子を見ていた。
今スイリョクタウンはオオタチの放ったほのおのパンチとれいとうパンチの号砲を皮切りとして、派手な市街地戦となっていたのである。
そして今オオタチが戦うかつての仲間たちはゼイユが校長であるシアノの協力を得て、スグリのパソコンボックスからメガヤンマ、ニョロボン、ウッウ、ダーテングをこっそりと引き出し、送ってもらっていたのだ。
その4匹をオオタチにぶつけたのは半ば賭けであった。オオタチが意に介さず彼らを屠りきればこの作戦は失敗するし、その後の処理がどうなるか想像もできない。が、スグリが『ああいう状態』の今、オオタチの心を揺さぶってどうにかするにはこの4匹に託すほかないと考えたのだった。
「…でも、スグもボックスの奥深くにこの子達を封印してたのに…動きは全然落ちてない…むしろ強くなってる…」
ダーテングがおいかぜで味方を補助し、更にそのおいかぜにウッウがこごえるかぜを乗せて威力を上げ、更にオオタチの素早さを奪う。そうして出来た隙にビルドアップを積んだニョロボンが肉薄し、インファイトを叩き込む。それに対応してオオタチが対ニョロボン用のかみなりパンチを打とうとすれば、メガヤンマが上空からエアスラッシュでその動きを許さず阻害する。
「これが…この子たちの連携…!これならオオタチも倒せるわね…!」
ゼイユはそう思って口にした。しかし――
「え…」
ドパァンッッ!!!と大きく響いたパンチの音がその甘い考えを吹き飛ばした。
◆◆◆
アイツらとの戦いが始まってから、俺は数で押されていた。
ダーテングの補助、ウッウから受けた素早さの阻害…!こういう連携も出来るようになったのかよ…!
「ニョロォ!ボンッ!!」
さらにニョロボンが追撃で来やがった…!ここはほのおのパンチやれいとうパンチじゃなく効果抜群のかみなりパンチで…!
「メェガ!!」
「タチッ!?」
何ッ!?グゥオオ…!!!
目の前の事に集中していたからか上空のメガヤンマからのエアスラッシュに対処できない!?クソッ…!このままじゃニョロボンのインファイトを喰らっちまう…!
迫る拳を前にエアスラッシュのひるみで動けない…!?
クソッ…!!クソクソクソォッ!!!俺は…!このキタカミで一番強いんだぞ!!強くなったんだッ!!!テメェらなんかに、テメェらなんかにィィッ!!!!
ドパァンッッ!!!
そしてニョロボンが放った拳はものの見事に俺に直撃した。
「タァチィッ…!!」
なぁんちゃってぇッ…!!
「ニョロ!?ボッ……!?」
ギャハハハハ!!何が起こったって顔してるなァ?ニョロボン!!その顔が見たかったぜぇ!?
紙一重でギリギリで当たらなかったニョロボンのインファイトとは違い、俺の拳は…かみなりパンチはニョロボンの腹に深くぶちかまされていた。
「ボ……ン………」
「メ…メガヤァン!?」
ニョロボンは脂汗を掻きながらその場に力なく倒れ込む。さァて?まずは1匹撃破ァ…!助かったぜぇ?効果抜群のかくとうタイプのワザを使えるニョロボンを先に倒せたからなァ!
「…!ヤン!メガヤァン!!」
「ダ、ダーッ!」
「ウッウー!」
おうおう、こいやァ!!テメェらの鼻っ柱…まとめてへし折ってやんよ!!
◆◆◆
その後の戦いは凄惨な物であった。
ほのおのパンチとれいとうパンチを片腕ずつに宿したまま、くさタイプのダーテングに容赦なく叩き込む。それを助けようとウッウがなみのりで波に攫おうとすれば、れいとうビームでたちまち波は凍り、この氷にウッウも足を取られる。
ウッウが珍しくギョッとした顔をすれば、それを隙に今度はオオタチは動けないウッウにかみなりパンチを連打する。
なんとか妨害しようとメガヤンマがすてみタックルでオオタチに肉薄すれば動けなくなっていたニョロボンを掴みあげ、肉壁にする。
そんな状況を見ていたゼイユは絶望と後悔に苛まれた。
「なに、よ……これ…ここまでやる必要があるの…!?」
ゼイユがふと横を見れば、オオタチに従っているはずのともっこ達でさえ、その光景に恐怖していた。
そうしているうちにオオタチを鎮めるための策であった4匹は地面に伏して戦闘不能となっていた……。
いた。の、だが…
「メガ……!」
メガヤンマが6本の足で、立ち上がったのである。
出で立ちは傷だらけで、とっくに限界を迎えているはずだった。
「タチィ…?タッチャァッ!!」
「メガ…!ヤンッ!!」
立ち上がったその様が気に食わないのか、オオタチはきあいパンチやかえんほうしゃ、しねんのずつきなどをメガヤンマに叩き込む。
殴り飛ばされ、跳ね飛ばされ、または地面に叩きつけられ。それでも、それでもなお、メガヤンマは立ち上がり続ける。
「タチィ…!?」
「…ガ…ヤン…ッ!!」
「……ッ…タチィ…!!」
ここにきて、初めてオオタチは一歩後退った。
◆◆◆
目の前のメガヤンマが、また立ち上がってくる。
「メガ…ッ!!」
あんなボロボロの状態なのに。立ち上がるのすらやっとなのに飛び上がってまた俺に攻撃を仕掛けようとしてくる。
だが、そんな状態の攻撃なんか、俺には…
「メッ…ガァッ…!」
当たらない。
「ヤンッ…!!」
当たらない。
「ヤンマァッ!!!!!」
届かない。
………。
ふと、遠い記憶を思い出す。あぁ…そういえば俺も初めて鬼さまと戦った時…同じだったな…
圧倒的力の差だったのに『誰か』の為を思えば何度でも諦めずに戦えたんだっけ。
『誰か』の為……か。
周りからジャリッ…っと音がして見渡せば、倒れたはずのニョロボンが片膝をつきながらも何とが立ち上がろうとし、ウッウは這いつくばってでもメガヤンマの援護をしようと技をなんとか出そうとしている。ダーテングは壁を杖代わりに立ち上がり、よろめきながらも闘志を消さず、こちらを睨む。
なんだ…お前らも諦めてねぇってか…
…あぁ…ちょっと前までは俺も『ソッチ側』だったのにな…結局俺は荒れて、ただ逃げ出して…イライラを手当たり次第にぶつけてただけだけになってたな…
「ヤン…メガヤン…」
あ?何?お前らもスグリに置いて行かれたって…?
