この素晴らしい楽園に青春―アオハル―を!?《このすば120%ギャグリメイク》 作:ぴこたんすたー
****
──これは昔、昔のお話。
優秀で皆から高く評価された、キールと言う名前の男のアークウィザードがいました。
彼は恋愛には全く興味を持たずに、魔法の勉強ばかりしていましたが、とある街で散策の時に出会った、貴族の女性に惚れてしまいました。
しかし、貴族の令嬢という身分の差で、その恋は実らなく、彼はその恋を忘れるように、より一層、魔法の勉強を続けました。
その後、この国で最高クラスのアークウィザードとなった彼の元に、国の王様から、日頃から世話になっておるからと称えられ、何でも良いから、君の望む願いを一つだけ叶えてやろうと言ってきました。
すると、彼は答えました……。
私が万事叶えられなかった、お願いごとでも良いですかと……。
****
「──あれ、この先のページが破られていて、読めないぞ?」
「魔術師キールの三分の一クッキングの物語ですか」
「めぐみん、まさかと思うが?」
「この先はキールが編み出した、驚異のレシピが語られていました。だから私はそのレシピを覚えるために……」
「だからと言って、破いて食うなよな‼」
俺は本のページの追加を求めて、めぐみんに紙とペンを差し出すが、当のめぐみんはハンバーグを頬張りながら、知らぬふりだ。
「まあ、落ち着けカズマ。キールがどんな願い事を言って、さらにその後の未来についての答えはどの本にも記されていないのだ」
「えっ、ダクネスも、この話知ってるのか?」
「まあ、都会の本の売り場に行けば、わんさか並んでるさ。有名なお話だからな」
ダクネスがマグカップに入ったコーヒーをすすりながら、律儀に答える。
「キールがその好きな令嬢と一緒に、この街の近くにあるダンジョンで暮らしたとかいう説もあるらしいが、ダンジョンはよからない虫が多いからな」
「分かりみです。でもダンジョンでは、爆裂魔法は使えないからパスです」
「私も嫌だな。あそこは初心者専用のダンジョンになっていて、よわよわで刺激のないモンスターしかいないし……」
駄目だ、この二人から、これ以上の情報収集は無理だろう。
俺はギルドの奥のたき火ストーブで暖をとっていた、アクアにも訊いてみることにした。
「何、ダンジョンに潜る気になったの? ダンジョンでは盗賊も一緒の方が心強いわよ。
クリスと一緒に行ってみたら?」
「いや、今回は俺だけで挑戦してみようと思うんだ」
「えっ、ヒキニートが今度こそ引き潰されて、挽き肉に!?」
「そんなわけないだろ。俺もさ、様々なモンスターを倒して、レベルを上げて、クリスからも新たなスキルを教わったのさ。罠発見と罠解除をさ」
「何、幼女でも罠にはめて、やりたい放題、バルーン風船でも飛ばす気?」
何だよ、お嬢ちゃん。
イケメンの二次元アイドルより、おじさんの心を鷲掴みにするという、プロ野球の試合が好きなのか?
「いや、今回は俺一人の方がいいのさ。ダンジョンのモンスターは一年中、同じ種類だし、
アーチャーのキース(第19話参照)から、千里眼のスキルをゲットしたからさ、ちゃっちゃっとお宝見つけて、老後もウハウハ生活をおくるぜ」
「
「何それ? めぐみん、この世界にもテレビとかあんの?」
「まあ、洗面器に水をはって、深夜にだけ楽しめる道楽だがな」
「ダクネス、それ、テレビじゃなくね?」
確か、呪い関係の作法だったような。
よい子は真似すんなよ。
「じゃあな。念のために、テイラーたち(第19話参照)にも知らせたから、問題はないはずだ。溢れるほどのお宝を持って帰るから、楽しみに待ってろよ」
「はい。お気を付けて。キール特製料理、ジャイアントトードの唐揚げを用意して待っていますので」
「そんな特製なぞ、いらん。あばよ!」
めぐみんの手料理も気になるが、生臭い食べ物だけは勘弁してくれ……。
****
俺はめぐみんとダクネスと別れ、千里眼のスキルで難なく、暗闇の洞窟の奥へと進んでいく。
ひんやりとした空間の鍾乳石から、
「こりゃ、本格的なダンジョンだけあって、大迫力だぜ」
今度は敵感知スキルで、モンスターの気配か。
俺は近くの岩壁に隠れて、フォークを持った、一体の悪魔系モンスターが過ぎ去るのを見送る。
ギルドのみんなからの噂によると、このダンジョンのモンスターは弱いらしいが、この前死んだばかりの病み上がりの俺は、極力、戦闘をしない方が身のためだ。
俺はモンスターの居所を先読みし、岩伝いに、おそるおそる避けながら、ある一人の女神のことを思い出す。
「ああ、エリス様か。あの子との出会いは衝撃的だったなあ。清楚可憐な女の子なんて、この世界にはいないと思い切っていただけに……」
「カーズーマー‼」
デレデレと油断を見せていた真っ正面から現れた、見慣れた女の影。
「のひゃー、駄女神の亡霊か!?」
「失礼ね、私は死んでないわよ」
そりゃそうだ。
死人で経済を回していけるのは、現在も売れ続けているゾンビゲームだけだ。
「あなた、ダンジョンのことなめすぎなのよ。ダンジョンにはねえ……」
俺の前に、砂から人の形になった、一体のゾンビが襲いかかる。
『ターンアンデッド‼』
アクアの神聖魔法で、再度、砂へとさよならするモンスター。
「ダンジョンには、こんな風にアンデッドがウヨウヨいるのよ。それに彼らには潜伏スキルは効果ないし、そのまま行ったら、ビーフゾンビーズのメンバーに入っていたわよ」
確かに、そんな家畜の餌の名前みたいな構成にされるのは嫌だが、
アクアが加わることで、さらに嫌な予感ばかりしかしない。
「そういえば、こんな暗闇なのに、よく周りが把握できるな?」
「私を誰だと思ってるの。私くらいの魔力があれば、これくらい余裕で見えるわよ」
「そうか、まだ老眼じゃないんだな」
「それ、もう一回言ってごらん? 次は女神の水の裁きを受けることになるわよ」
「さばくなら、茹でたカニのハサミだけにしてくれ」
俺はアクアとウダウダと会話しながら、共に仲良く? 前へと進んでいった。