この素晴らしい楽園に青春―アオハル―を!?《このすば120%ギャグリメイク》 作:ぴこたんすたー
「いっ、痛い……何するのよ。バカカズマ‼」
「その声はアクアか。お前、何やってるの?」
影の正体はフランス人形ではなかった。
俺の開けたドアに頭を思いっきりぶつけたらしく、手前でうずくまっている女神の額から、大きなたんこぶができていた……。
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「なーるー。霊を全部浄化するために、屋敷中をうろちょろしていたと」
「ふん。あんな低級霊なんて、私にかかればあっと言う間よ」
「そのわりには扉の前で苦戦していたみたいだが? こぶとりオバチャン」
「誰のせいよー!」
額に貼られた痛々しい
「ヤンババとは何よー!!」
「お前、俺の心を読んで、さらにねつ造するなよ……」
「それよりも聞いてよ、カズマ」
アクアが見覚えのあるワインボトルを俺に見せつける。
「入居祝いに飲む予定だった私のお酒、あの幽霊に
昨日の夜に話した、隠し子の幽霊よ」
「マジか?」
あの話はアクアのキテレツ怪談話かと思って、頭の片隅に追いやっていたんだが……。
「だからそれで腹が立ったから、この屋敷中の霊を多少、強制的に成仏させたのよ」
「そりゃ、霊も散々だっただろうな」
「でもカズマたちを追っていた人形は、悪どいことはしなかったわよ。一緒にお酒を飲んで
「そうか……。そんな心境も知らず、何か逃げてばかりで悪いことしたな……」
めぐみんも『そうですね……』と呟き、少しばかり気を落としている。
「まあ、代わりに私が、心ゆくまで彼女の相談にのってあげたから、もう問題はないわよ」
アクアの
ダクネスだけが夢の中で、フランス人形とのファンタジー世界を楽しんでいたのだった……。
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「──カズマさん、この前の悪霊退治の件に対して、臨時の報酬が出ます」
「やったわー、カズマ。今日は朝までパーティーよー!!」
ギルドと不動産屋さんに任務完了を知らせた帰宅後、俺たちの冒険者カードの記録を
最近、暖房費などで生計のやりくりが大変だったし、これは願ったり叶ったりだ。
「それと、この街に悪霊が増えてきた原因も判明しましたよ」
「えっ、何ですか?」
「街の外れにある墓地に何者かが神聖魔法の結界を張って、霊を寄せ付けなくしたみたいで、それで墓地に帰れない霊が、今回のように街の空き家に住むようになったみたいです」
俺の隣で下手っぴな口笛を吹いて逃げ去ろうとした、アクアの衣をしっかりと捕まえる。
「……おい、駄女神。どういうことだ?」
「えっ、えっと、ウィズからの依頼の墓地の霊の成仏を、毎回やるのが
俺の頭の中の何かが切れ、アクアにひきつった笑みをおくる。
「お金は受けとらんでいいな?」
「はひっ……」
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「……ってなわけですみません。俺たちが発端で…」
屋敷の庭に戻ってきた俺はアクアと一緒に頭を下げて、不動産屋さんの前で謝罪する。
「いえ、いいんですよ。何だかんだで屋敷の霊を徐霊させてもらいましたし……。それにどうせならこれからも、この屋敷に住んでみませんか? そうすれば屋敷の悪霊の疑いも晴れると思うのですが……」
『あっ、ありがとうございます』
俺とアクアは、丁寧にお辞儀を返す。
「では、ここで二つだけお願いごとがありまして、クエストからの帰宅後の夕食の際に、その冒険話をして、その場を和ませてくれませんか?」
「ええっ、お安いご用です」
「それともう一つ、毎日欠かさず、敷地内にあるお墓の手入れをお願いします……」
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俺は不動産屋さんの言いつけを守り、ポツンと一つだけある墓場の掃除をしながら、墓標に目をやる。
「うーん、古びた文字で読みづらいけど、アン……ナ? どこかで聞いたような……?」
「ふふっ。甘いお酒の差し入れとかしたら、さらに喜ぶかも知れませんよ?」
真横でウィズが微笑みかけ、俺は数歩後ずさる。
「おわっ!? いきなり現れて何の用だ? もう体は平気なのか?」
「はい、お陰さまで体調は万全です」
ウィズが両拳を握りしめ、今までにない根性を入れる。
良かった。
体の透明度はなく、元に戻ってるな。
「そうだ、どうせ来たなら、
「あっ、すみません。これから仕事ですので」
ウィズが笑いながら、庭から去っていく。
なら、何しに来たんだろうか……。
『──ゴンゴンゴン!!』
──屋敷のリビングがある窓からアクアが、お玉で中華鍋を鳴らす。
「カズマ、何やってるの? もう夕ご飯できたわよ!」
「あっ、悪いな。今すぐ行く」
「早くしないと、一分ごとにジャイアントトードの唐揚げを一個ずつ増やすわよ」
「なっ、そんな爆弾発言するなよな‼」
あのカエルの肉は唐揚げで味を誤魔化しても、生臭くて食えたもんじゃない(第1話参照)からな。
素人の手作りなら、なおさらだ。
今回も色々と騒動があったけど……、
何はともあれ、この屋敷のお陰で、これからの寒い冬も快適に過ごせるな。