オオタチですか   作:メガオオタチ

29 / 29
第29話 誰が為に

 

 ゼイユは安全が確保できる少し離れた位置からその様子を見ていた。

 今スイリョクタウンはオオタチの放ったほのおのパンチとれいとうパンチの号砲を皮切りとして、派手な市街地戦となっていたのである。

 そして今オオタチが戦うかつての仲間たちはゼイユが校長であるシアノの協力を得て、スグリのパソコンボックスからメガヤンマ、ニョロボン、ウッウ、ダーテングをこっそりと引き出し、送ってもらっていたのだ。

 

 その4匹をオオタチにぶつけたのは半ば賭けであった。オオタチが意に介さず彼らを屠りきればこの作戦は失敗するし、その後の処理がどうなるか想像もできない。が、スグリが『ああいう状態』の今、オオタチの心を揺さぶってどうにかするにはこの4匹に託すほかないと考えたのだった。

 

「…でも、スグもボックスの奥深くにこの子達を封印してたのに…動きは全然落ちてない…むしろ強くなってる…」

 

 ダーテングがおいかぜで味方を補助し、更にそのおいかぜにウッウがこごえるかぜを乗せて威力を上げ、更にオオタチの素早さを奪う。そうして出来た隙にビルドアップを積んだニョロボンが肉薄し、インファイトを叩き込む。それに対応してオオタチが対ニョロボン用のかみなりパンチを打とうとすれば、メガヤンマが上空からエアスラッシュでその動きを許さず阻害する。

 

「これが…この子たちの連携…!これならオオタチも倒せるわね…!」

 

 

 ゼイユはそう思って口にした。しかし――

 

「え…」

 

 ドパァンッッ!!!と大きく響いたパンチの音がその甘い考えを吹き飛ばした。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 アイツらとの戦いが始まってから、俺は数で押されていた。

 ダーテングの補助、ウッウから受けた素早さの阻害…!こういう連携も出来るようになったのかよ…!

 

「ニョロォ!ボンッ!!」

 

 さらにニョロボンが追撃で来やがった…!ここはほのおのパンチやれいとうパンチじゃなく効果抜群のかみなりパンチで…!

 

「メェガ!!」

 

「タチッ!?」

 

 何ッ!?グゥオオ…!!!

 目の前の事に集中していたからか上空のメガヤンマからのエアスラッシュに対処できない!?クソッ…!このままじゃニョロボンのインファイトを喰らっちまう…!

 

 迫る拳を前にエアスラッシュのひるみで動けない…!?

 クソッ…!!クソクソクソォッ!!!俺は…!このキタカミで一番強いんだぞ!!強くなったんだッ!!!テメェらなんかに、テメェらなんかにィィッ!!!!

 

 

 

 ドパァンッッ!!!

 

 

 

 そしてニョロボンが放った拳はものの見事に俺に直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タァチィッ…!!」

 

 なぁんちゃってぇッ…!!

 

「ニョロ!?ボッ……!?」

 

 ギャハハハハ!!何が起こったって顔してるなァ?ニョロボン!!その顔が見たかったぜぇ!?

 紙一重でギリギリで当たらなかったニョロボンのインファイトとは違い、俺の拳は…かみなりパンチはニョロボンの腹に深くぶちかまされていた。

 

「ボ……ン………」

 

「メ…メガヤァン!?」

 

 ニョロボンは脂汗を掻きながらその場に力なく倒れ込む。さァて?まずは1匹撃破ァ…!助かったぜぇ?効果抜群のかくとうタイプのワザを使えるニョロボンを先に倒せたからなァ!

 

「…!ヤン!メガヤァン!!」

 

「ダ、ダーッ!」

 

「ウッウー!」

 

 おうおう、こいやァ!!テメェらの鼻っ柱…まとめてへし折ってやんよ!!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 その後の戦いは凄惨な物であった。

 ほのおのパンチとれいとうパンチを片腕ずつに宿したまま、くさタイプのダーテングに容赦なく叩き込む。それを助けようとウッウがなみのりで波に攫おうとすれば、れいとうビームでたちまち波は凍り、この氷にウッウも足を取られる。

 ウッウが珍しくギョッとした顔をすれば、それを隙に今度はオオタチは動けないウッウにかみなりパンチを連打する。

 なんとか妨害しようとメガヤンマがすてみタックルでオオタチに肉薄すれば動けなくなっていたニョロボンを掴みあげ、肉壁にする。

 

 そんな状況を見ていたゼイユは絶望と後悔に苛まれた。

 

「なに、よ……これ…ここまでやる必要があるの…!?」

 

 ゼイユがふと横を見れば、オオタチに従っているはずのともっこ達でさえ、その光景に恐怖していた。

 

 

 そうしているうちにオオタチを鎮めるための策であった4匹は地面に伏して戦闘不能となっていた……。

 

 

 

 

 

 

 いた。の、だが…

 

 

 

「メガ……!」

 

 

 メガヤンマが6本の足で、立ち上がったのである。

 出で立ちは傷だらけで、とっくに限界を迎えているはずだった。

 

