この素晴らしい楽園に青春―アオハル―を!?《このすば120%ギャグリメイク》 作:ぴこたんすたー
「えっと、お姉さん。コイツのリサイクルは置いといて、とりあえず冒険者になりたいんですが?」
血走った鬼の目から、爽やかイケメンスタイル(つもり)になった俺は、カウンターに片ひじをつき、美人の店員に色目を使う。
「それでしたら、お一人様、千エリスになります」
指で丸い輪っかを作り、金の催促をする金貸し屋の雰囲気に化けた店員に一歩退いた。
異世界でも、
俺は店員に会話を聞かれないよう、ひそひそと小声でアクアに問いかける。
「……おい、アクア。お前、金持ってるか?」
「そんなのないわよ。強引にここに連れて来られたんだから」
「ちっ、ゲームだったら初期装備とともに、最低限の金があるのにな」
「ムッフッフ」
俺の反応を見て、アクアが誇らしげな態度をとる。
何か悪いもんでも拾い食いしたか?
「ここは、この異世界で神と崇められている女神の本気とやらを見せてあげるわ」
「何だ、ついに脱ぐ気になったか?」
「人を脱皮虫のように言わないでよ、ヒキニート!」
「まあ、いいわ。そこのプリーストさーん♪」
アクアの空中三回転捻りが見事に決まり、一人の女性信者の通行を止める。
アクセルの街だけにトリプルアクセルで、高得点間違いなしだな。
「私はアクシズ教団が崇めている女神のアクア。私の信者なら、お金を貸して貰えないでしょうか?」
「すみません。わたくしはエリス教団の教徒なんですが……」
「……いいから、カネくれ、カネくれ……ボソボソ……」
「ひいっ、お金なら出しますから、身ぐるみ剥がすのだけはご勘弁を‼」
教徒が逃げるように
「どうよ。私の力さえあれば他の教団からだって、お金をくれるのよ」
「半分、脅迫だったような気がしたが……」
分かるぜ、その気持ち。
この
真顔で『私は死んでしまった若者たちを救うために現れた親愛なる女神です、てへぺろ♪』とか平気で言う、怪しい宗教団体のようなヤツだからな。
「まあ、いいや。お姉さん、これは約束していたデートの資金だ」
「はあ……。では登録について、ご説明しますね」
──街の外にいるモンスターを討伐するほかに、何でも屋の名前を持つ冒険者。
その冒険者には、それぞれの職業というものがあるらしい。
「ではサトウカズマさん、この冒険者カードに触れて下さい。あなたのステータスや適した職業が分かります」
「ふっ、お姉さん。俺のカードに触れると惚れてしまうぜ」
触れた途端に、光出すカードに見慣れない数列が並ぶと、お姉さんが驚きの表情を
ふっ、さぞかし俺の高貴なるステータスにビビりでもしたか。
「えっと、力、体力、魔法力は普通で、幸運の能力だけは非常に高いですね。でも冒険者には必要性がなくて……これじゃあ、ただの冒険者にしかなれませんが……」
「プークスクスー。運だけの職業なら、あんたには遊び人にしか向いてないわよ」
「まあ、モンスターを倒し、経験値を貯めてレベルが上がれば、転職の道もありますから、そう気を落とさないで下さい」
お姉さんの優しい気遣いに、俺の心が満たされる。
そうさ、俺には明日があるさ。
遊び人だって、立派な職業のはずだ。
「なっ、何者なのですか。あなたはー!!」
そんな凹んだ俺の耳に、お姉さんの甲高い声が響く。
何だ、ここは仰天パニックルームじゃないぞ。
「全てのステータスが平均を余裕に越えていまして、これなら魔法使いじゃなくて、他の上級職にでもなれますよ!」
「まあ、私は女神だから当然よ。この際だから、アークプーリストにでもなってあげようかしら」
「ムカッ。この駄女神。職業も決まったことだし、仕事をするからさっさと来い!」
鼻高々になったアクアの態度にカチンときた俺は、その細腕を取っつかみ、お姉さんと別れを告げた。
「こうなったらモンスターを倒しまくって、レベル上げまくってやる!」
「何よー、まだ私の存在をアピールするための講義の時間がー‼」
「そんなもんより、仕事を優先だ。駄女神」
喚くアクアを引きずりながら移動する俺に、人生ボードゲームのような野心が芽生えつつあった。
「ご健闘をお祈りしていまーす」
お姉さん。
次会うときは、この俺は勇者かも知れないぜ。
サイン色紙、用意して待ってろよ。
キラリ。
(輝く白い歯)