この素晴らしい楽園に青春―アオハル―を!?《このすば120%ギャグリメイク》 作:ぴこたんすたー
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──北風が身にしみて人恋しい、冬の情景。
俺はおつかいの帰りに、人が
「今日も寒いな。冬は引きこもりが一番。さっさと屋敷に帰って……あれ?」
前方に見知った二人の冒険者が民家の影に隠れて、何やらうっとりとしている。
一人は、元酔っ払い野郎のダストか。
もう一人は、アーチャーのキースだな。
「お前ら、古いパソコンじゃあるまいし、何ここで固まってるの?」
『おわっ!?』
二人が一斉に、その場から離れる。
「お前、今日はハーレム美人たちと一緒じゃないのか?」
「何だよ、女がいたら、色々と問題でも?」
「いや、おい、待て。
カズマはそんなハーレム気分で楽しんでいない。アイツは毎日のように鬼のような地獄を味わっていてな……」
ダストが口から魂を吐きかけ、死んだような瞳でキースの肩に手を触れる。
どうやら、あの時の入れ替えパーティー編成の件で、トラウマ(第19話参照)を植え付けてしまったようだな……。
「カズマ、お前、口は堅い方か?」
「まあ、カタクチイワシぐらいはな」
「そうか。なら、これから俺たちが行く、初めての場所に関しては女たちには秘密だぞ」
このまま、ここに居ても時間が惜しい。
俺たちは歩きながら、会話を続けることにした。
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「カズマ、サキュバスって知ってるか?」
「ああ、男の精気を吸う、女のモンスターだよな?」
「ご名答。この街ではサキュバスと男どもは共存関係を築いていてな。
「素晴らしいな。男の願望が花咲く店じゃないか。ぜひ、俺も連れていってくれ!」
俺はスキップしながら(きしょい)、二人の背中を追った。
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「いらっしゃいませー♪」
おおっ、耳が尖っていて、エルフに似た綺麗な女性たちが薄い布一枚のビキニで接客を……。
これはメイド喫茶並みに萌える。
「お客様、三名様ですね。あちらの空いてる席へどうぞ」
豪勢なシャンデリアのある店内に入った俺たちは、一人の美人店員につれられ、窓際の高そうなテーブル席に座った。
「それではこちらのアンケート用紙に、記入をお願いします」
店員さんの話では、自分が見る夢の設定を確かめるために、この用紙に細かい内容を決め、それに従ってサキュバスがいい夢を見せてくれるというルールらしい。
相手役の設定も、年齢制限も自由。
これは夢なのだから、一切問題ないのだ!
俺たちは血走った目で、アンケートに必要事項を記入して、店員に渡す。
「それでは今晩、寝ている時にスタッフがご希望の夢を叶えるために、そちらに向かいます。あと、熟睡されると見れませんので、くれぐれもお酒などはほどほどにして下さいね。それではお楽しみに♪」
お姉さんが俺たちに向かい、色気付いた唇で投げキッスをしてくれた。
「じゃあな、歴戦の戦士たちよ。いい夢を」
「おうっ‼」
店の前で俺たち三人は、男の握手で語り、家路へと帰っていった。
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アクアたちがダクネスの実家から送られてきた、入居祝いの最高級の霜降り赤ガニ鍋でどんちゃん騒ぎをする中、俺は一人自室で布団にくるまっていた。
やベーな、ドキドキして、眠れないや。
こんな時は羊の数を数えて……。
羊が二千三十匹、二千三十一匹……。
「普通に数が気になって、寝れんわいー!」
俺は布団を蹴飛ばし、落ち着くために風呂に入ることにした。
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風呂から上がれば、体温が下がって眠れるだろうし、何より体は清潔にしとかないとな。
夢の中で、どんな素敵な子が来るんだろうな。
もうめっちゃ楽しみで、仕方がないぜ……。
『カチャ……』
