この素晴らしい楽園に青春―アオハル―を!?《このすば120%ギャグリメイク》   作:ぴこたんすたー

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第25話 この素晴らしい夢に己の願望を‼

****

 

 ──北風が身にしみて人恋しい、冬の情景。

 

 俺はおつかいの帰りに、人が(まば)らな街並みで家路を急いでいた。

 

「今日も寒いな。冬は引きこもりが一番。さっさと屋敷に帰って……あれ?」

 

 前方に見知った二人の冒険者が民家の影に隠れて、何やらうっとりとしている。

 

 一人は、元酔っ払い野郎のダストか。

 もう一人は、アーチャーのキースだな。

 

「お前ら、古いパソコンじゃあるまいし、何ここで固まってるの?」

 

『おわっ!?』

 

 二人が一斉に、その場から離れる。

 

「お前、今日はハーレム美人たちと一緒じゃないのか?」

 

「何だよ、女がいたら、色々と問題でも?」

 

「いや、おい、待て。

カズマはそんなハーレム気分で楽しんでいない。アイツは毎日のように鬼のような地獄を味わっていてな……」

 

 ダストが口から魂を吐きかけ、死んだような瞳でキースの肩に手を触れる。

 

 どうやら、あの時の入れ替えパーティー編成の件で、トラウマ(第19話参照)を植え付けてしまったようだな……。

 

「カズマ、お前、口は堅い方か?」

 

「まあ、カタクチイワシぐらいはな」

 

「そうか。なら、これから俺たちが行く、初めての場所に関しては女たちには秘密だぞ」

 

 このまま、ここに居ても時間が惜しい。

 俺たちは歩きながら、会話を続けることにした。

 

****

 

「カズマ、サキュバスって知ってるか?」

 

「ああ、男の精気を吸う、女のモンスターだよな?」

 

「ご名答。この街ではサキュバスと男どもは共存関係を築いていてな。

今日(こんにち)まで仲良くしてきたのだが……。お前も男なら分かるだろ。そのサキュバス様が、精気をちょっぴり吸って、寝ている間に、最高の夢を見せてくれる店があるんだ。俺たちも彼女たちも満足できて、めでたしさ」

 

「素晴らしいな。男の願望が花咲く店じゃないか。ぜひ、俺も連れていってくれ!」

 

 俺はスキップしながら(きしょい)、二人の背中を追った。

 

****

 

「いらっしゃいませー♪」

 

 おおっ、耳が尖っていて、エルフに似た綺麗な女性たちが薄い布一枚のビキニで接客を……。

 これはメイド喫茶並みに萌える。

 

「お客様、三名様ですね。あちらの空いてる席へどうぞ」

 

 豪勢なシャンデリアのある店内に入った俺たちは、一人の美人店員につれられ、窓際の高そうなテーブル席に座った。

 

「それではこちらのアンケート用紙に、記入をお願いします」

 

 店員さんの話では、自分が見る夢の設定を確かめるために、この用紙に細かい内容を決め、それに従ってサキュバスがいい夢を見せてくれるというルールらしい。

 

 相手役の設定も、年齢制限も自由。

 これは夢なのだから、一切問題ないのだ!

 

 俺たちは血走った目で、アンケートに必要事項を記入して、店員に渡す。

 

「それでは今晩、寝ている時にスタッフがご希望の夢を叶えるために、そちらに向かいます。あと、熟睡されると見れませんので、くれぐれもお酒などはほどほどにして下さいね。それではお楽しみに♪」

 

 お姉さんが俺たちに向かい、色気付いた唇で投げキッスをしてくれた。

 

「じゃあな、歴戦の戦士たちよ。いい夢を」

 

「おうっ‼」

 

 店の前で俺たち三人は、男の握手で語り、家路へと帰っていった。

 

****

 

 アクアたちがダクネスの実家から送られてきた、入居祝いの最高級の霜降り赤ガニ鍋でどんちゃん騒ぎをする中、俺は一人自室で布団にくるまっていた。

 

 やベーな、ドキドキして、眠れないや。

 こんな時は羊の数を数えて……。

 

 羊が二千三十匹、二千三十一匹……。

 

「普通に数が気になって、寝れんわいー!」

 

 俺は布団を蹴飛ばし、落ち着くために風呂に入ることにした。

 

****

 

 風呂から上がれば、体温が下がって眠れるだろうし、何より体は清潔にしとかないとな。

 

 夢の中で、どんな素敵な子が来るんだろうな。

 もうめっちゃ楽しみで、仕方がないぜ……。

 

『カチャ……』

 

 体についた石鹸の泡を流していると、入浴中に扉がいきなり開き、タオルを持った裸の女性が入ってくる。

 

