オオタチですか   作:メガオオタチ

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第8話 鬼さま

 

 んん、皆さまごきげんよう。敏腕スカウトマンのオタチです…本日はこちら、目の前にいる伝説(多分)のポケモン、鬼さま(暫定)のスカウトを御覧に入れましょう。

 

 ンでは早速……お前も鬼にならないか?

 

「ぽ?」

 

 あぁ、ごめんごめん。別の作品だったわこれ…ノーカンね?さて、気を取り直して…

 

 スグリっていう将来有望なトレーナーがいるんだ。どうか力を貸してやってくれんか?

 いや、違うな…スカウトは大事だが…えーとな、うちのスグリがあんたに…鬼さまに憧れてるんだ。仲間にならなくても手ほどきやあんたが背中を預けていいか素養があるか直接会ってやってくれんか?

 

「ぽに………ぽにお!」

 

 なんですと?「直接会ってないけどあの子は違う」…ですと?

 …お、お言葉ですが!何が違うって言うんでしょう!!?そりゃあ今は手持ちも全然いないし、トレーナーとしてもまだまだなのはわかりますが…!!

 

「ぽにぽに」

 

 は…?「もっと強い人が来るのを待つ」…?

 そ、れは……これから育つっていうことじゃだめ、なのか…?

 

「ぽに!ぽぉにぽに!!」

 

 …「魂的に惹かれる人がいつか来る」…

 

「ぽに…ぽにぽに!」

 

 …「それに、昔から自分を知ってる人より、新しく…正しく?知ってくれる人がいい」…?

 な、なぁ…チャンスすら…ない、のか?いや、分かってるさ!憧れだけで夢が掴めるようなもんじゃねぇのは分かってる!!だけど!お前はまだうちのスグリと話したことないだろ!?

 毎晩遅くまで「鬼さまはすごい」って聞かされたことねぇだろ!?書類選考の状態で落とすんじゃなくてせめて面接して素養があるかくらい見てくれても!!!

 

「ぽにぃ…ぽにお!」

 

 ―――。

 

 は?

 

 お前、いま…なんつった?

 

 

「ぽ?ぽにぃぽにお」

 

 ………。おい、川原へ行こうや。決闘だコラ!!!

 いいか!俺が勝ったらせめてスグリの素養をちゃんと真正面から見てやれ!!そんな上っ面な感じでNG出されんのはスグリを…大事なご主人を持つ俺にとっちゃあ我慢ならねぇ!!!

 

「ぽに?ぽにお♪」

 

 

◆◆◆

 

 

 先ほどまで見えていた月が隠れ、曇り空が広がる落合川原。ここで、二匹のポケモンが対峙するように向かい合っていた。

 

 一方はすました顔で、微笑みすら感じさせる様子で、るんるんと棍棒といじっているのに対し、もう一方…オタチは眉間にしわを寄せ、ギリリッと、歯を食いしばっている。

 

「…ッ…タチッ!!」

 

 勢いよくでんこうせっかで飛び出したのはオタチであった。

 両腕に炎を纏い、ほのおのパンチで迫る。

 

 しかし緑の鬼のようなポケモン…〝オーガポン〟に拳が届く前に、手に持った棍棒で軽く受け止められてしまう。

 

「タチ!?」

 

「ぽーに、お♪」

 

「!?」

 

 そのまま笑顔で受け止めていた棍棒をオタチを地面に降ろすように軽く振り払う。

 いまだ笑顔のままのオーガポンにあっけに取られているオタチだったが、足を踏ん張り、みだれひっかきで手数を増やし、何とか1発でも当てようとする…が、

 

「ぽに♪ぽに♪」

 

 今度は受け止めることも無く飄々と右に左に、上に下、ことごとく見切られ、軽業のように回避されていく。

 

「…タチッ…!タチタチ!?ターチ!!!」

 

 戦いの最中、オタチは必死の形相でオーガポンに語り掛ける。人間にはその言葉を理解できないが、ただひたすら、何かを説得しているようだった。

 

「ぽにー…ぽにお♪」

 

「………!!タァチャァッ!!!」

 

 再び拳が炎を…そして怒りを宿し、肉薄するも、オーガポンは瞬き1つもせずに棍棒で受け止めたり、ワザと紙一重で躱していく。

 

「タチ…!」

 

 当たらない。

 

「タチッ…!!」

 

 当たらない。

 

「タチィッ!!!!!」

 

 届かない。

 

 次第に攻めているはずのオタチは息が上がっていき、顔色が悪くなっていく。ずっと休む間もなく技を連発するも、まるでオーガポンは応えていない。それどころか涼しい顔をして余裕の表情を浮かべているのだ。

 

 

 

 それから2時間、オタチは攻撃を続けていた。

 

 

 

 だが、結局ただの一度も有効な打撃を与えていないし、もはや技を出す力も底をついている。まさにわるあがきの状態だった。

 

「ぽに……ぽぉぉ…」

 

 くあぁ、とあくびをするオーガポンの目の前には今にも倒れそうなオタチが何とか次のわるあがきを繰り出そうとしていた。

 

「ぽぉに……ぽに?」

 

 さすがに哀れに思ったのか、オーガポンはここでやめるように言い、オタチに踵を返し山へと帰ろうとした。

 

 

「…!タ、タチ…!!」

 

 立ち去ろうとするオーガポンの姿に、オタチは顔を歪ませ、最後の力を振り絞る。

 

 

 身体を奮い立たせ、もう限界で出ないはずのでんこうせっかの構えを取る。

 拳は硬く握りしめ、炎をもう一度燃え上がらせようと枯渇した力を入れる。

 

 

 

 

 

 オタチは限界のその先を掴もうとしていた。

 

 

 

 

 

「タァァチィィィッ!!!」

「ぽに…っ!?」

 

 

 

 刹那。でんこうせっか…いや、電光石火の如くオーガポンに迫り。

 再燃。オタチのその右手の拳に燃え盛った滾る炎で修羅の一撃を叩き込もうとする。

 

 

 

 

「っ…!ぽぉに、おっ!!!」

 

「タッ―――――…」

 

 

 

 

 

 だが、だがしかし…届かない。

 炎の拳が届くその前に、オーガポンのツタこんぼうが横薙ぎにオタチを叩き飛ばしていたのだ。

 

 圧倒的な…種族としての差。オタチとオーガポンという代えがたきその差が決着の大きな要因だった。

 

「ぽ、ぽに……!」

 

 しかしだ。これまで避けるか、いなすかの二択であったオーガポンからツタこんぼうという技を引き出すことが出来たという事実は大きく、また、それがオーガポンの動揺を誘ったのは間違いない。

 

 ………。

 

 次第に曇り空からは雫がぽつり、ぽつりと落ちてやがて雨となる。

 さながらオタチの敗北を示すかのようなその雨はそれほど強くはなかったが、動けないオタチにとっては何よりも冷たく、そして…痛い雨だった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 …………。

 全身が痛い。田舎の雨の匂い、草の香りと泥の感触。冷たい雨。もうなーんにも力が残っちゃいねぇ…

 負けた、か…これが伝説のポケモンの力かぁ…あの熊ヤロウなんかよりももっと上だ…

 種族値ってぇ奴ぁ残酷だぜ……

 

 ごめんなぁスグリ。面接にすら届かせてやれないで…これじゃあ敏腕スカウトマン失格だわ…

 

 

 

 あーあ…鬼さま、か…ホンット俺がお前だったらよかったのになぁ…

 

 

 いいなぁ…その強さ…

 

 

 羨ましい…ぜ……

 

 

 俺に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺に、力が…あれば…なぁ…

 

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