この素晴らしい楽園に青春―アオハル―を!?《このすば120%ギャグリメイク》 作:ぴこたんすたー
****
「──先日、切り裂きシャックの愛用の刀が見つかりました。シャックが住んでいた隠れ家から発見された物です」
ギルド内にて、いつもの美人お姉さんが、ボロそうな剣を冒険者たちに見せる。
ちなみにシャックとは、卓越した剣さばきを身に付けた剣士であり、人の行き来が少ない夜に現れては、主に女性に切りかかるという、とんでもない犯罪者でもある。
だが、切った相手の体には決して傷をつけず、服だけを切り裂くという『変態』のあだ名を世に残していた。
「魔法使いの皆さんには、この刀の調査をお願いしたいのですが……」
お姉さんが一瞬、言葉を濁らす。
「……鑑定の結果、強力な妖刀には間違いないのですが、剣士の方がお試ししたら、枯れ枝も切れないほどの、とんでもないナマクラ刀だったらしいんです」
「なるほど、真の伝説の剣は優れた剣士にしか、装備できないというヤツか」
「そういうもんなんですか?」
「まあいい。ようは試してみることだ」
俺は刀を手に取り、目の前の大根に切りかかった。
今日の晩メシのおでんの具材だけに……。
「ふむ、やっぱり俺では切れないか」
「同じ変態だけに惜しかったですね……」
「おい、めぐみん、何で、俺を見て言うんだ?」
「いえ、気のせいじゃないでしょうか?」
めぐみんが刀を手に取り、誤魔化しながら振り回す。
『ザクッ!』
その刀が大根を捉え、縦に真っ二つに両断する。
「えっ、もしかして、めぐみんが伝説の剣士だったり?」
「フフフ……」
めぐみんが不気味な笑みを浮かべながら、
もう一度、大根に狙いを定める。
『スパパーン!!』
たったひと降りで、一センチ感覚の輪切りになる大根。
「うおおー、めぐみんこそが、本物の剣豪だぜ‼」
めぐみんの冴え渡る剣の腕に盛り上がっていく、冒険者一同たち。
「なあ、嬢ちゃん、このワインの瓶も切れるか?」
「よろしい、我が剣技を思い知るがいい」
めぐみんが刀を振るうと、あの固い瓶が、すんなりと筒切りになる。
「何てことない、これくらい楽勝だ」
「うおおー、切り裂きめぐみんの誕生だぜー‼」
手では開かない蓋の瓶や、あのル○ン三世の剣豪、石川○右衛門でも切れないこんにゃくなど、色々と試し切りをされるめぐみん。
「あの、めぐみんさん。どうせなら、その刀による特別依頼を受けてみませんか?」
その依頼とは、その刀を上手く使いこなし、真の実力を探ること。
報酬も割高だったらしく、めぐみんは難なく、その依頼を引き受けた。
****
「カズマ、どんなことでも、道を極めるということは、虚しいことなんですね……」
「……と言うか、お前、剣士じゃなくて、アークウィザードだろ。お前さんは、爆裂魔法を極めるんじゃなかったのか?」
「いえ、この刀があれば、私はパーティーの偉大なる力になれるんです。もう爆裂魔法一回だけのヘタレと言わせません」
「ああー、そーですか」
何でも切れる師匠と、みんなから言われて、
すっかり剣士の道に溶け込んだか……。
「それでカズマ。最後に、どうしても戦いたい相手がいるのですが……」
「おっしっ、こうなったら、とことんぷにぷにと付き合ってやるよ」
****
「ゲコゲコ、ゲコリ……」
「はあ?」
俺はめぐみんに誘われ、
ジャイアントトードが巣食う、例の草原に来ていた。
「以前、苦戦を強いられたカエルの軍団。爆裂魔法では連続して、カエルは退治できません(第3話参照)」
「でも、今の私には、この刀があります!」
古びた鞘から刀を抜き、
抜刀体勢になり、ターゲットに立ち向かうめぐみん。
「今こそ、長年による、因縁の決着をつける時ですー!! やああー‼」
「おいっ、待てよ‼」
まあいいか。
あの妖刀があるんだ。
今の戦力のめぐみんだったら、カエルくらい、余裕で倒せるだろう。
「あっ、いました! カズマさーん!」
ギルドのお姉さんが、急ぎ足でこっちに駆けてくる。
「そんなに慌てて、どうかしましたか?」
「いっ、いえ、実は、あの妖刀のことなのですが……」
シャックの隠れ家から知った真実。
あの刀は魔力を使って、物を切る妖刀であり、魔力が強い物ほど、物がよく切れるらしいが、生物には全く切れない刀らしく……。
「つまり、シャックが服だけを切り裂いたというのは、そういうことなのか……」
「はい。ですから、あの妖刀でモンスターと戦っても、意味がなくてですね……」
えっ、てことは、カエルの群れに飛び込んだ、突撃剣士のめぐみんヤバくね?
ゲコゲコ、パクリ……。
あー……。
光の差す中、剣を持ったまま、カエルに飲み込まれるめぐみんの長き影が、もの悲しく映っていたのだった……。
****
「これは自分への罰なんです! 爆裂魔法を極めず、浮気心で挑んだ私への罰なんです!」
ギルドの飲食ブースで、しかめっ面のめぐみんが、テーブルを叩きながら、口語する。
「これからは爆裂魔法のみを追求していくことを、約束してですね……」
「せやな」
どうでもいいから、その粘液まみれの服を早く洗濯して、とっとと風呂に入れよ。