………。
ん?
なんでそれ先に言わねぇんだよ!?スグリが俺を消そうとかそういうんじゃないのね!?
いやそっか!?そうだもんな!?スグリじゃなくてなんか…ゼイユがお前らを運んできたっぽいし!?
あぁぁもう…!!クソッ…!興が削がれたぜ……おい!キチキギス!お前に持たせてるバッグからかいふくのくすりとか出してくれ、こいつらを回復させる…話はそれからだ…
その後怪我の手当てをしてからメガヤンマ達と共に鬼が山の…今の俺たちのアジトへと場所を移す。なんか急に戦いが終わってびっくりしていたゼイユもばれないようにこっそりと付いてきているが…いや、バレバレなんよ。なんやねん木の枝を2本持って…ウソッキーかよ
…で、メガヤンマ達から『あれから』について聞いた。
結局俺を置いて行ったスグリはあの後鬼さま関係の事でおかしくなり…世間一般で言う闇落ちみてぇなことになってるらしい。んで、鬼さま…オーガポンとやらはアオイにゲットされた…と。
ポケモンを次々育成し、『勝つための』パーティを組んでなんとブルーベリー学園のチャンピオンになったってんだから驚きだァ…
はー…どーすっかねぇ…思いつく限り最悪の状態じゃん。俺を置いて行ったことはクッソ腹立つけど…俺が止められなかったのも事実だしなぁ……こりゃあグレてる場合じゃねぇか…
「メガヤァン…」
ん?あぁそーだな…いずれにせよこのままじゃあいかん。
メガヤンマ達も何とかしたかったけどボックスに押し込められちゃあ何も出来ねぇってことだったし、そんな時に俺が荒れてるってゼイユから聞いて俺を殴りに行くのにキタカミに帰ってきたってことだし…ここいらで俺らでどうにか出来ねぇか…?
………。
しかし何から手を付けるか…正直今すぐスグリと仲直り、は無理だと思うんだ。スグリの現状もそうだし、俺の心的にも…俺だけじゃない…こいつらの心的にもな…
だが…だが、こうやっている時間がもったいなく感じる…何かないのか…?俺たちが出来ること…!
と、そうやって悩んでいるとともっこたちが恐る恐る手を上げる。
「マ、マシ…」
「ヌンダ!」
「チチス」
あ?なんだって?そーだな。俺たちの最終目標は鬼さま……いや、スグリを倒したアオイに勝つことだな。あのふぁっきんパオジアンを含めてな。
「チスチス」
「ヌンダッフル!!」
ん?「なら同じ土俵に立てばいい」???どゆこと?種族値は違ってるから――
「マッシッシ!」
は?……「アオイのいるパルデアに行って、あいつの強さを学んで取り込めばいい」…????
えーとつまりだな???アオイはパルデア出身でそこでポケモンバトルをしてきたんだからそこで修行すれば種族値の話は置いといて…力になるってこと?
「マッシ!」
「イーネ!」
「チース!」
…………。
フゥン………。
メガヤンマ参謀ッ!今の意見はどう思うか!
「メガッ!?……ヤンマッ!!」
ふむ、「確かに我々の知らないポケモンと戦えれば知識や経験値になる」、か
「ボン!ニョロボッ!!」
ふむふむ、そうだな。新しいワザもあるかもしれんな
「ダダッ!ダー!」
おぉ!そうだな!テラスタルについても俺たちで使えるかもしれん!!
「ウッウー!」
あぁはいはいウッウーね
………よぉし…!そんなら乗り込むか…パルデア…!!!
「タァチ…!タチタチッ!!!」
「ヤンマッ!!」
「ボォンッ!!」
「ダァーッ!!」
「ウッウー」
「ヌンダァッ!!」
「マァシシッ!!」
「キギースッ!!」
待ってろよスグリ…!俺たちは必ず強くなる…!!
今は無理だけど、またいつかバカみたいに笑って、先生に一緒に怒られたり(主犯:オオタチ)、金稼いだり(主犯:オオタチ)、そんで……
一緒にバトル、しようぜ…!!
俺たちの戦いはこれからだッ!!!!
【第一部・完】
ところでパルデアってどうやって行くん???
◆◆◆
そのころ、パルデア地方・オレンジアカデミー
ある一人の『少女』が…『予感』を感じ取っていた…
「ッ……!!この感覚…ッ!!来るね…!?なんだか強い気配が…!!あぁ…楽しみだなぁ…!『バトル』したいな…!!!」