体についた石鹸の泡を流していると、入浴中に扉がいきなり開き、タオルを持った裸の女性が入ってくる。
「ダクネス? 何でだ!?」
向こう側のダクネスも、ポカンと気の抜けた表情で俺を眺めている。
もしかして、これがサキュバスのエロい夢のサービスなのか‼
「美人でスタイルもいいお姉さんの指名で、ダクネスが来るとはな。くるしゅうない、ちこうよれ」
「なっ!? カズマ、何を平然と、わけの分からないことを?」
「おおう、まずは俺の背中を流してくれよ。
恥ずかしがりで、世間知らずのお嬢さん♪」
「はあ?」
「もう焦らしプレイはいいから、さっさとしてくれよ」
ダクネスが恥じらいつつもタオルで、俺の背中を洗い始める。
「いやー、最高の気分だな。日頃、強気なお前が、こうやって恥ずかしがりながら、願いを叶えてくれるなんて」
「バカ者、こんな所をアクアやめぐみんに見られたら!!」
「その時は道連れさ。夢の中だから自由だろ」
「はあ? さっきからお前、言動がおかしいぞ!」
ダクネスが俺の背中越しから、小声でいちゃもんをつける。
「さて、ここからが本番だな。タオルを使わずに俺の背中を……」
「いや、それはおかしすぎるだろー‼」
「何だよ、俺の願望にケチをつけるのか?」
ダクネスが泣きながら、俺に抗議してくる。
全く、ここまで世間知らずなお嬢様とはな。
『──賊が出たわよー、この屋敷に悪魔が出たわよー‼』
風呂場の外が騒がしい。
俺は腰にタオルを巻き、騒ぎの現況へ向かうことにした。
「──何だよ、夢の中にしては登場人物多いだろ。ちょっとは筆者の身になれよ」
「あっ、触ったら駄目よ、カズマ。屋敷内に男心を操る、サキュバスが忍び込もうとしてたのよ‼」
アクアとめぐみんが見つけて牽制された、ショートヘアのサキュバスの少女が半泣きで、俺と無言の視線を交わす。
『申し訳ありません。屋敷内の強力な結界により、こうして捕まってしまいました。
残念ながら、お客様には良い夢は見せられないですが、このまま黙って退治されますので、見てみぬふりをお願いいたします』
俺の頭に伝わる、サキュバスのテレパシー。
ということは風呂場での、ダクネスとの絡みは……。
俺の後ろからノーブラで黒い上着を羽織った、ダクネスがドタバタと走ってくる。
「アクア、めぐみん。カズマはすでに、サキュバスの怪しげな術にかかっている。逃《のが》すんじゃないぞ‼」
ダクネスの言い分に、女性陣の動きが止まる。
俺はその隙にサキュバスの肩を抱き寄せ、外へ繋がる扉へと逃がす。
俺も一人の男だ。
サキュバスの嬢ちゃん、
今のうちにNIGENA!(ニゲナ)
「くっ、こうなったら、カズマもろともー‼」
「オッシャー‼ かかってこいやー‼
愚民どもー‼」
俺は腰を低く落とし、拳を眼前に出したファイティングポーズで、三人の魔女たちと向き合った。
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晴天の翌朝……。
「なあ、ダクネス。
そんなにむくれるなよ。もういい加減、昨日のことはいいだろ?」
青アザプラス傷だらけの顔で、庭の掃除をする俺を無視して、一緒に作業を続ける、お怒りぎみなダクネス。
「カズマ。本当にあの夜のことは覚えてないんだな?」
「まあな、サキュバスの夢だったからな。残念ながら記憶ないぜ」
「そうか。しかし、昨日はサキュバスの能力により、大変な目にあったな。例のサキュバスは逃げてしまったし……」
「ああ、それは
「……でもな、あの時のお前は強引だったが、悪くはなかったぞ。ちょっとおじさん臭くて、怖かったけどな」
ダクネスが顔を赤らめてボソボソと話すが、俺の耳には届かない。
「しかし、お前も気をつけろよな。ランタン点けて、入浴中の札も付けていたのに、風呂場に堂々と入って来てさ。本当、常識がないよな」
「カズマ、やっぱり覚えているのか? こらっ、何とか言えー!!」
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「よう、カズマ、どうだった? 昨晩はサイバーお祭り空間で楽しかったよ」
「俺なんか、うな重三杯おかわりしたぜ」
俺を見るなり、スッキリとした顔を見せるダストとキース。
この二人、一体どんな夢を見たんだ……?