「タチィ…?タッチャァッ!!」

 

「メガ…!ヤンッ!!」

 

 

 立ち上がったその様が気に食わないのか、オオタチはきあいパンチやかえんほうしゃ、しねんのずつきなどをメガヤンマに叩き込む。

 殴り飛ばされ、跳ね飛ばされ、または地面に叩きつけられ。それでも、それでもなお、メガヤンマは立ち上がり続ける。

 

「タチィ…!?」

 

「…ガ…ヤン…ッ!!」

 

「……ッ…タチィ…!!」

 

 ここにきて、初めてオオタチは一歩後退った。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 目の前のメガヤンマが、また立ち上がってくる。

 

「メガ…ッ!!」

 

 あんなボロボロの状態なのに。立ち上がるのすらやっとなのに飛び上がってまた俺に攻撃を仕掛けようとしてくる。

 

 だが、そんな状態の攻撃なんか、俺には…

 

 

 

「メッ…ガァッ…!」

 

 

 

 当たらない。

 

 

 

「ヤンッ…!!」

 

 

 

 当たらない。

 

 

 

「ヤンマァッ!!!!!」

 

 

 

 届かない。

 

 

 

 

 ………。

 ふと、遠い記憶を思い出す。あぁ…そういえば俺も初めて鬼さまと戦った時…同じだったな…

 圧倒的力の差だったのに『誰か』の為を思えば何度でも諦めずに戦えたんだっけ。

 

 『誰か』の為……か。

 

 周りからジャリッ…っと音がして見渡せば、倒れたはずのニョロボンが片膝をつきながらも何とが立ち上がろうとし、ウッウは這いつくばってでもメガヤンマの援護をしようと技をなんとか出そうとしている。ダーテングは壁を杖代わりに立ち上がり、よろめきながらも闘志を消さず、こちらを睨む。

 

 なんだ…お前らも諦めてねぇってか…

 

 …あぁ…ちょっと前までは俺も『ソッチ側』だったのにな…結局俺は荒れて、ただ逃げ出して…イライラを手当たり次第にぶつけてただけだけになってたな…

 

 

「ヤン…メガヤン…」

 

 

 あ?何?お前らもスグリに置いて行かれたって…?

 

 

 ………。

 ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんでそれ先に言わねぇんだよ!?スグリが俺を消そうとかそういうんじゃないのね!?

 いやそっか!?そうだもんな!?スグリじゃなくてなんか…ゼイユがお前らを運んできたっぽいし!?

 

 あぁぁもう…!!クソッ…!興が削がれたぜ……おい!キチキギス!お前に持たせてるバッグからかいふくのくすりとか出してくれ、こいつらを回復させる…話はそれからだ…

 

 その後怪我の手当てをしてからメガヤンマ達と共に鬼が山の…今の俺たちのアジトへと場所を移す。なんか急に戦いが終わってびっくりしていたゼイユもばれないようにこっそりと付いてきているが…いや、バレバレなんよ。なんやねん木の枝を2本持って…ウソッキーかよ

 

 

 

 …で、メガヤンマ達から『あれから』について聞いた。

 結局俺を置いて行ったスグリはあの後鬼さま関係の事でおかしくなり…世間一般で言う闇落ちみてぇなことになってるらしい。んで、鬼さま…オーガポンとやらはアオイにゲットされた…と。

 ポケモンを次々育成し、『勝つための』パーティを組んでなんとブルーベリー学園のチャンピオンになったってんだから驚きだァ…

 

 はー…どーすっかねぇ…思いつく限り最悪の状態じゃん。俺を置いて行ったことはクッソ腹立つけど…俺が止められなかったのも事実だしなぁ……こりゃあグレてる場合じゃねぇか…

 

「メガヤァン…」

 

 ん?あぁそーだな…いずれにせよこのままじゃあいかん。

 メガヤンマ達も何とかしたかったけどボックスに押し込められちゃあ何も出来ねぇってことだったし、そんな時に俺が荒れてるってゼイユから聞いて俺を殴りに行くのにキタカミに帰ってきたってことだし…ここいらで俺らでどうにか出来ねぇか…?

 

 ………。

 

 しかし何から手を付けるか…正直今すぐスグリと仲直り、は無理だと思うんだ。スグリの現状もそうだし、俺の心的にも…俺だけじゃない…こいつらの心的にもな…

 だが…だが、こうやっている時間がもったいなく感じる…何かないのか…?俺たちが出来ること…!

 

 

 と、そうやって悩んでいるとともっこたちが恐る恐る手を上げる。

 

「マ、マシ…」

「ヌンダ!」

「チチス」

 

 あ?なんだって?そーだな。俺たちの最終目標は鬼さま……いや、スグリを倒したアオイに勝つことだな。あのふぁっきんパオジアンを含めてな。

 

「チスチス」

「ヌンダッフル!!」

 

 ん?「なら同じ土俵に立てばいい」???どゆこと?種族値は違ってるから――

 

「マッシッシ!」

 

 は?……「アオイのいるパルデアに行って、あいつの強さを学んで取り込めばいい」…????