「ダクネス? 何でだ!?」

 

 向こう側のダクネスも、ポカンと気の抜けた表情で俺を眺めている。

 もしかして、これがサキュバスのエロい夢のサービスなのか‼

 

「美人でスタイルもいいお姉さんの指名で、ダクネスが来るとはな。くるしゅうない、ちこうよれ」

 

「なっ!? カズマ、何を平然と、わけの分からないことを?」

 

「おおう、まずは俺の背中を流してくれよ。

恥ずかしがりで、世間知らずのお嬢さん♪」

 

「はあ?」

 

「もう焦らしプレイはいいから、さっさとしてくれよ」

 

 ダクネスが恥じらいつつもタオルで、俺の背中を洗い始める。

 

「いやー、最高の気分だな。日頃、強気なお前が、こうやって恥ずかしがりながら、願いを叶えてくれるなんて」

 

「バカ者、こんな所をアクアやめぐみんに見られたら!!」

 

「その時は道連れさ。夢の中だから自由だろ」

 

「はあ? さっきからお前、言動がおかしいぞ!」

 

 ダクネスが俺の背中越しから、小声でいちゃもんをつける。

 

「さて、ここからが本番だな。タオルを使わずに俺の背中を……」

 

「いや、それはおかしすぎるだろー‼」

 

「何だよ、俺の願望にケチをつけるのか?」

 

 ダクネスが泣きながら、俺に抗議してくる。

 全く、ここまで世間知らずなお嬢様とはな。

 

『──賊が出たわよー、この屋敷に悪魔が出たわよー‼』

 

 風呂場の外が騒がしい。

 俺は腰にタオルを巻き、騒ぎの現況へ向かうことにした。

 

「──何だよ、夢の中にしては登場人物多いだろ。ちょっとは筆者の身になれよ」

 

「あっ、触ったら駄目よ、カズマ。屋敷内に男心を操る、サキュバスが忍び込もうとしてたのよ‼」

 

 アクアとめぐみんが見つけて牽制された、ショートヘアのサキュバスの少女が半泣きで、俺と無言の視線を交わす。

 

『申し訳ありません。屋敷内の強力な結界により、こうして捕まってしまいました。

残念ながら、お客様には良い夢は見せられないですが、このまま黙って退治されますので、見てみぬふりをお願いいたします』

 

 俺の頭に伝わる、サキュバスのテレパシー。

 ということは風呂場での、ダクネスとの絡みは……。

 

 俺の後ろからノーブラで黒い上着を羽織った、ダクネスがドタバタと走ってくる。

 

「アクア、めぐみん。カズマはすでに、サキュバスの怪しげな術にかかっている。逃《のが》すんじゃないぞ‼」

 

 ダクネスの言い分に、女性陣の動きが止まる。

 俺はその隙にサキュバスの肩を抱き寄せ、外へ繋がる扉へと逃がす。

 

 俺も一人の男だ。

 サキュバスの嬢ちゃん、

 今のうちにNIGENA!(ニゲナ)

 

「くっ、こうなったら、カズマもろともー‼」

 

「オッシャー‼ かかってこいやー‼ 

愚民どもー‼」

 

 俺は腰を低く落とし、拳を眼前に出したファイティングポーズで、三人の魔女たちと向き合った。

 

****

 

 晴天の翌朝……。

 

「なあ、ダクネス。

そんなにむくれるなよ。もういい加減、昨日のことはいいだろ?」

 

 青アザプラス傷だらけの顔で、庭の掃除をする俺を無視して、一緒に作業を続ける、お怒りぎみなダクネス。

 

「カズマ。本当にあの夜のことは覚えてないんだな?」

 

「まあな、サキュバスの夢だったからな。残念ながら記憶ないぜ」

 

「そうか。しかし、昨日はサキュバスの能力により、大変な目にあったな。例のサキュバスは逃げてしまったし……」

 

「ああ、それは(わる)うござんした」

 

「……でもな、あの時のお前は強引だったが、悪くはなかったぞ。ちょっとおじさん臭くて、怖かったけどな」

 

 ダクネスが顔を赤らめてボソボソと話すが、俺の耳には届かない。

 

「しかし、お前も気をつけろよな。ランタン点けて、入浴中の札も付けていたのに、風呂場に堂々と入って来てさ。本当、常識がないよな」

 

「カズマ、やっぱり覚えているのか? こらっ、何とか言えー!!」

 

****

 

「よう、カズマ、どうだった? 昨晩はサイバーお祭り空間で楽しかったよ」

 

「俺なんか、うな重三杯おかわりしたぜ」

 

 俺を見るなり、スッキリとした顔を見せるダストとキース。

 

 この二人、一体どんな夢を見たんだ……?

 

 

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