 

 えーとつまりだな???アオイはパルデア出身でそこでポケモンバトルをしてきたんだからそこで修行すれば種族値の話は置いといて…力になるってこと?

 

「マッシ!」

「イーネ!」

「チース!」

 

 

 …………。

 

 

 フゥン………。

 

 

 メガヤンマ参謀ッ!今の意見はどう思うか!

 

「メガッ!?……ヤンマッ!!」

 

 ふむ、「確かに我々の知らないポケモンと戦えれば知識や経験値になる」、か

 

「ボン!ニョロボッ!!」

 

 ふむふむ、そうだな。新しいワザもあるかもしれんな

 

「ダダッ!ダー!」

 

 おぉ!そうだな!テラスタルについても俺たちで使えるかもしれん!!

 

「ウッウー!」

 

 あぁはいはいウッウーね

 

 

 

 ………よぉし…!そんなら乗り込むか…パルデア…!!!

 

 「タァチ…!タチタチッ!!!」

 

 

「ヤンマッ!!」

「ボォンッ!!」

「ダァーッ!!」

「ウッウー」

「ヌンダァッ!!」

「マァシシッ!!」

「キギースッ!!」

 

 

 

 待ってろよスグリ…!俺たちは必ず強くなる…!!

 今は無理だけど、またいつかバカみたいに笑って、先生に一緒に怒られたり(主犯:オオタチ)、金稼いだり(主犯:オオタチ)、そんで……

 

 

 一緒にバトル、しようぜ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちの戦いはこれからだッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 【第一部・完】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところでパルデアってどうやって行くん???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 そのころ、パルデア地方・オレンジアカデミー

 ある一人の『少女』が…『予感』を感じ取っていた…

 

「ッ……!!この感覚…ッ!!来るね…!?なんだか強い気配が…!!あぁ…楽しみだなぁ…!『バトル』したいな…!!!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生したらヒトカゲだった。しかも色違い(作者:リザードン大好きマン)(原作:ポケットモンスター)

交通事故で命を落とした俺が転生したのは、まさかの色違いのヒトカゲだった。▼森の中で目覚めたその日から、待っていたのは野生ポケモンとの命懸けの生存生活。ゲームの知識はあっても、ここはリセットの効かない現実だ。負ければ本当に死ぬ。▼目指すは最終進化のリザードン。そして、いつか大空を飛ぶこと。▼これは、逃げてばかりだった俺が、色違いのヒトカゲとしてもう一度生き直し…


総合評価:1601/評価:7.65/連載:23話/更新日時:2026年07月23日(木) 22:03 小説情報

主人公じゃない私のポケモンワールド異聞録(作者:時緒)(原作:ポケットモンスター)

死んだら異世界転生した。転生先はカントー地方マサラタウン。性別は女で続投。▼世間のトレンドに乗った形とはいえスーパーマサラ人ほどの身体能力は無いし、ポケモンの言葉が分かるわけでもないし、超能力者でも高貴な一族の末裔でも勇者の生まれ変わりでもない。何より肝心のポケモン知識がお粗末すぎて、転生ものでお約束の俺TUEEE展開なんてものは夢のまた夢。▼せめて主人公達…


総合評価:2161/評価:8.55/連載:33話/更新日時:2026年10月05日(月) 07:00 小説情報

転生サトシの旅路(作者:ナノブ)(原作:ポケットモンスター)

これは、アニポケのサトシが一生を終えた記憶と、アニポケを見ていた人の記憶両方を持った転生者サトシが、波導と呼ばれるチートを駆使して行く旅路を記したもの。▼サトシ至上主義が書くポケモン小説です。▼作者はポケモンライト勢であり、にわかです。


総合評価:4108/評価:9.17/連載:36話/更新日時:2026年06月27日(土) 18:00 小説情報

とあるリオレウスの異種族ハーレム物語(作者:元洋菓子職人II)(原作:モンスターハンター)

 若きリオレウスは番を探していた。なんてことない普通の生態系の一つでしかなかった。▼ 「どうしてこうなった…」▼ 頭を抱え、目の前を見ればそこにいるのはリオレイアだけではない。他の飛竜種の雌達がリオレウスの前で眠りについている。全員、彼の番である。▼ これはとあるリオレウスがとんでもない異種族ハーレムを形成し、生態系をめちゃくちゃにする物語である。


総合評価:4460/評価:8.68/連載:33話/更新日時:2026年10月07日(水) 12:00 小説情報

ハグキ転生(作者:増えるヤバイ奴)(原作:ワンパンマン)

ワンパンマンに登場する怪人、ハグキになっちゃった転生者が生き抜こうと頑張る話。▼ONE版、村田版ともに最新話までのネタバレを含みます。▼原作既読推奨です。▼【挿絵表示】▼↑主人公ハグキの人間擬態形態『タベル』のイメージです。


総合評価:5519/評価:8.63/連載:21話/更新日時:2026年09月13日(日) 17:17 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>